第147回国会 参議院憲法調査会 第6号


平成十二年四月十九日(水曜日)
   午後二時一分開会
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   委員の異動
 四月五日
    辞任         補欠選任
     佐々木知子君     岩井 國臣君
     柳田  稔君     直嶋 正行君
 四月十二日
    辞任         補欠選任
     椎名 素夫君     扇  千景君
     田村 秀昭君     本岡 昭次君
 四月十八日
    辞任         補欠選任
     白浜 一良君     福本 潤一君
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  出席者は左のとおり。
    会 長         村上 正邦君
    幹 事
                久世 公堯君
                小山 孝雄君
                鴻池 祥肇君
                江田 五月君
                吉田 之久君
                魚住裕一郎君
                小泉 親司君
                大脇 雅子君
                水野 誠一君
    委 員
                阿南 一成君
                岩城 光英君
                海老原義彦君
                扇  千景君
                亀谷 博昭君
                木村  仁君
                北岡 秀二君
                陣内 孝雄君
                世耕 弘成君
                谷川 秀善君
                野間  赳君
                松田 岩夫君
                浅尾慶一郎君
                石田 美栄君
                北澤 俊美君
                笹野 貞子君
                高嶋 良充君
                角田 義一君
                直嶋 正行君
                本岡 昭次君
                大森 礼子君
                高野 博師君
                福本 潤一君
                橋本  敦君
                吉岡 吉典君
                吉川 春子君
                福島 瑞穂君
                平野 貞夫君
                佐藤 道夫君
   事務局側
       憲法調査会事務
       局長       大島 稔彦君
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  本日の会議に付した案件
○幹事選任及び補欠選任の件
○日本国憲法に関する調査
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○会長(村上正邦君) ただいまから憲法調査会を開会いたします。
 幹事の選任及び補欠選任についてお諮りいたします。
 本調査会の幹事割り当て会派の変更に伴い一名の幹事の選任を行うとともに、委員の異動に伴い現在欠員となっている一名の幹事の補欠選任を行いたいと存じます。
 幹事の選任につきましては、会長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○会長(村上正邦君) 御異議ないと認めます。
 それでは、幹事に水野誠一委員及び魚住裕一郎委員を指名いたします。
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○会長(村上正邦君) 日本国憲法に関する調査を議題とし、本調査会におけるこれまでの議論を踏まえ、委員相互間の意見交換を行いたいと存じます。
 本日は、まずこれまで発言を余りなされていない方を優先しつつ、各会派を一巡して御発言を願います。一巡方式で御発言を願います。
 なお、御発言は着席のままで進めたいと存じます。
 それでは、御意見のある方は順次御発言を願います。
 あらかじめ事務局で皆さんの御意向を承っておりますので、順次指名をさせていただきます。野間赳委員。
○野間赳君 初めての発言の機会をいただきまして、大変にありがとうございました。
 四月十五日付の読売新聞の朝刊に掲載をされました世論調査によりますと、憲法を改正する方がよいと答えた人の割合が初めて六〇%を超えました。過去最高であった前年の、五三%であったと思いますが、大きく上回ったとのことであります。世代別に見ましても、二十代、三十代、四十代では改正賛成派が六割台に上っております。最も少なかった七十歳以上の高齢者層におきましても、改正賛成派が前年より一六%増加をいたしておりまして、五一%になったということであります。憲法改正賛成論が世代を超え力強い動きとなりつつあることがうかがい知れたのであります。
○会長(村上正邦君) 私語をちょっと慎んでください。
○野間赳君 特に、二十一世紀を担う若い人たちに改正賛成の声が高いという結果が出ていますことは重要なことではないかと思います。
