平和主義と安全保障 参考人名
公述人名
回次 -

5 国際平和とそのルール(国際法、国際連合)

国際社会の現状と国際平和の確立
  • 世界の安全保障・日本の安全保障をめぐっては、(1) 冷戦終えん後唯一の覇権国になった米国と同盟し、軍事力によりグローバル秩序の障害物を排除し平和秩序を維持していく、武力による平和、大国中心の平和という構想と、(2) 9条の武力によらない平和、大国が自己規制をする平和という二つの構想が台頭しているが、後者の9条の構想はかなり具体的な現実的武器として活用できる
渡辺 治 156 6 - 8
  • 世界の平和保障は、経済問題を抜きには成り立たず、経済的格差やグローバリゼーションの横暴な展開を規制し、地域的経済として再建することが必要であり、そのためには、地域的経済圏、経済的共同圏をつくっていくことが必要
渡辺 治 156 6 - 18
  • 自衛の範囲を他国の領土内に攻撃しない範囲に限定し、それを超えた武力攻撃事態に対しては、国益を代表しない国際警察軍のようなものが必ず派遣され、各国の独立と平和を守るというシステムをつくってはどうか
藤井富美子* 156 I - 7
  • 世界警察がない中で、現在の米国の世界警察的行動は一定の評価がなされてよいが、米国の行動は自身の国益に沿ってなされるものであり、必ずしも世界に正当性を示すものとはなっていない。公正な組織による警察的行動を構築していくべき
藤井富美子* 156 I - 7
  • 地域ごとに脅威の形態が異なり、脅威の形態が多様化した世界像の中で、どうすれば世界秩序を維持できるかという新しい戦略的発想が必要
畠山圭一* 156 I - 24
  • 国際社会が全体として何かすべきとき、米国を排除しては意味がないが、米国に突っ走られても問題であり、いかにバランスのとれたものにするかが課題である
渡辺昭夫 156 8 - 13
  • 紛争が起こればすぐ軍事的なオプションが必要との議論にはくみしないが、今の厳しい国際関係の中で、例えば国連の厳格な統制の下での警察的な機能が将来的に生まれれば、それは検討に値すると考える
水島朝穂 156 9 - 18
  • 国連や国際法は緩やかに超大国をも想定しているが、超大国が必要に応じてその枠組みを変えることもあり得る。国際秩序は、国際法や国際機関とともに、国家間の力関係、非国家主体の重層的組合せで成っており、どれか一つだけで説明しようとするのは愚かな試み
村田晃嗣 156 9 - 16
  • 米国のユニラテラリズムを国際協調主義にいかに調和させ、取り込み、国際の平和と安全を維持するかは重要な課題で、米国を国際協調主義に引き込むことは、同盟国として日本の重要な役割の一つ
森本 敏 159 2 - 12
  • 戦闘行為がすべて放棄される時代は恐らく来ないが、できるだけ少なくするために、主要国は紛争予防と貧困問題の解決という二つの努力をしなくてはいけない
森本 敏 159 2 - 17
  • 世界国家の成立は遠い将来あるかもしれないが、それを前提として憲法の問題を考えるべきではない。現在の主権国家体制の中で比較的地球的規模の正統性を持つ国連の決議・決定に基づく行為が、国際的意味での警察行動に近い性質を持っているが、世界国家とはまだ随分レベルが違う
大沼保昭 159 3 - 15
国際連合
  • イラク戦争では、国連の限界が出てきており、国連の在り方が問われている
西 修 156 6 - 16
  • 国連は第一次世界大戦後の失敗を受けた大国中心の平和構想であるのに対し、日本国憲法は大国の力を規制することによって平和を実現していこうという非常に違う考え方のものである
渡辺 治 156 6 - 11
  • 冷戦終結後同時多発テロ発生までは、米国は国連を利用し、反射的効果として国連が活性化した。今日米国は単独行動主義をとり国連と対立するが、民主主義・平等の権利の主張が世界化しつつあることを素地に対米批判があり、米国も国連無視はできず、それが不利益でもあるという現状がある
坂本義和 156 7 - 2
  • 今日の国連は、世界的・地球的な問題解決のために、これまでになく市民社会・国際市民組織の重要性を認め、それとの分業と協力を重視している
坂本義和 156 7 - 2
  • 国連は固有の強制力も経済力も持たないため実効性に欠けるのはやむを得ず、国連が果たす機能は何よりも正統化機能である
坂本義和 156 7 - 2
  • 国連とは各国が自国の利益を持ち込みせめぎ合いをする場であり、そこから一致点を見付けるプロセスや力学。国連それ自身が何かをするのではなく、世界の政治、経済の現状を反映する場所という以上に固有の実体があるとは考えないほうがよい
坂本義和 156 7 - 15
  • 国連は日本には重要な存在であるが、日本の外交政策が国論が割れてジレンマに当面したときの隠れみのとして国連による決定を求める傾向もあった
明石 康 156 7 - 3
  • 国連を生かすも殺すも加盟国、特に安保理常任理事国の決意にかかっている。日本の場合、国連を粘り強く一歩一歩育てていくというような問題意識が必要
明石 康 156 7 - 5
  • 日本はカナダの国連外交を参考に、同盟関係と国連重視を調和させるよう努力し、二国間、地域、多国間、地球的な外交を重層的に展開していくほかはない
明石 康 156 7 - 5
  • 日本は、鮮明な世界観をつくり上げ、それに基づいて国連をどう活用するかを考えるべき
明石 康 156 7 - 8
  • 国連は、創設当初、米国では非常に歓迎されたが、英国やソ連は期待を掛けつつも在来の国際政治が全面的になくなることはないという落ち着いた見方であった。各国の国連観は違うし、一定の国でも時期により国連の見方は変わってきている
