平和主義と安全保障 参考人名
公述人名
回次 -

1 第9条と平和主義の理念

平和主義
  • 9条に基づく平和主義は、日本の世界に誇るべき財産
佐高 信 150 1 - 5
  • 日本国憲法のような徹底した形の平和主義は諸外国憲法にはない
加藤周一 150 2 - 1
  • 9条の武装放棄を含む平和主義は先取りの憲法と言ってよい
加藤周一 150 2 - 2
  • 平和主義の徹底なしには日本が本当に文化的な力を発揮することはできない
加藤周一 150 2 - 11
  • 9条の成立過程における自衛のための戦力保持をめぐる議論や、世界の約180の成典憲法のうち約150の憲法に平和主義条項が導入されていることなどを理解すれば、9条を非武装と解釈し、世界で唯一の平和主義というような独善的な論考が排除されるはず
西 修 156 6 - 3
  • 憲法と国連憲章は基本的に同じ理念に立っており、憲法前文に見られる国民の決意は、戦争の災害から将来の世代を救おうという国連憲章の精神に一直線につながっていくもの
明石 康 156 7 - 3
  • 前文に流れているのは基本的に平和主義と国際主義であり、名誉ある地位を占めるという基本的な決意を変える必要はないが、やや過度な理想主義があるとも解釈されないことはない
明石 康 156 7 - 3
  • 我々は平和を能動的に、弾力的に受け止める必要があるが、戦後は9条の護符に隠れて、9条9条と言っていれば日本が平和であり得るという錯覚があったのではないか
明石 康 156 7 - 12
  • 前文と9条1項の精神はそのままでありたいが、何をすれば平和が支えられるのか、平和の持つ経済的・社会的・文化的背景などにも思いを寄せながら日本の役割を探る必要がある
明石 康 156 7 - 12
  • 9.11事件は、米国が絶大な武力を持ちながらしょせん武力で民衆の安全が守れないことを示したものであり、武力で民衆の安全を保障できないとすれば、平和な方法によるしかない
尾形 憲* 156 I - 19
  • 平和主義については、(1) 解釈改憲と自衛隊設置による軍備増強という保守的な政治の動向、(2) 野党の国会議員に、議席の3分の1を確保すれば憲法改正発義は阻止できるとして、議席の過半数を得て憲法を実現しようという側面がなかったこと、(3) 憲法問題に対して裁判所、特に最高裁が消極的であったことにより、国民的な議論を行う道が閉ざされていたのではないか
加藤正之* 156 I - 30
  • 日本の国と社会が国際社会や人類のために何を果たそうとしているのかという、平和の向こうにある目標について議論しなければ、平和主義は単なる現状維持や事なかれ主義に堕する可能性が高い
村田晃嗣 156 9 - 8
  • 人類はまだ武力行使以外に国際紛争の解決方法を見いだしておらず、憲法の平和主義を守るためにはぎりぎりの工夫が必要になる
坂元一哉 159 1 - 12
  • 9条を国際的に広めるというのは国際社会においておせっかいすぎ、国際的に発信するのであれば、多くの主要国が署名している不戦条約を想起するよう言うべき
佐瀬昌盛 159 1 - 16
  • 度重なる9条の拡張解釈も、時代の必要に応じて政府の苦渋の選択としてなされたもので、必ずしも平和主義がなし崩しにされているとは思わない。日本は、戦後の多くの戦争のいずれにも参加せず、また武器輸出についても一定の節度を守ってきており、これは平和憲法の下における実践として世界に誇るべきもの
功刀達朗 159 3 - 5
  • 海外での武力行使を禁じている9条1項は、世界に胸を張って誇れる規定であり、これを守るだけでなく、積極的にこの平和主義を世界に呼び掛けていくことが重要である
廣野良吉 159 4 - 17
  • 国際交流を拡大するため、外国人に開かれた社会をつくっていくことは、平和を構築するという意味では最も重要な点ではないか
廣野良吉 159 4 - 19
  • 恒久平和主義は、この地上から戦争をなくそうと努力を傾注してきた国際社会の良心と英知の終局の到達点と考える
澤藤統一郎* 162 I - 5
  • 現在も理念としての恒久平和主義が妥当しない国際社会になってはいないと考える。むしろ、武力による平和の試みの失敗、無力があらわになってきているのではないか
澤藤統一郎* 162 I - 5
<内容>
