5 参議院の構成の在り方・選挙制度

(小委員会における議論)

 多様な民意を反映させるため、参議院の議員構成をどのようにして衆議院とどのような違いを出すかは、二院制にとって根幹となる問題であり、そのためには選挙制度の設計が極めて重要であるという認識で一致した。

 特に直接公選制の維持は、両院の一翼を担う一院という立場から譲れない点であることは一致した意見であり、参議院も国民の直接選挙で選任されるべきで、任命制・推薦制はもちろん、間接選挙制も好ましくないことにはほぼ異論がなかった。また、衆議院と異なる選挙制度にすること、そのためには政党の側面よりも個人の側面をより重視すべきことが意見の多数を占めたが、具体的な選挙制度については意見は分かれた。一票の較差問題については、参議院の投票価値の較差是正は喫緊の課題である、

などの意見が出された。

(調査会における議論)

 参議院において直接公選制を維持することが本憲法調査会における共通の認識であった。特に衆議院との関連で選挙制度を考えることが重要との認識から、小委員会における議論をより深める議論が行われ、定数、任期等その他の論点についても様々な意見が出された。

(1) 直接公選制の維持

 直接公選制を維持することを基本としつつ、人材の選出の途を拡げるよう工夫すべきとの意見も出された。

  • 参議院の在り方・趣旨からは専門性や有識者が必要であるが、全国レベルの直接選挙ではそのような人材の選出が難しいため、政党にそのような枠を一部残しておくような選挙制度を考えてもよいのではないか、
(2) 選挙制度
  • 公明党の提案するブロック別大選挙区制は、(1) 政党よりも個人重視、(2) 都道府県より広い地域であるブロック別の単位、(3) 将来の道州制を見据えたもの、(4) ブロックの定数は人口比例で決めるので一票の較差の問題は生じない、(5) 現行の衆議院選挙制度とも明確に異なるなどの点で特色を有し、二院制と参議院の在り方に関する小委員会報告の指摘するポイントを満たすもの(公明党)、
  • 第一院の選挙は内閣の構成が主たる関心であるが、第二院の選挙は政策の是非を問う投票行動が見られ、重要な役割を果たす、
  • 参議院は衆議院のような二大政党化の方向ではなく、従来の中選挙区制度により様々な政党が様々な意見を展開できるような良識の府であってほしい、
  • 現在の両院の選挙制度は、どのような人々のどのような意思をどのような人に託していくのかについて、理論的・理念的な整理が必要ではないか、
  • 参議院は衆議院に比べより多様な民意を幅広く吸収するところに大きな存在意味があり、そのような趣旨に沿った選挙制度を検討していくべき、
  • 参議院の半数改選にはメリット・デメリットがいろいろあり、国民の意思を迅速に反映するのなら、思い切って半数改選制度を見直すことも考えてもよいのではないか。緊急集会等もかかわってくるが、緊急時に参議院だけが集まることが二院制の下で望ましいかも含め、議論の余地がある、
  • 衆議院が小選挙区制なら、参議院はそれと異なる選挙方法により中間集団的なコミュニティーの代表を送り込むことにより、国会に、(1) 地域に密接不可分な利害・関心と(2) 地理的束縛を超えた利害・関心を持ち込むことが可能になる、
  • 全国区と都道府県単位の地方区というのが最も参議院らしい結果を生んでおり、途中から試行錯誤を繰り返したことにより、かえって悪くなっていったのではないか。良識の府と言われる参議院らしい人を選出するにはどうするかという原点に戻る必要がある、
  • 新しく参議院の選挙制度設計を考えるポイントとして、多様な民意を反映できるものであること、長く安定した任期にふさわしいものであること、衆議院と異なって政党の側面より個人の側面をより重視するものであること、一票の等しい投票価値を実現するものであることなどを組み入れていくべき、
(3) 一票の較差
  • 国民から見て参議院の存在価値を高めるには、鏡のごとく民意を反映できる選挙制度、一票の価値の平等をいかに担保するかが最重要課題である、
(4) 定数
  • 参議院の定数につきどの程度の規模が適正なのかをきちんと議論することは、最高裁判決との関連も含めて、非常に重要な課題、
(5) 任期・再選
  • 任期をさらに長期化し再選禁止とする提案は、政党から一定の独立性を持った議員個人の活動をいかに実質的に確保するかとの観点に立ちつつ、政党の力なくして議員に選出されるのが極めて厳しいという現状を考慮したものである、

などの意見が出された。

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