第162回国会 参議院憲法調査会二院制と参議院の在り方に関する小委員会 第2号


平成十七年二月十六日(水曜日)
   午後一時開会
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   小委員の異動
 二月七日
    辞任         補欠選任
     山本  保君     山下 栄一君
 二月十五日
    辞任         補欠選任
     松井 孝治君     松下 新平君
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  出席者は左のとおり。
    小委員長        舛添 要一君
    小委員
                愛知 治郎君
                荒井 正吾君
                武見 敬三君
                藤野 公孝君
                森元 恒雄君
                山下 英利君
                郡司  彰君
                鈴木  寛君
                富岡由紀夫君
                松下 新平君
                若林 秀樹君
                山下 栄一君
                吉川 春子君
                田  英夫君
    憲法調査会会長     関谷 勝嗣君
    憲法調査会会長代理   簗瀬  進君
   事務局側
       憲法調査会事務
       局長       桐山 正敏君
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  本日の会議に付した案件
○二院制と参議院の在り方に関する件
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○小委員長(舛添要一君) ただいまから憲法調査会二院制と参議院の在り方に関する小委員会を開会いたします。
 二院制と参議院の在り方に関する件を議題といたします。
 本日は、これまでの調査を踏まえ、二時間十五分程度、小委員相互間の意見交換を行います。
 まず初めに、各会派を一巡して、それぞれ十五分程度で御意見をお述べいただきたいと存じます。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、御意見のある方、順次御発言願います。
 愛知治郎君。
○愛知治郎君 お疲れさまでございます。自民党の愛知治郎でございます。
 本日は、十五分ほど時間をいただきましたので、私自身の話、考え方をお話をさせていただきたいというふうに思います。
 私自身は自民党ですのでというわけではないですが、憲法に関しては基本的に、自民党の考え方、自主憲法制定という話もありますけれども、このままじゃいかぬだろうと、しっかりと憲法見直しをしていこうという立場に立っております。そして、この憲法、しっかりと議論を踏まえた上で改正をしていくべきだというふうに考えておるんですが、いろいろ、いろんな方々それぞれのお立場があって、このまま全く変えないでずっと継続していこうという方ももちろんおられると思います。
 いずれにせよ、しかしながら、最終的には、我々のこの国会議員の議論というのはもちろんなんですが、最終的に決めるのは国民の皆さんですから、国民がこの憲法というものをしっかりと分かっていただけなければ仕方がない。そして、その分かった上で最終的な判断をしてもらうということになると思います。
 そこで、私自身は本当に危惧というか、これから大変な作業が待っていると思っているんですが、やはり国民の皆さん、一人一人の皆さんにもっと憲法をよく知ってもらわなくちゃいけない、それを伝えていかなくちゃいけない。また、ここでの議論すべて分かっていただければいいんですけれども、なかなかそれは事実上不可能だと思いますので、分かりやすい形でどういうものなのかというふうに接点を求めていかなければならない、お話をしていかなければならないというふうに思います。
 そこでなんですが、その一助になるべくというか、この際ですから、確認の意味でも、また、私自身が一般の方にお話しするような話になりますけれども、そのお話を、憲法とは何かというものからお話をさせていただきたいというふうに思います。
 大体、国民の皆さん、一般の方ですけれども、憲法をどのようなものとしてとらえているかということで、お話をするたびに思うんですが、単に法律の強いものであると、法律の効力の強いものであるという意識を持たれている方が多分大半なんじゃないかというふうに思います。
 本質的にその憲法と法律というのは全く別次元のものであって、仮に、そうですね、言い方難しいんですが端的に言いますと、憲法とは国家、国家権力に対する法律のようなものですね。法律が国民に対する規制であるのに対して、憲法とは、その法律を作る側ですね、執行する側、国家権力に対する国民側からのその規制、法律という言い方ができるんじゃないかというふうに思います。
 なかなかこれは言い方は難しいんですが、いずれにせよ、そういったベース、次元が違う。国家に対する法規範であるか国民に対する法規範であるかという区別からすると、憲法の本質はやはり制限規範であると。国家に対してこれだけはしてはいけないよというような権力に対する規制、それから、最低限の義務を規定したものだというのが本質だと思います。
 これで、例なんですが、例えば憲法の歴史、随分古いんですが、一七八九年、有名なフランスの人権宣言でですね、その十六条において、権利の保障がされず、権力の分立が定められていない社会はすべて憲法を持つものではないという表現もありますけれども、いずれにせよ、そこの本質的な部分、権力の構造というのをしっかりとコントロールしていくもの、その憲法の本質というのを我々は国民の皆さんを巻き込んでしっかりと議論していかなければならないと思います。
 その本質から導き出される部分でその権力の分立があるんですが、これはやはりその権力、一部に集中するのではなくて、ある程度分散することによって抑制、均衡を図ると、そのことによってその権力の濫用を防ぎ国民に有益なシステムを作り上げようという精神が反映したものだと思います。
 例えば君主制、昔々の君主制ですけれども、たとえ九人名君が続いて物すごい善政を、いい政治を行ったところで、たった一人暴君が出てしまえばすべてを失ってしまうと。そういうことから、人に対する支配、これに対して疑いを抱いて、システムでしっかりとその国、システムというか国民を守っていきましょうと、そういう精神の表れだと思います。だからこそ、その法の支配、まあそれもいろいろ意味があるんですが、構造的に権力の濫用を防ぐという形を憲法に封じ込めて、国民が国家権力に対してそれを提示した、突き付けたという形であると思います。
 この延長で、もちろん国会、この二院制のことについても議論をしなければならないというふうに思います。いわゆる民主的第二院ですね、この役割に関して、またさっきの権力の分立と同じように、一義的にはやはりその一院の行き過ぎを抑制をし、慎重審議をした上で誤りなきを期すると、そういった役割が非常に大きくなってくると思います。
 しかも、特に今顕著に現れやすいというか、危惧される部分が一つあるのが、私自身は持論としては三大政党制がいいんじゃないかというふうに個人的には考えているんですが、少なくとも今、二大政党制、二大政党化という方向に進んでいるところでもあります。このときに非常に危惧される部分が衆議院の暴走と。よく言われますけれども、民主主義は暴走する、ポピュリズムに走って過ちを犯していく可能性があると。それに対する抑制という役割は本当に重要になってくる、ますます参議院の役割が重要になってくるんではないかというふうに思います。
 ただ、まだそこにも問題点が幾つかございまして、例えば参議院が政党化していけば余りその抑制の意味がなくなってくるんじゃないか、それから、余りにも慎重審議、これは逆なんですけれども、慎重審議をし過ぎると、時間を延ばし過ぎると、この時代、変化の時代に対応ができてこなくなるんじゃないかと、そういったその相反する命題、いろんな課題があると思います。
 では、どうすればいいか。現実的に、今の段階で我々も非常に、これは与野党問わずにですけれども、どうしたらいいんだろうということで様々な御意見あると思うんですが、例えば、よく言われているのが、現行のままでも党議拘束を外して、よりちょっとカラーを変えていけばいいんじゃないかと、やり方を変えていけばいいんじゃないかと、その運用の問題ですね、お話しされることがあるんですが、しかしながら、この運用に関しては、私自身一番危惧を抱いているのは、ある日突然やめたと言ってしまえばできてしまう、これが一番問題だと思います。党議拘束に関しても、今いろんな制度ですね、あるところ、気持ちとしてこうしましょうというのはあるんですが、ある日突然、そのポジションにあって権限のある方、それから時代の流れによって、ある日突然やめようと言ってしまえばやめられてしまうというのが一番問題であると思います。この点はしっかりと議論をしていかなくてはいけない、制度を考えていかなければならないというふうに思います。