 現行憲法制定以来、半世紀が過ぎたのでありますが、高度経済成長を経て、バブルの崩壊、急速な少子高齢化等々、国民生活様式も大きく変化をしてまいりまして、国際的にも日本の果たしていく役割はますます増大をしております。新しくそういった中で環境問題等も起こってまいってきておるところであります。
 このような中で、現行憲法は、今までその解釈、運用によって社会の変化に対応をしてきたわけでありますが、しかしそこは限界がおのずとありまして、成文憲法と実体社会で矛盾が生じてきておるのも事実であると思います。これから二十一世紀を迎えるに当たりまして、この国の形を真剣に憂えている人々が増加していることを示していると思います。
 そこで、この国の形に大きな意味を持つ二つの優先テーマにつきまして申し述べたいと思います。
 まず第一に、安全保障の問題についてでありますが、我が国が武力による威嚇または武力の行使を永久に放棄したといたしましても、それだけでは我が国が国際の平和及び安全に対して最大限に努めたとは必ずしも言えないものではないかと考えております。
 我が国にとりましても他国にとりましても平和は大切であり、国際の平和及び安全の維持は極めて重要な問題であると思います。そうであるならば、ただ単に我が国が国際平和を危うくしないというだけではなくして、むしろ国際平和貢献、紛争予防外交を積極的に展開をし、国際平和への侵害があれば、我が国も国際的な取り決めに基づいて積極的にその復旧に努めてこそ国際の平和及び安全に最大限に努めたことになるものと考えます。侵害の復旧に努める場合に、武力による威嚇または武力の行使を全く用いずに済むことはおよそ現実的な議論ではないと思います。
 次に、二点目といたしまして、個人の権利の問題についてであります。
 確かに戦後の我が国を規律してきました日本国憲法は基本的人権の尊重を大きな柱とするものでありまして、まさに個人の基本権は最大限に尊重されなければならないものであることはもうそのとおりであると思います。
 しかし、戦後五十余年を振り返りまして、昨今の状況を見まして、一見この基本的人権の尊重という大原則に沿ったような主張でありましても、むしろ身勝手だと感じられるような議論が少なからずあります。これは、憲法が同時に定めております公共の福祉というものに目を向けていないからではないかと思います。国家はこれを構成する個人によって存立するものであり、国家とその構成員たる個人とはまさに表裏一体の関係にあるわけであります。個人の基本権が最大限に尊重されなければならないということは、一方では他人の基本権にも最大限に配慮しなければならないものと考えます。それが公共の福祉であります。
 我が国では、個人の権利の主張が余りにも厳しい一方、自己の周囲の人間の基本権に対する配慮がまだまだ不十分なものでないかと思われます。マスコミによる個人のプライバシーの侵害、犯罪被害者に対する不十分な保護等、その著しい一例ではないかと思います。今後、基本的人権について検討するに当たっては、このような観点からの検討も必要であると考えております。
 以上、私の意見とさせていただきたいと思います。
○会長(村上正邦君) 吉田之久幹事。
○吉田之久君 発言の機会を与えていただきまして、大変感謝しております。
 私は、日本国民として七十数年間生きてまいりました。したがって、幼少年時代は明治憲法下で天皇の赤子として国家のために身を鴻毛の軽きに置くことを信条としてまいりました。
 昭和二十年の春、私は海軍飛行少尉として北海道の空を飛んでいました。どんなに生きても二十五歳までの命だろうと覚悟しておりました。ところが、八月十五日、終戦の詔勅が下されました。率直に言って、戦争が終わるということがあるのかと驚きました。
 そして翌年、新憲法が発布されました。当時の制定の経過などは詳しくは知るよしもありませんでしたが、私たちはこの憲法を読んで感動しました。これからはこの国は戦争をすることがない、とすればお互いの人生をそれぞれ全うすることができるということを確認した喜びは最高のものがありました。そして我々はこの国を東洋のスイスにしようと誓い合いました。しかし、その後の世界の変化と日本の経済大国への成長によって、もろもろの事情は大きく変わりました。
 私は、敗戦直後の新憲法はまさにそのときの日本にとってぴったりの理想的な制服であったと思います。しかし、その後、異常に成長した我が国にとって、この憲法は次第に寸法の合わないものになってきたと思います。いわば我が国はこの五十年間その制服を破りながら成長してきたように思います。
 国連のPKO活動もいよいよその必要が高められている今日、我が国は今後も応分の自衛隊を海外に送らなければなりません。しかし、ここに来てなお、自衛隊は軍隊であるのかないのか、憲法九条から見て自衛隊は違憲か合憲かなどの論争が延々と続いています。
 そして、しょせん国会における政府側の答弁、見解は、牽強付会、詭弁の連続であります。これではやがて我が国会と政府はソフィスト集団に成り終わってしまうことを私は恐れます。どの大学生にも中学生にもそれなりに理解できるわかりやすい憲法に改正すべきであります。改めて、国家のサイズに合う憲法に仕立て直すべき時期に来ていると思います。
 民主的に論議を尽くし、国民とともにまず合意できる部分から逐次改正を始めるべきだと考えます。そして、その後は十年ぐらいをめどに憲法を見直すことを一般化した方がよいと思います。もちろん問題がなければそのまま継続すればよいのであります。
 いよいよ急テンポで変化する二十一世紀の世界に適切に対応する国家となるためには、そろそろこの辺で今日までの二つの憲法に不磨の大典的な歴史観を持ってきた国から大きく脱皮する時代に来ていると私は考えます。
 以上であります。
