提出の経緯

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日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案
(衆第14号)

1.「日本国憲法の改正手続に関する法律」の3つの検討課題

 憲法改正手続は、憲法96条において規定されている。その手続を具体化した法律が「日本国憲法の改正手続に関する法律」(以下「憲法改正手続法」という。)である。
 憲法改正手続法には、
①選挙権年齢等の18歳への引下げに関する検討(附則3条)、
②公務員の政治的行為の制限に関する検討(附則11条)、
③憲法改正問題についての国民投票制度に関する検討(附則12条)、
という3つの課題(いわゆる3つの宿題)が規定されている。
 なお、①と②の検討課題には、「この法律が施行されるまでの間に」(注:憲法改正手続法の施行日は、平成22年5月18日)との期限が明記され、③の検討課題には、期限でなく、「この規定の施行後速やかに」(注:この規定の施行日は、19年5月18日)との検討開始時期が明記されている。

2.内閣に設置された「年齢条項の見直しに関する検討委員会」における検討

 憲法改正手続法附則3条の規定を踏まえて、平成19年5月、内閣官房副長官(事務担当)を委員長とし、各府省の事務次官等を構成員とする「年齢条項の見直しに関する検討委員会」が、内閣に設置された。直近では、25年10月18日に第7回検討委員会が開かれたが、結論はまだ出ていない。なお、26年4月1日現在、検討対象となる法律は212、そのうち法制上の措置に関する検討が完了している法律は201(うち要改正12)とされている。

3.法務省に設置された「法制審議会」における検討

 平成19年11月の「年齢条項の見直しに関する検討委員会」において、「各府省において必要に応じて審議会等で審議を行い、21年の臨時会又は22年の常会への法案提出を念頭に法制上の措置について対応方針を決定することができるよう検討を進めるものとする」との決定がなされた。これを受けて、20年2月13日、法務大臣は法制審議会に対して、民法の定める成年年齢を引き下げるべきか否かについて諮問した。法制審議会は、その検討の結果、21年10月28日、法務大臣に答申を提出し、その答申では、成年年齢について18歳への引下げが適当であるとされたが、現時点での引下げには消費者被害の拡大等の問題が生じるおそれがあるとの留保も付された。

4.衆参憲法審査会における審議

(1)総務省と法務省による選挙権年齢・成年年齢に関する答弁
 平成24年2月29日の参議院憲法審査会において、選挙権年齢・成年年齢について、総務省は、「選挙権年齢と成年年齢は一致すべきである。大部分の諸国で一致している」旨を答弁した。一方、法務省は、「選挙権年齢の引下げを先行させて、成年年齢の引下げに向けた国民の意識を醸成した上で引き下げることが、有力かつ現実的な選択肢である」旨を答弁した。

(2)人事院と総務省による公務員の政治的行為の制限に関する答弁
 平成25年6月6日の衆議院憲法審査会において、人事院は、「国家公務員の政治的行為の制限については、附則11条を踏まえ、憲法審査会において、法制上の措置について必要があれば議論されることとなっていると理解している」旨を答弁した。一方、総務省は、「地方公務員の政治的行為を制限する地方公務員法36条2項の「公の投票」は、制度趣旨としては住民投票を想定しているが、字義上は国民投票も対象となり、国民投票運動が制限される場合があると考えられることから、附則11条の趣旨から何らかの検討が必要であると考えている」旨を答弁した。

5.法案提出までの経緯

 このような状況の中で、各党は3つの課題についてそれぞれ検討を進めてきた。
 平成25年5月16日、衆議院において、維新の会は、投票権年齢を選挙権年齢等に先行して18歳に引き下げること等を内容とする「日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案」(第183回国会衆第14号)(維新案)を提出した。
 12月6日、自民党と公明党による法改正についての合意の後、26年3月14日、自民党、公明党、民主党の間で与党案を修正した内容で改正案を共同提出することで合意した。
 さらに、4月3日、維新の会、みんなの党、結いの党、生活の党を加えた7党は実務者協議において、改正案を共同提出することで合意し、衆議院に議席を有しない新党改革を加えた8党は、改正案に関する確認書を取り交わした。4月8日、7会派は「日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案」(衆第14号)を衆議院に共同提出した。

[提出者]船田元(自民)、中谷元(自民)、北側一雄(公明)、枝野幸男(民主)、馬場伸幸(維新)、三谷英弘(みんな)、畠中光成(結い)、鈴木克昌(生活)の各衆議院議員

 なお、維新案は、4月10日の衆議院憲法審査会において撤回が許可された。

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