第162回国会 参議院憲法調査会 第5号


平成十七年三月九日(水曜日)
   午後一時一分開会
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   委員の異動
 三月二日
    辞任         補欠選任
     椎名 一保君     国井 正幸君
     荒木 清寛君     魚住裕一郎君
     加藤 修一君     山口那津男君
     高野 博師君     白浜 一良君
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  出席者は左のとおり。
    会 長         関谷 勝嗣君
    幹 事
                愛知 治郎君
                荒井 正吾君
                武見 敬三君
                舛添 要一君
                鈴木  寛君
                簗瀬  進君
                若林 秀樹君
                山下 栄一君
    委 員
                魚住 汎英君
                岡田 直樹君
                河合 常則君
               北川イッセイ君
                国井 正幸君
                佐藤 泰三君
                桜井  新君
                藤野 公孝君
                三浦 一水君
                森元 恒雄君
                山下 英利君
                山本 順三君
                江田 五月君
                喜納 昌吉君
                郡司  彰君
                佐藤 道夫君
                田名部匡省君
                高嶋 良充君
                富岡由紀夫君
                那谷屋正義君
                直嶋 正行君
                前川 清成君
                松井 孝治君
                松下 新平君
                魚住裕一郎君
                白浜 一良君
                山口那津男君
                仁比 聡平君
                吉川 春子君
                田  英夫君
   事務局側
       憲法調査会事務
       局長       桐山 正敏君
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  本日の会議に付した案件
○日本国憲法に関する調査
 (小委員長の報告)
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○会長(関谷勝嗣君) ただいまから憲法調査会を開会いたします。
 日本国憲法に関する調査を議題といたします。
 本調査会では、昨年二月より二院制と参議院の在り方に関する小委員会を設置し、約一年間にわたって調査を行ってまいりましたが、本日、小委員長から会長の下に調査報告書が提出をされました。
 本日は、まず小委員長から報告を聴取した後、それを踏まえ、委員相互間の意見交換を行いたいと存じます。
 それでは、まず調査報告書の概要につきまして小委員長から報告を聴取いたします。舛添小委員長。
○舛添要一君 小委員長報告を申し上げます。
 二院制と参議院の在り方に関する小委員会におきましては、一年余にわたる調査を終え、本日、調査報告書提出の議決を行いました。
 小委員会における議論では、各会派おおむね共通の認識が得られたものと、現段階では意見が分かれているため、更に今後検討が必要なものがありました。これらを整理し、小委員会調査報告書として取りまとめた次第であります。
 その議決に当たりまして、日本共産党を代表して、吉川春子小委員より、本報告書の整理は改憲の方向を示すものであり、その提出には反対する旨の意見が述べられ、採決の結果、本報告書は多数をもって提出すべきものと決定したことをまず御報告いたします。
 さて、二院制と参議院の在り方につきましては、従前より参議院憲法調査会が責任を持って調査検討を行うべきというのが各会派ともおおむね共通した認識でありました。このテーマに関しては、弾力的かつ機動的に運営できる小委員会方式により集中的に行うことが望ましいとの判断から、第百五十九回国会の平成十六年二月十八日の憲法調査会で「二院制と参議院の在り方に関する小委員会」を設置することが決定され、以後、七回にわたり、参考人質疑、小委員間の意見交換等を重ねてまいりました。途中、第百五十九回国会の五月二十六日には小委員会の経過概要を、第百六十一回国会の十二月一日には論点整理を、それぞれ本調査会に報告しております。
 「主な論点及びこれに関する各党・各小委員等の意見」について申し上げます。
 二十一世紀にふさわしい公正で活力ある社会を実現するためには、国民主権の実効性を高め、基本的人権の保障を進展させ、地方分権と地方の自立を推進していくことが求められます。そのためには、参議院が法の支配の実現、チェック、多様な意見の反映等の機能を発揮することが極めて重要であると考えられます。
 本小委員会においては、このような認識を踏まえ、「二院制及び参議院の在り方」について多岐な方面にわたって活発な議論が交わされましたので、内容に従って論点ごとに整理しております。
 一、一院制・二院制の長所・短所、是非。
 小委員会においては、最初に二院制ありきということではなく、国民にとって一院制と二院制のどちらが望ましいかという立場からの議論が大事であるとの意見を踏まえ、熱心な議論を行いました。一院制を支持する意見は、効率的な意思決定や円滑な政権交代、また両院の役割・機能分担や調整の困難さ等の点を挙げますが、他方、二院制を支持する意見の多くは慎重審議や多様な民意の反映等の点を理由としております。一院制及び二院制それぞれの長所・短所は、言わば表裏の関係にあります。両者の長所・短所についても様々な意見が出されましたが、その結果、一億人以上の人口を有する我が国では多様な民意を反映させるためにも二院制は不可欠である等の意見が出され、会派を超えて二院制を堅持することで一致しました。
 ただ、迅速な政策判断が求められる現代にあっては、効率的な意思決定と円滑な政権交代を可能にすることは、二院制を採用する場合でも忘れてはならないとの指摘もなされました。
 なお、参議院の改革が今後も必要であることは各会派とも認識が一致しております。この点に関し、両院の権能、選出方法、役割が似ていることが二院制の意義が薄れがちと言われる背景であり、それをそのまま維持すべきではなく、両院の違いを明確にすることが国民に理解を得る上でも重要との意見が出されました。
 改革の方向としては、抑制均衡・良識・再考の府としての役割をはっきりさせるべき、などの意見が出されました。
 二、参議院の機能―特に独自性を発揮すべき分野。
 参議院が補完・抑制、多様な民意の反映といった本来の役割・機能を果たすためには、衆参両院の構成・権能等の相違を明確にすべきことが多くの小委員から指摘されました。そのためには、参議院が独自性を発揮すべき機能は何か、衆議院とどのような役割・機能分担を行うかが大きな課題であること、また、役割や機能の分担を考えるに当たって、参議院は六年間と任期も長く、しかも解散がなく安定していることなどの参議院の特質を生かすことが重要であることは、一致した意見でありました。
 具体的には、第一に、参議院は長期的、基本的な政策課題を重点的に行うという点で意見が一致し、年金や教育、条約等の外交案件について取り組むべき、調査会の立法を強化すべき等の意見が出されました。
 第二に、参議院は、チェックの院として決算審査を重点的に行うべき点で意見が一致し、決算審査の実効性を高めるために審査結果に拘束力を持たせること、会計検査院を国会ないし参議院の附属機関とすること等、様々な提案がなされました。
 第三に、行政監視、政策評価についても、チェックに重点を置く監視の院として更に充実させるべきことで一致し、個別の対象としてはODAや政省令等への言及がありました。
 第四に、国会同意人事案件については、米国上院のように、ヒアリングも含め参議院が中心になって行ってはどうか等の意見がありました。
 第五に、司法府との関係については、行政全体が事後チェック型になろうとする中でチェックの院としてどう考えるかは極めて重要等の意見が出されました。
 第六に、国と地方の調整については、参議院の地域代表性を重視する考えから、参議院が国と地方の関係を扱うことにしたらどうか等の意見が出されました。
 第七に、憲法解釈機能・違憲審査的機能について、現在の最高裁判所・内閣法制局の在り方に対する問題意識を背景に、参議院に憲法解釈機能・違憲審査機能を持たせるという提案がありました。
 なお、衆議院と重複する権限・機能については、参議院として逆に弱めるところや行わないところをより明確化させることも必要であって、例えば、予算案や衆議院で全会一致であった法案など特定の議案について、参議院は審査の省略ないし簡略化を行うなどの意見が出される一方、参議院の果たすべき抑制・補完の機能という観点から反対する意見も出され、見解が分かれました。
 このほか、参議院の役割・機能との関連で会期制についても議論がなされました。また、憲法事項に限らず、運営の改善に関する事項についても多数の指摘がなされました。
 三、両院間の調整―意思不一致の場合等の調整の在り方。
 議会が二つの院から構成される場合、両院間に意思不一致が生じたときにどのように調整するかは、二院制を採用する場合の極めて重要な問題であります。小委員会でも、国会の最も根本的ないし基本的なところ、すなわち、法律案・予算案の議決及び条約の承認はあくまで両院の議決をもって国会の意思決定とすることを前提に、第一に法律案の再議決要件、第二に内閣総理大臣の指名、第三に両院協議会などについて、現行憲法の調整規定の妥当性等について議論がなされました。