 もう一つ、その役割分担ということでいろいろ知恵を絞られて、また苦労もされてきたことであるんですけれども、例えば、予算を衆議院で優先的にというか、制度上もそうですけれども重視して、参議院では決算を重視しようという考え方もございます。
 ただ、極端に言えば、もう完全に予算を衆議院だけ、決算は参議院だけという形も考えられますけれども、いずれにせよ、決算の制度上の、これは運用でどうこうというだけではなくて、制度上もしっかりと担保されたその拘束力を持たせなければならない。これもその次の課題として、もしそのような役割分担をするのであれば制度上作っていかなければならないというふうに思います。
 極端な話、これは多分無理だと思うんですけれども、決算、政府が無視をしたら、参議院の側で三分の二以上の議決でその無視をした閣僚の首を取るとか、首を取るというか罷免するとかですね、これは極論ですけれども、ある一定のそういった権限、実質的な権限をやはり持っていかなければならないだろうというふうに思います。
 また、あと役割分担の話で、時事的事項を衆議院、まあ解散権がある、そのときの大きな大きな政治的な争点があったときに衆議院で実質的に解散ということもありますけれども、そういった問題を考えていくというのは非常に大事だと思います。その逆として、解散のない参議院は長期的な課題にしっかり取り組もう、それが端的に表れているのが調査会だと思うんですが。先日、私自身、ちょっとおわびをしなくちゃいけないんですけれども、制度上勘違いしていた部分もありまして訂正をしなくてはいけない部分あると思いますが、この調査会、ただ一つだけ、この調査会に関して、その精神、やはり参議院で長期的な安定したある一定の期間を持ってしっかりと議論するということ、この役割を明確にやはり衆参分担していく。つまり、担当するところはしっかりと我々が長期的な課題をやるんだ、衆議院ではなくて我々だけがやるんだという形も作っていかなければならないと思います。
 いずれにせよ、その役割分担いろいろ考えてこられていることありますし、今必要でできることはやるべきだと思いますが、根本的な部分でやはり衆参の区別付けていくべきだと私自身は思います。というのは、衆議院と参議院の本質的な差別化を図っていくべきだ、本質的なところで役割分担をしていくべきだというふうに考えております。
 端的に言いますと、例えば衆議院は政権選択の役割を選挙に関して持っている、そしてその役割を担ってもらう。参議院に関しては各界各層から、あらゆる角度からいろんな代表を選ぶと。衆議院は政権選択選挙、参議院は代表選出選挙のような形で選んだ議員で構成すればいいんじゃないかと。
 帰結として、衆議院は与党が内閣と一体として、これイギリスなんかでもそうなんですが、ほとんど与党となった人たちは内閣に入って内閣と一体化する、それが衆議院。そして、参議院は逆に、まあこれ内閣に入らないという意見もありますけれども、私自身はそうではなくて、有益な人材であればいずれにせよ入ればいいとは思うんですが、少なくとも院の役割としては参議院こそ議会を中心とするべきだと。衆議院は、もうほとんど政権を取るか取らないか、政権運営の方に当たっていただいて、参議院は議会を中心にしたらどうかというふうに思います。
 また、それを実質的に担保するときに、一度、私自身も政党法を作って参議院で政党を外してしまえばいいんじゃないかという話も極論として言いましたが、それも一つではないかと思うのが、政党法を作った上で、衆議院はどちらかというと国民を巻き込んで、広く一般、政権選択という選挙もかかわって大きな議論の中でやってもらう、その役割を果たしてもらう、そして政党も国民により近いところでやっていただく。ただ、参議院の場合は、そういった形ではなくて、やはり院内会派、院内でその会派を形成して独自の動きをしていく、議会を中心にやっていけばいいんじゃないかというふうに考えて、そういう御提案をさせていただいたという次第であります。
 現状はなかなか難しい問題ございますし、もし憲法を変えていくということであれば、様々な制度、例えば今言われている政党の役割であるとか制度、あらゆる制度がありますけれども、すべて見直さなければならない大変な作業になると思いますが、やはりこれから先何十年、まあ何百年というかもしれないですけれども、先を考えたときに、ここでしっかりと議論をしていくべきだと思いますし、また何よりも分かりやすく国民に理解をしてもらう、その上で最終的に判断をしてもらうということをしていかなければならないと思います。
 これから小委員長がここでの議論を含めて報告書という形で、また親会というか、憲法調査会の方でも報告書をまとめて国民にも提示していかなければならないと思うんですが、できればその中でも憲法をどのように国民に考えてもらうかという形を考えていただいて、いいものを作っていただければというふうに思います。
 時間が来ましたので、以上でございます。
○小委員長(舛添要一君) 郡司彰君。
○郡司彰君 民主党・新緑風会の郡司彰でございます。
 今日の参議院と政党の関係、そしてまた構成の在り方・選挙制度に沿いまして、私の考え方を述べさせていただきたいと思っています。
 まず、大きく今回の部分に関しては、憲法の新たに加える、あるいは改正をするということではなくて、現実の問題として活性化をどう図るかというような観点で私はいいのではないか、そのように考えております。
 まず参議院と政党との関係でございますけれども、これまでの議論の中で、衆議院に比べ政党と距離を置いた方が望ましい、あるいはまた政党の枠にとらわれないことに意味があるんではないかというような意見がございまして、私もそうだというふうに思っております。
 しかし、一足飛びに政党との距離を、あるいは無関係にということにはなり得ないということになれば、具体的には、党議拘束あるいは議員立法についてどのように活性化を図っていくかということになるんだろうというふうに思いますけれども、まず党議拘束でございますけれども、全く掛けない、あるいは原則掛ける。原則の場合には、予算でありますとか首班指名でありますとか、基本政策に関する、まあこういうようなことになろうかと思いますけれども、いずれにしてもその結果のところだけではなくて、それぞれの党内におきまして審議、何といいますか決定に至るまでのシステム、公開性がどうだ、あるいは運営の方法がどうだということを含めてやっていかなければいけない、さらに議員個々の意見表明というものもその間にはきちんと行うということの上に立って党議拘束というものが議論になされなければいけないんではないだろうか。
 それから、院の性格をどのようにするかということについてもまあいろいろ意見があったわけでございますけれども、例えばこれまでもあったように衆議院と同様の、同数の法案をすべてやるべきなんだろうか、あるいは全会派一致であったり一定の比率以上の賛成で来たものについては扱いを変えてもいいのではないかというような話がございました。
 この関係でございますけれども、例えば私などは、すべての法案がもし来た場合に、党議拘束を全く掛けない、そして一つ一つについて自分自身が明確な判断をしろと言われた場合に、本当にそれが能力的にスタッフの陣容も含めてできるんだろうか。まあ、こういうようなことも考えるようなところがありまして、下手をすると、ただ単に党議拘束を外すということが結局は国会議員としての職責を全うし得ないような結果も生むんだとすれば、そこら辺のところはどういうふうにするかを考えていかなければいけないんではないだろうか。
 例えば、私は、聞いた話でありますけれども、戦前、本会議がイギリス式でございまして、現在の委員会式、アメリカ式ではないような形で、本会議でもってすべての審議をやるような形を取っていたというようにも聞いておりまして、例えば基本法案その他についてはその中ですべての審議を行う。今現在、曜日によって本会議の日程が組まれておりますけれども、どうも儀礼的な感じの本会議になってきているんではないか。この本会議そのものの中で実際の審議を全員が行う、それでそれぞれの個々人が判断ができるような審議を行うというような戦前の本会議主義というものを参議院の中では考える。時によっては、衆議院の委員会主義に対して参議院の本会議主義というような独自性という考え方があってもいいのではないかというようにも思っているところでございます。
