2 憲法調査会の概要

 以下、国会法及び憲法調査会規程(後掲)にしたがって、簡単に憲法調査会の組織・運営等の概要について紹介する。

  • (一)設置の趣旨、報告書
    •  憲法調査会の設置目的は、前述したように、「日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行う」ことであり、調査を終えたときは、調査の結果及び経過を記載した報告書を作成し、これを議長に提出することになっている。なお、調査の途中であっても、適宜、それまでの経過を記載した中間報告書を提出することが可能である。
  • (二)委員
    •  参議院憲法調査会は45人の委員で組織される。委員は、各会派の所属議員数の比率により、各会派に割り当て選任される。なお、衆議院は50人となっている。
  • (三)会長、幹事
    •  会長は、憲法調査会を代表し、委員の互選により選任される。平成12年1月20日に発足した最初の調査会で、参議院自民党議員会長(当時)の村上正邦議員が会長に選任され、その後、上杉光弘議員、野沢太三議員及び関谷勝嗣議員が会長に就任した。また調査会には、委員会の理事に相当する幹事が置かれ(9人)、会長は、幹事会を開会して、調査会の運営に関する協議を行うことになっている。
  • (四)開会
    •  憲法調査会は、会期中であると閉会中であるとを問わず、いつでもこれを開会することができる。委員会と異なり、閉会中審査手続が不要であるのが憲法調査会の特徴の一つである。
  • (五)会議の公開
    •  会議は公開である。原則公開という点で、法規上、非公開を原則としている委員会とは異なる。なお、決議によりこれを非公開とすることができることになっている。
  • (六)調査権限・手続等
    •  調査会における、調査の権限・手続等は、通常の委員会が調査を行う場合と基本的に変わらない。すなわち、憲法調査会は、小委員会の設置、委員派遣、国務大臣等の出席及び説明要求、内閣、官公署等に対する報告又は記録の提出、公聴会の開催等を行うことができることになっている。
 このように、基本的には通常の委員会の構成及び調査に関する権限・運営等と同じものとなっている。主な相違点は、閉会中審査手続が不要である点、法文上も公開の原則が明記されている点である。また、調査会の運営及び調査のための補佐機関として憲法調査会事務局が置かれている。
 なお、国会法改正の際、議院運営委員会理事会で、(1) 憲法調査会は、議案提出権がないことを確認する、(2) 調査期間は、おおむね5年程度を目途とする、(3) 会長が会長代理を指名し、野党第一会派の幹事の中から選定する、の3点について申合せがなされている(後掲)。

憲法調査会関係法規等

(1) 国会法

第102条の6
日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行うため、各議院に憲法調査会を設ける。
第102条の7
前条に定めるもののほか、憲法調査会に関する事項は、各議院の議決によりこれを定める。

(2) 参議院憲法調査会規程

第1条 【設置の趣旨】

  憲法調査会は、日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行うものとする。

第2条 【報告書】

  憲法調査会は、前条の調査を終えたときは、調査の経過及び結果を記載した報告書を作成し、会長からこれを議長に提出するものとする。
2 憲法調査会は、調査の経過を記載した中間報告書を作成し、会長からこれを議長に提出することができる。
3 議長は、第1項の報告書及び前項の中間報告書を印刷して各議員に配付する。

第3条 【委員数】

  憲法調査会は、45人の委員で組織する。

第4条 【委員】

  委員は、会期の始めに議院において選任し、議員の任期中その任にあるものとする。
2 委員は、各会派の所属議員数の比率により、これを各会派に割り当て選任する。
3 前項の規定により委員が選任された後、各会派の所属議員数に異動があったため、委員の各会派割当数を変更する必要があるときは、議長は、第1項の規定にかかわらず、議院運営委員会の議を経て委員を変更することができる。
4 参議院規則第30条の規定は、委員について準用する。
     (議長が委員を指名、辞任を許可)

第5条 【会長】

  憲法調査会の会長は、憲法調査会において委員が互選する。
2 参議院規則第80条の規定は、会長について準用する。
      (会長の互選の方法)