明石 康 156 7 - 13
  • 今後は、国連だけの安全保障ということではなく、各国が自衛権を使い、二国間関係、地域協力と一緒に国連を活用していくようになるであろう
明石 康 156 7 - 13
  • 今後の国連はミレニアム宣言の方向に進むであろうが、国連を、与えられたものとしてではなく、日本自身が他国と協力しながら主体性を持ってつくっていく機構として考えることが重要
明石 康 156 7 - 13
  • 国連が世論を反映することは増えるであろうが、基本的には政府間組織であり、政府の意見とそれ以外の流れがどういう方向で集約されるかは見通しがつかない。市民の声は必ずしも平和の方向に動くものではないこともある程度肝に銘じておくべきであるし、マスコミが国際政局をゆがめずに伝えることも重要
明石 康 156 7 - 15
  • 国連における米国の役割は良い意味でも悪い意味でも非常に大きいが、米国を単に批判するのではなく、イシューごとの同盟関係をつくっていくことも考慮に値する
明石 康 156 7 - 17
  • 米国は変化を好む国であり、現在は国連では間に合わなかった安全のために激烈な行動に見えることをしているが、もう国連を捨てたと考えることは短見
五百旗頭真 156 7 - 6
  • 核を持とうとしない先進民主主義国やアジア諸国との関係の大きなフォーラムとして国連という場を上手に使うのがよい
五百旗頭真 156 7 - 16
  • 人権問題などで国連が妥当で正当な武力行使をすることは論理的にはあり得、その場合日本は、9条が世界的にも普遍性を持ち、国連憲章とも共通した精神であることを国際的に理解してもらい、そういう側面からも国連でイニシアチブを取って活躍できるのではないか
大井赤亥* 156 I - 3
  • 日本は主体的に米国との距離を取りながら、国連との関係できちんとした国際的な法の支配を守るべき
水島朝穂 156 9 - 15
  • 国連は安保理だけではなく、ユネスコ等の専門機関を抱え幅広い活動をしている世界で一番大きな国際機関であり、イラク戦争で安保理がうまく機能しなかったことをもって国連無用論が日本の一部で広がっていくとすれば、ゆゆしきことである
村田晃嗣 156 9 - 8
  • 日本の主体的判断を国連にゆだね、国連を何かをしないエクスキューズに使うようなことはあってはならず、国力と置かれた地理的環境に呼応した責任を果たす覚悟を持ちながら、自国の国益を国際社会の中で考えていく努力が必要
村田晃嗣 156 9 - 15
  • 国連か日米同盟かというような二者択一は誤りであり、日米同盟でなければ果たせない役割と国連が有効に果たせる役割があり、どちらかを選ぶという問題ではない
村田晃嗣 156 9 - 16
  • 世界市民社会が台頭していることを視野に入れ、国連の役割を政策志向を持って考えることが重要
功刀達朗 159 3 - 5
  • 国際社会イコール国連とは考えないが、現実の存在として国連は極めて重要。日本が常任理事国になる等主要な役割を果たすことは、世界の平和と安定に極めて重要であり、日本の平和と繁栄にも有益
高見康裕* 162 I - 24
<国連中心主義>
  • 国連加盟後、日本は、国連第一主義、米国との同盟関係、アジア諸国との協調を外交の三原則として掲げてきたが、加盟5年後には外交青書の中で米国との協調が第一という解釈に変えた
明石 康 156 7 - 3
  • 国連主義は日本の外交の柱の一つであり続けるべきであるが、それが看板では困る。基本的な憲法の精神に立ち、その理念と国連の理念との合致点を求めながら執拗に行動していくことが必要であり、広義の国益と国連を強化し活用するという問題意識をできるだけ一致させるようにしながら行動していくのがよい
明石 康 156 7 - 9
  • 安保理決議など国連のお墨付きはあるにこしたことはないが、バイタルな国家利益に関する場合のように、それがなければ行動できないということでは困る事態があり得る
明石 康 156 7 - 10
  • 国連が自国の利益を持ち込みせめぎ合う場だという坂本参考人の定義は見事であり、人間が押し合いへし合いしながらやっているところに基準をゆだねる国連中心主義には疑念を感じる
五百旗頭真 156 7 - 16
  • 国連への過度の賛美から国連無用論へと極論から極論に走るのでなく、国連を世界と日本の安全保障のためにどのように活用していくのか、国連の足らざるところをどのように補っていくのかという機能的で多元的、複眼的な見方が求められている
村田晃嗣 156 9 - 8
<国連憲章>
  • 敵国条項は撤廃していく方がよい
藤井富美子* 156 I - 9
  • 国連憲章が、戦争に反対しながらも最終的には武力による正義、すなわち軍事的安全保障という考え方を採るのに対し、日本国憲法は、非軍事的安全保障をうたっている。この違いは、広島、長崎を経験した上での基本ルールか否かの違いにほかならない
加藤正之* 156 I - 20
  • 国連憲章には不戦条約の思想が引き継がれ、国連憲章前文は、共通の利益を除くほかは武力を用いないことを原則とするとしている
渡辺昭夫 156 8 - 5
  • 国連憲章は、平和に対する脅威に対し、加盟国が、有効な集団的措置をとるとし、同時に、武力の威嚇又は行使を慎むとしている。これは個々の国家の自衛権行使の機会をできるだけ少なくし、国際社会が協力して対処していくことを意味する
渡辺昭夫 156 8 - 5
  • 米国が国連の許可を受けない形で武力行使を行ってきた状況では、強制行動に地域的取極を利用できるとする国連憲章53条は余り議論にならなかったが、冷戦後の国際社会を考える場合、同条をどのように活用するかは重要な問題
本間 浩 159 2 - 8

ページトップへ