 それから、可能な限り議員個々人が政策能力を高めるというふうなことが必要だというふうにも思っておりまして、これは本委員会の中でも出された意見でございますけれども、衆参でもって公費助成の在り方に差異があってもよいのではないかという意見がありましたけれども、私はこれに対して賛意を示したいなというふうに思っております。
 議員立法の関係でございますけれども、議員立法に対する党内手続の在り方について、簡略化あるいは別な仕組みでの方法を含め積極的な検討を行うべきだという意見には私も当然だと思うんでありますけれども、一方現実はどうなのかといいますと、野党若しくは野党の議員の提案による議員立法、提出をされた。しかし、つるしという関係でもって付託をされない。あるいは、付託をされても趣旨説明のみに終わって実質的な審議がされないというようなことが続いているわけでありまして、私は、これから政権交代がどうのこうのというようなことの議論ではなくて、やはり参議院の中ではこういうものをきちんと行っていくというようなことを真剣に考えていく。この委員会の中でいろんなすばらしい意見が出ているわけでありますけれども、一歩現実に立ち返ると、その議員立法の審議さえ現実的には行われていないという中でいろいろと議論をしているんだということを本当に国民の側で理解をするんだろうか、できるんだろうか、こういうふうなことを考えて、今のこの議員立法の在り方についてまず現実的な活性化を図るということを提案をしたいなというふうに思っているところでございます。
 それから次に、参議院の構成の在り方と選挙制度に関してでございますけれども、憲法の第四章、特に四十一条から四十八条に私は新たに加えるということではなくていいんではないかなというふうに思っているところでございますけれども、この小委員会の報告にもございましたけれども、専門性を持つ比例代表、それから地域代表を中心とする構成、これを続けるということには異議がない。また、まとめにあったように、参議院においては、時の内閣の恣意的あるいは都合による選挙時期ではなくて、いや応なく定期的に、都道府県ないし全国の支持があって議員になることに意味があるというようなこと、任命制・推薦制はもちろんのことでございますけれども、間接選挙も好ましくないという点には大いに賛同ができるところでございます。
 その上に立ちまして、幾つか私自身の考え方を述べさしていただきたいと思いますが、第四十六条の半数改選についてでございます。
 私、昨年、二度目の選挙区での選挙を行いました。その中で感じたことでございますが、実は私の茨城県は過去三回連続ワースト一位という投票率でございまして、何とか投票率を上げる手だてがないもんだろうかということをいろいろ考えたわけでありますが、一つは、比例の選挙。これが実際に期間に入りますと、ほとんどの報道では一般の方々に目に触れるようなものが全然ない。それと、地方紙ではなくても選挙区の記事は出るけれども、全然その比例の方は出てこない中で、どういう形で何も知らない人たちが判断をするんだろうかというふうなことを思っておりました。
 先ほどのまとめの中にあった、専門性を持った、あるいは都道府県の代表、地域代表、これを考える場合に、私は比重的には同じであっていいんではないだろうかというようなことを考えておりまして、私は、この参議院の中においては、選挙区と比例区の数というのは同数で比重を同じゅうにするというふうなことの考え方があっていいんではないだろうか。
 だとすると、私は、この半数改選というのを、すぐにできるかどうかという問題はありますけれども、今回の選挙は比例区だけの選挙を行う、その三年後には選挙区だけの選挙を行うというようなことも一考ではないかなというふうに考えているところでございます。
 どうしてかといいますと、一方では、最高裁が判断を示しました、次の選挙までには何らかのアクションを起こさなければいけないというようなこともあるわけでありますけれども、当然その中で比例の定数を最終的には削ってつじつまを合わせるというような考え方というのはこれまでもあったんではないだろうか。
 しかし、私は、やっぱり一票の公平性、平等性というものを確保するためには、これはやっぱりそこのところも十分に考えるということになると、場合によっては少ない県のところについて合区という話も出てくるかもしれない。しかし、合区というものを実際に行ったときにどうなるかというと、私は、一回目二回目調整が付かなかったことはあるかもしれないけれども、慣れてくればこれは当然地域コスタリカになるんじゃないか。つまり、具体的な名前を出して恐縮かもしれませんが、島根と鳥取が合区になった場合には、今回の選挙は島根の方からです、今回の選挙は鳥取からですというような地域コスタリカが結局は定着をしてしまうんじゃないか。
 それよりは、私は、可能であれば、比重を同じくするということも含めて、比例と選挙区を六年に一遍ずつ行う、このことによって大分一票の平等性、公平性も確保されるような形ができるんではないかというふうなことを思っておりまして、何かの折に皆さん方でも検討をいただければ有り難いなというような思いを持っているところでございます。
 それから、活性化のために、先ほど本会議主義で基本的な法案などについてはどうかという話を申し上げましたが、逆に委員会の方の活性化ということも考えていかなければいけないんではないかと思っています。
 例えば、予算委員会、参議院の場合には片道主義を取っておりまして、関連の場合には三分間時計が止まるというような形を取っております。なぜこれはそうなのかというふうなことをいろんな方にお聞きをしたわけでありますけれども、どうも五十年ごろまでは、今の慣行として残っているような形だけではなくて、関連の人については事前に届出をしているというような形ではない、一般の質問をしている人が続けている間にほかの委員の方が、それについてやっぱり私は何か言いたい、そういう人があったときに手を挙げて、委員長がすかさず時期を見てその人に指名をする、指名をされた方はそこで関連の質問をする。その際に、三分間で行いなさいというようなことがその三分間の時計が止まるというようなことに元々はあったんだというふうなことを聞いて、そういうようなことも一つの活性化として、今は慣行として残っているものを実質的な審議の場に戻す。つまり、質問をしている人と答弁をする人だけがそこの委員会の中でやっているんではなくて、聞いている人も、いざこの問題について発言をするときが来たらば手を挙げてするぞというふうなことでもって一緒に真剣に聞く、一緒に考えるというような委員会の活性化というものもやろうと思えばできるんではないだろうか。こういうふうなことも、この委員会の趣旨にそぐわないのかもしれないけれども、活性化ということで真剣に考えていかなければいけないんではないかな、そんなことを思っているところでございます。
 それから、これは前にも私申し述べましたが、請願の関係でございます。
 第十六条に平穏な請願を行う権利を有するというふうなことになっているわけでございますけれども、実際のところは、最終日に、請願がこれだけありました、どうしますかという形でもって実質葬り去られている。例えば、最近では、話題になった拉致被害者の家族の会あるいは救う会の方々の五百万の署名、大変マスコミでも取り上げられたけれども、いざ国会の中でどこで何がされたのかというと、一切何もされないままに終わっている。
 まあ、古い話をして恐縮ですけれども、八代将軍のときに目安箱が置かれて、これは月に三回、将軍自らかぎを開けて政策に生かすようなこともあった。これがいつまで続いていたのかというと、明治新政府の六年まで続いていて、廃止になったのは、これから議会ができます、地方の役所ができます、だからこれからはそういうところで取り扱いますから目安箱を廃止にしましょうということに明治政府が行った。しかし、一九四七年にでき上がった請願法を本当に生かしているんだろうか。
 例えば、調査会の機能という中に、間違いなくその請願のものを一つの委員会で扱って、本来法案にすべきものだ、あるいはこれは改正に供するものだ、そういうようなものを実質的に審議をするような場としてこの請願権の復活を行うということが、私は国民にとって参議院というものがより身近になって、さらに参議院の独自性ということにもつながることではないかなというような思いをしておりまして、重ねて今回も申し述べさせていただきましたけれども、そのような形の中で活性化を図る中で参議院の独自性、こういうものを実質的に作っていくことが今のときには必要なんではないか、このように思っているところでございます。
 時間が来ましたので、これで終わらせていただきます。
○小委員長(舛添要一君) 山下栄一君。
○山下栄一君 公明党の考え方、また私個人の考えも含めまして発言したいと思います。
