３　現行憲法の果たしてきた役割

• 私たちは歴史と伝統文化に生きているのではなく、歴史と伝統文化を生きなければならない。その意味で、天皇は日本の歴史と伝統文化の象徴であるがゆえに、国民統合の象徴になり得るのであり、憲法改正ではその論理が明確にされなければならない

• 日本の自然、歴史・伝統・文化を前文に織り込んでも良いし、地球環境の保全のような未来に向かって生きる日本人の指針も前文にふさわしい

• 現憲法では、人と人とのつながり、例えば家族のきずなや郷土愛、環境等公共に対する姿勢や、社会を築いた先人への尊敬の念、すなわち伝統の尊重など、健全な社会の運営に必要不可欠な要素が明記されていない

• 歴史・伝統・文化を前文に入れることには大賛成であり、特に伝統・文化は絶対に入れるべき。それは、復古主義ではなく、祖先に敬意を払い、自分が生存していることに対する感謝の気持ちが必要ということである

• 伝統・文化は宗教との絡みが多いが、20条をいかすのであれば、２項・３項の後に国民共通の伝統・文化・風習を否定するものではないとの趣旨を入れることも必要ではないか

• 21世紀の国のかたちを論ずることは重要であるが、空中に楼閣を築くようなものであってはならず、歴史・伝統の護持・継承を離れてはそれは成らない

• 日本のアイデンティティー、伝統・文化・歴史を前文に書けとの議論には違和感を感じるものが多く、戦後60年が無国籍・無文化であったかのような感覚は誤り。戦前への復帰ではなく、60年分をも包含した新しい価値観でなければならない

• 憲法も教育基本法も、日本古来の良き伝統と文化に根付いたものであり、これを尊重するものであることを明確に示す必要がある。国民が変化の時代・不安の時代の中でアイデンティティーを持ち、日本という国家の一員であることに自信と誇りを持ち、心のよりどころとなるような憲法、教育基本法に改めていくべき

• 天皇は、統合の象徴として法的にとらえるというより、文化的な伝統に意義が認められてきたように感じる。その場合、文化・伝統・歴史とは、難しい神秘的なものではなく、国民が自然に慕えるようなものとしてとらえたい

• 日本の歴史、伝統、文化を前文に盛り込むべきとの見解があるが、基本的人権の制限や過去の国家主義的考えに基づくものであれば、時代錯誤である

• 前文に国家像として国柄（歴史、伝統、文化に根差した固有の価値を大事にする国民性）を盛り込むという考えは、基本的人権の普遍性を否定する危険性をはらんでおり、賛成できない

• 前文に、日本の歴史、伝統、文化を盛り込むべきとの見解は、基本的人権の普遍性を制約する国家主義、復古主義の考えに基づくものであり、賛成できない

• 歴史・伝統・文化の尊重がいけないとは言わないが、それが行過ぎ、最近の意見の中には、国家主義・復古主義の傾向が顕著に見られる

• シビリアン・コントロールに失敗し、軍の暴走により諸外国に迷惑を掛けたという歴史を常に振り返りながら未来に向かう決意を明らかにして初めて、本当の意味での世界の信頼が回復できる。前文に、国を挙げて、未来志向の歴史検証作業を中核とした信頼回復に取り組む決意を明らかにすべき

• ドイツは、戦後、歴史の検証作業、ユダヤ人などへの個人補償、積極的な国際貢献により、信頼回復に向けて全力を挙げたが、この英知に学ぶべき

• 憲法改正の原点はＧＨＱの押し付けにあるのではなく、占領されざるを得ないような無謀な戦争をしたことこそが原点

• 中国や韓国の対日不信が戦後60年たって増幅されている状況の中で、厳しい自己批判こそが信頼回復の決め手であり、日本が平和に対する国際貢献をする際の最大の前提条件である

• 平和主義は過去の戦争に対する反省の結果であることが憲法に引き続き明記されるべきであり、戦争の歴史の総括を主体的に今後も継続していく決意を憲法上も明らかにしていくべき

• 戦後初めて戦争継続中のイラクへの自衛隊派遣や憲法改定の大論議の実施について、かつて日本に侵略された歴史体験を持つアジアを中心に不安・警戒を強めている国もあり、アジアでは戦争の真の清算がない国とみなされている日本の軍隊が再び海外に出兵するようになることへの強い危惧があり、これを無視した外交・安全保障政策は採るべきではない

• 侵略戦争及び植民地支配への反省とその誤りの清算は、戦後日本の国際公約であり、日本がアジアで生きていくための絶対条件とも言うべきもの

• 治安維持法犠牲者や従軍慰安婦の問題など過去の人権じゅうりんについては、国会が何らかの方法でその解決に向けて動くことを検討すべき

• 日本の歴史の中で憲法を国民全員が一生懸命議論して考えたことはなく、今、国民を巻き込んで議論をしていくことが、日本が真の意味で世界のリーダーとして自立していくという意味において重要なことである

• 国民一般に憲法論議の機運が高まっているとは言えず、憲法と現実が懸け離れている部分、例えば９条、89条などについて議論を呼び起こし、方向性を明確にしていく作業が必要

• 都道府県別憲法草案コンクールを呼び掛ければ日本じゅう憲法に関心を持つと思うので、全国創憲運動を呼び掛けるよう提案したい

• 一般の人が憲法を分かっていない状況で国民投票をしても投票にも行かないのではないか。国民を巻き込んだ論議をし、よく理解してもらった上で、国民に信を問うようにすべき

• 憲法議論は、現状では国民の関心は非常に低いと言わざるを得ず、国民的な関心と共通認識をつくるためにも国民に信頼を持たれるような議論をもっと続けていくべきで、新たな枠組みになるかどうかは別にして、調査会を継続することを要望する

• 国民各層における憲法論議への関心は盛り上がっておらず、国民世論とのギャップをそのままにして、国会や政党が議論を進めても、憲法の改正は難しいため、拙速は避け、国民とともに議論を進めていくという姿勢が必要

• 憲法改正は国民投票という形で直接国民の意見が反映されるが、憲法改正についてきちんと国民に問うているのか。国民的な議論をもっと高めていく中で、憲法改正の議論を進めていくべき

• 人権教育、平和教育、民主教育、環境教育といったものをきちんと教育の中に組み入れることが必要