第211回国会(常会)

令和5年6月7日(水)第7回

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日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査
(憲法に対する考え方について
(参議院の緊急集会及び参議院議員の選挙区の合区問題について))
【主な発言項目】
山本 順三 君(自民)
  • 緊急集会を規定した憲法54条の意義、位置付けは、衆議院議員の不存在により国会が召集できない場合に緊急の必要が発生したとき、総選挙により衆議院議員が選出され国会が召集されるまでの間、できる限り民主政治を徹底しながら暫定的な処置等を可能とするものとの見解
  • 3人の参考人は、濃淡はあったが、類推適用で任期満了を含めても構わないということであり、我が会派も、総選挙が予定され、かつ最長60日間という一時的な衆議院議員の不存在という意味では、解散も任期満了も変わりはなく、任期満了時にも緊急集会による対応を認め得るとの見解
  • 緊急集会が両院同時活動の例外であることから、松浦参考人と同様に、70日間を大きく超えて緊急集会を開くことは憲法の想定外であるとの見解
  • 緊急集会において議員が発議できる議案の範囲は、内閣が示した案件に関連するものとの点で限定的ではあるが、その中で、国の最高機関の一翼を占める参議院の位置付けと、民主政治を徹底させるという緊急集会制度の趣旨を踏まえるならば、事実上広く解釈し得るとの見解
  • 緊急集会の権能の範囲は、内閣が示した案件に関連する範囲内で、特別会の召集を待つことができない程度の即時に対応すべきものに限って広く認めてもよいが、衆議院や内閣との関係では限定的に考える必要があり、また、総理が欠けるなどの緊急集会が開催できない場合にも備える必要があるとの見解
  • 緊急集会においてとられた措置の効力は暫定的であり、有事の場合に活用できないというものではないものの、憲法に有事を想定した制度が十分に整備されているとは言えないため、緊急政令、緊急財政処分及び議員任期の延長の創設について議論を深めると同時に、緊急政令等を民主政治の下に置くために参議院が果たすべき役割についても検討が求められるとの見解
  • 地方公共団体の憲法上の位置付けの明確化を図り、合区解消のために、都道府県の重みを認識した上で、憲法改正について議論を進めるべきとの指摘
  • 投票価値の平等は極めて大切であるが、その観点だけで、都道府県という境目を取り払えば、合区導入四県の投票率が急落したように、住民の政治参加意欲を減退させ、民主主義の衰退につながることも十分留意すべきとの指摘
  • 自民党の憲法改正の条文イメージは、合区問題の抜本的な解消のため、両議院の議員選挙について、選挙区を設けるときは、人口を基本とし、行政区画、地域的な一体性、地勢等を総合的に勘案して、選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数を定めるとともに、参議院議員については、広域の地方公共団体の各区域を選挙区とする場合には、改選ごとに各選挙区において少なくとも一人を選挙すべきものとすることができるとしているとの説明
  • 政権選択の衆議院に対し、参議院は地方代表的な性格と多様な意見を反映させる性格に重きを置いた院とし、都道府県単位の選挙区と全国比例という二つの投票行為から成る現行制度を基本とした上で、地方の府として更に一層地方との連携を図るとともに、憲法改正による抜本的な合区解消に至るまでの対応として、法律改正による合区解消についても議論を進めることはあり得るとの見解
杉尾 秀哉 君(立憲)
  • 緊急集会は、憲法制定時の立法事実として、災害などの際に緊急の立法等の機能を確保するために設けられたもので、どんなに精緻な憲法を定めても口実を付けて破壊されるおそれが絶無ではないとの戦前の教訓を踏まえた国民代表機関であり、全体の改選期のない万年議会である参議院に二院制国会の代行機能を託し、民主政治を徹底させるとの根本趣旨に立脚する制度であるとの見解
  • 緊急集会は、国民の選挙権を保障するとともに、一刻も早い総選挙の実施を必然とすることで緊急事態から平時への復元力が担保されるなど、権力の簒奪と濫用を防ぐ仕組みとなっており、国民主権、国会中心主義、基本的人権の尊重、平和主義という憲法の基本原理に基づき、かつ、これらの諸原理を守り抜くためのもので、良識の府参議院が世界に誇るべき制度であるとの見解