 四、参議院と政党との関係。
 衆議院は政党を軸に活動しているので、参議院が衆議院に対する独自性を発揮しようとする場合は、政党から距離を置かなければならないのではないか、また、緑風会時代が最も参議院らしさを発揮していたのではないかなどの問題提起がなされ、第一に政党との関係、第二に党議拘束、第三に政権から距離を置く必要性について、活発な議論が交わされました。
 五、参議院の構成の在り方・選挙制度。
 多様な民意を反映させるため、参議院の議員構成をどのようにして衆議院とどのような違いを出すかは二院制にとって根幹となる問題であり、そのためには選挙制度の設計が極めて重要であるという認識で一致しました。具体的には、第一に直接公選制の維持、第二に選出の在り方、第三に選挙方法、第四に一票の較差問題などについて意見が出されました。
 特に、直接公選制の維持は、両院の一翼を担う一院という立場から譲れない点であることは一致した意見であり、参議院も国民の直接選挙で選任されるべきで、任命制・推薦制はもちろん、間接選挙制も好ましくないというのはほぼ異論のないところでした。また、衆議院と異なる選挙制度にすること、そのためには政党の側面より個人の側面をより重視すべきことが意見の多数を占めましたが、具体的な選挙制度については意見は分かれました。一票の較差問題については、参議院の投票価値の較差是正は喫緊の課題であるなどの意見が出されました。
 まとめ。
 本小委員会としては、次の諸点について共通認識が得られました。
 一、二院制を堅持する。(四十二条関係)
 二、両院の違いを明確にするため、参議院の改革は今後とも必要であり、また、選挙制度の設計が極めて重要である。
 三、参議院議員の直接選挙制は維持すべきである。(四十三条関係)
 四、参議院は自らの特性を生かして衆議院とは異なる役割を果たすべきである。「独自性を発揮すべき具体的分野等」に記した事項のうち、長期的・基本的な政策課題への取組、決算審査及び行政監視・政策評価の充実など。(九十条関係)
 五、現行憲法の衆議院の優越規定はおおむね妥当である。したがって、両院不一致の場合の再議決要件の緩和には慎重であるべきである。(五十九条、六十条、六十一条、六十七条関係)
 また、今後積極的に検討すべき問題として次の諸点が残りました。
 一、参議院と政党との関係。(党議拘束の緩和、参議院から閣僚を出すことを含む)
 二、参議院の構成・選挙制度。(四十七条関係)
 三、会期制。(五十二条、五十三条関係)
 四、予算、特定の条約・法案等の参議院における審議の簡略化。(五十九条、六十条、六十一条関係)
 五、「独自性を発揮すべき具体的分野等」に記した事項のうち、会計検査院の位置付け、同意人事案件、司法府との関係、国と地方の調整、憲法解釈機能・違憲審査的機能など。(九十条、八十一条関係)
 これらの課題について、今後も引き続き真摯な検討がなされることを望むものであります。
 以上、御報告申し上げます。
○会長(関谷勝嗣君) 以上で小委員長の報告は終了いたしました。
 それでは、ただいまの報告を踏まえ、二院制と参議院の在り方について、一時間四十分程度、委員相互間の意見交換を行いたいと思います。
 まず初めに、各会派を一巡して、それぞれ十分以内で御意見をお述べいただきたいと存じます。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、御意見のある方は順次御発言願います。
 荒井正吾君。
○荒井正吾君 自由民主党の荒井正吾でございます。会派を代表して意見を申し上げます。
 まず、取りまとめに当たられました舛添小委員長始め、関係者の皆様に感謝を申し上げます。御苦労はありましたが、大変立派な報告書をまとめていただいたと思います。
 それと、自民党は小委員会の報告案に賛成でございます。その上で、強調したい点を三点ほど申し上げます。
 第一点目は、第二院の意義という点でございます。
 本憲法調査会は、第二院の意義について深みのある議論をし、意味のある御意見を多数聞かせていただく機会を与えていただきました。感謝を申し上げます。
 特に、三権分立、議院内閣制、政党中心政治の下での第二院の意義というのは、我々にとって大変眼前の課題でございます。我が国の国会の機能は、言うまでもなく立法機能、内閣総理大臣の選出、行政監視の三つが主なる任務でございますが、最近の市場中心経済、効率性重視の行政、小さな政府が求められる時代におきましては、国会も効率的に役割を果たすべきときが来ておると思います。変化が激しい時代で、市場構造、環境の変化に応じ、柔軟かつ迅速な判断が内閣に求められていると思います。
 第一院たる衆議院は、内閣の判断を素早くチェックし、その時点での民意を素早く反映させる役割がありますが、第二院参議院は、外政、内政の基本的構造に関係する部分に議論を集中させ、国の向かう方向に誤りなきを期する大きな役割があると思います。また、一時の国論の暴走に対し、時間と距離を置いて冷静に議論をチェックする役割は今後ますます大きくなるものと考えます。
 また、現実の国民の投票行動におきましても、第一院の選挙は内閣の構成が主たる関心でそのような判断がされますが、第二院の選挙は政策の是非を問う投票行動も見られると思います。民意をそのような形で問う第二院の役割は、大変重要な役割かと考えます。
 参議院は、具体的な役割・機能分担の考え方を含め、実行すべきときにあるということを第一点目として強調したいと思います。
 第二点目は、内閣総理大臣の資格要件についてでございます。
 我が党を始め一部の方に総理大臣の資格要件は衆議院に限るべきだという意見がございますが、参議院も含めた国会議員が総理大臣の資格要件を持つべきだと思います。どういう政治状況が今後に我が国を覆うかもしれません。
 現実に、インドのシン首相、フランスのラファラン首相、あるいはかつてのドイツのコール首相などは、間接選挙の下での上院の議員でございました。戦前も若槻礼次郎さん始め、立派な方が貴族院議員として総理大臣の責めを全うされました。アメリカの大統領選では、六年間任期の上院議員と四年間任期の知事が争う形態が最近あります。
 総理大臣の資質のある方は、与野党問わず、参議院の方にもおられると思います。資格要件は参議院を含めた国会議員にすべきだという意見を再度強調したいと思います。特に、参議院の若い方は研さんを積んで、将来、総理大臣として国のお役に立つように研さんを積んでいただきたいというふうに思います。
 第三点は、政党政治の下における第二院の役割でございますが、政党の役割は総理候補をまず選出するという議院内閣制での大きな役割がございますが、近時、行政監視の実効性を上げるという役割が出てきていると思います。政党業務は縦割りであり、個別省庁別であり、官僚的になってきている面がありますが、そういう政党に対して距離を置くことは大変難しいことでございますが、第二院としては政党との距離感をうまく測りながら、そのお役目を果たすべきだと思います。また、内閣の解散権が及ばない院の行政監視の意味もこれから十分あると思います。
 いずれにしても、行政監視の質、内容が重要だと思います。政治に対する期待がこの点に近時高まっていることを注目して、参議院の役目を果たしていくべきだと思っております。
 最後になりますが、参議院の与野党議員は従来以上に切磋琢磨して、党派的観点を薄くして、実証的データに基づく具体的な発言を重ねることが政治、特に第二院に対する期待にこたえる道だというふうに思いますので、その点を強調して発言を終えたいと思います。
 ありがとうございました。
○会長(関谷勝嗣君) 次に、鈴木寛君。
○鈴木寛君 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。私も舛添小委員長始め小委員会の委員のメンバーの皆様方に改めて敬意を表したいと思います。
 私から申し上げたいことは、今回議論となっております参議院の在り方、更に申し上げますと参議院改革を議論するその目的は何だろうかということを改めて申し上げたいと思います。
 私は、正にこの国民主権の徹底と、そのために参議院を含むこの国の統治機構というものをどのように整備あるいは改革をしていったらいいのかという観点が今回の二院制小委員会の基調にあったと思いますし、そのことによって実り多き議論だったということを皆様方にも御紹介をしたいと思いますし、また、この憲法調査会におきましても、そうした観点から更にこの議論が発展することを強く望むものでございます。
 具体的に申し上げますと、戦後六十年がたちますけれども、我が国の政治あるいは政策の状況を見ますと、今なお官僚主権と言ってもいいほどの官僚中心的な運営がなされているということは指摘せざるを得ないというふうに思います。
 二院制小委員会の中でも議論になりましたけれども、その結果、国会での議論というものが、他の先進諸国でございましたならば、国会の審議を通じて提案をされた法案あるいは政策というものが深化をしていく、そして議論をする中でより良い議案に成長して、そしてそれが国の政策として決定をされ、そしてそれが実現をされると、こういうプロセスを経ているわけでありますし、議会というのは、正に政策を温め育てるというインキュベーションとしての機能を果たしているわけでございます。
 しかしながら、我が国のこの国会の議論あるいは行政府との国会との関係を見ますに、憲法調査会での議論を始めとして、本来、特に参議院はそうでありますけれども、議員同士の意見交換あるいは議論の質というものは高いということがこの憲法調査会の議論などでも証明をされたと思いますけれども、そうした自由濶達な議論の素地はありながらも、通常の法案の審議というのは、この会期内に内閣より提出されたいわゆる閣法をどれだけの通過率といいますか、法案提出者の側からすれば無事に会期内に通すかと、このことをめぐって与野党が日程をめぐる攻防に終始するといったのがこの六十年間の国会になってしまっているのではないか。特に、昨今そうした傾向というものがより助長をされるということは、極めて残念なことだろうというふうに思っております。
