3 両院間の調整-衆議院の優越規定及び意思不一致の場合

(小委員会における議論)

 二院制の下では、両院の意思不一致の場合の調整方法は極めて重要な問題である。国会が衆参両院で構成されていることから、意思不一致の場合にどのように調整するか、その際、両院協議会が実質的に機能できるような制度・運営への改革・工夫が必要なのではないか、また憲法の定める「衆議院の優越」条項は適切妥当かなどの問題提起がなされた。国会の本質的権能である法律案・予算案の議決及び条約の承認はあくまで両院の議決をもって国会の意思決定とすることを前提に、(1) 法律案の再議決要件、(2) 内閣総理大臣の指名、(3) 両院協議会などについて、現行憲法の調整規定の妥当性等について議論がなされ、現行憲法の衆議院の優越規定はおおむね妥当であり、両院不一致の場合の再議決要件の緩和には慎重であるべきことで意見が一致した。

 なお、参議院が扱う議案はある程度の絞り込みが必要として、一般的な法案は衆議院のみで成立させ、特別の法案や条約は参議院まで回してはどうか、総理大臣指名・予算議決・条約承認等は参議院の議論で変わる要素がなく審議の意義に疑問があるとの意見もあった。

(1) 法律案再議決要件

 一院制型両院制の考え方を推し進める観点から、衆議院による法律案再議決要件を緩和すること、参議院の権能を停止的拒否権や遅延権にとどめるなどの提案もあったが、衆議院の権限強化となりさらには行政権の強化につながるので参議院の権限を弱くすることには反対、3分の2を過半数に改めたのでは歯止めにならないなどの意見も出された。

(2) 内閣総理大臣の指名

 衆議院の指名が絶対的に優越すること、参議院は政権から距離を置くべきことなどから、参議院の指名権の廃止、指名権行使の自制等が提案されたが、議院内閣制である以上両院が指名権を行使するのが当然などの意見も出された。

(3) 両院協議会

 両院協議会が機能しないのは残念であり、その使い方を工夫すべきなどの意見が出された。

(調査会における議論)

 調査会においては、小委員会の結論を前提に、予算、条約についても議論が行われた。

(1) 法律案再議決要件

  • まず両院協議会の在り方を詰める必要はあるが、憲法改正の発議でさえ3分の2から過半数にしてもよいとの議論があることを考えると、再議決要件も見直す余地がないか。60日、90日という日を置いて3分の2要件を緩和する形で衆議院の議決を優先することもやむを得ないのではないか、
(2) 内閣総理大臣の指名
  • 首相の指名権は、内閣が国会に対して責任を負うことの一つの表れであり、議院内閣制である以上、衆参両院とも有するという現行の規定を維持すべき、
  • 決算の院・財政チェックの院としての機能強化を図るには、執行の一翼を担いながらチェック機能を果たせるかを考慮すべきで、参議院議員の国務大臣就任、首相指名権との関係も論点となる、
(3) 両院協議会
  • これまで両院協議会にかかった案件は物別れがほとんどであり、制度的に両院協議会で取りまとめることができるような方法を試行するのも一つの方法である、
  • 両院協議会が始まった場合、予算・条約の自然成立はあるか、また法律案の再議決は可能かについて、解釈が分かれており、現憲法は不整備、
(4) 予算
  • 決算については参議院を優先させることを前提として、予算については、衆議院先議、議決における衆議院の優先権があってもよい、
(5) 条約
  • 外交案件が長期的課題であるという点からは、条約の承認は参議院先議あるいは参議院専決にすべき、
  • 外交、条約に関しては参議院が優越性を持つべきで、広い選挙区と長い任期で安定した基盤を持つ参議院議員が議員外交を通じて人脈をつくり、長期的視野に立って外交を行っていくことが必要、

などの意見が出された。

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