○会長(村上正邦君) 木村仁委員。
○木村仁君 自由民主党の木村仁でございます。
 私は、この調査会の第一回会議で同僚の岩城委員から提示されました地方自治の問題について意見を申したいと思います。
 私は、日本国憲法の成立過程を文明と文明、民族と民族の遭遇の中で起こる法の継受という形で理解をいたしております。
 日本は、明治維新にヨーロッパ大陸系の法を大幅に継受し、それを日本の古来の法典と合わせて日本の近代的な法体系をつくっておりましたが、五十年後の太平洋戦争の後、アングロアメリカ系、英米系及び民主主義系の法を継受しております。その象徴的な事件がマッカーサー憲法草案による憲法の制定でありまして、それが極めて強権的に行われたことは残念でございましたけれども、マッカーサー憲法草案があるなしにかかわらず、日本は英米法の系統の法体系、そして民主主義の法を継受すべき時期であったと思っております。
 それを地方自治の関係で申し上げますと、御承知のように、日本国政府がGHQに提示した憲法改正要綱には地方自治の規定は全くありませんでした。当時つくられた幾つかの憲法草案の中で地方自治の規定が含まれていたのは佐々木惣一博士の憲法草案のみでありました。日本共産党案にもあったと言われておりますが、これはマッカーサー憲法草案が示された以後のものであります。
 それでは、憲法に盛り込むべき地方自治の伝統が日本になかったのかといいますと、それは厳然としてあったわけでありまして、市制、町村制及び府県制に基づく地方自治の行政が明治以降五十年にわたって日本の国家形成に大きな役割を果たしてきたと私は考えておりますし、特に大正デモクラシーの時期に地方分権論が非常に進みまして、昭和初期の論文にすら知事の公選論というようなことが展開されております。
 しかしながら、終戦当時において日本の多くの人々は、地方自治あるいは地方自治行政というものが憲法のレベルで取り扱われるべき事柄だとは考えていなかったのであろう、こういうふうに考えます。それが、二十一年二月十三日にマッカーサー憲法草案が示されましたときに、御承知のように地方自治の規定が入っていたわけでありますが、我々の先輩、地方自治を扱っていた方々は、これは本当に天の恵みというか、天恵というような感じで受け取ったように思われます。そして、これに対して極めて積極的な対応を示しております。
 御承知のように、マッカーサー憲法草案の地方自治に関する規定は三カ条でございますが、現行憲法は四カ条でありまして、特にその第九十二条、地方公共団体に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める、これは日本国政府とGHQとの折衝の中で生まれてきたものでありまして、特に地方自治の本旨、これに沿わない法律は憲法違反でありますけれども、この観念を持ち出したのは日本サイドであります。したがって、この地方自治の本旨によって地方自治を保障するという憲法の規定は、実はメード・イン・ジャパン、日本製ではないかと私は考えております。
 そして、その過程でまた、当時の政府は第一次の地方制度改革というものを行うわけでありますが、その法律案は二十一年四月二日、国会に提案され、九月二十七日に成立し、十月五日に施行されております。
 この改革案の中には、もう当然のことながら、知事、市町村長の直接公選制が含まれておりますけれども、同時に、直接請求によるリコールの制度、こういうものが含まれているわけでございまして、この規定について、マッカーサー元帥は非常に驚き、このような直接民主主義の制度がなぜ日本の政府から出てくるのだ、だれが一体考えついたのかを調べてほしいと言ったというエピソードが残されております。そして、マッカーサー元帥は特別の声明を発して、この地方制度改革法案は日本人みずからの発意によるものであると、こういう宣言をしたということでございます。
 同時に、日本国政府の地方自治関係者は、何とかして山県有朋の故事に倣って憲法制定の前に地方自治法を制定したいという努力を続けております。そうして、憲法は百三カ条でありますけれども、三百四十条を超える地方自治法を起草し、そして昭和二十二年四月十七日公布、昭和二十二年五月三日、憲法制定の日に施行をしているわけでございます。
 そして、私が思いますのは、地方自治法附則第一条、施行の規定でございますが、五月三日という日はわかっているわけでありますから、「この法律は、昭和二十二年五月三日から、これを施行する。」と書くのが法律の常識でありますけれども、地方自治法附則第一条は、「この法律は、日本国憲法施行の日から、これを施行する。」と、こういう表現になっております。このあたりに、私は、当時の日本国政府の中の関係者の熱意と申しますか、非常に興奮していた状態ではなかったのかなというふうに考えているわけでございます。
 このようにしてでき上がりました日本国憲法と、そして地方自治法を中心として、戦後の日本の地方自治は発展してきたわけでございますけれども、この憲法の保障が地方自治の発展に貢献したことは言うまでもございませんし、また地方自治の発展が日本国土の開発あるいは地域振興にも大きな役割を果たしてまいりました。
 そして、地方自治は民主主義の小学校と言われますように、この完成された地方自治が日本の民主主義の進展にも貢献したのではないかと私は考えております。
 そして……
○会長(村上正邦君) 五分経過。
○木村仁君 済みません。
 今や地方分権の時代になってまいりましたから、私は、この第八章の地方自治の規定を十分に尊重しながら、さらにこれを充実させていきたい、こういうふうに考えております。