 こうした状態を改革をして、具体的にこの国会の議論によって政策が深化をする、議案が発展をしていくと、そのために十分な熟議を尽くすと、こういう観点から、いかに参議院を中心とする国会改革を果たしていくかという視点が極めて重要だというふうに思います。
 その中で、議案の修正というものに対してもう少し柔軟にといいますか、あるいはおおらかにといいますか、というような文化、風土あるいはそれを担保する制度というものについて更なる検討が必要だというふうに思いますし、更に申し上げますならば、現在は内閣より提出されました閣法というものが、議論をする、そのための日程あるいはそのための議事運営というものが優先をされているわけでございますけれども、それと並んで、我が国憲法は議員の議員立法権というものを認めているわけでございます。現に、例えば、参議院の調査会が超党派的な活動で極めて質の高い重要な議員立法を行って、そして世の中に大変な公益を与えているという事例もございます。そうした観点から、この議員立法の議事の促進ということ、あるいはそれを生み出していくための調査会の充実、更に申し上げますならば、超党派の有志による議員が議員立法にまで事実上こぎ着ける、そのために政党との関係、いわゆる党議拘束あるいは政党による議員立法活動への縛りを抑制的に行うと。これについても、正にそうした文化、制度というものがこれからは必要になってくるというふうに思います。
 それから、国民主権の徹底という観点から申し上げますと、やはり、既に小委員会報告でも触れられましたけれども、いかに多様な民意を反映をした国会をつくるかということが今までに増して、国民各層の価値観の多様化の進展と相まって、より重要になっているというふうに思います。そうした観点から、衆議院がいわゆる地域代表、それぞれの小選挙区に住む市民の皆様方の代表者を送る院であるということであるならば、参議院におきましてはそれとは違った、小選挙区制とは違った選挙方法によって、しかも地域的利害ということよりも、むしろコミュニティー・オブ・インタレスト、あるいはテーマコミュニティーといった、正に関心を共有するネーションワイドないわゆる中間集団的なコミュニティーの代表者を国会に送り込むと。そのことによって、地域に密接不可分な関係を持つ利害と、それからそうした地理的束縛を超えた利害あるいは関心というものの二つがこの国会の場に持ち込まれる、意思として持ち込まれるということが可能になるというふうに思っております。
 そういった意味で、この選挙制度あるいは議員の選出方法といったものが極めて重要な意味を持つと思いますし、この点についての精力的な議論の進展というものが強く望まれているということを私からも申し上げたいというふうに思っております。
 直接選挙制につきましても、正に国民主権を徹底をしていくんだという観点からしますと、より多くの国民の皆様方の意思が反映をされるという機会というものを縦横無尽により分厚い、そうした制度設計が必要だという観点から、直接選挙制の維持というものは当然の結論であるということも申し添えたいと思います。
 最後に、正に官僚主権・独走を抑制するための行政監視あるいは政策評価といったことが国民主権の観点から極めて重要だと、それを担うのが参議院であるということを申し添えて、私からの発言とさせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
○会長(関谷勝嗣君) 次に、山口那津男君。
○山口那津男君 公明党の山口那津男でございます。
 まず、この二院制について報告をいただきました小委員長そして委員会の皆様に、御努力に感謝を申し上げたいと思います。おおむねここで述べられたことについては私も賛同をいたすものであります。その上で、この二院制が必要であるという立場に立って、その根拠、理由を若干補足をさせていただきたいと思います。
 言うまでもなく、この議会制民主主義に求められる国会の機能というものは大きく二つあります。民意の集約、合意の形成というものと民意の反映というものであります。とりわけ今日、この民意の集約にスピード感が求められる、また民意の反映については多様なものをくみ上げる、こういう要請からいたしましたときに、一院制ではこの二つの機能というものを充足することは不可能であります。むしろ相反すると言っても過言ではありません。二院制でその二つの機能というものを分担をする、補完をし合うということが必ず必要でありまして、私はこの二院制を維持すべきであると思うわけであります。
 また、一院制と比較した場合に、二院制には制度のコストというものも掛かります。先進国、そして民主主義の成熟した国を自負する我が国としては、是非ともこの二院制を取るべきであるということも言えるわけであります。
 そこで、現行の選挙制度を見た場合に、衆議院は小選挙区制度を中心といたしております。ここでは多様な民意の反映というものはむしろ犠牲にされているわけでありまして、現実にほとんどの小選挙区で投票率が六〇%前後、得票率は過半に至りません。そして絶対得票率となると三〇%を下回ることが確実でありまして、実態としてはもう二割も達していないというのが現実であります。そうすると、八割以上の民意が犠牲にされていると。
 こういう現実の下で以前の中選挙区制度と比較いたしますと、この中選挙区制度は定数、全当選者の総得票数で見た場合に、その得票率はほとんど過半数に達しております。また、絶対得票率という目で見ても過半数に達している場合もかなり多かったわけであります。そうした意味で、今の衆議院の小選挙区制度というものは、民意の反映という意味ではかなりゆがめられた制度であると言わざるを得ません。
 そこで、その補完機能あるいは役割分担ということを考えたときに、参議院は多様な民意を吸収する、吸い上げると、この役割を重視すべきでありまして、そうした選挙制度の設計が必然となります。まあどの制度がいいかというものはいろんな御議論があるところでありますが、選挙制度を維持する、選挙によって選ぶということが一致した意見でありまして、私はそれに、更にその候補者個人を選ぶという要素をやはり重視すべきであると思っております。そうした上で、この多様な民意の制度の設計というものを、広範な議論を重ねるべきであると思います。
 さらに、私は今行政監視委員会に所属をいたしておりまして、そこで実感することを申し上げたいと思います。
 参議院は独自の役割・機能というものを重視すべきであるという点に立った場合に、行政を監視するという役割というのが極めて重要であると思います。一方で、決算の立場からこれを監視、チェックするという役割もあるわけであります。衆議院ではこの決算と行政監視というものが一つの委員会で構成されているわけでありますが、参議院ではこれを別の委員会としてやっているところに独自性と妙味があると思っております。とりわけ決算と比較した場合には、お金、税金の使い方という視点を離れて政策がつくられている、実行されていると、こういう部分もあるわけでありまして、正にそこに、行政監視委員会といいますか、行政監視の役割が独自性を持つ部分でありまして、決算とは異なった意味で政策を評価する、そして行政をチェック、監視するという役割が一つ挙げられます。
 それともう一つは、実際の委員会の運営の中で感じることでありますが、どの省庁の大臣もお呼びして議論ができるということであります。これが一種の常任委員会になりますと、省庁と連動しておりますので特定省庁中心の議論というふうになりまして、縦割りの弊というものを打ち破ることができません。行政監視委員会は正に横断的な、省庁横断的な議論をすることによって政策全体の統合性あるいはその評価というものが十全にできるという役割が期待されているわけであります。もっともっとこの点の役割を発揮すべきであるということが期待されると思います。
 それともう一つは、苦情請願という制度があります。しかし、この制度、認められながら、いまだに一度も採択されたことはありません。これは、行政の事前チェックの役割というものが予算の審議あるいは立法の過程でなされるとすれば、事後的なチェックというものがこの決算及び行政監視には期待されるわけであります。そして、その事後的なもの、行政のチェックの中で違法な部分というものは司法に任されているわけでありますが、しかしまた、その行政の運用が適切でない、妥当性を欠くという場合もあるわけであります。
 そして、基本的人権の一つとして請願権というものが認められておりまして、これは参政権的な機能も営む個人の権利であります。この権利を参議院の場で生かそうとするのが正にこの苦情請願の制度でありまして、国民個人あるいは法人が、それぞれの立場で行政の当不当あるいは適正不適正、これに対する請願ができるという仕組みでありまして、この機能をもっと活用していいのではないかと思っております。
 その最後のよりどころとして、違法には至らずとも行政の運用面でまずい点がある、それを国民が国会に、立法府に直接訴えることができる、これがその苦情請願という制度でありまして、これは是非ともその活用を期待したいと思っております。
 これら行政監視委員会に課せられた役割で参議院の独自性を発揮すべきところは十分にあるわけでありまして、決算とも違ったこの役割というものをこれから更に大きく活用する。その意味で、私も新たな使命感を感じているところであります。
 ほかにも議論すれば尽きないところでありますが、今感じるところを述べさしていただきました。
 以上で終わります。
○会長(関谷勝嗣君) 吉川春子君。
○吉川春子君 日本共産党の吉川春子です。
 二院制小委員会報告に関連して意見を述べます。
 憲法調査会は日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行うためのものであり、その報告書は調査の経過と結果について報告すべきで、一定の方向性を指し示すものであってはならないと思います。ところが、本報告書には、何々することで一致した、認識が一致している、おおむね一致した意見であった等の記述が十か所以上にわたってあります。