 既に昨年の十二月に小委員長の中間報告もまとめていただいているわけですけれども、そこで小委員長がまとめていただいた内容に沿う部分もたくさんございますし、また今日、今からお話しすること、既に私自身がもうこの場でお話ししたことの繰り返しの部分もございますけれども、再度確認の意味でお話しさせていただきたいと思います。
 特に、まず参議院と政党との関係の方でございますけれども、議院内閣制の下でこの二院制を意義あらしめるため、また参議院の独自性という、独自の役割を果たすという、そういう観点から、先ほどもお話既にありましたけれども、衆議院は政権直結という部分があると。参議院は政権そのものから距離を置くという、そういう形で政権をしっかり監視するという、議院内閣制の中でそういう参議院独自の役割を果たす意味で政権から距離を置くということの制度的な工夫が必要ではないかと。こういう観点から、例えば閣僚就任の自粛とか、また、これは憲法六十七条とかかわりますけれども、首相指名権を、参議院は行わないとか、そういうことも考え得るというふうに思っております。
 また、政党からも距離を置くと。これも参議院の独自の役割を果たす意味で、両院にまたがる党議拘束が参議院の独自性を阻害するという部分があることは事実だと思いますし、そういう意味で、緩和する、又はしっかり積極的に再検討するという、そういうことは非常に大事であるというふうに思います。これはルール化するというよりも、実質的な経験とか実績を積み重ねていくということが大事ではないかというふうに思います。与野党を超えた取組をできるだけ実績を積み重ねていくという、そういう取組がやっぱり党議拘束、また政党から距離を置くということにつながっていくと。
 例えば、今決算委員会で決算審査を非常に、そういう与党とか野党とか関係ない形で非常に盛り上がる形で今進めておりますけれども、場合によれば法律の改正も委員会の中でやろうという動きもございますけれども、そういうことも含めて、今非常にこういう与野党を超えた取組の実績が積み重ねることができる可能性、希望を示したのではないかと思います。
 以前、私もかかわりましたけれども、ダイオキシン対策特別措置法というのを、あれはたしか平成十一年の通常国会でやったんですけれども、あのときはうちは野党でしたけれども提案させていただいて、そして、私、環境委員会のメンバーを中心にしてそういう動きが出てまいりまして、もちろん、世間でそういう、何とかせいよと。これは役所の縦割りの状況の中ではなかなか実現しにくい。環境庁はやる気があっても、例えば経済産業省が、通産省だったかな、余り賛成じゃないとか、そういうことを超えて、しかし国民の側に立った立法措置が必要であるということ、これ参議院の独自の取組としてスタートいたしまして、それが衆参両方で全会一致でわずか数か月で法律ができるというふうなことの経験もあるわけですけれども、こういう実績の積み重ねをすることによって、実質的な党議拘束と違うといいますか、政党から距離を置くということが実現する道があるというふうに思います。
 また、これは比例代表選挙の場合はどうしても政党色が強くなるので、選挙制度の改革とも関連してくる問題であるというふうに思います。
 次に、参議院の構成の在り方・選挙制度の件ですけれども、まず直接公選制、これを間接選挙も考えられるというふうなことを識者からもお話ございました。しかし、これは間接選挙は賛成できないと。間接選挙をやるということによって、直接代表ではないということから参議院の権限を弱めることになるというふうに、弱体化させるというふうに思いますし、衆議院とは違う形で多様な民意を反映させる、そういう工夫の方が大事だというふうに思います。
 選挙の在り方につきましては、これも既に申し上げておりますけれども、選出方法は衆議院と比べてやはり独自の憲法規定があると。任期は長い、また解散がないということもそうですけれども、三年ごとの半数改選、これは今少しお話にございましたですけれども、これも一つの独自の参議院の積極的に私、評価できる面ではないかと思いますし、定数も衆議院の半分ということ、また被選挙権は三十歳であるということ、もうそういう選出方法の違いを私はこれは生かす形で今後とも続けていくべき制度であるというふうに思います。
 また、政党よりもできるだけ個人を重視した選び方をする選挙制度である必要があるのではないかと思いますし、民意を反映させるやり方として、できるだけ顔が見える選挙、人物本位の選挙、比例代表方式ではない形、また広い見識を、豊かな見識を持った人を幅広く集めるという、こういう観点からもう既に党として発表しておりますけれども、参議院の選挙として、公明党としましてはブロック別の大選挙区制、これを既に発表させていただいております。
 これは、今の選挙制度とは全く違うわけですけれども、ブロック別という意味は、道州制を志向して地理的、文化的、歴史的な、を踏まえて、様々な中央官庁におきましても行政管区の出先機関がございますけれども、道州制を志向した、そういうブロック別にして、大選挙区制で、定数は人口比例で決めていくというものでございます。
 広域、広い地域からできるだけ個人、人物本位で人を選んでいく。また、元々、参議院は非常に角度の違う、多様な人材を集めるという、そういうことを期待されておりますので、そういう意味でブロック別の大選挙区制というのは非常にかなった選挙制度ではないかというふうに思います。
 ただ、選挙区が非常に広くなりますので、できるだけお金の掛からない選挙制度ということは大事であると。公営選挙をもっと拡大する、IT時代に合った、このメディアを活用した、そういう選挙の方法、運動方法といいますか、これはもっともっと活用できるような、そういう工夫が必要であると思いますし、ポスターとかはがきとか自動車とか、そういうことはできるだけもう使わない、お金の掛かるやり方はしないと。その代わり、メディアは十分活用すると。また、公営選挙の部分も広げていくというふうなことをいろいろ工夫しながら、今申し上げましたブロック別の大選挙区制ということも、すぐには無理ですけれども、大いに検討の材料として、参議院の選挙制度の改革の中でも主張してまいりたいと、このように思っております。
 以上でございます。
○小委員長(舛添要一君) 吉川春子君。
○吉川春子君 日本共産党の吉川春子です。
 今日は、参議院における政党と議員の関係、党議拘束、参議院選挙の在り方及び再度強調したい点について発言をいたします。
 国権の最高機関、唯一の立法機関である参議院は、第四十三条で、衆議院と同様に、全国を代表する選挙された議員でこれを組織するとしています。すなわち、直接公選制を取る我が国の参議院は、世界の両院制の中で民主的な第二院という優れた特徴を有しております。参議院を間接選挙や推薦制で選ぼうとする考え方は、民主的な二院制の基礎を崩すものであり、賛成できません。
 我が国の両院制と参議院の意義と役割は、異なった時期と異なった選挙制度で選挙される議員を持つ衆参両院で同じ議案を二回審議するということを通じて、国民の意思をより正確に、より積極的に国会に反映できるというところにあります。参議院は解散がなく長期的な展望を持った審議が可能であり、一院だけの審議による不十分さや欠陥が補われ、誤りがあれば正すことができます。
 現実に参議院の審議で、法案などの問題点が明らかにされ、それによって世論が喚起され、参議院段階の審議で衆議院と異なった議決をしたこともありました。結果として同じ議決であっても、その間の二つの院の議論を通じて法案の問題点をより深め、国会の議事録は政府の法執行時の重要な指針となります。さらに、政令や省令の制定にも影響を与えます。それぞれの院の附帯決議は、法律に盛り込めなかった立法政策上の課題も示すことになるわけです。
 次に、政党政治、党議拘束問題ですが、参議院の独自性を強調する立場から、四十三条に参議院は政党に属さない議員で構成する旨のただし書を加えてはどうかとか、両院をまたいだ党議拘束は衆議院の結論がそのまま参議院の結論になる点で参議院の存在価値を喪失させるなど、党議拘束の緩和や解除、あるいは参議院脱政党化の主張が盛んに行われています。
 これらの主張は参議院の在り方を良識の府としてその姿をかつての緑風会に求める古くて新しいものですが、私は賛成できません。良識は、当然衆議院にも求められなければならないものです。
 緑風会について言えば、その当初は若干の文化人、知識人を含み、多少の独自活動もあったことは事実です。しかし、その構成は高級官僚、実業界の出身者が圧倒的に多数を占め、サンフランシスコ条約、日米安保条約や、法律についても公労法、スト規制法、破防法、教育委員会任命制法、自衛隊法など、与野党が激しく対立した一連の法律については是々非々というよりも与党の立場に立ってきました。時には政府・与党の暴走をチェックしたこともありましたが、全体として保守支配を安定的に機能させる役割を果たすなどがその本質的特徴だったと言えるからです。