  • GHQとの協議において日本側が解散以外の場合も提案していたことや、権力の濫用を排除しつつ、いついかなるときでも国会代替機能を確保するという緊急集会の根本趣旨等に照らせば、憲法54条2項の類推適用により、任期満了の際にも緊急集会は開催可能と解すべきとの見解
  • 緊急集会で参議院議員が発議できる議案については、緊急集会を両議院と内閣の権力の抑制と均衡に立脚する制度と理解した上で、現行国会法による総理大臣の示した案件に関連のあるものに限るとの制約は基本的に妥当だが、緊急集会の機能確保を十全のものとする観点からは、内閣による新案件の追加や、参議院が内閣に新案件の追加を促し、必要に応じ内閣に代替措置の検討も含めた説明責任を果たさせる国会法改正を行うべきとの見解
  • 緊急集会の権能については、国に緊急の必要があるときに国会の機能を一時的に代行するものとして、法律、予算など広く国会の権限に属するものに及ぶ一方、憲法改正の発議、内閣不信任決議はこの機能の外にあると解すべきであり、総理大臣の指名については憲法71条や内閣法9条の総理大臣臨時代理制度で対処すべきであるが、土井参考人の学説のように、総理や多数の国務大臣を欠く深刻な国家緊急事態では、法理上は指名可能な場合もあり得るとの見解
  • 任期延長改憲の論拠となっている緊急集会70日間限定説は、憲法54条2項の国に緊急の必要があるときとの文理や、緊急集会が大震災等の深刻な国家緊急事態にも対処する有事の制度として制定された立法事実に明確に反する上、解散時の内閣の居座りを排除するという54条1項の趣旨等にも全く反し、緊急集会は、一日も早い総選挙の実施を必須としつつ、その間に緊急性を要する立法等を行う必要がある場合である限り70日を超えても開催できると当然に解すべきで、任期延長改憲には明確に反対するとの見解
  • 国民の選挙権の制限に極めて厳格な要件を付した最高裁の判例法理は普遍性を有し、改憲会派の主張するいわゆる選挙困難事態については、避難先での投票の確保など選挙困難事態を防ぐための措置を早急に講じることが必須であり、被災地外の国民の選挙権を制限する正当性は憲法の国民主権や議会制民主主義の原理からは見出せず、また、政府の緊急事態対応への国民の判断の機会を奪うことは許されないとの見解
  • 合区制度については、単純な各県最低1名を選出する改憲は平等権や全国民代表などの原則から深刻な憲法問題を有すると考えており、我々が提示する法律による合区廃止案の必須の条件として、本審査会の平成26年附帯決議が示すような法令解釈のルールに基づく緊急集会の正しい憲法解釈とその機能強化の実施があるとの指摘
西田 実仁 君(公明)
  • 緊急集会は、参議院の基本的かつ重要な権能であり、迅速かつ臨機応変な対応が可能である、緊急事態への対応に必要な権能が認められている、手続及び運営が既に整備されているという三つの特徴があるとの見解
  • 衆議院議員の任期満了による総選挙の場合に緊急集会を用いることができるかについては、憲法制定時に衆議院議員の任期満了時を意図的に対象外としたわけではなく、近時は憲法54条2項の類推適用により緊急集会を求め得るとの学説が多く見られ、解釈による解決も十分に考えられるとの見解
  • 緊急集会を開くことができる期間は衆議院の解散後最大70日間であるとの意見があるが、憲法54条1項は選挙を行うのに必要な期間を考慮しつつ、衆議院が欠けている期間をできる限り短くしようとする趣旨とされ、学説上は衆議院の解散の日から40日以内に総選挙ができない事態になったとしても、延期された総選挙が違憲無効とはならないとの見解があり、参考人からは、70日を超えて緊急集会を認めることはできるとの見解が示されたとの指摘
  • 衆議院議員の任期延長等による対応も、その民主的正統性からすれば、長期間にわたる対応ができるかについては議論があり得るところであり、こうした点を踏まえれば、緊急集会との間で根本的な差があるとまでは言えず、正規の国会に戻す回復力は、衆議院議員の任期延長等により衆参がそろう国会の存在よりも、国会の権能を代行しているにすぎない緊急集会の方が大きいかもしれないとの指摘
  • 衆議院の解散後又は衆議院議員の任期満了前後に緊急事態が発生した場合における対応策としては、緊急集会により対応し、一部地域で繰延べ投票を実施するも可能な範囲で総選挙を実施する案と、原則として緊急集会で対応するが一定条件下で衆議院議員の任期延長等により対応する案の2案があるが、それぞれに幾つかの論点等が考えられ、当審査会において更なる議論が交わされることを望むとの所見