 また、憲法調査会は法律案提案権も審議権もありませんが、憲法調査会が改憲の意図を持って設置された経緯はあります。そして、現在、調査会での議論の実態と離れて、改憲の世論喚起や改憲の方向付けとする場として利用されようとしています。
 そうした憲法調査会の枠組みの下で設置された二院制小委員会の報告書も、改憲の方向を示すものとして利用されることを否定できず、反対しました。特定の人の政治的意図によって政治的に利用されるおそれがあるという不安を私は持たざるを得ません。
 日本国憲法は、第二次世界大戦、太平洋戦争の反省から、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることがないように決意して制定されました。六十年前の今日、三月九日夜半から十日未明にかけて、東京はアメリカのB29による無差別攻撃により、江東、深川、墨田など下町を中心に十万人以上の犠牲が出ました。これを皮切りに全国に空襲が広がり、ついには広島、長崎に及んだわけです。
 今、国会からほど近い六本木ヒルズで東京大空襲展が開かれています。私は両親と空襲の一年前に長野県に疎開しましたが、東京大空襲展を見て、もしこのまま中央区に住んでいたならどうなっていたか分からなかったと思いました。空襲に遭われた多くの人々の苦しみと無念さを思い、こうした犠牲の上に制定された日本国憲法九条を改憲しようとするどんな動きも阻まなければと決意しています。また、盧武鉉韓国大統領の植民地支配に反省のない日本への最近の批判を見ても、憲法九条を守ることがアジア近隣諸国との友好関係発展の道であると考えます。
 次に、具体的内容に関連して意見を述べます。
 参議院が独自性を発揮すべき機能、衆議院とどのような役割・機能分担を行うか、また参議院は長期的、基本的な政策課題を重点的に行うという問題についてです。
 私は、殊更参議院の独自性という形で衆議院との違いを強調する必要はないと思います。むしろ、役割や機能の分担を考えるに当たって、現行憲法に沿って、これは報告書の文言ですが、参議院は六年間と任期も長く、しかも解散がなく安定していること、全国単位の比例区と都道府県単位の地方区という選挙制度の下で何十万という支持を得て議員になっていることなど、参議院の特性を生かすことで十分であると考えています。
 更に言えば、参議院が長期的、基本的な政策課題を重点的に行うことを強調し過ぎますと、二院制の下で、結果的に衆議院は長期的、基本的な政策課題を余り行わないというような意味になることになって、他院の権限にまで影響を与えるのではないかと懸念します。
 また、参議院がチェックの院として決算審査を重点的に行うこと、決算と並んで行政監視、すなわち国政調査や政策調査を充実させ、チェックに重点を置く監視の院として権威を高める問題についてです。
 国会は、立法府であると同時に、三権分立からいって当然に行政府に対するチェックが重要な機能です。これは衆参両方に求められているものです。議院内閣制であるため、衆議院がややもすれば行政に近いうらみはありますが、だからといって、参議院がチェックの院、衆議院はチェックの院とは違うということにはもちろんなりません。
 また、多様な民意を反映させるために参議院の議員構成をどのようにするか。それと関連して選挙制度についてです。
 私は、この点で重要なのは、衆議院との違いだけではなく、参議院が多様な民意をいかに反映させることができるかであると思います。国民から見て、参議院の存在価値を高めるためには、鏡のごとく民意を反映できる選挙制度、一票の価値の平等をどのように担保するかが最重要課題であると思います。そして、国会の運営で、少数意見に配慮することも多様な民意の反映という点から欠かせません。
 こうした観点から、あえて言えば、十人未満の小会派を議院運営から排除することではなく、参加させることも重要課題だと私は考えます。もし二大政党制ということで少数意見を切り捨てるようなことになれば、多様な民意の反映とは相反することになるのではないかと思います。
 一九九七年五月、参議院五十周年を記念して上院議長会議が開かれました。この会議は、直接選挙で選ばれる上院を持つアルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、フィリピン、ポーランド、コロンビア、ノルウェー、ルーマニアの八か国の上院議長が参加されました。ベルギー議長の上院は熟慮の府であるという言葉は私の心にも響きました。どの国も上院改革、とりわけ多様な意見を反映させるための努力をしている点を実感いたしました。
 かつては貴族院、庶民院などの階級代表で構成されていた二院制、三院制が、現在は多くの国で直接選挙が採用され、日本は加えて異なる時期に異なる選挙制度で選ばれた議員によって法案が二回審議されるという制度を導入しましたが、これは人類の英知の到達点であると思います。この制度は、衆参どちらの院で審議されても、次の院でもっと深く問題点をえぐる議論がなされることが可能です。これは人権保障の担保でもあります。
 これに対し、審議の効率化を目的にして参議院の権限を弱めたり、一院制論も主張されていますが、民主主義の基礎を危うくするものであり、反対です。
 立法府がもっと議員立法を盛んに行い得る体制を整えること、ほとんどが行政府提出の法律を通してやるという現状を抜本的に改めることが必要です。参議院で議員立法をより可能にする体制を保障することは改憲を必要としませんし、参議院の存在価値を高めることにつながるのではないでしょうか。
 憲法調査会を憲法改正を喧伝する場とするのではなく、五年間の日本国憲法についての調査、議論した結果をそのまま国民に報告することが憲法調査会の報告書の在り方であることを強調して、発言を終わります。
○会長(関谷勝嗣君) 田英夫君。
○田英夫君 小委員会に参加さしていただきましたけれども、当然のことながら、各党とも二院制の堅持ということは一致しております。その上に立って、現憲法下の状況で実態を直すべきところがあるのではないかということに主として議論が行われました。今皆さんも言われましたけれども、どうそれを直していくかという、参議院の歴史は、実はその参議院改革を求めて試行錯誤をしてきた歴史だとも言えると思います。
 特に選挙制度については、今まで四回でしょうか、修正をしてやっておりますが、実際には求めるべきものが逆行して、現在は衆議院とほとんど変わらない、構造上変わらない選挙制度ではないかと思います。ということは、選出されてくる議員が衆議院と変わらないと言っていいでしょうか。これはやはり早急に改めないといけない問題だと思います。
 それでは、どういう選挙制度があるか。これはなかなか難しいことだと思います。小委員会でも選挙制度のことは出ましたけれども、もっと、現職の参議院議員だけではなくて、外部の専門家の意見も取り入れて早急に是正をしないといけないのではないか。一番最初の全国区と都道府県単位の地方区という、これが実は最も参議院らしい結果を生んでいて、途中から試行錯誤を繰り返したことがかえって悪くなっていたのではないかと私は感じています。
 例えば、アメリカの上院のような都道府県から二名ずつというようなことを主張された先輩がおられました。それが果たして日本の実情に合うかどうか、これは私は疑問だと思いますが。あるいはフィリピンのごとく、フィリピンの上院は定員二十二名だったと思います。その上院議員の一人に言われたことがありますが、我が国の上院は次期大統領の候補者の集まりですと、こう誇らしげに言っておりましたが、これも我が国の実情に合うとは思えません。
 本当に衆議院とは違った選挙制度によって、参議院らしい、つまり良識の府と言われる参議院らしい人を選出するにはどうしたらいいかという原点に戻る必要があると思います。
 それから、審議の進め方といいましょうか、参議院の構造といいましょうか、そういうものも抜本的に直していくということを大胆に考えなければいけないのではないか。極端なことを言えば、常任委員会制度というものを廃止してしまうということまで含めて議論をしていく必要があるかもしれません。つまり、カーボンコピー、衆議院のカーボンコピーと言われるのは、今の構造が衆議院とほとんど変わらないということではないでしょうか。
 それから、参議院独特のものとして設置されている調査会というものをもっと増やして、そして六年間解散がないというこの特徴を生かして、あるテーマについて長期間議論をし、それを今のように議長に報告するというだけではなくて、本当に社会の中に持ち込んでいき、あるいは議員立法で結果を出していくというような、そういうことで調査会を活用するということも必要であるかもしれません。
 今回のこの議論の中で、特に小委員会の議論の中で出てきた意見は、このまま議長に報告するという、あるいは、本日、小委員長から報告がありましたけれども、それをこの調査会で確認する、それで議長に報告するということではもったいない気がいたします。今度出てきた意見を参議院全体のものとして検討をし、実際の参議院改革に役立てていただきたい。参議院改革はずっと続けられていましたけれども、本当に今度こそ本格的に根本的に改革するような、その出発点に使っていただきたいという気がいたします。
 終わります。
○会長(関谷勝嗣君) 以上で各会派一巡いたしましたので、これより自由に意見交換を行います。
 委員の一回の発言時間は五分以内でお願いをいたします。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、御意見のある方は挙手を願います。
 森元恒雄君。
○森元恒雄君 二院制の堅持と衆参の役割分担については、各党派間で意見の違いというものはほとんどないかと思います。
 ただ、その上で、じゃ具体的にどういう点で衆議院と異なった機能を持つのか、仕組みにするのかということについては若干見解、意見が異なる点がありますが、私は、この役割分担とか衆議院との違いというものを考えるときに、一つのポイントをきちっと確認しておかないといかぬ点があるんじゃないかと。それは、あくまで国会の中の二院であって、国会の外に参議院があるわけじゃないと。まあ当たり前のことなんですけれども、そこが少し議論の中で見逃されている点があるんじゃないかな。