第6条 会長は、憲法調査会の議事を整理し、秩序を保持し、及び憲法調査会を代表する。

第7条 【幹事】

  憲法調査会に数人の幹事を置く。
2 会長は、憲法調査会の運営に関し協議するため、幹事会を開くことができる。
3 参議院規則第31条第2項から第4項までの規定は、幹事について準用する。
     (第2項 理事の互選、第3項 委員長代行、第4項 理事の辞任)

第8条 【小委員会】

  憲法調査会は、小委員会を設けることができる。

第9条 【開会】

  憲法調査会は、会期中であると閉会中であるとを問わず、いつでも開会することができる。

第10条 会長は、憲法調査会の開会の日時を定める。

第11条 【定足数】

  憲法調査会は、委員の半数以上の出席がなければ、議事を開き、及び議決をすることができない。

第12条 【委員の発言】

  委員は、議題について、自由に質疑し、及び意見を述べることができる。

第13条 【委員でない議員の意見聴取】

  憲法調査会は、委員でない議員から意見を聴き、又はその発言を許可することができる。

第14条 【委員の派遣】

  憲法調査会は、議長の承認を得て、調査のため委員を派遣することができる。
2 参議院規則第180条の2第2項の規定は、委員の派遣について準用する。
     (派遣要求書の提出)

第15条 【国務大臣等の出席及び説明】

  憲法調査会は、調査のため必要があるときは、議長を経由して、国務大臣、最高裁判所長官及び会計検査院長の出席及び説明を求めることができる。

第16条 【報告又は記録の提出】

  憲法調査会は、調査のため必要があるときは、議長を経由して、内閣、官公署その他に対し、必要な報告又は記録の提出を求めることができる。

第17条 【公聴会】

  憲法調査会は、調査のため必要があるときは、公聴会を開くことができる。
2 参議院規則第62条、第64条及び第65条の規定は、公聴会について準用する。
     (第62条 議長の承認、第64条 問題の決定、第65条 公聴会の公示)

第18条 【参考人】

  憲法調査会は、調査のため必要があるときは、議長を経由して参考人の出席を求め、その意見を聴くことができる。

第19条 【会議の秩序保持】

  委員が憲法調査会の秩序を乱し又は議院の品位を傷つけるときは、会長は、これを制止し、又は発言を取り消させる。命に従わないときは、会長は、当日の憲法調査会を終わるまで発言を禁止し、又は退場を命ずることができる。

第20条 【休憩及び散会】

  会長は、憲法調査会の議事を整理し難いとき又は懲罰事犯があるときは、休憩又は散会を宣告することができる。

第21条 【懲罰事犯の報告等】

  会長は、憲法調査会において、懲罰事犯があると認めたときは、これを議長に報告し処分を求める。
2 参議院規則第237条の規定は、憲法調査会における懲罰事犯について準用する。
    (懲罰動議の提出)

第22条 【会議の公開及び傍聴】

  憲法調査会の会議は、公開とする。ただし、憲法調査会の決議により非公開とすることができる。
2 会長は、秩序保持のため、傍聴を制限し、又は傍聴人の退場を命ずることができる。

第23条 【会議録】

  憲法調査会においては、その会議録を作成する。
2 会議録は、会長又は当日の会議を整理した幹事がこれに署名し、議院に保存する。
3 会議録には、出席者の氏名、会議に付した案件の件名、議事その他重要な事項を記載しなければならない。
4 会議録は、印刷して各議員に配付する。ただし、第19条の規定により会長が取消しを命じた発言は、これを掲載しない。
5 参議院規則第156条から第158条までの規定は、会議録について準用する。
    (会議録訂正等の一般原則)

第24条 【事務局】

  憲法調査会の事務を処理させるため、憲法調査会に事務局を置く。
2 事務局に事務局長一人その他必要な職員を置く。
3 事務局長は、会長の命を受けて、局務を掌理する。

第25条 【細則】

  この規程に定めるもののほか、議事その他運営等に関し必要な事項は、憲法調査会の議決によりこれを定める。
附則 この規程は、国会法の一部を改正する法律(平成11年法律第118号)の施行の日から施行する。

(3) 憲法調査会設置に関する申合せ

 (平成11年7月23日 議院運営委員会理事会)
 1 憲法調査会は、議案提出権がないことを確認する。
 2 調査期間は、おおむね5年程度を目途とする。
 3 会長が会長代理を指名し、野党第一会派の幹事の中から選定する。

ページトップへ