  • 合区について、特定の県のみが県単位の議員を選出できないことから噴出している不満は理解しており、是正は必要だが、いかなる選挙制度を取るにしても、衆参でほぼ同等の権能を持ち、衆議院が不存在の時には緊急集会により国会を代行できる参議院の在り方に関わるので、投票価値の平等という憲法価値と相矛盾する制度改正は行うべきではなく、我が会派としては全国を11ブロック単位とする個人名投票による大選挙区制を提唱しているとの見解
音喜多 駿 君(維新)
  • 現行憲法を考えた場合、一票の較差問題を解決することは非常に重要であり、現状では合区はその解決策として合理的だが、抜本的な解決策にはなり得ず、参議院の選挙制度について憲法審査会で議論するのであれば、選挙制度の前提となる国家の基本構造、すなわち国の形について議論すべきであり、道州制の導入やそれに伴う憲法改正まで視野に入れた議論が必要との見解
  • 各地域の経済や社会情勢への対応に必要な都道府県間の調整や協力は複雑で時間が掛かる場合があり、迅速な意思決定や政策の実施が難しいという問題があるため、より大きな行政区にして地方自治体の統治を効率化し、より迅速かつ効果的に政策の立案や実施をすることが求められているとの見解
  • 参議院の選挙制度に触れるのであれば、そもそも衆議院のカーボンコピーともやゆされる参議院の在り方そのものに対する議論も必要であり、地域代表を似通った選挙制度で選出すれば、必然的に衆議院と参議院の役割は似通ったものにならざるを得ず、合区の解消により地域代表を選出するとの方向性以外に、参議院の在り方そのものを変え得るような解決策として、例えば、都道府県知事と参議院議員の兼職や将来的な一院制の是非などこそ憲法審査会で行うにふさわしい議論ではないかとの問題提起
  • 衆議院の任期満了に緊急集会の規定を類推適用できるのかという点は、有識者の見解もおおむね一致しているように、認められ得ると思われるが、その場合でもなお憲法改正をして、その旨を明記すべきとの見解
  • 憲法に明確に期間の定めがある場合、解釈の余地をなくすことがその趣旨として明白であること、バッコーク判決が緊急時の例外を法律に書き込むことを議会に要求したことからすれば、長谷部参考人の説とは異なり、緊急集会の70日以上の開催は、憲法に書き込んでいない限り認められないのではないかということ、70日以上の緊急集会が認められると仮定すると、規定が憲法にない以上、決定は内閣が担うことになり、権力の濫用がまかり通ることになること、以上の理由により、緊急集会は70日を超えて開催できないと考えるべきとの見解
  • 緊急集会の権限と案件については、松浦参考人が述べられていたように、内閣不信任決議など衆議院のみに認められている権能のほか、憲法改正の発議、条約の承認、内閣総理大臣の指名は認めるべきでない点については既におおむね見解の一致があり、その上で、案件については、憲法54条2項が緊急集会の要求権を内閣のみに認めていること及び国会法99条1項、101条から、内閣が示した案件に縛られ、個別具体的に指定することが憲法の趣旨であり、その効力も暫定的であるとの見解
  • 緊急集会は、成立背景からも重要な権能ではあるものの、期間と権限の点で限界があり、衆議院解散後あるいは任期満了後に重大かつ長期に及ぶ緊急事態が発生し、総選挙の実施が困難となり、長期にわたり衆議院が不在となる場合について現行憲法は想定しておらず、国民の理解と合理的な憲法解釈の下、憲法の理念を守るためにも、緊急時でも立法府を機能させ、時の内閣や権力の暴走をしっかりと防げる仕組みを明記した緊急事態条項の議論を加速させる必要があるとの見解
  • 今国会において、予算委員会終了後ほぼ毎週憲法審査会が開催され、活発な議論が行われるようになったことは一歩前進だが、憲法議論をめぐっては、憲法9条や緊急事態条項など、議論すべきことが山積みであり、時代の要請に合わせたテーマでより活発に議論を行うとともに、何らかの結論、アウトプットに向けてスケジュール等を策定すべきことを強く提案するとの見解
大塚 耕平 君(民主)
  • 緊急集会を開催する緊要性が生じるタイミングについては、①解散から選挙の告示までの間、②選挙告示から投開票日までの選挙期間中、③投開票日から国会召集までの間があり、①と②の場合に、選挙中止、前議員の身分復活、任期延長がなし得ないケースにおいて、緊急集会が意味を持つことになるとの指摘
  • 解散と任期満了という原因に違いがあるとはいえ、衆議院議員が存在しない状況には違いがないため、大災害の発生等で選挙を施行できないまま任期満了により衆議院議員がいなくなった場合を含め、任期満了後の場合にも内閣は緊急の必要に応じ緊急集会を求め得るとの見解
