司法 参考人名
公述人名
回次 -

3 憲法解釈権と憲法裁判(違憲立法審査権)、憲法裁判所制度

憲法解釈権
  • 内閣法制局はあくまで行政機関であり、その判断が最終的な憲法判断になるのではなく、最高裁が判断すべき
中村睦男 151 4 - 6
  • 内閣法制局の憲法解釈をどう採用するかは政治の問題であり、採用しないならば、それだけの理論武装等で対応すればよい
志方俊之 156 8 - 8
  • 内閣が統一的な憲法解釈を示すことは、公平・公正な行政のために必要であり、内閣法制局はその職分を忠実に守っている
渋谷秀樹 161 5 - 14
  • 内閣法制局の憲法解釈権限の根拠は、究極的には99条の政府の憲法遵守義務に求めることができる
渋谷秀樹 161 5 - 14
  • 内閣法制局の有権解釈権を奪い取るために憲法裁判所を導入すべきとの意見があるが、法制局が法律を事前に審査し、裁判所が事後に審査することは立憲主義にとり当然のことであり、内閣法制局の問題と憲法裁判所設置の必要性とは無関係
永田秀樹 161 5 - 18
憲法裁判(違憲立法審査権)
<定義>
  • 憲法上裁判所に認められた、国会が制定した法律や行政機関の命令等について、憲法に適合するか否かを審査する権限
最高裁判所 153 3 - 1
<意義>
  • 憲法裁判は、多数決民主主義に人権の保障という観点から修正を加え、民主主義と基本的人権の要請を調和する
中村睦男 151 4 - 5
  • 違憲審査権は、三権分立制度との関係では、司法が立法又は行政の権限行使をチェックする役割を果たす
最高裁判所 153 3 - 1
<付随的違憲審査制>
  • 付随的違憲審査制は、立法時点では分からない問題に直面し、その具体的な事件のコンテクストの中で憲法規範の意味を探り出していくところに優れた特質がある
佐藤幸治 154 2 - 5
  • 司法消極主義は付随的審査制の必然ではない。付随的審査制は問題の所在を明確にするという意味ではメリットがあり、付随的審査制を維持しつつ、もう少し憲法問題を考える時間的余裕のある制度改善をすれば良い結果が出るのではないか
渋谷秀樹 161 5 - 22
<現状・評価>
  • 主要憲法判例の説明
      (衆議院議員定数配分規定違憲判決、参議院議員定数配分規定訴訟判決、苫米地事件判決、最高裁裁判官国民審査事件判決、条例罰則規定事件判決、警察予備隊違憲訴訟判決、自白調書有罪認定違憲判決、強制調停違憲決定、第三者所有物没収違憲判決、余罪量刑考慮違憲判決、偽計自白有罪認定違憲判決、高田事件判決、尊属殺重罰規定違憲判決、薬事法距離制限規定違憲判決、森林分割制限規定違憲判決、愛媛玉串料訴訟違憲判決、全逓東京中郵事件判決、都教組事件判決、全農林警職法事件判決)
最高裁判所 153 3
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  • 大法廷回付件数の減少は、比較的制度的な安定期を迎え、既にかなりの問題につき憲法判断がなされたからではないか
最高裁判所 153 3 - 9
(違憲判断に対する消極的態度)
  • 最高裁が憲法裁判に消極的な態度をとっていることに憲法学者がほぼ共通して不満に思っている
中村睦男 151 4 - 2
  • 国の統治にかかわる部分は、具体的事件性になりづらく、事件性があっても統治行為により憲法判断を避けており、この点でも日本の違憲審査は不十分
中村睦男 151 4 - 6
  • 最高裁の裁判官が通常の民事、刑事の事件で忙殺されていて、憲法判断をじっくり行う時間がないのが現状
中村睦男 151 4 - 9
  • 現在の最高裁は、明治憲法下の大審院の機能に、行政裁判権や違憲審査権が加わり、大量の仕事を抱えるに至ったため、違憲審査権という大変な作業には消極的になる傾向がある
佐藤幸治 154 2 - 5
  • 裁判所は違憲立法審査権の行使に極めて消極的で、立法府や行政府の裁量権を広く認めてきたが、少数者の立場が問題となる基本的人権に関しては、法律の違憲判断も辞さない姿勢こそ必要
日弁連
村越 進
154 9 - 4
  • 違憲判断消極主義の原因として、(1) 必要に迫られてつくった制度ではない、(2) 憲法問題が最高裁に係属する大量の事件に埋没してしまう、(3) 訴訟当事者がうまく憲法問題を提示できない、(4) 最高裁裁判官に憲法の研究者や権威が任命されていない、(5) 法曹全体に憲法知識が不足していることなどが挙げられる
渋谷秀樹 161 5 - 14
  • 違憲審査制が機能しない最大の原因は、憲法価値を擁護し社会的に浸透させようとする意欲と資質が裁判官に欠けていることにある
永田秀樹 161 5 - 17
  • 憲法価値を擁護し社会的に浸透させようとする意欲と資質が裁判官に欠けていることには、(1) 制度的原因として、キャリア裁判官中心の養成・登用システムと与党サイドになることが避けられない内閣による任命というシステム、(2) 政治的・社会的原因として、政権交代がないことによる人事の停滞がある
永田秀樹 161 5 - 17
  • もう少し憲法教授が裁判官になっていかないと、積極的な憲法判断は出て来ないのではないか
永田秀樹 161 5 - 23
(内閣法制局との関係)
  • 違憲判決が少ない理由の一つに、政府立法に対し、内閣法制局の憲法審査を含む精緻な審査が行われていることがある
中村睦男 151 4
4
-
-
2
6