 金森徳次郎氏は、その「憲法遺言」の中で、憲法を読んでみて、何度読んでもわからない規定が固まっているのは地方自治の章であると言っております。ここあたりをさらに強化し、明確にして、憲法改正の中に織り込んでまいりたい、これが私どもの希望でございます。
 ありがとうございました。
○会長(村上正邦君) 魚住裕一郎幹事。
○魚住裕一郎君 公明党・改革クラブの魚住裕一郎でございます。
 私は、未来志向、そして国民とともにという観点から、かつて江田幹事がこの国の形、また今、野間委員からもこの国の形というふうに言葉が出ましたけれども、私も、そういう観点から考えてみたいというふうに思っております。
 過去を振り返って、世界の流れというものは、軍事的な競争あり、また政治的な競争あり、また経済的な競争があったんだろうというふうに思っております。かつて、富国強兵ということも言われました。また、経済大国ということも言われたわけでありますが、バブル崩壊でそれもすっ飛んでしまった。また世界的に見ても、地球的に見ても、資源の有限性あるいは成長の限界というものがあります。世界的な環境問題もある。
 そういう中で、これからどういうふうな流れになっていくんだろうかと考えた場合に、やはり人道的な観点からの競争というものが世界の流れになっていくんではなかろうか、このように考えているところであります。
 よく高貴な義務ということで、ノーブレスオブリージュというふうに言われますが、現行日本国憲法においても、「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。」というこの文言は、やはりそういう側面も入っているんではないか、このように考えます。
 また、二十世紀を振り返って、この一世紀間はどうだったのか。よく革命と暴力の世紀というふうにも言われます。また、イデオロギーの時代というふうにも言われてまいりました。資本主義か社会主義かという体制選択を問うという、そういう大変厳しい世界であったわけでありますが、八九年から九一年にかけて、ソ連の崩壊また東欧の民主化ということで冷戦が終わり、また、共産主義の実験が失敗に終わったということもありまして、イデオロギーの終えんというふうに言われているところであります。
 それでは、しからばこの二十一世紀のイデオロギーの終えんを踏まえた上での指導原理は一体何なんだろうかというふうに考えるところでありますが、文明批評家であり劇作家である山崎正和氏は、イデオロギー終えんの後に新しい普遍性を目指す政治思想の力が目覚ましく台頭してきている、その思想の名は人権である、こういうふうに言っているところであります。
 まさに時代は、そしてさらに世界においてもその方向性に動いているんではないだろうか、このように考えるものであります。そして、二十一世紀の日本の新しいこの国の形、私は人権国家日本、これが新しい私どもの日本のこの国の形であるべきである、そのように考える次第であります。
 この立場に立って、人権の拡充、進化、そして平和でありますとかあるいは福祉、環境、教育、そういう観点から今の憲法の諸問題について議論を深めていきたい、これが論憲ということでございます。
 もちろん、憲法は、価値としての人権宣言と、その裏づけとしての制度的保障として権力の分立を初め統治機構が規定されているところでございますが、この統治機構についてもしっかりこの観点から議論を深めていきたい、このように考える次第であります。
 以上でございます。
○会長(村上正邦君) 阿南一成委員。
○阿南一成君 御指名をいただき、発言の機会を得ましたことにまずもって感謝を申し上げます。
 私は、憲法上余り明確でない国の非常事態、それから緊急事態への対応について若干意見を申し上げたいと思います。
 ここでいう非常事態、緊急事態につきまして、私は、現在の国際社会の中にあって、外敵の侵攻等によって国の存立と安全の確保が危うくなるような事態が発生した場合、それから大規模なテロ行為、あるいは大規模な地震、風水害などの自然災害、そしてさらに大規模広範囲にわたるインフラ関係の事故、そしてまた伝染病のさらなる蔓延などにより死者が続出するような状況が現出することを考えております。
 そして、そうした事態が予測されるような状態に立ち至ったとき、私は、国として内閣の緊急命令、緊急財政処分、立法緊急宣言などの諸制度が必要であると考えるものであります。
 ところが、現在、我が国の憲法が認めている緊急措置に対する制度といたしましては、単に憲法上、参議院の緊急集会のみ規定があるだけであります。
 もし現行憲法上これらの緊急事態に対処すべくその根拠を求めようとするならば、私は恐らくは基本的人権に対する公共の福祉の制約を拡大的に解釈するほかはないと考えておるものであります。公共の福祉を拡大的に解釈することは極めて危険であり、非常措置を必要最小限にとどめ、その乱用を防止するためにも、憲法に明確な規定を設けることの方がベターであると私は考えるものであります。
 このことは、現行憲法制定当時の我が国の状況が、国際的には日本が米軍の占領下に置かれておった、アメリカの軍事力の傘のもとで他国の侵略の危険性に対する心配が存在しなかったこと、また国内の治安状況も専ら占領軍の力により治安体制が確立しており、仮に政治、経済、社会の各分野における重大事態が発生をいたしましたとしても、占領下における超法規的な解決策が可能であったことが大きく影響しておるものと考えるものであります。
 ところで、第二次大戦で同じように敗戦、敗戦というか終戦、敗戦ですね、ドイツの有事法制を少し見てみますと、緊急事態に対して憲法や法律に厳格な規定を設けることが国家権力の乱用防止につながるという考えのもとに、対外的な緊急事態に対して防衛事態、緊急事態、同盟事態に分けて相当詳細な規定を置いております。