 参議院の脱政党化についてですけれども、代議制の発達は政党の発達と不可分であり、議会制民主主義は政党政治を軸として発展してきました。政党はそれぞれの政治目的に基づく自由な結社として組織され、国民の意思や利益を集約し、それを実現していくため、公権力の構成と行使に参加しているわけです。現行憲法が議会制民主主義に立って結社の自由、直接普通選挙を保障している以上、国会を中心とした政治が政党政治として発展していくことは必然です。
 政党に対する判断を示した最高裁判所、昭和四十五年六月二十四日の判例は、憲法は政党について規定するところがなく、これに特別の地位を与えてはいないのであるが、憲法の定める議会制民主主義は政党を無視しては到底その円滑な運用を期待することはできないのであるから、憲法は、政党の存在を当然に予定しているものと言うべきであり、政党は議会制民主主義を支える不可欠な要素なのである云々としています。
 この部分は肯定できるんですけれども、これは同時に、有名な会社の政党に対する政治資金の寄附を認めたものですから、この部分については私は肯定できません。ついでながら申し添えておきます。
 現在、参議院議員を選挙する比例代表選挙は政党を選ぶ選挙です。非拘束名簿方式については異議がありますが、基本的には比例代表制は優れた選挙です。こうした制度の下で党議拘束の解除をすることは、政党として様々な公約を掲げて選挙に参加すること自体が矛盾になるのではないでしょうか。また、政党も議員も有権者に示した政策、公約の実現に力を尽くすことが当然の責任です。議案に対しては政党として責任ある態度を表明すべきだと考えておりまして、脱政党化という方向には私は消極的な見解を持っています。
 参議院の調査会ですけれども、参議院が衆議院から送られてきた法案に賛否を表明するだけの存在でないことは前回、当委員会で申し上げました。その一例が、参議院に二十年ほど前から設けられている、国会法五十四条の二に規定されている調査会です。
 この調査会制度は、八六年五月、国会法の一部及び参議院規則の一部が改正され、参議院に国政の基本的事項に関し、長期的かつ総合的な調査を行うものとして設置されました。これまでに延べ九つの調査会が設置され、それぞれ調査報告書を出しています。
 主な成果は、参議院企画調整室作成のパンフレットによると次のようなものです。三年間にわたる調査の集大成として、国民生活に関する調査会は、平成七年六月に高齢化社会対策基本法を提出、平成七年十一月に成立しました。これは調査会が初めて提出し、成立させた法律です。
 さらに、共生社会に関する調査会では、平成十三年四月に配偶者からの暴力防止及び被害者の保護に関する法律、いわゆるDV法を提出し、同月成立しました。その後、DV法は、平成十六年三月に同調査会より再度提出され、改正され、同年五月に成立しました。また、平成元年六月の本会議において、外交・総合安全保障に関する調査会の調査を受け、ODAに関する決議、平成十三年六月の本会議においては、国民生活・経済に関する調査会の少子化対策推進に関する決議が行われています。さらに、平成十六年六月の本会議で、国民生活・経済に関する調査会のユニバーサル社会の形成促進に関する決議が行われました。また、行財政機構及び行政監察に関する調査会では、平成九年六月の中間報告において行政監視のための常任委員会設置を提案し、平成十年一月、百四十二国会から行政監視委員会が設置されました。私も今参加しております。
 こうした実績は貴重なものであり、参議院の調査会の活動を一層発展させるためにスタッフの充実が必要です。
 また、選挙制度の在り方についてですけれども、第一に参議院の定数の問題です。
 行政改革や労働者のリストラなどを口実に、国会議員が率先して身を切るべきとの議論があり、本調査会でも、参議院の定数の大幅な削減、百名ぐらいでよいという発言もありました。
 しかし、私は、衆参を問わず、このような議員定数の削減には同意できません。なぜなら、国会議員は主権者である国民の意見を国政に反映させるパイプ役だからです。このパイプを細くし、国民の多様な声を国会に届きにくくすることは主権在民の基本理念に反するものです。しかも、参議院の議員数は、公選制を採用している諸外国の第二院と比較して人口に対する議員比率から見て多過ぎるということはありません。
 また、憲法制定当時、参議院議員選挙法要綱の審議をした臨時法制調査会は、その定数を衆議院の定数の三分の二内外とするとの答申を行いました。その過程で、当初参議院の定数を三百にしたという経緯もあります。
 もし、国会に関連した問題で真剣に行革を考えるならば、憲法の規定する思想、良心の自由に反するおそれがあるばかりか、昨今も報道されているように、政治を腐敗させることにもつながりかねない政党助成制度をこそ廃止すべきものだと考えております。実際、毎年の政党助成金の金額は国会議員四百人分の経費に匹敵いたします。
 最後に、参議院が果たした女性の地位向上ですが、参議院は女性の地位向上、人権問題にも積極的に取り組んできました。政策決定の場への女性の進出は国連の一貫した方針で、女性国会議員の比率はIPUで毎年公表されています。三割から四割台を占めているヨーロッパ、北欧などに比べて日本はかなり後進国です。参議院は現在二百四十二名中三十三名、一三・六%、衆議院は四百七十八名中三十三名、六・九%を占めているのみです。
 しかし、こうした中でも、九八年、参議院創設五十周年として女性国会を開催し、女性の政治参加の世論を喚起しました。
 また、DV法は自民、民主、公明、共産、社民、無所属の議員が提案しましたけれども、それぞれプロジェクトチームを設けて一年近くにわたって二十数回の議論を行い、NGOや政府、各省との協議を行い、その際の議論が法施行の重要な手引になっています。児童買春・ポルノ禁止法の研究は、衆参両院男女議員で行いましたが、提案は参議院でした。議員立法の従軍慰安婦法案は、内閣委員会でこれまで二度の審議を行い、韓国、インドネシア、オランダ等、私が訪問した国からも、支援団体や政府、国会からも一日も早い成立が求められています。
 最後に、国民の努力によって根付いてきた参議院、そして二院制を、民主主義の発展のために更に活用、改革していくことが必要であり、そのためにも参議院制度改革協議会で過去かなりの提言を行ってきたものを実行に移していくことを各党合意の下行うべきことを申し上げまして、発言を終わります。
○小委員長(舛添要一君) 田英夫君。
○田英夫君 参議院と政党の関係から申し上げたいと思います。
 衆議院は、本来、政党と政党が政権を目指して相争うという場だと言っていいと思います。それに対して参議院は、冷静な判断のできる人材そして雰囲気の中で政治が国民と密接に結び付きながら正しい道を進む、そういう役割を果たすべき場だと言えると思います。
 したがって、参議院は首班指名をしないということも一つの表れとして、既に形式的になってしまっていることもあり、首班指名はしないということでその役割をはっきりさせるということも必要かもしれません。
 何よりも大事なことは、参議院は議員一人一人が独立した存在だという基本的な観念を持つことだと思います。つまり、現在の状況は、衆議院と同じように政党が単位になって、あるいは会派と言った方が正しいかもしれません、運営をされていると思います。例えば本会議における発言も、政党の大きさによって時間の長短が決められると。すべて政党、そしてその大きさ、そういうことが運営の基本になっていると、衆議院と同じような考え方ですが。そうではなくて、例えば大きな政党、大きな会派はその個人がたくさん集まっているところだと。あくまでも基本は一人一人の議員が独立した存在であるという基本を持つべきではないかと思っています。
 まあ小さいところにいてひがんでいるわけじゃありませんが、発言時間などは、一人一人、一人何分という、本会議は例えば一人二十分と、大きいところはそれが何人かがなりますから結果としては発言時間は大きくなりますが、一人何分という、二十分なら二十分という単位をまず作る。そして、したがって無所属で一人の人も発言の機会が当然与えられるし、それは二十分であるということになると思います。予算委員会、その他の委員会の発言も同様であります。予算委員会で大きな会派は何人も発言すれば、それは結果として今と違わないじゃないかと言われるかもしれませんが、単位を個人に置いておくということが一つの基本になるべきではないかと思っているんです。