 じゃ、国会の本質は何かというと、これは国権の最高機関と位置付けられている国会でありまして、これを変えようという意見はないわけですから、その前提で考えたときに、直接選挙制をしくということと、それから法律、予算等についての議決権を行使すると、さらに議院内閣制を取るということではないかと。この議院内閣制を例えば大統領制に変えるというんであれば別ですけれども、議院内閣制ということを維持しながら参議院はそれとは別だというような扱いにするのは、いささかおかしいんじゃないかというのが私の意見でございます。
 そういうことからすると、この小委員会の報告にもありますが、内閣総理大臣の指名権でありますとか閣僚は出さないというような点について、そういうものはなくてもいいじゃないかというような、距離を置く意味で、なくていいじゃないかという見解もありますけれども、私はやっぱりそこはどうかなというのが率直な意見でございます。
 そういうことからすると、またさらに今度、党議拘束についても、これは各政党の問題かとは思いますけれども、法律について議院内閣制の下で党議拘束を外すということは、果たしてそれは制度的に整合性があるんだろうかなというふうに私自身は思うところでございます。
 それは、基本的なことは以上でございます。
 それから、その上で細かな点二、三申し上げたいと思いますが、参議院の地域代表性云々ということが触れられておりますが、道州制に移行する、移行した時点では参議院をそういう位置付けにするということも考え得るかと思いますが、現在の都道府県制の下で地域代表性ということを強調するということはいかがなものかなと。このことは、参議院の選挙の定数の議論とも関係してくるんじゃないかなと、こういうふうに思います。
○会長(関谷勝嗣君) 直嶋正行君。
○直嶋正行君 民主党の直嶋でございます。
 小委員会報告いただきまして、小委員のメンバーの皆さん方の御努力に敬意を表したいというふうに思います。
 私も、この小委員会報告の内容についてはおおむね賛成でございます。特に、今後ともこの二院制を維持する、それから国民の直接選挙により参議院議員も選出する、三点目として参議院の機能、これを衆議院との役割分担あるいは機能分担ということも視点に置いて考え直すという大筋において、おおむね賛成でございます。
 ただ、個人的見解でありますけれども、率直に、今日は参議院のことがテーマでございますので、私も率直に申し上げたいというふうに思います。といいますのは、今の、先ほど田先生から参議院の歴史は参議院の役割を求めた歴史であったというお話ございましたが、私が知る限りでも、歴代議長の下で参議院の在り方の審議会であるとか、様々な形で議論の場が設けられまして今日に至っていると。もちろん、成果がなかったわけではありませんが、大きな視点から見たときに、やはり参議院の在り方そのものについて今厳しく問われているんではないかと、このように受け止めざるを得ないというふうに思います。
 そういう立場に立ってみますと、ここまで議論をしていただいたわけで、まあ憲法問題としてはこの程度である程度整理をできるのかもしれませんが、参議院の在り方という点で申し上げますと、更に踏み込んで、具体的にやはり社会に対して提案をしていかないと、参議院に対する様々な批判は私は収まらないんではないかというふうに思います。そういう意味では、参議院として更に選挙制度も含めて、できるだけ可及的速やかにより具体的な提案をすべきではないかというふうに思っています。
 その中で、二、三点、私なりに具体的な話をさせていただきたいんでありますが、まず選挙制度でありますが、参議院がどういう選挙制度の下で参議院議員を選出をするかということは、この報告書の中にもございますけれども、参議院の存立そのものに直接かかわってくる非常に重要な根幹部分だというように思います。今の憲法が制定されました折も、二院制について議論がございました。その中で、やはり職能代表を始めとする国民の多様な民意を吸収するという意味合いにおいて、参議院の必要性というものが理解をされてきたというふうに受け止めております。
 したがいまして、現在、参議院の選挙制度は都道府県選出議員と比例代表議員ということになっているわけでございますが、こうした経過も含めて、あるいは私も参議院の機能というのは衆議院に比べてより多様な民意を幅広く吸収をするというところに大きな存在意味があるというふうに思います。そういう観点から申し上げますと、やはりそうした趣旨に沿った選挙制度を今後しっかり検討していくべきではないかというふうに思います。
 都道府県の代表ということについては必ずしも私は否定するものではありませんが、よく引き合いに出されます例えばアメリカの上院のような制度と比べると、もちろんアメリカの場合は連邦制というところと我が国とは、連邦制でありますから我が国とは根本的に統治制度が違うわけでございまして、直接都道府県とアメリカの各州とを比較するというのは間違っているんではないかというふうに思います。
 したがいまして、各国の、二院制をしいているそれぞれの国において、やはりそういう国内制度の差が様々な形で選出方法に出てきているというふうに思っておりまして、日本に合った、あるいは二院を置く趣旨に沿った選挙制度であるべきだというふうに思います。
 それから、ここから先はやや御批判をいただくかもしれませんが、個人的意見ということで申し上げたいんですが、一つは参議院の半数改選の問題であります。
 これは、今度は小委員会において議論になったのかならなかったのかちょっとよく分かりませんが、私は半数ずつ改選をするということについてはメリット、デメリット、いろいろあるというふうに思っていまして、先ほど参議院について、二院制を取るか取らないかという議論の中で、国民の意思を迅速に反映すると、こういう意味合いの中で参議院の在り方を議論されたというふうな報告でございましたが、国民の意思を迅速に反映するということでいいますと、私は思い切ってこの半数改選制度というのを見直すということも当然考えていいんではないかというふうに思っています。もちろん、緊急集会等いろんな問題がかかわってきますが、例えば緊急集会についても別のシステムが十分考え得るのではないかと。むしろ、緊急時に参議院だけが集まって集会を持って何かを確認するというのは本当にこの二院制の下で望ましいことかどうかということも含めて、議論の余地はあるのではないかというふうに思っています。
 それから三点目でありますが、これは衆議院のいわゆる再議決要件でありますが、まあ三分の二の要件でございます。
 これも、私はもうちょっと思い切って議論をしてみてもいいんではないかというふうに率直に思います。もちろん、その前に両院協議会の在り方を、本当にこれでいいのかということを、これは参議院だけで議論をするわけにいきませんが、詰めてみる必要はあると思います。
 これまでほとんど両院協議会にかかった案件は物別れで、法律の場合は廃案になっているわけでありますが、たしか九三年か九四年の初めの細川政権のころに、衆議院の選挙制度を改革する政治改革関連四法案が、衆議院は通過をいたしましたが参議院で否決をされました。で、このとき実は、両院協議会でもまとまらなかったんでありますが、両議長さんのあっせん等もありまして、当時の総理大臣の細川総理と自民党総裁の河野総裁が話合いをされまして、衆議院、参議院に提案をした内容とは異なる形で案を再度おつくりになって両院に提案をして今の法案が成立したと、こういう経過もございます。
 政治的必要性があればそういう芸当もできるわけでありますけれども、制度的に両院協議会で取りまとめることができるような方法を試行するというのも一つの方法だと思いますし、もしそれができないのであれば、私はある程度、例えば六十日とか九十日という日を置いて、この三分の二要件を緩和する形で衆議院の議決を優先するということがあってもやむを得ないんではないかと。
 といいますのは、今の憲法改正の発議要件が両院の三分の二ということになっています。で、これもこの調査会で議論がございましたが、これは緩和をして過半数にしてもいいんではないかと、こういう議論もございます。まあ、そういったことも含めて考えますと、政治実態の状況からいって、三分の二というのはなかなかこれは変えるに変えられない大変重い数字だと思いますが、憲法ですらそういう議論あるわけですから、この今申し上げた再議決要件についても見直す余地はあるのではないかと、同僚議員のおしかりを覚悟しながら、今申し上げました。
 以上でございます。
○会長(関谷勝嗣君) 藤野公孝君。
○藤野公孝君 自由民主党の藤野公孝でございます。
 今日、二院制と参議院の在り方に関する小委員会の調査報告書がこういうふうにまとまる過程で私も参加させていただきました者として、皆様方の多大なる御協力を感謝すると同時に、取りまとめに当たられた方の本当に御苦労を思うわけですが、ただ、これが何か終わりではないんで、むしろこれからどうやるかということの方がよほどまた重要なんだろうと思う、そういう意味で、二、三ですね、これが、本当に書いてあることが前に進むようにという観点から、一、二、思いますことを申し上げたいんですが。
 参議院が衆議院のカーボンコピー云々と言われる背景に、先ほど田先生が言われましたように、常任委員会というようなことで、法案についても衆議院がやったこととほとんど同じようなまた質問を参議院でもするみたいなことを、国民の目から見るとだれでもそう思うわけです。ただ、その中にあってのやはり参議院として、もう少し専門性とか深めた質問をしたいとかいうような努力はしているんですが、それはなかなか外には見えないということで、この常任委員会制度そのもののことについても今御指摘があって、ああそうかなと思うわけですが、私は、そういうところでの議論には今すぐ思い付く妙案がないので、特色を出すもう一つの点、すなわちチェックの院としての参議院の強化という観点の方を、ちょっと私の私見でございますけれども、申し上げたいんですが。
 先ほど来、御議論というか御意見がございますように、やはり予算というか執行の衆議院と、やはりチェックの参議院ということ、もっといい案があればいいでしょうけど、やはりこれだけ何十年やってきて今こういう結論ということは、やはりこの考えをしっかり、この案をしっかり私たちは固めて中身のあることにしていかなくちゃいけないという今思い、強い思いでございます。