 例えば、防衛事態の公布により軍隊の指揮権は国防相から首相に移る、そしてそこに権限を集中させて危機に対応する仕組みになっております。また、経済確保法、食糧確保法、交通確保法などでより詳細な規定を設けておるところであります。
 同時に、財産権や人身の自由の制限など基本的人権の一定の制限も可能にしております。例えば、兵役義務者の兵役期間を無期限とする、あるいは女子にも非軍事的役務を課することができる、有事が終わるまで公用徴収に対する補償を免除する、最高四日間国民の自由を剥奪できるなどなど、緊急事態での一定の私権制限を可能にいたしておるところであります。
 さらにまた、ドイツは北大西洋条約機構、NATOの加盟国でありますが、連邦政府は連邦議会の事前の同意なしに国際機関NATOの行った決定に基づき緊急事態に関する法律を適用できるという、いわゆるNATO条項が規定をされておるところであります。
 私は、公共の福祉条項の拡大解釈の危険を避けるためにも、緊急事態における有事法制の根拠を我が日本国憲法においても明確に規定すべきものと考えるものであります。
 ところで、この憲法調査会は議論が始まったばかりでありますので、まだまだ軽いジャブの応酬の段階であろうかと考えております。いずれ私も諸先生方の意見に対する反論の機会もあろうかと思いますが、そこで、私の立場をいま少し明確にしておきたいと思います。
○会長(村上正邦君) 五分経過。
○阿南一成君 はい。
 第一点は、戦後憲法の最大の問題点を私は、国家と国民とをまるで対立しているかのごとく扱い、国家を考えることがあたかも悪であるかのごとく国民意識に刷り込んできたことへの疑問であります。愛国心の欠落した国際主義が、アメリカのヘゲモニーにひたすらすり寄る以外に何の芸もないことを自覚すべきであります。
 今日の日本国家の混迷の最大の原因は、国家の自立と国民の主体性の欠落にあると考えています。そして、電子、金融、経済戦争で完全勝利したクリントン米大統領の国家戦略、すなわち経済戦争の仮想敵国日本とドイツに対する弱体化政策をたどってみますと、それは、日本国が再び……
○会長(村上正邦君) おまとめを願います。
○阿南一成君 米国を脅かすことのないようにで始まる一九四五年八月二十二日の敗北後における米国の初期の対日方針及び最高司令官ダグラス・マッカーサーの指示した新憲法草案を初めとする日本統治に残した影を見るのは私だけではないと思います。
○会長(村上正邦君) おまとめを願います。
○阿南一成君 はい。
 平和ぼけ、経済アニマルと国際社会でさげすまれておる今日、人類社会が依然として野蛮なしには一日たりとも成り立たない、そして、そのリアリズムを理解し得なかったのは戦後日本人の精神が幼稚だったからとする西部教授の論点にはしっかりと耳を傾けていきたいと思います。
 そして、明治憲法と教育勅語の双方の起草に井上毅がかかわった歴史的事実を知るとき……
○会長(村上正邦君) おまとめを願います。
○阿南一成君 私は、憲法と教育基本法を連動させた視点でこれからの憲法調査会での憲法問題を考えていくべきであると考えております。
 終わります。
○会長(村上正邦君) 橋本敦委員。
○橋本敦君 日本共産党の橋本敦でございます。
 私は、これまでの憲法調査会での議論を踏まえまして、今後の憲法調査会をどのように進めていくかについて発言をいたします。
 まず、これまでの調査の中で出された重要な論点について見解を表明しておきます。
 第一は、我が憲法の先駆的、民主的意義を広く深く検証することの重要性、それと憲法と現実との乖離の問題が出されました。これまでの議論の中で、二十一世紀に向けて我が憲法の基本的理念を国民の暮らしの中に実現していくということが重要であるという意見が出されました。
 日本国憲法は恒久平和主義、主権在民、基本的人権、生存権の保障など、世界諸国の憲法と比較してもすぐれた先進的な内容を持っております。参考人質疑でも、これらの進歩的な内容は二十一世紀に受け継がれるべきものであるという意見も出されました。このような我が憲法の先駆的意義をさらに広い視野で検証する調査がこれからも必要であります。
 一方、国際情勢の変化や環境権などを理由にして憲法と現実との乖離があるとの議論もありました。憲法と現実との乖離については、その問題の所在の根本は、憲法の不備から生じている問題ではなく、現実の政治の動きの中で憲法が国民の暮らしの中に生かされていないこと、さらには逆行さえしていることにこそ問題があると思います。
 一九五六年の内閣憲法調査会では、憲法運用の実際について調査が行われましたが、それから四十年が経過した今日、憲法と現実との乖離の問題についても、憲法調査会でその原因、政治的背景を含め、憲法をどう守り生かすかの視点で改めて掘り下げた調査を行うことは重要であると思います。
 第二は、いわゆる押しつけ憲法の問題についてであります。
 これまでの議論の中で、占領軍からの押しつけ憲法だから改正すべしという意見も表明されました。一方、これに対して、押しつけかどうかという問題というよりも、日本国憲法はポツダム宣言に明記された平和的進歩的原則を具体化したものであり、当時の日本国民の平和的民主的世論を反映したものであったということが、歴史的経過としてもまた憲法論としても本質的に重要な問題であるとの意見も表明されました。
 そもそも日本は、ポツダム宣言を受諾して、日本における民主的傾向の復活の障害である軍国主義を一掃、除去するとともに、世界の進歩的・民主的・平和的原則の履行を義務づけられたのであります。それにもかかわらず、当時の旧権力が国体護持にのみ腐心してその責任を果たす意思も能力も持たなかったために、天皇制護持を踏まえたマッカーサー草案が出されたというのが歴史的事実であります。その点で、旧権力にとっては押しつけであったかもしれませんが、現憲法は日本における民主主義の発展を願う日本国民に歓迎されるものであったのであります。