 それから、議員立法は、むしろそういう考え方による参議院の方がやりやすい。事実、私の経験では、あの阪神・淡路大震災のときに、衆議院ではできなかったんですが、参議院で議員立法で災害被災者救援法を作りました、これ、全く超党派で。まあ行政府との距離の問題があると思うんですね。衆議院はどうしても議院内閣制の、その行政府と役所、そういうものの距離が近い。参議院の方が距離があるという状態があると言えると思うんですが、その阪神・淡路の場合も結局、行政府は伝統的に、天災に対しての被害は個人で立ち上がれという伝統的な考えが行政府にありまして、それが妨げになって救援の法律を作ることができなかった。参議院はそこに距離がありましたから、当時は国土庁ですけれども、国土庁が反対したにもかかわらず、参議院の超党派の議員立法ができたということがあります。
 それから、政党との関係に戻りますと、党議拘束というものを考えない、考えないといいますか、党議拘束で縛らないというのを参議院の常識にするということも一つ大事なことじゃないでしょうか。
 それから、衆議院で可決した、それは多数をもって可決したものも、あるいは全会一致という形で来たものも、皆こちらの同じような委員会でまた審議をして、二重に審議をする場合が常識になっていますが、衆議院で全会一致で通ってきたそういうものは、参議院の議院運営委員会をより強化したものを設置しておいて、そこでスクリーンに掛けて、その判断でもうすぐに委員会の審議を省略して本会議で可決していくということも一つの方法かもしれません。
 それから、選挙制度に移りたいと思いますけれども、これは現在は全く最悪の状態だと思います。衆参ともに比例区と地域選挙区とを組み合わしたものであって、地域が若干大小があると。何よりもいけないことは、参議院の場合に党名を書いて選挙をすると、政党の名前を書いて選挙をすると。これはもう初めから政党重視ということを前提にした投票方法でありまして、衆議院ではいいでしょうけれども、参議院にはなじまないと。ますます政党化すると思います。したがって、比例選挙を入れることは必ずしも反対はしませんし、一番民意を正確に反映するということがありますけれども、政党名を書くということはいかがなものかと思います。
 この選挙制度は、非常に参議院の場合、難しいと思います。現職の参議院議員が選挙制度を変える役割を果たすということはいかがなものかと。第三者が加わった委員会なり審議会なり、そうしたものが原案を作るということを考えてはどうかなと思います。今までの選挙制度、随分何回か変わってきましたけれども、その部分が結局、政党が中心になった現職の議員が新しい選挙制度を作りますから、どうしても私が言っているような形の、政党本位でない、個人が出られる、そういう選挙になってこないという気がいたします。
 以上です。
○小委員長(舛添要一君) ありがとうございました。
 以上で各会派一巡いたしましたので、これより自由に意見交換を行います。
 小委員の一回の発言時間は五分程度でお願いいたします。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 森元恒雄君。
○森元恒雄君 まず、私は、二院制の物の考え方の基本について意見を申し述べたいと思います。
 二院制というのは、改めて言うまでもありませんが、国会の中の一翼を担う一つの院であるということですので、この国会というものの基本は何かと、そこを外れたような院の性格というものは国会の一翼を担っていないわけですから二院制ではないんではないかと、極端なことを言えばですね、というふうに考えます。
 そうしたときに、国会の基本は何か。これは、私の理解ではやっぱり国権の最高機関であるということが一つだと思います。何がもって国権の最高機関として国会が位置付けられるか。これはやはり国民の代表機関であると。国の国家意思を決定する機関、根本的な機関でありますから、国民の代表制ということが一つの大きなファクターと。それは、やっぱり直接選挙ということを切り離して、そういうそもそもの役割、機能というものはあり得ないんではないかというのが一つであります。
 それからもう一つ、その二院制、参議院の在り方として、何か諮問機関的な性格を強めようという意見も一部にありますけれども、もう一つ、やはり国権の最高機関としては何が根本かと考えれば、議決機関ですね。この議決機関としての機能をなくす、あるいは薄めるということは、やはり国会の中の一院ということから考えて問題ではないかと、そういうふうに考えるのが一つと。
 それからもう一つは、日本の現在の統治機構、これは議院内閣制でございます。要するに、国会の多数が内閣を構成するという形になっていまして、大統領制というような形ではありません。ですから、議院内閣制の下における内閣と国会との関係がどうあるべきか、そのときの参議院の位置付け、役割、権能はどうあるべきかということを考えるべきで、大統領制の下における国会のような性格のものにこの参議院を変えてしまうのはいかがなものかと私は思います。そういうことからすると、この場でもいろいろ議論が出ていますように、一つは党議拘束、あるいは政党との関係をどう考えるかというよりどころにそういう点がなると思いますね。
 それで、党議拘束を外したらどうかとか政党性色を薄めるべきではないかという議論がありますけれども、そういうふうにすることはこの議院内閣制の一翼を担っている参議院というものを変質させてしまうことになりはしないのかという気がいたします。予算にしても法律にしても、その政府を出しておる与党の立場で言えば、その政党といいますか、我々自体がいったん了解しておきながら、国会に出た段階では個人の自由意思で発言し行動するというようなことはいささかどうなのかなという感じがいたしますし、閣僚を出さない、あるいは首班指名に加わらないというようなことについてもどうかなという感じはいたします。もし、そういうことを参議院の独自性とかいうことで変えてしまうということは、繰り返しになりますが、参議院側だけが大統領制の下における議院のような位置付けになってしまうんではないかな、それに近いようなものになってしまうんではないかなというふうに思います。
 ただ、この参議院は政府をチェックする、監視する機能を強化しようということで決算重視しようとしておるわけでありますが、事前に政府に権能を与えるものについては党議拘束はやむを得ないと私は思いますが、政府が行ったことについてのチェックについてはこれはまた話が別でございまして、そういう党議拘束なんかは極力外して各議員が自由な立場で監視、チェックするということは、十分に議院内閣制とも抵触しないといいますか、相反しないような形のものになり得るんじゃないかなというふうに思います。これは、まずそもそも論としてそういう、何をよりどころとして物を考えていくのかということに対する私の意見でございます。
 それからもう一点は、そういう国会の中での参議院、役割分担の一つを担う参議院としてもっと機能を実質化すべきじゃないかという意見がいろいろあります。それについては、私も大変基本的には賛成でございます。そのためには、しかし何が審議を形式化、形骸化させているのかと。この運用のやっぱり実態を見て、そういう、何といいますか、手かせ足かせになっている部分を運用の面で改善していくということについて我々はもっと議論をし、コンセンサスを見付けていくべきじゃないか。
 具体的に言いますと、一つは定足数だと思うんですね。それからもう一つは、大臣の出席を必ず求める、あるいは時間の制約、そういうものがあるために形式化する、形骸化するという部分が非常にあるんじゃないかなと私自身は思っておりまして、そういうものについて、余り形にとらわれずに実質的な審議ができるような運営方法をするということが参議院としての存在を高めることにつながっていくんじゃないかと。
 以上でございます。
○小委員長(舛添要一君) 鈴木寛君。
○鈴木寛君 今日は二院制、とりわけ選挙制度にかかわるテーマでございますので、その点につきまして私の御意見を申し上げたいと思います。
 いわゆる一票の格差の問題が参議院でも最高裁から提起をされております。この議論の中で、私が是非強調させていただきたいのは、やはりこの一票の格差というのは大変に重い課題であるというふうに思います。もちろん、私は国土の均衡ある発展というのは極めて重要な政策課題の一つだと思っておりますけれども、我々国会が議論をし、そして判断を下していかなければならない重要課題の中に、例えば国民の生命と財産の確保といった問題だとか、あるいはその絡みで申し上げると、例えば生命の尊厳についての法案、あるいは日本が諸外国と安全保障にかかわる問題、こういう問題は我々参議院も当然に国会の一院として判断をしていかなければならない、特にこういう課題は昨今増えているわけであります。
 そうした中で、このようなテーマについて国民の意思が、その生まれた地域、あるいはそこに住んでいる地域によってその意思のウエートに差があるということは、やはり私は重要な問題であるというふうに考えております。
 とりわけ民主主義といいますのは、恐らく二つの理念、すなわち多数決の原理と、そして法の支配あるいは立憲主義と、この二つの原理のバランスと調和によって達成されると思いますが、我々参議院は、特に後段の立憲主義、法の支配、あるいは正義の貫徹といった役割を担っていくべき極めて重要な責務を負っていると思います。
