2 最高法規性と憲法尊重擁護義務

 憲法は、国の最高法規であり、現行憲法においては、第10章として最高法規の章を置いている。しかし、この章の条文のうち、表題と直接に合致する規定は第98条第1項のみであることから、現行の最高法規の章は条文を整理した方がよいのか議論があった。

  • 党の新憲法起草小委員会の検討(平成17年)においては、最高法規の章については、現行のまま維持するとしている(自由民主党)、

との意見が出される一方、

  • 97条については、ここに書かなくても国民の権利と義務のところで明記すれば、形式的な最高法規性は保たれる、

などの意見が出された。

 また、第98条第2項の条約・国際法規遵守義務については、

  • 国際社会が合意したものを誠実に遵守し実行できる国家でなければ国際社会における本当の意味での主体的地位は占められない、

などの意見が出され、憲法と条約との関係については、

  • 条約と憲法では、国内的な効力については憲法が優位すると考えないと、国会の過半数で成立する条約により憲法を改正することになり、憲法改正に国民投票を必要とする国民主権の原理と矛盾する、
  • 違憲審査権の対象として条約を追加し、憲法の優位性を明記すべき、
  • 憲法と条約の優位関係は重要な問題であり、こうした点について議論の生ずるような憲法こそ問題である、

などの意見が出された。

 なお、国際協調主義について、

  • 国際協調主義とは、一つの外国ないし幾つかの外国の集団と協調するというのではなく、国際社会と協調するということであり、国際社会は主権国家が権限を譲り渡して制度をつくるという形で出来ており、国連を無視して考えるわけにはいかない、
  • 国際社会の中で平和で協調しながら相互に生きていく環境をつくり出すのが日本の国益、
  • 前文の国際協調主義、平和主義を具体的に書いた項目が憲法中になく、どういう国際協調主義でやるかという条項がないので、新たに章立てをして、国際協力・国際協調を明記すべき、

などの意見が出された。

憲法尊重擁護義務

 日本国憲法の定める憲法尊重擁護義務では、義務を負うものとして、国務大臣や公務員が挙げられている。これは、憲法が本来的には権力者の権限を制限するという制限規範の性格を持つことから、権力者を列挙したものと説明されているが、国民もその義務を負うべきではないかという議論がある。この点について、

国民も義務を負うべきとの意見
  • 党の新憲法起草小委員会の検討(平成17年)においては、責務として追加すべきものとして、憲法尊重擁護の責務などを挙げている(自由民主党)、
  • 憲法尊重擁護義務の主体には、国民も含まれる、
  • 公務員だけでなく、国民が憲法あるいは法令を遵守しなければならないという規定も憲法に明確に設けるべき、

などの意見が出される一方、

国民に義務を負わせるべきではないとの意見
  • 公務員の憲法尊重擁護義務をなくし、国民の憲法尊重擁護義務を規定すべきとの議論があるが、これは憲法の権力制限規範としての性格を縮小し、憲法を国民の行為規範とするものであり、近代立憲主義的憲法を否定し、人類の歴史的英知から離脱するもの、

などの意見が出された。

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