 ですから、さきの内閣憲法調査会の結論でも、この憲法の制定経過は極めて複雑であるとしながら、押しつけかどうかは事情は決して単純ではないとされたのであります。
 この制定の過程の問題で、本調査会でも次回の五月二日、GHQ関係者を招致することにしていますが、これをさらに掘り下げ、日本国憲法の今日的意義を踏まえた上で、系統立った調査が必要であります。
 次に、今後の運営方針について、私は、前述の問題も含め憲法調査会が五年という与えられた調査期間で、拙速に走ることなく、さらに各会派協議を尽くして、本調査会の目的と任務にふさわしい具体的テーマを絞るとともに、問題点を掘り下げることが各委員に十分できるよう時間を配慮し、順次系統的な調査を深めることが重要だと思います。
 その課題に即して学識経験者や参考人から意見を聞くなど、国民から意見を聞く場を持つことも重要であります。
 以上の点を幹事会においても積極的に議論していただき、具体化していただくことを求めて、発言を終わります。
○会長(村上正邦君) 福島瑞穂委員。
○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。
 私は、平和と基本的人権の二点について述べたいと思います。
 日本国憲法のもとで日本国憲法が生かされていないということをこの調査会で徹底して調査をしていただきたい、していきましょうというふうに言いたいと思います。どこがどう生かされていないのか、どう生かしていくのか、それを調査する、そのことがこの憲法調査会の意味であるというふうに考えております。
 基本的人権に関していえば、残念ながら、今、日本の社会にはさまざまな人権問題があります。どんな人もこの社会の一員であるにもかかわらず、具体的に差別や人権侵害があることは皆さん方も本当に具体的に御存じだと思います。子供、女性、被差別部落、在日韓国・朝鮮人、外国人、高齢者、ハンディキャップがある人の問題、さまざまな問題がたくさんあります。もちろん、男性の人権問題もたくさんあります。
 そのように具体的に生じている人権問題をどのように憲法を生かすということで解決し得るのか、それこそが私は政治に課せられた課題であるというふうに考えております。
 次に、公共の福祉論を盾に基本的人権をその関連で論ずることへの危険性を申し上げたいというふうに思います。
 公共の福祉については、きちっと憲法の中に規定があります。憲法十二条、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」。きちっと「公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」と日本国憲法は規定をしております。したがって、公共の福祉が足りないという意見は、私はこの憲法に合っていない、むしろ憲法はそのことをきちっと書いているというふうに考えております。
 逆に、この公共の福祉論が主張されることは、私は滅私奉公あるいは私権への非常に恣意的な制限がなされる危険性があり、先ほど、例えば公明党の魚住委員が人権国家日本というふうに格調高くおっしゃったこととまさに正反対のことが生ずるのではないかというふうに思っております。
 「公共の福祉」と日本国憲法は書いておりますが、具体的には、例えば国連の規約人権委員会におきまして、日本の裁判所やさまざまなものが、例えば公共の福祉という一般条項で、パブリックインタレストという一般条項で基本的人権を制限しているということについては、何度も何度も疑義が出されております。
 御存じのとおり、基本的人権を個別に制限するためには具体的なはっきりした基準が必要で、公共の福祉という極めて抽象的な概念で基本的人権は今日、戦後のもう五十年たった現在、国際人権法の立場では制限できないということは確立をしております。ですから、この調査会におきまして安易な公共の福祉論による基本的人権の制限が出ないようにということを申し上げたいと思います。
 次に、平和の問題について述べます。
 先日、学生の方たちが来て発言をしてくださいました。津田塾大の横倉さんは、目には目をとか、血は血で洗うしかないと考えるのは人間の欠点だと思うというふうに発言をされました。私も人間の欠陥だというふうに思います。だからこそ、ハーグ会議において日本の九条が二十一世紀を切り開く先見性を持つものとして高く評価をされたのであるというふうに思っております。
 日本は五十四年間、平和憲法を持ってきました。相手がいるから軍縮や戦力放棄はできないという意見がありますが、平和憲法を持つ日本は、戦後、相手を説得する努力をすべきであったはずです。しかし、一向にそのようなことは発信されてきませんでした。
 平和外交、軍縮外交、戦力放棄外交を行うことが平和憲法のもとで期待されたはずです。なぜ日本が平和外交、軍縮外交、戦力放棄外交ができなかったのか、戦後の日本の外交史を徹底的に調査する必要があると考えております。
 憲法調査会の調査に求められているのは、基本的人権や平和についてのこのような調査です。憲法を生かすことが戦後五十四年間極めて不十分だったのですから、そのような調査をきちっと行えば、それは歴史に残る作業になると考えます。落ちついたそのような調査が十分なされることを強く要求したいというふうに考えます。
 次に、運営の問題……
○会長(村上正邦君) はい、ありがとうございます。五分たちました。
○福島瑞穂君 じゃ、三十秒だけ。済みません。