  • 前文と9条は、徹底した平和主義を実定化したもの。前文では、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こらないようにすることを決意し、併せて各国の国民の平和的生存権を確認・保障している
上田勝美 156 6 - 4
  • 日本国憲法と国連憲章は平和愛好という点で同質であるが、国連憲章が51条で集団的自衛権を認め、軍事同盟を認めることにより平和的枠組みが矛盾をもって規定されているのに対し、日本国憲法は、徹底的な平和主義を定めている
上田勝美 156 6 - 5
  • 世界の安全保障・日本の安全保障をめぐっては、(1) 冷戦終えん後唯一の覇権国になった米国と同盟し、軍事力によりグローバル秩序の障害物を排除し平和秩序を維持していく、武力による平和、大国中心の平和という構想と、(2) 9条の武力によらない平和、大国が自己規制をする平和という二つの構想が台頭しているが、後者の9条の構想はかなり具体的な現実的武器として活用できる
渡辺 治 156 6 - 8
  • 9条は元々アジア・世界の平和のために日本が何をすべきかという構想であったが、一国平和主義的に考えてきた。一国平和主義を打破し、9条を世界の平和秩序のガイドラインとして訴えていく点で政治のイニシアティブは不十分であった
渡辺 治 156 6 - 8
  • 国連が大国中心の平和構想であるのに対し、憲法は、大国の力を規制して平和を実現していこうという考え方、侵略者を規制するという考え方を持っていた点で世界史的意義がある
渡辺 治 156 6 - 11
  • 9条を具体的に実現するための構想の柱は、(1) 経済大国でありながら非軍事的な日本が、大国中心の国連を改革し、平和保障の機構として再建するイニシアチブをとる、(2) アジアの地域的な安全保障構想を9条の理念に沿って構想していく、(3) 世界の経済格差をそのままにして9条の実現はできないので、グローバリズムに反対する経済発展、東アジアの地域的経済圏などとタイアップした平和構想を考えることである
渡辺 治 156 6 - 12
  • 憲法が一国平和主義ではなく国際平和への責務を負うことは、自国のことのみに専念してはならないという前文に明らか
坂本義和 156 7 - 2
  • 世界の大多数の人が普通に生き、生を終えることを至上価値とする点から、大国中心の武力による平和ではなく、武力によらない平和、大国の独走に歯止めをかける平和構想が急務ではないか
北川善英* 156 I - 4
  • 戦後ヨーロッパでは、平和主義という言葉には、ナチス・ヒトラーの侵略を許した腰抜けという消極的ニュアンスが与えられてきたが、NATO軍による旧ユーゴ空爆を機会として、非軍事的な人道的介入という積極的ニュアンスが与えられつつあり、これは、21世紀の国際社会における平和主義の新たな動向
北川善英* 156 I - 4
  • 平和とは、無防備でいることではなく、国家が国民と国家を外部から守り、安全な状態にしておくことである
田中 夢優美* 156 I - 22
  • 日本ほど世界が平和であることを必要とする国はなく、日本の平和が基本であるが、さらに、世界の平和のため、全力で責務を果たさなければならず、このことは前文にも書かれている
志方俊之 156 8 - 4
  • 自衛隊をつくり、日本が主権を守ることを内外に示すことも平和主義を貫く態様の一つである
志方俊之 156 8 - 14
  • 国際紛争を解決する手段として武力を行使しないということだけを平和主義というのではない。前文を具体化する一つの方法は、日本の国会から軍縮を呼びかけ、法規範化していくことであり、これは自衛隊の増殖に対する歯止めにもなる
本間 浩 159 2 - 9
  • アジアの貧困の問題は軍への財政投資と裏腹に絡んでおり、貧困を減らすためにも軍縮を呼びかける必要がある。自衛隊の縮小は当面難しいかもしれないが、日本の外交の基本方針として軍縮を打ち出し、それがアジア諸国に浸透していくということも平和主義の一つの在り方
本間 浩 159 2 - 12
  • 憲法の平和条項は、他の憲法と比べより徹底した非武装平和主義であり、構成的にも前文と9条という優れた構造を持つ。殊に前文において、全世界の人民の普遍的かつ平等の平和的生存権を尊重する責務を表明していることは非常に重要
功刀達朗 159 3 - 5
  • 軍備を持たず、それが世界の軍縮につながるとの信念、軍備を持たず戦争に参加しないことにより武力紛争・武力衝突の機会を減らしていくとの理念は、世界に誇るべきもので、世界の多くの平和憲法の中でも正に優れ物であり、簡単に改憲を考えるべきでない