  • 内閣法制局はあくまで行政機関であり、その判断が最終的な憲法判断になるのではなく、最高裁が判断すべき
中村睦男 151 4 - 6
  • 日本では法案の段階で完璧性を求めるが、法案の入口の段階で決めてしまうことは問題で、最終的には最高裁が判断するという仕組みの徹底が必要
成田憲彦 151 4 - 6
  • 最高裁裁判官にしばしば内閣法制局長官経験者が就任しているが、裁判所には内閣の統一見解を覆すことも求められており、このような運用には問題がある
永田秀樹 161 5 - 17
<事件性の要否>
  • 具体的な事件に法律を適用して解決することが司法の本質であり、その限りで司法裁判所に違憲立法審査権を与えたというのが81条の趣旨
内閣法制局 151 9 - 7
  • 事件性の要件は、司法のいわば内在的制約
内閣法制局 151 9 - 7
  • 違憲立法審査権は、司法の範囲内においてのみ行使されるものであり、具体的事件を離れて抽象的に法律、命令等が憲法に適合するか否かを決定する権限を有するものではない(警察予備隊違憲訴訟判決)
最高裁判所 153 3 - 2
<審査基準>
  • 初期の判例は、公共の福祉を人権を制限するにしきの御旗として使用し、公共の福祉の内容を公権力が一方的に決定できるとの発想が前提となっていた
    (例)死刑合憲判決、戸別訪問禁止規定合憲判決、公務員の労働基本権全面一律禁止規定合憲判決
中島茂樹 154 7 - 1
  • 初期の判例に対し学説は、公共の福祉を用いて基本的人権を制限できるのは22条1項と29条2項の経済的自由のみであり、12条、13条を根拠に公共の福祉を用いて人権を制限することはできないと批判(内在的制約説)
中島茂樹 154 7 - 2
  • その後、判例は、多義的で内容を特定し難い公共の福祉という概念により人権を制限するのは不適当との考え方に転換し、基本的人権を制限する場合は、人権制約立法の違憲審査基準という形で問題を処理するようになり、比較衡量論の手法を採用
    (例)全逓東京中郵事件判決、都教組事件判決、博多駅テレビフィルム提出命令事件決定などの最高裁判決
中島茂樹 154 7 - 2
  • 比較衡量論には人権を制限する側にバイアスが掛かった判断がなされる特徴があり、学説は、違憲審査基準を精緻化し、精神的自由と経済的自由とで異なる基準を適用するという二重の基準論を展開し、最高裁も採用
中島茂樹 154 7 - 2
  • 今日では、すべての人権が公共の福祉を理由に制約可能であることを前提に、個別の人権ごとに比較衡量論や二重の基準論等の人権制限基準により、個別的、具体的に制約の合憲性を判断するのが判例、通説
百地 章 154 7 - 4
  • 二重の基準論は、米国判例で展開してきた議論で、精神活動にかかわる人権を制限する法律については厳格な違憲審査基準を、それ以外の権利については緩やかな審査基準を適用するという議論。日本では、経済的自由について緩やかな審査基準を適用する議論として展開し、学説は支持し、判例も支持する言い方をしている
戸波江二 155 3 - 7
  • 二重の基準論には批判もあるが、西洋型の憲法の考え方では、民主主義を支える言論の自由をより保護し、逆に経済活動については、社会的関連性があり相互の調整も必要であり、二重の基準論は原則として維持してよい
戸波江二 155 3 - 7
  • 経済的自由の違憲審査に関する積極目的・消極目的二分論は、国民の健康や生活への害悪を防ぐための規制を消極目的規制、政策的観点からの規制を積極目的規制とし、前者については厳格な審査を、後者については立法府の判断を尊重して緩やかな審査を行うもの
戸波江二 155 3 - 10
  • 経済的自由の違憲審査に関する積極目的・消極目的二分論について、消極目的に分類される公害規制などは、疑わしい場合にはむしろ規制すべきところ、消極目的から厳格審査となるため、維持すべきでないと考えるが、経済活動については政策的な観点が広くあるから国会の判断を尊重する基本的な考え方は採ってもよい
戸波江二 155 3 - 10
<違憲判決の効力>
  • 当該事件に限って効力を持つ、個別的効力説が通説
最高裁判所 153 3 - 5
  • 違憲判決が出されたときは、執行に当たってその適用を避け、また、速やかに廃止、改正されることが好ましい
最高裁判所 153 3 - 5
  • 最高裁が違憲判決を出した場合、その判断を尊重して国会が速やかに制度を改善することが基本であるが、国会が改善しない場合に裁判所が持つべき手段について検討することは、今後の重要な課題の一つ
佐藤幸治 154 2 - 7
<事情判決>
  • 選挙無効とすることにより、直ちに違憲状態が是正されるわけでなく、憲法の所期しない結果を生ずることから、事情判決の法理を適用して、選挙は無効とはせずに違法である旨を宣言するにとどめる(衆議院議員定数違憲判決)
最高裁判所 153 3 3 - - 2 7
<立法裁量論>
  • 憲法は選挙に関する事項は法律で定めるべきものとし、両議院の各選挙制度の仕組みの具体的な決定は原則として国会の裁量にゆだねる(立法裁量論 衆議院議員定数違憲判決)
最高裁判所 153 3 - 7
<立法不作為>
  • 立法の不作為も、作為と見なしうるようなコンテクストでは、司法として判断しうると考える
佐藤幸治 154 2 - 12

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