 次に、運営のことについて申し上げたいと思います。
 ベアテ・シロタ・ゴードンさんが五月二日に来てくださいますが、彼女に来てほしいとアメリカ・ニューヨーク総領事からベアテさんに電話があったのは三月の末です。だれの判断でこのようなことがあったのかというふうに思います。
 きちっとこの調査会あるいは運営委員会で議論をされた結果、彼女にきちっと招請をするならわかります。しかし、そのようなことが決まっていない段階で、なぜ日本国を代表して日本政府がそういう連絡ができるのかというふうに思っております。
 それは一事、一つのことですけれども、公平、公正に行う必要がある。手続違反がないように、民主的運営がなされるように強く要望して、私の話を終わります。
○会長(村上正邦君) はい。今の件につきましては、後ほどよく調査をして御報告いたします。
 平野貞夫委員。
○平野貞夫君 しばしば発言の機会をいただいておりまして感謝します。
 憲法全般に対する自由討議でございますので、最近の重大問題についての、憲法の運営についての問題提起をしたいと思います。
 御承知のように、小渕内閣の総辞職は、憲法七十条の内閣総理大臣が欠けたときの拡大解釈で行っております。これは憲法の運用の重大な誤りだと私は思います。御承知のように、学説の大多数は、病気はこの七十条に入らないというのが学説の通説でございます。
 私は、この問題は、総理が職務不能状態でも生存されているという状況で憲法に不備があるという認識をきっちりとまずすべきだと思います。その上で、やむを得ず超法規的な措置をとるということになりますので、国家機関として例えば緊急閣議や閣僚懇を開いて憲法先例をつくるべきだ、これが正当な憲法の運営ではないかと思います。なし崩しの憲法の拡大解釈は、結局憲法の本当の整備をさせなくする、こういう問題があると思います。
 それからもう一点、一部の政党で最近、労働組合の組合費のチェックオフ禁止法をつくろうという動きがございますが、これは労働基本権を真っ向から否定するものであり、基本的人権を侵すというものでございます。
 これも憲法の運営の重大な問題でございまして、私は必ずしも福島先生と同じ立場で言うわけじゃございませんが、やっぱり現憲法の運用について適切な運営が行われるよう我々は重大な関心を持つべきであるということを申し上げて、私の意見表明といたします。
○会長(村上正邦君) 佐藤道夫委員。
○佐藤道夫君 私は、ちょっと角度を変えまして、これからのこの会の運営についての希望意見を述べさせていただきたいと思います。
 その第一は、広範囲な、細部にわたる世論調査の実施ということであります。
 この問題を最終的に決めるのは結局は国民でありまするから、国民がどれだけ憲法に関心を持っているのか、またどの点に問題意識を持っているのか、それを我々としても厳しく受けとめる必要があるんだろうと思います。
 昭和三十一年の政府に置かれました憲法調査会、あの場合には実に丹念な世論調査をしております。三十一年から四十六年まで十四回にわたって、ほとんど毎年のように国民の意見を聴取している。これも当たりさわりのない改正に賛成か反対かとそんなことじゃなしに、憲法を読んだことがあるのかとか、あるいは憲法のどの点に関心を持っているのか、そういうかなり具体的な突っ込んだ調査の仕方をしております。
 ぜひともこれを先例といたしまして、総理府に委嘱をして、幅の広い、深みのある世論調査をしていただきたい。それをまた我々としても重く受けとめるべきではないのか、こう思うわけであります。
 それから第二は、国民各階層の意見をこれやはりこういう機会に我々としても聞くべきではないのか。
 前回、参考人として西尾教授それから正村教授の意見を聞いておりますけれども、西尾さんという方は歴史学者、それから正村さんは経済学者、肝心の法律学者が入っていない。法律学界を代表するような人に、特に憲法学者あるいは刑法、民法すべてにこれはわたる問題ですから、そういう方々の意見を聴取する。法律学界だけではなしに、経済それから教育界、実業界からもやはり意見を聞くべきだろうと思いますし、婦人団体の代表からもきちっと意見を聞くべきではないのか。
 そういうことをやっていって国民の間に関心度を高めていって、彼らの本当の率直なストレートな意見をキャッチして、それに従って我々の方向も決まっていく、そういう問題だろうと、こう思っておりますので、どうか会長におかれましても、いろいろ問題もあるようでありますけれども、私のこういう提案についても存分な関心を抱いていただきまして今後の会の運営について参考とされれば幸せであろうか、こう思います。
 以上です。
○会長(村上正邦君) ありがとうございました。
 若干時間がございますが、重大な御発言がございましたので、特に福島瑞穂委員の民主的でない運営ということについては調査会長として一言申し上げておきます。
 五月二日のこの憲法に携わったアメリカの三名の参考人招致についてのお話かと思いますが、三月二十四日の運営委員会において、憲法に携わったアメリカの数人をぜひ参考人で招致しよう、こういう話が出ましたときに、ニューヨークの総領事の方に、そういう方が御健在なのかどうなのか、日本に来ていただける健康状態にあるのかどうなのか、当然それは参考意見としてひとつお調べ願いたい、こういう御依頼を申し上げた上での話でございますので、これは運営検討委員会において、これは各会派から入っているわけでありますので、そこでお決めになったことを事務局が指示している、こういうことでございますので、決して民主的な運営であるとかないとかいう批判を受けるそしりはございません。このことをはっきり、会長としては、各会派のこの運営検討委員会における決定に従って民主的に、特に民主的に運営をしておりますので、このことを申し上げておきます。