功刀達朗 159 3 - 5
  • 冷戦時には一国平和主義的な考え方も許容されてきたが、国際テロや大量破壊兵器の拡散などの脅威に対応するには、国家間の軍事・非軍事にまたがる連携が不可欠であり、世界の平和や繁栄のために積極的に活動することは主要国としての日本の責務であり、それが日本の平和と繁栄にもつながる
高見康裕* 162 I - 18
(背景)
  • 1946年からの憲法制定期には、(1) 侵略戦争の否定としての平和主義、特に自衛戦争を含めた戦争の放棄と一切の軍備の不所持、(2) 軍国主義の否定としての民主主義、主権在民、特に基本的人権の確立という基本原則が打ち出された
坂本義和 156 7 - 1
  • 1950年の朝鮮戦争前後から約40年続く東西冷戦の時期には、全面核戦争の危機の高まりが戦争観の革命をもたらし、核時代の第三次大戦は人類の破滅を意味するとして、一切の戦争の放棄という憲法の原点は極めて現実的との認識が広く共有された
坂本義和 156 7 - 1
  • 東西冷戦の時期には、国民の意思は、(1) 非武装中立、護憲及び国連中心という議論、(2) 自主憲法及び再武装という議論、(3) 国民の過半数を占める日米安保及び軽武装、という三つの対立する立場に分かれ、憲法論議の土俵を設定してきた
坂本義和 156 7 - 1
  • 1990年前後の冷戦終結以降は、全面核戦争のおそれの激減と米国の一極優位構造への激変の反面、日本から離れた地域での局地戦争や民族紛争への対応、憲法と国連憲章の関連など、それまで想定されなかった事態に当面し、PKOや多国籍軍をめぐる議論が混乱した
坂本義和 156 7 - 1
  • 同時多発テロ以後、米国は国連と対立して単独行動主義を取り、日本国憲法の平和主義、戦争放棄、国際主義とは正面から対立する方針を採用した
坂本義和 156 7 - 2
  • 1945~50年は、国連、国際通貨基金、世界銀行、ガット体制の成立に見られるように、世界では理想主義が主流を占め、そのような中で憲法がつくられたことは重要な視点
廣野良吉 159 4 - 6
人間の安全保障
  • 人間の安全保障の実現のための人道支援は、開発、人権、環境を含む平和の構築に不可欠
坂本義和 156 7 - 3
  • 国家の安全保障を補うものとして、前文に人間の安全保障の促進を明記すべき
林 明夫* 156 I - 5
  • 前文は、日本の個性をいかしつつ国際的秩序構築に向けて主体性を持った新しいものにすべき。国際的な平和構築の主体的な参画者となるべき信念に基づく考え方が必要であり、人間の安全保障を外交の基本政策の一つとするのであれば、これを前文に入れてほしい
林 明夫* 156 I - 5
  • 日本が国際社会に対してどのような役割を果たすことを目指すのかという場合、これから半世紀くらい使用に耐え得るのは人間の安全保障という概念ではないか
林 明夫* 156 I - 11
平和的生存権
  • 平和的生存権は、前文2段に明確に根拠を持つ
浦田賢治 151 8 - 10
  • 平和的生存権条項を変えることは、憲法の基本原則を変えることになるので、アメンドメント方式によってもできない
浦田賢治 151 8 - 11
  • 平和的生存権の主体は全世界の国民であり、このようなことはおこがましいとか保障できないとの批判もあるが、その真意は人類不変の原理を言うことであり、共生の論理を込めたものである
上田勝美 156 6 - 5
  • 平和的生存権についての前向きの解釈、規範性を持つものとしての解釈が一層必要になる
上田勝美 156 6 - 19
  • 前文の平和的生存権の持つ意味は、(1) 国家の安全と市民の安全を峻別したこと、(2) この峻別により、非軍事的・平和的手段による市民の安全確保が国家の義務となったこと、(3) 殺すな殺されるなという人類普遍の価値・理念を憲法化したことである
北川善英* 156 I - 4
  • 憲法が前文において、全世界の人民の普遍的かつ平等の平和的生存権を尊重する責務を表明していることは非常に重要
功刀達朗 159 3 - 5
非核三原則
  • 非核三原則はあるが、法制化する必要がある
上田勝美 156 6 - 13

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