2 参議院の機能-特に独自性を発揮すべき分野

(小委員会における議論)

 参議院が補完・抑制、多様な民意の反映といった役割・機能を果たすには、衆参両院の構成・権能等の相違を明確化し、参議院が独自性を発揮すべき機能と衆議院との役割分担をどのように行うかが大きな課題となる。これらを考えるに当たり、参議院は6年間と任期も長く、しかも解散がなく安定していることなどの参議院の特質をいかすことが重要であるとの認識でほぼ一致したが、衆参の間で特に区別を設ける必要はないという意見もあった。

 小委員間では、(1) 参議院は長期的、基本的な政策課題を重点的に行うという点で意見が一致し、年金や教育、条約等の外交案件について取り組むべき、調査会の立法を強化すべき等の意見が出された。(2) 参議院は、チェックの院として決算審査を重点的に行うべき点で意見が一致し、決算審査の実効性を高めるために審査結果に拘束力を持たせること、会計検査院を国会ないし参議院の附属機関とすること等、様々な提案がなされた。(3) 行政監視、政策評価についても、チェックに重点を置く監視の院としてさらに充実させるべきことで一致し、個別の対象としてはODAや政省令等への言及があった。(4) 国会同意人事案件については、米国上院のように、ヒアリングも含め参議院が中心になり行ってはどうか等の意見があった。(5) 司法府との関係については、行政全体が事後チェック型になろうとする中でチェックの院としてどう考えるかは極めて重要等の意見が出された。(6) 国と地方の調整については、参議院の地域代表性を重視する考え方から、参議院が国と地方の関係を扱うこととしたらどうか等の意見が出された。(7) 憲法解釈機能・違憲審査的機能について、現在の最高裁判所・内閣法制局の在り方に対する問題意識を背景に、参議院に憲法解釈機能・違憲審査機能を持たせるという提案があった。

 なお、衆議院と重複する権限・機能については、参議院として逆に弱めたり行わないところをより明確化させることも必要であり、例えば、予算案や衆議院で全会一致であった法案など特定の議案について、参議院は審査の省略ないし簡略化を行うことが提案されたが、参議院の果たすべき抑制・補完の機能という観点から反対意見も出され、見解が分かれた。

 このほか、参議院の役割・機能との関連で、会期制についても衆参で会期をずらすこと、通年会期にすることなどの提案があり、議論がなされた。

 また、憲法・法律事項に限らず、法律案審査における修正協議の活性化、調査会強化等による議員立法の活性化、請願の活用、スタッフの充実など運営の改善に関する事項についても多数の意見が出された。

(調査会における議論)

 小委員会調査報告書において提示された役割分担の必要性を踏まえつつも、あくまでも国会における第二院としての地位・権限等は維持すべきであり、その枠内で検討すべきであるとの視点が示され、

  • 役割分担などを考えるとき、国会の二院であることを忘れてはならず、国権の最高機関である国会の本質は、直接選挙制、法律、予算等についての議決権行使、議院内閣制である、
  • 直接選挙による参議院が衆議院と対等の権限を持ち、内外の重要課題に対して対等の議論をする仕組みは、慎重に物事を決めていく上で国益に沿う道であり、堅持すべき、
  • 参議院が長期的、基本的な政策課題を重点的に行うことを強調し過ぎると、結果的に衆議院はこれらを余り行わないという意味になり、他院の権限にまで影響を与えることを懸念、

などの意見が出された。

 個別の項目については、

  • 小委員会報告書に記載された問題意識で、憲法改正をせずに取り組める改革はすぐにでも取り組むべき、

などの意見が出され、それぞれ、

 チェックの院として決算審査を重点的に行うべきという点について、
  • 何十年やってきた結果、予算・執行の衆議院とチェックの参議院という結論になったのであれば、この案を固めて中身のあるものにしなくてはならない、
  • 二院制下の財政統制においては、参議院は決算重視を考えるべき。さきの常会における決算審査の早期終了は、参議院の長年の努力が結実したもので、参議院、二院制の存在意義を示すものとして学界等で高く評価されている、
  • 決算委員会で、大臣が出席しなくても個別的事項について議論するという実績をつくりつつある。会計検査院の報告に基づきもっと審議日程を入れ、議論をすることにより、チェックの院としての機能が強化される部分はある、
 行政監視等について、
  • 参議院は独自の役割・機能を重視すべきという点からは、行政を監視する役割が極めて重要。行政監視委員会は決算とは異なる意味で政策を評価し、行政をチェックしており、衆議院と異なり、決算とは別の委員会で行っているところに独自性と妙味がある、
 国会同意人事について、
  • 国会同意人事は参議院の大きな役割として位置付けるべき。特に、最高裁裁判官については、参議院がかかわり、ヒアリングをし、国民に開示すれば、裁判官を国民が身近に感じる大きなきっかけになるのではないか、
 国と地方との関係について、
  • 参議院が国と地方の関係を調整をする性格を強めたいのであれば、例えば委員会を設置して地方交付税の在り方を集中的に議論するというようなことは今でも可能、

などの意見が出された。

 参議院が自らの特性をいかして、長期的・基本的な政策課題への取組、決算審査及び行政監視・政策評価の充実などをはかるべきことは、本憲法調査会においても、共通の認識であった。

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