基本的人権 参考人名
公述人名
回次 -

7 経済的自由権(自由な経済活動とその制限)

経済的自由権
  • 経済的自由及び社会権は、学者の数も少なく、実績も多くなく、憲法学説が中心的に取り上げてきたテーマではない
戸波江二 155 3 - 1
  • 経済政策の分野は、憲法の価値の共有が可能なところであり、国民の福祉、生活を安定させる観点からの共通の土台である
戸波江二 155 3 3 - - 2 3
  • 現代国家は、19世紀の自由主義国家と異なり、経済活動に関与し法律等で規制することが大幅に認められていると同時に、社会的、経済的弱者のための福祉を実現する国家である
戸波江二 155 3 - 2
  • 日本の戦後政治は、経済・社会に対し国が立法・行政等いろいろな形で配慮して相応の成果をあげてきた。国会や内閣が憲法を実現するとの意識を持っていたかは別であるが、結果的に憲法価値が経済社会分野で広く実現してきた
戸波江二 155 3 - 2
  • 憲法は、社会経済政策について、基本的に国会や政府の任務とし、立法裁量に大幅にゆだねており、その結果、この分野においては裁判所による違憲判断は出にくい
戸波江二 155 3 - 3
  • 経済政策は、憲法で細かく条文に書きそのとおりやるという問題ではないため、経済政策については条文数は少なくてよい
戸波江二 155 3 - 6
  • 経済的自由は、主体も中身も様々であり、これらを分けて考えるべき。大企業の大規模な経済活動は政府のコントロールによらねばならないが、個人の職業活動や経済活動はむしろ保護すべき
戸波江二 155 3 - 9
  • 企業や銀行に対する公的資金の投入は、基本的には経済政策の措置であり、経済政策を行う憲法上の根拠がどこかは難しい問題であるが、国の行う政治・政策の一環と考える
戸波江二 155 3 - 12
  • 労働者の福祉のためにも経済の安定的発展は不可欠で、経済の安定的発展のためには一定の条件下での経済的自由、競争は必要
西谷 敏 155 3 - 4
  • 国の政策すべてが基本権条項のどこかに根拠を置かなければならないわけではなく、国の経済政策の領域があり、銀行等に対する公的資金の投入は、一つの経済政策
西谷 敏 155 3 - 12
  • 個人は、自らの生存手段を自力で獲得できる体制があって初めて経済的な自立ができ、真に個人の尊重が図られるのであり、22条、29条で経済的自由を保障しているのは、このような考え方による
日本経団連
矢野弘典
156 1 - 2
  • 経済や企業の安定的な発展があればこそ労働者の雇用や生活が守られるのであり、経済的自由と生存権・労働基本権は矛盾するものではなく、経済的自由の確保は、生存権・労働権の実現に深いつながりを持つ
日本経団連
矢野弘典
156 1
1
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<経済的自由権の制約・限界>
  ※違憲審査基準については、司法 3憲法解釈権と憲法裁判、憲法裁判所制度 憲法裁判を 参照
  • 経済活動の自由、財産保障や営業規制に対する保障などは、日本的特徴もあり、立法裁量論を前提としながらも裁判所も積極的に立ち入った判断をしている、よく展開された領域の一つ
戸松秀典 154 5 5 - - 2 3
  • 経済的自由権にかかわる22条と29条に特に公共の福祉という言葉が使われているのはそれなりの意味がある
初宿正典 154 6 - 5
  • 経済的自由の公共の福祉による制限は、第一義的には、社会権(生存権、教育を受ける権利、勤労の権利、労働基本権)と調整が付くような方向で考える必要がある
中島茂樹 154 7 - 14
  • 企業に労働者を解雇する自由を認めた三菱樹脂事件最高裁判決について、学説は行き過ぎとの批判をしている
中島茂樹 154 7 - 14
  • 経済的自由の行使として一国の中だけで考えることはもはやできず、特にアジア諸国が共に実現できる方向に向けた協力、共同、社会的連帯が必要になってきている
中島茂樹 154 7 - 18
<市場経済・規制緩和>
  • 90年代以降の新自由主義の規制緩和政策とバブルの崩壊、金融、行政の不祥事、長期不況、財政赤字などの状況にどう対処するかが問われているが、憲法の視点からは答えは出ず、むしろ政治の問題
戸波江二 155 3 - 3
  • 福祉の問題は基本問題であり、新自由主義の経済政策の下でも福祉の切捨てに直ちに結びつくべきでないことは憲法上の要請
戸波江二 155 3 - 3
  • 新自由主義の是非は政策問題。ただ、憲法自体は国民生活の安定、福祉の増進のために国の関与を認める構造になっているので、直ちに新自由主義的な規制緩和論が良いとも言えない
戸波江二 155 3 - 8
  • 従来の保護政策、特に90年代の行政の失態を受けて規制緩和論が出てきたとすると、日本経済の問題は、国の関与がいけないというより、行政のやり方が憲法に言う国の関与と同じ意味なのかということが問われる
戸波江二 155 3 - 8
  • ヨーロッパ諸国も、新自由主義的な規制緩和論の攻勢を受けているが、市場一辺倒に陥ることなく、社会的公正のための国家的介入政策を維持してきた。これは、自らを社会的政策を展開する国家と規定する憲法抜きには理解できないのではないか
西谷 敏 155 3 - 5
  • 労働者保護の観点からの修正を伴わない完全な市場経済は憲法と矛盾すると言うドイツの論者もいるが、この考え方は他のヨーロッパ諸国にも共通するのではないか
西谷 敏 155 3 - 5
  • 労働法の立場からは、およそ規制は緩和されるべきとの考え方には反対であり、問題ごとに具体的に考えていくべき
西谷 敏 155 3 - 6
  • 経済活動の自由、市場競争を否定するつもりはないが、今行われている規制緩和は、余りにも市場経済・市場競争万能主義であり、本来なら、規制緩和に相対する労働者の権利の保護がなければならないところ、一方的に偏った議論になり過ぎている
連合
草野忠義
156 1 - 11
財産権
  • 東西対立の下、財産権について憲法改正を経ないで社会主義に移行できるかが学説で議論されたことがあったが、90年に東西対立が消滅すると余り関心を持たれなくなった
戸波江二 155 3 - 3
  • 29条3項の財産権の補償は、個人の財産権の保障のほか、私有財産制を制度として保障しており、憲法は資本主義を前提とするというのが通説的見解
戸波江二 155 3 - 8
  • 29条3項が保障する制度の中身は、人間が生きていく上で必要な物的手段の享有であり、必ずしも生産手段の私有化を意味しないとして、法改正により社会主義へ移行することも可能との説もある
戸波江二 155 3 - 8
  • 成田空港の第2滑走路ができない現状からも分かるように、公共の福祉のための私権制限を認めた29条は空文化している
佐々淳行 156 9 - 4
知的財産権>→12 新しい人権

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