 しからば、いろいろ、決算の審議の内容の充実、あるいは拘束力を持たせる、議案にする、それから予算への反映をさせる、そういうことにつきまして、そのとおりなんですが、どうやって、ハウツーですね、どうやってそうするかということについても少し議論が要ると思うのは、やはりチェックチェックと申しますけれども、それぞれの各省の予算の執行に当たって内部のチェック機能もあるわけでございます。
 そういう内部の監査というかチェック機能と、外部からの、それが会計検査院であったり、いろいろ、国会から会計検査院にお願いしてやるチェックだったり、いろいろな形がありますが、そういう内部で、政府、各省内部でやるチェックと外部との監査の関係でありますとか、それから、単に計数というか、予算の処理だけが適正に行われているかというだけじゃなくて内容にも踏み込めということがここにも書いてございますが、それが行政監視委員会でもおやりになっている政策評価の問題まで踏み込むと、その辺をまたどうしていくのかというようなこと、問題点が今ここにいろいろ書いてございます。
 これを、今後また、これは憲法調査会というところでやるべきものかどうかは御議論があろうと思いますけれども、私はこれが正にスタートになって、今言いましたように、それぞれ今やっている相互関係があるわけでありまして、実際に推し進めようとするとなると、自分のテリトリーに入ってくるなというような反発する力が一杯働いてまいりますので、そこのところをどうやって乗り切っていくかというハウツーというところまで踏み込んだ議論をしないと、いつまでたってもチェック機能という、そのチェックの実効性というものがなかなか上がってこないだろうと思いますものですから。
 私が行政に一度おりました経験からちょっと見ましても、これから今度は立法の府に場所を私の方は移して、その辺をうまく、具体的な知恵というか案を出していくこと、皆さんのお知恵をかりてやっていくことがこの参議院を強くしていく、その機能を強化していく道ではないかという感想を持っておりますので、一言申し述べました。
○会長(関谷勝嗣君) 若林秀樹君。
○若林秀樹君 民主党の若林秀樹でございます。
 一年間の議論を経て今回のこういう報告書が出たことを非常にうれしく思っているところであります。
 先ほど吉川議員の方から反対の旨の意見が出されましたけれど、それは立場として分かるところもありますが、実質的に、これまでの共産党さんの議論を踏まえても私は実質的にこれが、私が言う立場でありませんが、全会一致で採択されたものと私には実質とらえているところでございます。
 私は、一年前の委員会におきまして、参議院が自らの存在を否定することの難しさを申し上げました。しかし、当事者だからこそ責任持って議論できることもあるんではないかなというふうに思います。当事者でない衆議院の方にとっては客観的に見れる良さはありますけれど、ややもすると安易でムードに陥った議論になりやすいんではないかなというふうに思います。そういう意味では、一年間、最初に一院制ありきの議論ではなく、結果として二院制が導かれたこの報告書は私は非常に価値があるんではないかなというふうに思っております。
 一院制の論者の人の話を聞いても、今のままの二院制であれば必要ないということを言っているわけで、むしろ、その明確な違いが分かればむしろ参議院は必要なんだということが、大方話すとそういう意見を持っていらっしゃるという意味において、今回この報告書が衆参の役割をもっともっと明確にする、中長期的な政策課題、チェック、再考の府、良識の府としてのある考え方がこれで導き出されたということは、これも今の一院制論者の方にとってもある納得感のある結論ではないかなというふうに思います。
 そのときにおいて、権限、機能の、その役割、権限をどこを強めるかという話が出ているんですが、一方、これは、これまでの機能にオンすることではなくて、むしろ参議院が弱めるところ、やらないことを明確にすることも一方で必要ではないかなというふうに思いますので、予算なり、全会一致で出た案件につきましては簡略化、省略化、あるいは極端に言えばなくてもいいんじゃないかということも含めて、今後考えるべきではないかなというふうに思っておるところであります。
 そして、もう一つ、私は、グローバル化あるいは世界の、各国の依存関係が強まったこの中で、私は日本という立場を踏まえて、もっともっと国会、立法府が外に出て議論して参加していくことが必要ではないか、その役割を担うのが私は参議院ではないかなというふうに思っておるところであります。
 ややもすると、国会は視点が内向きになりやすい。しかし、国会の役割が国益の確保であれば、国益の存在はどこにあるかといえば、やはり世界であります。そういう意味では、国会の会期中に縛られるということの難しさもありますが、むしろ出て行って、むしろ日本の立場をアピールしていくことも必要であると思いますし、日本の国益のみならず世界の平和と安定に貢献する日本の立法府という観点から、私は役割があるんではないかなと思っております。
 ヨーロッパにはEU議会があります。私は、目に見えないんですが、世界国会というものがあるんではないかというふうに思います。そういう意味では、日本の立場を踏まえた日本代表の議員が世界国会へ出て行って議論して、結果的に、それの具体的なルールを決めるんじゃないんですが、そこで議論したことが国際的な条約なりいろんな国際機関に反映し、それが世界の平和と繁栄につながっていくんではないか。やがてそういう方向の中で、私はやっぱり日本がもっともっと出て行くべきではないかなというふうに思っております。
 そういう意味では、参議院が六年間という長い任期を持った院であると。やはり世界といえども人間関係がベースでありますので、それは国といえどもやはり同じ方がどんどんやっぱり長期的な視点で関係づくりに強化していくということは私は必要なんではないかなというふうに思いますので、そんな役割も個人的には持っているということも披露させていただきながら、私の意見とさせていただきます。
 以上です。
○会長(関谷勝嗣君) 仁比聡平君。
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 この小委員長報告についての私どもの立場について今、先生からお話もあったんですが、私は、この憲法調査会の性格、その中に置かれた二院制小委員会の性格というものというのは極めて大事にされなければならないものだというふうに思っています。日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行うというこの委員会のその任務にふさわしい議論と報告というものがなされなければならないというふうに思うわけです。
 加えて、憲法をめぐる二院制の論議ですけれども、これが参議院の在り方に限って論じられているものではなくて、改憲論全般、とりわけ統治機構と三権分立、あるいは議院内閣制の在り方をめぐる改憲内容の中に深く位置付けられている問題であるという点を私は指摘をしたいと思います。
 この点での改憲論にはいろいろな内容あるいは程度があると思いますけれども、総じて国権の最高機関としての国会の権能、機能を切り縮める方向が打ち出されているのではないかということを懸念をしています。
 二月の九日のこの調査会の場で、統治システムの今の現状が憲法に照らしてどうなのかという点について、私は、内閣が本来の役割を果たしていないこと、そして国会審議が形骸化をされていることを紹介をし、そしてその原因について意見を述べさせていただきました。ここを正さずに統治システムを一体どうしていくのか。その点について改憲論の有力な論として、内閣、特に総理大臣の権限強化やリーダーシップを強化をすること、それが国内外の情勢の変化に即応する迅速な政治的意思決定だと論ずる向きがあるわけです。
 そのような議論の中で、それなら我が参議院も含めて国会を一体どうするのかという点について、例えばということで御紹介をさせていただきたいのは、十一月に出されました自民党の憲法改正草案大綱、その中での二つの点なんですが、一つは、我が憲法の五十六条、定数、定足数の規定を、これを改めて、議事を進める際には究極的には議長と発言者さえいればよいものとするというような御意見があるやに伺っています。ほかの議員の発言も聞かずに、国会審議の活性化の私は重要な要素であると思いますが、少数会派の尊重あるいは少数意見の尊重、そういうものはあり得るはずがないのであって、これは国会の審議の機関としての役割を大きく阻害するものになるのではないかと思います。
 もう一点は、閣僚の議院出席あるいは発言の義務に関してですけれども、国務大臣に対する国会の出席要求について、困難な場合には副大臣などに代わって出させればいいんだというような、憲法上、国会出席義務、国務大臣の国会出席義務を緩和をしようという議論もあるようです。先ほども御指摘がありましたけれども、国会での立法状況というのはその多くが、といいますより圧倒的な多くが閣法によって占められているという状況の下で、自ら法案を提出をしながらその審議に当たって最高責任者が答弁に立つことすら緩和をするというような国会についての憲法規定を変えていこうという方向があることは現実なんだと思います。
 そういった国会をめぐる憲法改憲論と、この参議院のあるいは二院制の役割分担あるいは機能分担論というものがどういう関連になっているのでしょうか。私は、二院制を否定をされない方々の中にも恐らく国会の在り方についてのいろんな御意見の皆さんがおられるのではないかと思いますが、参議院の独自性を強調し、そして衆議院との役割分担、機能分担ということが強調をされていくなら、衆議院、参議院、それぞれの院が最高機関として本来の責務を果たしていくという、本来の民主的統制の在り方、民主的政治過程での国民の意思と、そして政策形成の在り方、ここが大きく損なわれていく懸念を持っています。この点を申し上げて、意見とさせていただきます。
○会長(関谷勝嗣君) 山本順三君。
○山本順三君 二院制と参議院の在り方に関する小委員会ということで、舛添小委員長の下でまとめていただきました。長らくの審査、審議に心から敬意を表したいというふうに思っております。