  • 法の趣旨、緊急集会の目的に鑑みれば、衆議院が存在しない場合、あるいは衆議院が有効に機能しない場合は、緊急集会を開けるものとみなすのが合目的性の観点から合理的な解釈であり、目的を達するためには緊急集会を開催し得る期間に制約を設けるべきではないとの見解
  • 法の趣旨に鑑みれば、衆議院が存在しない場合、あるいは衆議院が有効に機能しない場合には、緊急集会において議員が発議できる議案の範囲について制約はないとみなすのが、合目的性の観点から合理的な解釈との見解
  • 法の趣旨に鑑みれば、衆議院が存在しない場合、あるいは衆議院が有効に機能しない場合には、参議院一院をもって国会の権能を代行している状況であるゆえ、合目的性に適合する範囲においては緊急集会の権能に制約はないとみなすことが合理的であるが、その正統性を担保するには、衆議院が発足するまでの間にその有効性を限定することが望ましいほか、衆議院発足後は再審議を義務付ける等の手続を定めることも必要との見解
  • 国民民主党は、合区はやめるべきとの立場であり、合区により県代表を参議院に送り出さないことが間接的に当該県の行政機能や行政サービスの内容、水準に影響を与え得るとの観点から、司法が憲法にも法律にも明記されているわけではない法的根拠の明確でない人口割り、単純平等だけで立法府の構成について見解を述べることは三権分立の観点から問題があるとの見解
  • 裁判官に専門的知識が十分ではない問題や、住民に対する行政サービスやライフライン提供に関して責任が持てない問題について司法が国民世論を二分するような判断を示すことは適当ではないとの指摘
  • 立法府は、三権分立の視点とともに、国権の最高機関という憲法上の自らの位置付けを十分に認識し、法的根拠のない司法の判断基準を是としたり、行政府の独断を黙認することのない自らの運営ルールを確立することが肝要との所見
山添 拓 君(共産)
  • 改憲が政治の優先課題として求められていないのは明らかで、憲法審査会を動かすべきでないが、今国会では、衆議院議員の任期延長や緊急事態条項の創設などの憲法改正が必要との意見や、緊急集会をめぐり参議院として考えをまとめるべきとの主張までがなされており、当審査会の権限を逸脱するばかりか、国民の願いに背を向け、国会内の多数派工作で改憲案のすり合わせを図ろうとするもので、政治の役割を何重にも履き違えているとの見解
  • 緊急時対応を口実とした改憲論は、時々の情勢と国民の不安や懸念に乗じ理由を変遷させており、一貫しているのは権力分立を一時停止する改憲を目指していることであるが、権利の保障と権力の分立はセットで立憲主義の根幹であり、軽々にその例外を論じるべきではないとの見解
  • 日本国憲法が明治憲法の緊急勅令や緊急財政処分と同等の仕組みを設けなかったのは、民主政治を徹底させ国民の権利を十分擁護するため、行政権の自由判断の余地をできるだけ少なくするためであるが、その背景には明治憲法下で緊急事態条項が悪用、濫用されてきた歴史があるとの見解
  • 9条で戦争放棄と戦力の不保持を定めた日本国憲法の下では、戦時対応に名を借りた緊急事態条項は必要がなくなり、いかなるときにも権力分立による権利保障を貫く、国際的にもユニークな緊急集会の規定が生まれたが、改憲を主張する意見の中にこうした歴史的経過への言及がほとんどないのは奇異と言うほかないとの指摘
  • 緊急の場合であっても、内閣の独断専行を避け、可能な限り憲法の定める制度を活用し、権力の抑制、均衡を確保することが憲法の趣旨にかなうとの長谷部及び土井参考人の主張は、憲法54条2項が定める緊急集会の理解に欠くことのできない視点であり、任期延長を含む緊急事態条項創設へ議論を運びたいがために、蓋然性が疑わしい事態を殊更想定し本質的とは言い難い論点に拘泥し、憲法の趣旨を踏まえようとしない議論は厳に慎むべきとの見解
  • 代表制民主主義の基盤である国民の選挙権の行使は強く保障される必要があり、緊急時にこそ選挙を通じて議会に代表を選出し、国会の民主的正統性を担保すべきとの見解
  • 緊急集会制度には、緊急事態から通常時への復元力の高さと復元した後のチェック体制という合理性があるが、任期延長による国会は、選挙されていない存在を完全な国会であるかのように扱う点で民主的正統性を欠くばかりでなく、緊急集会と異なり、通常時への復元力も期待できず、民主政治の徹底という憲法の趣旨とは相入れないとの見解