 私は、国土の均衡ある発展も、正に一人一人の方々が等しい、その最低限度の国民生活を送っていく、その正義の貫徹の観点から私は議論をすべき課題でありまして、それは当然、都市部から選出をされた議員もそうした意識を持って議論を当然に組み立てるべきでありますし、そのことは一票の格差の放置を何ら正当化するものではないということは申し上げておきたいと思います。
 それから、もう一つのテーマであります政党と参議院の関係につきましては、二十一世紀は価値多元主義、価値の多様化というものが極めて重要な時代の要請であります。そうした価値多元主義の時代に、我々国政の最高機関としてどのようにより有効に機能させるかということが日本の民主主義に突き付けられた課題だと思います。
 日本の民主主義は危機にあると思います。それは何かといいますと、正に投票率の低迷という問題であります。この投票率の低迷の本質的課題は、国民の皆さんが、主権者の皆さんが、自分たちの代表者が集まる機関として国会を認知していない、あるいは認知し難い、この傾向に歯止めが掛からないということにあります。
 そういう意味で、私は、選挙制度というものを本当に主権者の皆さんの代弁者あるいは代表者が集まる国会に再編をしていくという目標に向かって、私は相当な覚悟でもって臨まなければならない。そういう意味で、いかに国民各層の中に多様に存在する意見を吸収をできるか、反映をできるかということで私は選挙制度というものを考えていかなければならないというふうに思っております。
 そういう中で、国家と個人の間にある中間集団という概念、この中間集団というものの豊かさというものが私は今後の多元社会の中で極めて重要な存在だというふうに思っておりまして、個人、一人一人の個人ではなかなかこの国家、一億三千万人の国家というものに対して自分一人が頑張ったところで、自分一人が意思表明したところでというこの感覚というものは、正直こういった感覚が蔓延するのは否めないと思いますが、そこに、極めて巨大な国家と個人の間をつなぐものが中間集団であります。でありますから、その中間集団が多種多様、多彩な中間集団がこの国に存在をして、そしてその中間集団の代表者というものによって特に参議院が構成をされるということは、選挙制度設計に当たって私は十分に検討すべき課題だと思いますし、特に参議院の選挙制度についての私は重要な設計方針だということを申し上げて、私の意見とさせていただきたいと思います。
 以上です。
○小委員長(舛添要一君) 若林秀樹君。
○若林秀樹君 ありがとうございます。
 私も、二つの点について、参議院の構成の在り方について述べさしていただきたいと思います。
 今、これまでの議論を聞いておりますと、参議院は本来のあるべき姿としての良識の府、再考の府という議論があるという一方、今、地域主権の流れの中で、やっぱり地域代表としての人が集まって地域主権を定着させる、機能させるような院の在り方という大きな二つの流れがある中で、これまでのそれぞれの皆さん方の御意見は私は圧倒的に前者の方ではないかなというふうに思っております。
 そういう意味では、衆議院を前提とした場合のその補完機能としての参議院は、やはり例えば決算であったり外交、条約、中長期的な課題について真剣に議論するのが私はやっぱり参議院ではないかなというふうに思いますし、私もそういう意見に賛成でありますので、その意味において、それを当然構成するには、地域代表があってもいいと思うんですけれども、やはり有識者なり国民各層、様々な職業代表を代表する人が集まって議論をすることによって、衆議院とは違うやっぱり議論の質が高まるんではないかなというふうに思っております。
 そしてもう一つは、やはり国会が何のためにあるのかということを考えますと、私は、国の利益あるいは国民の幸せを守り拡大することだというふうに思います。その意味において、グローバル化においてその利益の源泉、国民の幸せの源泉は必ずしも日本にないということを考えますと、さっき実質的な議論というのがありましたけれども、私は、国会というのは何か社内会議的に、お客さんが外にいるのにみんな内向いてやっぱり議論しているところが多いんじゃないか、そこに各大臣を縛っておいて議論したって私は意味がないと思うんですよね。
 そういう意味では、実質的な議論ができるのと、私は、世界国会というのは現実にはないんですが、模擬世界国会としてもっとどんどんやっぱり日本の利益を代表して外に出ていくという議員が必要ではないかなというふうに思いますので、ああいうEU議会の流れ、EU憲法の流れの中で、私はその役割として参議院の議員がもっともっと日本を代表して世界に出ていく、そういう役割を担う機能としての参議院というのもあってもいいんではないか。それが、元に戻るんですが、地域代表ということよりも、それも大事なんですけれども、国民各層、有識者、様々な人たちが集まっていく参議院が必要ではないか、その延長線上に選挙制度も出てくるんではないかなというふうに思いますので、その二点について申し上げたいというふうに思います。
 ありがとうございます。
○小委員長(舛添要一君) 荒井正吾君。
○荒井正吾君 参議院の役割について一言意見を申し上げさせていただきたいと思います。
 先ほど二院制の基本論について森元先生からありましたが、参議院の、衆議院と院を構成しておりますが、大事なのは役割の分担じゃないかと思います。同じことを二回やるというのは、一部分あって、必要である部分はあると思いますが、慎重審議という観点からは。ただ、同じことをやっているじゃないか、意味があるのかという批判があるのもありますので、できるだけ重複を避ける、役割を分担するというのが参議院の生きる道として大事じゃないかと思います。
 もう少し具体的に申し上げますと、国会の役割は、立法と内閣の、議院内閣制です、内閣の選出、それから行政監視と、大きく三つあると思いますが、内閣の選出は衆議院が主にされておりますし、立法も、予算、法律、条約ということでありますが、大きな迅速なのは衆議院で迅速に決めていただいていいんじゃないかと思いますが、特に行政監視については参議院がもう少し特色を発揮すべきじゃないかというふうに思います。
 その点からは、行政監視委員会と決算委員会、分かれておりますのをもう少し一緒にしてテーマを集中してやるとか、あるいは今世の中で政治に対する大きな期待は、後れた地域、グローバル化の中で後れた地域、後れた人々を政治がどう救うかという点に大きな期待があるように思いますので、その点について参議院の審議の特色を発揮できるんじゃないかというふうに思います。
 そのためには、時間と労力を選択して集中すべきだと思います。参議院の運営を衆議院と重複する点はできるだけ簡素化して、余った時間と勉強の能力を必要なところに振り向けるということが大事だと思っております。
 以上です。
○小委員長(舛添要一君) 愛知治郎君。
○愛知治郎君 済みません。ちょっと補足で参考までにということなんですけれども、衆参の違い、これ身内というか、自民党だけの話になるかもしれないんですけれども、面白い傾向があって、具体的にはっきりとした形ではないんですけれども、自民党の中でも、私が属しているのは今まあ自民党ではあるんですけれども、その中でも参議院自民党、ちょっと特殊なというか、独立した形、ちょっとカラーが違うというか、参議院は参議院でまとまっているような傾向があるんですね、対外的な会合でもそうですけれども。衆議院自民党って聞いたことないんですけれども、参議院自民党は参議院自民党とある。やはり独自色という点では、同じ党内でもそういった形が取れる。基本的に理念に関しては一致しているのが……(発言する者あり)理念としては同じものであっていい。ただ、形として、先ほど私は院内会派と言いましたけれども、まあ名前を変えるまではいかないにしても、ある程度、衆参違った意見、形、取っていってもいいんじゃないか。特に、この二院制に関しては衆議院の方で、それは同じ自民党内ですけれども、一院制でいいんじゃないかという御意見を持っている衆議院の方、結構多い、多くいらっしゃるけれども、参議院自民党においてはこれは少なくともそんなことはあり得ないというか、絶対よくないだろうという話は一致団結して持っていて、私も疑いない。そして、やっぱり大事だなって、そのときにその二院制の必要性というのを改めて感じさせていただいたんですが、参考までにそういった傾向にもなっているということだけお話ししたいというふうに思いました。
○小委員長(舛添要一君) 簗瀬会長代理。
○会長代理(簗瀬進君) 御指名を賜りまして大変有り難く思います。
 私は、参議院の選挙制度を論ずる際の大前提として、これはよく選挙制度を論ずる際に言われるんですけれども、選挙制度は隠れた憲法である、あるいは不文の憲法であるとよく言われます。選挙制度を決めることによって国の政治の姿が決まってしまう大変重要な議論であるということをまず大前提に置かなければならないと思います。