 そこで、まとめの欄で、五項目、共通認識が得られたというようなことでございますし、また、今後積極的に検討すべき問題として、また五項目が上がっておるような状況でございます。
 一つ残念なことは、先ほど共産党の二人の方から、委員さんからお話がございましたが、できるならば、せっかくこのような内容の濃い議論を詰めてきたわけでありますから、全会一致でこの調査報告書の提出の議決ができたら良かったなということを心から私は思いますし、共産党の御意見、改憲の方向を示すものだからというような、そういう提出には反対する意見述べられましたけれども、私自身が目を通させていただいて、先ほど申し上げたまとめの五項目、それからこれから議論していかなければならない五項目、その内容については、今後参議院がどうあるべきかということまで議論が展開していくわけでありますから、その点だけが極めて残念だというような感想を申し上げたいと思います。
 そこで、この報告書でありますけれども、基本原則として一院制を支持する意見は極めて少ない、それどころか二院制をしっかり堅持していこうということでございまして、これは参議院の憲法調査会の中で置かれた小委員会の結論でありますから当然のことといえば当然のことだというふうに思いますけれども、ただ、そのときに、正に衆議院と参議院、この両院の違いというものを明確にしていくこと、これが国民の理解を得る上で最も重要であるというような、このことには大いに我々も着目をし、そして具体的な対応策というものを練っていかなければならないだろうというふうに思います。正に参議院の存在意義というものをしかとアピールする、そういうことが必要であろうと思います。
 そういう流れの中で、参議院の機能、特に独自性を発揮すべき分野ということで一項目から七項目までいろいろ記述がございます。その中で何点か私なりの意見を申し上げたいと思いますけれども、まず第一点、長期的、基本的な政策課題というものを重点的に行おう、これは正に六年間解散がないという参議院の特性があるわけでございます。
 そういった意味では、今議論になっております年金問題も含め、あるいは条約等々の外交案件、それから教育についての今後の方針、進め方、こういった大きな問題あるいは長期的な問題というものを参議院がしかと議論していく、そういう方向性を求めていくということは極めて重要なことであろうかというふうに思いますし、先ほども意見出ておりましたけれども、決算審査あるいは行政監視、政策評価、こういった分野につきましても、特に決算を通じて次年度の予算にその結果を反映させていくということは非常に肝要なことだと思いますし、また、ODAの調査あるいはまたその評価というものが次の、次年度の予算に反映していくと。もうこれは具体的に参議院では行われつつあるところでありますけれども、そういったことをより具体化していく、そういう作業が必要になってくるんだろうというふうに思います。
 それともう一点、私が非常に着目をしておりますのは、六番目の国と地方との調整という分野でありまして、何といっても、参議院の地域代表としての我々の立場ということからいきますと、衆議院の小選挙区制とはまた違った立場が我々にはあるわけでございまして、そういった意味で、国と地方の役割分担というのが今非常に言われておりますし、三位一体改革の中でその問題点を議論する前に様々な国と地方の問題点が噴出をしてしまったというようなこともございました。
 そういった意味で、権限調整であり、あるいはまた財政の調整であり、国と地方の関係というものを参議院でしっかりと扱っていく、こういう方向性が出ることが参議院の存在意義にもかかわってくるんではないだろうか、その点をこれから全面的に対応していただきたい、議論もさせていただきたい、このように思っております。
 それから、最後にもう一点だけ申し上げたいと思いますけれども、参議院の構成の在り方ということで選挙制度でありますけれども、何といっても、これは衆議院でも一緒だと思いますけれども、選挙制度によって正に、言わば衆議院も参議院もその性格が大きく変わってくるということがあり得ると思います。小選挙区になったがゆえに二大政党の方向を向く、逆に言えば、従来の中選挙区でいくならば、いわゆる少数の、少数党に対してもある程度の配慮ができる。
 私は、個人的な見解でありますけれども、参議院の場合には、衆議院のような二大政党化というような方向ではなくて、従来の中選挙区制度によって様々な政党が様々な意見が展開できるような、そういう良識の府であってもらいたい、そういったことが具体化できるような選挙制度をどういうふうに構築していくか。もちろん、直接選挙制は維持すべきというふうに思っておりますけれども、その後の選挙の制度の在り方、このことについては大いに議論を進めていくべきであろうというふうに思います。
 以上です。
○会長(関谷勝嗣君) 松井孝治君。
○松井孝治君 民主党の松井孝治でございます。
 まず最初に、この小委員会に私も委員として参加させていただきまして、舛添小委員長を中心にいろんな議論を、各会派の議論をフェアにまとめていただきました。そのことをまず感謝を申し上げたいと思います。したがって、私が小委員会で主張申し上げたことをここでもう一回繰り返すつもりはございません。
 今、私が申し上げたいのは、ここに記載された事項を中心に、当然のことながら、私どもの考え方としては憲法改正に参議院の各会派も積極的に取り組むべきであるという立場であるわけでありますが、その憲法改正、どうしても一定の時間がまだ掛かります。私どもとしては、できればその憲法改正を待たずに、ここに記載された問題意識で、我々が現実に憲法改正をせずとも取り組める改革はすぐにでも取り組むべきではないかという点であります。
 先ほど、藤野議員から決算の報告説、議案説の議論がございました。これも本質的には憲法の規定を場合によっては改正しなければ解決しない問題かもしれませんが、ただ他方で、決算の審議と、それと予算、次年度予算の審議の前に、例えば参議院における決算審議は終了していることということを国会運営上の慣行として位置付ければ、決算の時期をどれだけ前倒しできるかにもよりますが、事実上決算の、前年度決算の審議を予算に反映させる、そこの拘束力を持たせるという効果は一定程度期待できるわけであります。
 同時に、これは私は個人的には参議院の会期制というのは廃止してもいいんじゃないか、衆議院と参議院が同じ会期で動かなくてもいいんじゃないか、特にチェックの院としての参議院というのは会期をなくしたらいいんじゃないかという提案をさせていただきましたが、これも、例えば前年度決算についていえば、閉会中審査を機動的に行うことによって翌年の一月以降の予算の審議入り前に参議院において決算審議を事実上完了できるというようなこともできるわけですので、そういう意味では、閉会中審査を活用して参議院のチェック機能を高めていくということは現行憲法上もできるものだと思っております。
 法案の議論の仕方もそうでありますが、しばしば我々直面しますのは、最近政府側も巧みになって、野党側が賛成しそうな条項と我々が反対しそうな条項をセットにして出されるケースがあるわけでありまして、本来であれば賛成し、より深掘りをして法改正をすべきというような項目があったとしても、そこが提案できない、修正提案できないようなケースも多々あるわけでありますが、これも、参議院、先ほど田委員の方からお話がございましたが、常任委員会も廃止してもいいんじゃないかというところまでいかなくても、審議の在り方とか、あるいは場合によっては採決の在り方を変えることによって逐条的に、この部分はもっと深掘りをして与野党超えて改革を進めようじゃないか、この部分については賛成、反対あるんじゃないかというようなことで、衆議院とは違った議論をし、それをまた衆議院に送る。最終的には党議拘束を緩和しなければそれは実現しない話でありますが、衆議院とは違った議論の仕方、あるいは党議拘束を具体的に変えていくためにも、参議院の議論の在り方を変更していくことによって問題を解決する突破口を開けるんではないかと考えております。
 会計検査院の在り方についても同様であります。今の会計検査院についての規定がどの程度まで会計検査院の属性を縛るのかということについては、憲法解釈上もいろいろ議論があるところだと思いますけれども、今決算委員会で事実上、例えば大臣が出席しないでも個別的な事項について議論をするという実績をつくりつつあります。会計検査院が出されている報告に基づいて個別的な事項についてもっと、先ほど同僚議員の鈴木議員から話がありましたが、日程政治的に大臣の日程が取れないから審議ができないということでしばしば、我々も現実にはそういうことを主張しながら、決算委員会の審議も縛られているわけでありますが、そこを取り除いて、決算のようなものについては会計検査院の報告に基づいてもっと日程を、稠密に審議日程を入れ込んでいって議論をすることによってチェックの院としての参議院の機能が強化されるという部分はあろうと思います。本質的には、この会計検査院をどのように活用するかということについて、あるいは国会との関係について会計検査院法の改正や、場合によっては憲法の規定の在り方も含めて議論しなければいけないけれども、そのことについても先取りして改革は行えるし、また私も決算委員会のメンバーとして、そこは与野党の枠を超えて議論をしていかなければいけないと思っております。
 最後に、国と地方との関係についても同様でございます。
 これも、具体的に提言があったところでありますし、最終的には憲法に国と地方の関係の調整についてより参議院に大きな役割を担わせるというような規定を置くことも一案でありますが、現実に地方交付税の算定というのか、行政の一部局が行っているわけでありますが、そういったものについて、参議院がしかるべき委員会によって、もっと具体的に地方交付税の算定基準がどうなっているのかということを国会の意向によって幾らでもこれは審議はできるわけでありますから、参議院が国と地方の関係の調整をするという、そういう性格を強めたいということであれば、そういう委員会を例えば設置して、そこで交付税の在り方を集中的に議論をする、そのようなことは現実には衆議院は行ってないわけですから、幾らでも参議院が与野党超えてそういう委員会を設置する気になったらできるわけでありまして、具体的にこの小委員会あるいは憲法調査会で提起された問題点を憲法改正につなげるという必要性とともに、今の憲法でも国会の審議の仕方の工夫によってできることについては、もう言ってみれば今国会からでも取り組んでいくという姿勢が必要ではないかというのが私の意見でございます。