 なお、佐藤委員、平野委員の今後の運営についてのあり方については、運営検討委員会で十分検討していただいて参考にしていきたいと、こう思っております。
 時間も十二、三分ございますので、何か今の委員のそれぞれの御発言について、これはおかしいんじゃないか、これはだれだれ委員、あなたこういう発言をしたがこれはどうなんだという御意見があれば、有効にこの時間を活用したいと、こう思いますが、ございますか。あれば挙手を願います。どうぞ、笹野委員。
○笹野貞子君 民主党・新緑風会の笹野でございます。
 先ほど佐藤委員の方から、憲法がどれだけ日本の国にわかられているのか、そして、興味がどこにあるのかということを調査すべきだという御意見がありました。これは私も全くそうで、国民から乖離した議論をするというのはこの調査会としては非常におもしろい議論にはなりません。
 そこで私は、大学の講義の中で憲法という講座が果たして今の大学の学生の中でどれだけとっているか。私の調べでは、昭和三十年以降、日本の女子大の講座の中から憲法の必修が取り除かれて、選択というカリキュラムになっているということを承知しております。大学で憲法を必修にしなくてもいい、とりたい人だけとったらいいんだという、このつまり日本の国の憲法に対する物の考え方というのは私は大変問題があるというふうに思います。
 最高学府である大学の中で、日本の一番基本的な価値観である憲法をカリキュラムの中でとらなくてもいいんだというそういう方向づけというのは、私たちが憲法が重大だ重大だと言っている割には日本の国の方針が非常にあいまいだというふうに思いますので、ここで会長に私はお願いを申し上げます。
 日本の大学教育の中で憲法を必修にしている大学はどの大学か、そして、学部のところで、法学部は必修なことはわかりますが、他の学部で憲法というカリキュラムをどこまで教えているか、まして私が最も興味があるのは、女子大のカリキュラムの中に憲法という講座をどの大学がどのようにとっているか、そして、日本の全大学生の中で憲法を学んでいる学生の割合をぜひとも文部省に、会長命によって調べていただきたいということを要望申し上げます。
○会長(村上正邦君) 承知いたしました。
 他にございますか。大脇先生。
○大脇雅子君 ただいま福島委員が、三月二十四日の運営委員会において、GHQの参考人を招致して向こうにアクセスをされたという件につきましては、私の認識としては、三月二十四日の運営委員会においてはGHQの何人の人をどのように呼ぶのかということはこの段階ではまだ決まっていなかったと思います。
 次に、この三月二十四日は、マスコミの代表者を聞くか聞かないかということで運営委員会で議論があったんだと承知しております。交渉の依頼が少し私どもの決定よりも先行したということについては、運営委員会で異議とまで言いませんけれども一応問題があるという発言をさせていただいたことがあると思います。
○会長(村上正邦君) 余り大きな問題じゃないんじゃないでしょうか、このことは。制定過程について御意見を聞こう、こういう意見は当初からあったわけですから、どういう方がいらっしゃるのかということは調査するのはこれは当然だと思いますよ。だから、そんなに大きな問題として取り上げることではないんじゃないだろうかと私は思います。(発言する者あり)もうそういう末梢的なことはよろしいんじゃないですか。
○福島瑞穂君 いや、末梢的じゃないですよ。お願いします。
○会長(村上正邦君) 他に御意見ございますか。──他にないようですから、じゃ、福島先生。他にあればあなたは指名するつもりはございませんでした。
○福島瑞穂君 どうもありがとうございます。余り時間をとりません。済みません。ありがとうございます。
 私が聞いたのは、打診があったということなので、元気かどうかということではなかったというのが一点。
 二点目は、済みません、なぜこういう一見細かいと思われるかもしれないんですが、例えば裁判所において証人をどういう人を呼ぶのかというのは両当事者できちっと話し合い、裁判所が決定をします。この国会のさまざまな手続においても、御存じのとおり、皆さんはどの委員会でも御経験だと思うんですが、どういう参考人を呼ぶのか、それは各党できちっと話を詰めて、それでどういう人を呼ぶのか、何人呼ぶのか、どういうふうにするのかという話を一応きちっと決めて、もちろん対立法案でなければ事前に何か打診することはあるかもしれませんが。
 私は、ぜひお願いしたいのは、やはりそういう手続的な担保が必要である。つまり裁判でいえば証人、ここでいえば参考人をどういうふうに呼ぶかということがある種の手続的な担保としてやっぱり機能する。ですから、きちっと決まって手続をとるとか、そういう点について申し上げた次第です。
○会長(村上正邦君) 当然手続的にはそうだと思います。そのように運営をいたしております。参考人を招致するときにも、運営検討委員会で合意を見てお願いをしておるのでありまして、これ以上は幹事会でやっていただきます。
 谷川委員。
○谷川秀善君 これは運営の問題ですけれども、幹事会、運営委員会があるんだから、そこで議論してもらったらいいんで、この席でそういう議論をされると幹事会も運営委員会も非常に困ると思いますよ。そういうことでお願いをいたしておきます。
○会長(村上正邦君) いや、決定したことだから会長が申し上げているわけです。
 他にございますか。──なければ、これにてきょうは散会いたします。
   午後二時五十四分散会

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