 それから、次の前提、中前提ということで考えるのは、やはりこの小委員会でほとんどの皆さんが一致をしているのは、二院制は堅持をすべきだ、それから直接的な国民から投票される選挙制度であるべきだということだと思います。
 私も、前回も述べましたけれども、解散を持つ第一院、そして解散のない、そして半数改選の第二院と、これは民意を問うための非常に絶妙なバランスを持った制度であるということで、そういう観点から二院制は堅持をすべきであると、こういうふうな前提を置きながら選挙制度の制度設計に入っていくべきなんだろうなと思っております。
 その際に非常に重要なのは、全体的な統治のシステムの中で衆参の選挙制度がどういうふうに意味を持つのかといった全体的な視点、またその全体の統治システムの中で、私は特に国民主権主義を貫徹をする、それを徹底化することによって次の新しい憲法の意味付けがあるだろうと、こういうふうに考えておりますが、そういう全体的な制度設計の中で、衆参の割り振り、選挙制度の作り方をどうしていくのかという、そういう観点が今までどうも議論の中では少な過ぎると、こういうふうに思っております。
 私は、国民主権主義の貫徹ということで前回の親調査会でも言わせていただきましたけれども、まず水平的視点で三権分立の再構成を国民主権主義を強化するという観点からやっていかなければならない、議院内閣制を首相公選制に改めるべきだ、あるいは司法に民主的な任命の段階での基盤を強化すべきだ等の議論をさせていただきました。また、法律が、国会が独占をするということではなくて、国民と法律制定権を国会が共有をすると、こういうことも必要だろうと。それから、垂直的な統治の機構の再配分というようなものも必要だろう。そういう点では、国と地方の役割分担をどういうふうにしていったらいいのか、そういう視点の中で新しい統治全体のシステムを考えた上で、そこで衆参の二院制の制度設計、特に選挙制度ということでどういうふうに作っていったらいいのかということを考えなければならない、こういうふうに思っております。
 また、この選挙制度を考える場合に欠けてはならない論議というのは、主権者は国民です。投票をするのは国民なんです。投票をする国民にとって極めて分かりづらいような制度を作るべきではない。投票をする国民にとって簡潔明瞭な制度であればあるほど私はベターだと、こういうふうに思うべきだと思っております。
 例えば、現在の衆参、それぞれ二つの制度を併存をさせた形を二院で持っている。これを例えば同時選挙で衆参の選挙をやらされたときに、国民はもう大変な混乱に陥る。正に、もうそういう意味では、私は民主主義の選挙制度としては極めてまずい状況に私どもの衆参の選挙制度は陥っているんではないのかと。こういうふうな観点にやっぱり立って、だからこそ政治離れが起きていく。したがって、国民にとって分かりやすい明瞭な選挙制度をどういうふうに構成をしていくのかということを衆参同時に考えていくべきだと、こういうふうに考えるべきだと思っております。
 三番目に言いたいのは、やっぱり政治の二つの要素というのは、民意の反映と集約であると。この二つの機能に対応した形で、衆議院と参議院を極めて明確な性格付けをしていったらいいのではないのかと私は考えるべきであろうと、こういうふうに思っております。
 そういうことでいえば、結論から言えば、民意の集約は衆議院にやってもらうと、そしてその衆議院は私は完全小選挙区制が望ましいのではないのかなと思っております。また、民意の反映については、これは参議院が行うと。そして、参議院のこの選挙制度は、基本的には比例を本質にした再構成をすべきなのではないのかなと。今、衆議院で行われている惜敗率を前提にいたしました非拘束名簿、この比例を全国レベルで私は取り入れたらどうなんだろうか。それが例えば道州制というようなものがもし取り入れられた場合に、県単位のものを道州単位に広げた形で、惜敗率を前提にした非拘束名簿の比例式の参議院の選挙制度というようなものは可能なんではないのかなと。そして、比例というふうなことで構成をすれば、先ほど来同僚の皆さんが議論をしている参議院の独自性というようなものも、比例という観点から更に評価をされた独自の機能というようなものが発揮をされるんではないのかなと、こういうふうに考えております。
 以上です。
○小委員長(舛添要一君) 関谷会長。
○会長(関谷勝嗣君) この小委員会も度々開かれまして、大体の方向付けはあるように思うんでございますが、結論から言えば、我々は二院制堅持であるわけでございまして、そのためには、今もお話がありましたように、衆議院と参議院とは、その制度にしても、あるいは審議の方法にしても、選ばれる形にしても違うというものがもっと明快にしないと、世間一般の方が言っておるように、同じようなことを繰り返しておるではないかと、それは時間の浪費ではないかというようなことになると思うんです。
 ですから、単純に考えてみますと、参議院は解散がない、それから被選挙権が三十歳という大きなものがある、そして、先般の小委員会でも私述べさせていただきましたが、この参議院でお世話になって、ああこれが参議院だなと思ったのは、今三つあります調査会、こういうようなことはすばらしいことです。ですから、まして今、予算は衆議院で、決算は参議院でというようなこともありますけれども、こういうようなこともいい。
 ですから、その違いをはっきり出す、そしてまた国会議員、衆議院も参議院も国会議員ですが、国会議員としての違いというものを大きなものを、出してこなければ私は二院制の意義はないと思うんです。
 それで、その違いを大きく出す一番の基本は、先生方がよく言われますように、やっぱり政党との関係が衆議院とは違うということであればいいんですけれども、これは現実問題として、お互い政党に所属していないとなかなかこの場所に来ることはできない。ましてや今の政治資金規正法では、我が自民党などは支部長にならなければ、その選挙区の公認をいただかなければ、いわゆるその企業献金などは支部でなければ受けることはできませんから。ただ我々個人の後援会で受けることができるのは個人献金だけですから。
 そうなりますと、日本では、個人献金という、その土壌というか感じ、感覚は余り今ありません。まあ今後増えてくるんだろうとは思いますけれども、そういうものがない。ですから、現時点で考えますと、政党を離れて国会へ出てくるという方策が何か制度上できるならばそれにこしたことはないけれども、現実問題としてなかなかそれができないというようなことを考えますと、例えば思い切って参議院の任期を十年にするとか、そうすればもう少し自分の信念で行動が取れるんではないか、投票行為が取れるんではないかというようなことも私は思ったりしておるわけでございます。
 ですから、この二院制を私たちは堅持をしたい。そのためには、そういうようなことで我々がもっと踏み込んで、ここに衆議院と参議院の違いがあるんだということ、それを打ち出してくるためには、今お話がありましたようにやっぱり選挙制度をもっと違ったものにしなければならないんではないかと私は思います。
 衆議院が比例を出してまいりまして、あのときに私は、この話になると、田先生と私は意見が一緒なんですけれども、本当にあの小選挙区制なんか、おかしなことをしたもんだと今でも思っておるんでございますが、中選挙区制でしたら、衆議院の場合は全く個人の選挙です。個人の選挙です。すべて個人でやりました。もう、もちろん組織からポスターから、もうあらゆるものを全部個人でやりました。ところが、やっぱり参議院というのは、やっぱり組織なんです。ということはやっぱり政党色が強いということなんですから。
 ところが、衆議院の選挙制度がまた比例だとか、惜敗率の比例だとか、あるいは小選挙区制になったもんですから、もう参議院と似通ってきた。そこにまた、その二院制の意義が薄れてきておると思うんです。ですから、あの小選挙区制、比例並立制というのは、本当にどういいましょうか、一院制に近づいた私は制度ではないかなと思って残念に思っておるんでございますが。
 そういうようなこともございますから、選挙制度というのを、二院制堅持のためにはやっぱり私はまた変えていかなければならない、今の似通った制度では国民の皆さんの理解を得ることはできないんじゃないかと、そんなことを考えております。
 以上です。
○小委員長(舛添要一君) 他に御発言はございませんか。他に御発言もないようですから、本日の意見交換はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時三十二分散会

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