 ありがとうございます。
○会長(関谷勝嗣君) 簗瀬進君。
○簗瀬進君 発言の機会をいただきましてありがとうございました。民主党の簗瀬進でございます。
 まずもって、舛添委員長始め小委員会の皆様には一年余にわたる大変な御努力をいただいたこと、心から敬意を表したいと思います。私も昨年の臨時国会から会長代理という立場で、一番最後のころ、手を挙げさせていただきましてお邪魔虫的な発言もさせていただきましたけれども、小委員の皆様の大変な真剣な、そしてある意味で党派を超えた議論ができていたな、非常にすばらしかったなと、このように思っておる次第でございます。
 最後という大詰めに近づいてまいりました。そういうこともありまして、選挙制度、特に参議院のみならず衆参合わせての選挙制度をどう考えていったらいいのかという視点で発言をさせていただければと思っております。
 まず、私自身の経験でございますけれども、初めて国会に出たのが九一年、自民党の衆議院議員ということでございまして、当時、いわゆる衆議院の小選挙区制を導入するのかどうかということで大変激しい議論が自民党の中で行われていたということを今も生々しく思い出しております。
 結果として、御案内の比例代表並立制というようなものができました。私は、それは大変ある意味で派閥政治を乗り越えるということでは大きな成果を現在に至るまでもたらし続けていると思っておりますけれども、当時のことを我が事ながら反省をしてみますと、やっぱり衆議院一院の選挙制度だけで完結をするかのような一種の高ぶりの中で議論が進んでいったような気がいたしております。
 私は、複雑な選挙制度というようなものは国民を最終的には政治から遠ざけてしまうと思います。正にそういう意味では、国民にとって分かりやすい選挙制度をいかにつくっていくのか、それこそ政治不信を解決をするための、あるいは低投票率を解決をするための最大の処方せんなんではないのかなと、こういうふうに思っておりまして、そんな観点から、今改めて衆参合わせて選挙制度をここでもう一回考えるとしたらどうなるんだろうかと、そういう議論をさせていただきたいと思っております。
 まず第一番目に、二院制の堅持と、それから両院の直接選挙というようなものが、私もこれは大賛成でございまして、それは堅持すべきであるという小委員会の報告については全く異存がございません。その上で、この二院制を前提として選挙制度を考えていったとするならば、基本的なポイントが幾つかあるだろうと。私は三つほど指摘をさせていただきたいと思っております。
 第一番目は、全体的な視点を持って両院合わせての制度設計をすべきだろうと。衆議院独自で、あるいは参議院独自で、切り離してということではなくて、衆と参をセットとして考えながら同時並行的に制度設計をしていくという視点が今まで余りにも少なかったのではないのかな。この反省に立って、全体的な視点に立った制度設計をするということをもう一回やっぱりやった方がいいんではないのかなということが第一点でございます。
 第二点は、明快な差別化だと思います。投票する国民の目から見て両院の違いが選挙制度の点で余り明瞭に見えてこないということでありますと、正に国民のそれぞれの院に対する持っているイメージがもう選挙をするその当初の段階からぼやけてくるということでございまして、そういう意味では、明快な差別化をした制度設計をしていくというのが大変重要なポイントになるんではないのかなと思います。
 それから第三点は、機能分担を明確に意識をしながらやっていく、制度設計をしていくということだと思います。その機能分担、衆参の役割の分担ということについては、先ほど来、先輩同僚、もう大変すばらしい議論がここで展開をされておりますが、私は、政治の機能のうち、どの部分をどの院に担わせるのかというその政治の機能、大きな政治の国民生活において果たしている役割の中で、政治の機能のどの部分を衆議院に担っていただき、またどの部分を参議院に担っていただくのかという、そういう政治の機能の分担の中で両院の役割分担を明確化していくという視点が三番目に必要なんではないのかな、こういうふうに思っております。
 これらの三つの点を前提にして物を考えていきますと、やはりいろいろな考えはありますけれども、最後の公聴会で五十嵐公述人が端的におっしゃっておりましたが、民意の集約をする機能は第一院に、そして様々な民意の多様な意見を反映をしていくという機能は第二院にと、こういうふうな政治の機能を役割分担をするということが極めて明確なんではないのかなと、現時点ではそのように考えております。そして、それを制度設計という形で表してみると、やはり衆議院は完全小選挙区制ということで、そして参議院は完全比例制でと、これを大前提とした制度設計を進めていくというのが現時点では最もいいんではないのかなと。
 ただ、比例制度を導入したときに、比例のやり方によっては更にそれが政党政治を際立たせるという、そういう側面も持っておりますので、比例の制度設計についてはいろいろとあるだろうと思いますけれども、基本的には民意の集約は一院に、そして多様な意見の反映は二院にと、こういうようなことで進めていくというようなものがベターなんではないのかなと現時点では考えております。
 最後に、その制度設計、選挙制度を決めていく上においての大切な手順についての指摘をさせていただきたいと思っております。
 ある意味で政治家都合で選挙制度がもてあそばれてきたと言ったら失礼かもしれませんけれども、恐らく、国民の立場に立ってみれば、何でこんなにころころ変わって、しかも変わるたびに分かりづらくなっていく、そして同時選挙をやったらどっちがどっちだか全然分からないというふうな、そういう制度をつくってしまっているというのは一体何なんだろうかと、こういうふうに思っておられるんではないのかなと思います。
 私は、そういう意味では、かつての権威ある第三者機関的な選挙制度審議会のようなそういうようなものをきちっとつくって、そこで議論を詰めた上で提案をしていくという手順が必要であろうと思います。そして、最終的には、これは国民投票法にも絡む話になってまいりますけれども、制度を選ぶ際にも、主権者の国民が選べるような、すなわち、選挙制度を国民投票によって決定をする、これはなかなかレベルの高い問い掛けを国民にすることになるかもしれませんけれども、それでもやはりそのような手順を踏んだ上で、国民のものとして選挙制度をしっかりと意識をしてもらいながら選んでいただくと、こういう視点が必要なのではないのかなと、手順について二点ほど申し上げまして、意見を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
○会長(関谷勝嗣君) 他に御発言はございませんか。
 それでは、再度、吉川春子さん。
○吉川春子君 共産党の吉川です。再度発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 私は、参議院に当選する前に参議院というものを学校の教育などで、憲法の授業などで習ったのは、まず衆議院が優越しているという規定から授業は入るわけです。したがって、参議院の重要性、どういう役割を果たしているかということよりも、衆議院よりはまあちょっとというような認識で当選してきたわけですけれども、しかし、それはもう完全に違いました。非常に参議院の存在というのは日本の民主政治の中で大きな役割を果たしているという、要するに、そういう、何というんですか、衆議院の優越規定ということから授業に入るものですから、ちょっと別のように思っていたんですけれども、私は長いこと参議院議員をさせていただいておりまして、非常に参議院の果たしている役割は大きくて、これはもう日本の民主政治の中では欠かせないものだという確信を持ちながら参議院議員をしております。そして、その中で参議院を改革しなくてはいけないということで改革協の議論にも加わってまいりました。
 それで、参議院の改革協の議論と憲法調査会の二院制小委員会の議論とは決定的に違いがあるわけです。それは、改革協は憲法の枠の中で今の参議院をどうやって国民の期待にこたえられるような、民意を反映できるような機関にしていくかという議論であったわけです。しかし、憲法調査会となりますと、どうやって憲法を変えても参議院を変えていくかというようなところに議論が行きますので、天井がないわけですね。そこが今まで何遍もやってきた参議院改革協と二院制小委員会の議論の違いではないかというふうに思います。ですから、その点ではもう決定的に違うと思います。
 まあ、すべての道はローマに通ずという言葉もありますけれども、私は、先ほど申し上げましたように、やはり憲法九条改正、そういう大きなうねりがあるわけで、そういう中での二院制の報告書というものについて考えざるを得ません。そういう意味で、先ほど、なぜ私たちが賛成できなかったかという議論、意見を申し上げまして、そのことは繰り返しませんけれども、やはり国民に期待される、そして民主主義の確固たるその支え手である参議院というものにしていかなくてはならない、この思いは強く持っておりますが、以上のようなわけで私たちは賛成はしなかったということを重ねて申し上げます。
○会長(関谷勝嗣君) 他にございますか。それでは、今日の意見交換はこの程度といたします。
 なお、小委員長から概要説明のありました調査報告書につきましては、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○会長(関谷勝嗣君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時四十七分散会

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