  • 合区は、元々自民党の党利党略で強行され、不平等をもたらすことは当初から批判されていたが、今度は合区解消を改憲の理由とするのは牽強付会も甚だしく、投票価値の平等と民意の反映を実現する選挙制度をいかに築くかの問題はそもそも当審査会の役割ではないとの指摘
山本 太郎 君(れ新)
  • 衆議院議員任期延長を主張する者は、長期間にわたり選挙が実施できない事態を想定し、現行制度では国会機能が維持できないと訴えるが、世界中で起こっている大規模な非常事態においても選挙は実施されており、その主張からは任期延長の必要性が一向に見えないとの指摘
  • 非常事態だからこそ、制約はあっても国民に一票を投じる権利を保障することが重要で、非常事態への対応を含めて政権は国民からの評価を受ける必要があるとの見解
  • 選挙ができない事態とは、客観的に存在するというよりも、政府が恣意的に認定することで生まれるものであるので、国民の審判を受けたくない政権に当該事態を認定させてはいけないとの見解
  • 日弁連実施のアンケートでは、東日本大震災の被災自治体の多くが、災害時には国の権限でなく市町村などの自治体に権限を強化する必要があり、現行の憲法に緊急事態条項がないことが災害対応の障害にはなっていないとの意見を示しており、東日本大震災のような大規模災害時に求められるのは、中央政府の権限強化ではないと被災地の現場では考えられているとの指摘
  • 緊急事態条項の提案は、被災地、被災者の意思を踏みにじり、震災を利用する火事場泥棒的行為と言え、内閣が緊急事態を宣言し、議員任期を延長すれば、当然その内閣も延命されるものと想定でき、危機意識のない政府を選挙で退陣させることもできなくなってしまうところ、そのような不届き者が憲法を変えたいと言えないよう先回りしているのが現行憲法、緊急集会であるので、今ある憲法を守るべきとの見解
  • 今の社会的状況の中で苦しんでいる人々のために、間違った経済状況や政策を正すような憲法審査会であるべきとの見解

※上記発言項目は事務局において適宜抜粋し作成しております。発言の全体内容及び詳細については会議録を御参照ください。

令和5年5月31日(水)第6回

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日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査
(憲法に対する考え方について(参議院の緊急集会について))
【参考人の意見骨子】
防衛大学校教授
松浦 一夫 君
  • 緊急集会制度は、憲法起草時における日本側とGHQとの激しい論争から生まれた妥協の産物であり、憲法54条が緊急事態対応規定としては甚だ不十分なものにとどまったことが今日の議論の混乱を招いているとの見解
  • 憲法は重大かつ長期にわたる緊急事態対応を想定していないとの立場から、衆議院議員の任期満了の場合における緊急集会の開会は制度上想定されていないと考えるが、実際上、任期満了も解散も、衆議院議員が不在になることに変わりなく、任期満了後に緊急案件が発生する可能性もあるため、任期満了の場合にも緊急集会の開会を可能にすべきとの意見ももっともであるとの見解
  • 緊急集会の開会可能期間について、緊急の必要がある限り70日という期間に縛られる必要はないとの主張は、緊急事態条項を導入しないことを大前提に、現行憲法の中にあえて緊急事態対応の根拠を読み込むとすればこのような解釈方法があるとの主張にすぎず、緊急時の政府の迅速な対応と、その議会による民主的統制の確保に最も有効な方法は何かとの目的、視点を欠き、緊急事態宣言下での衆議院議員の任期延長や衆議院解散の禁止などの措置を認める憲法改正により国会が両院完全な形で政府を統制する方が、民主的観点から見てはるかに効果的であり、諸外国においても議員の任期延長又は国会の解散禁止あるいはその両方を憲法に規定しているとの指摘
  • 緊急集会の権能については諸説あるものの、内閣不信任決議など衆議院のみに認められている権能が除外されるほか、憲法改正の発議、条約の承認、内閣総理大臣の指名は認めるべきでないとの点について既に見解の一致があるとの指摘
  • 緊急集会を含め、国会自体が集会不能となる非常事態も想定しておく必要があり、戦時におけるドイツの合同委員会のように、確実に集会できる小規模な委員会に国会の権能を代行させる制度が考えられるとの指摘
  • 制定過程の特質性ゆえ憲法の基礎は脆弱であり、対外的主権を最終的に確保するための防衛関連規定の不存在と緊急事態関連規定の欠落から生じる不都合を憲法解釈により解決するにも限界があるとの指摘
早稲田大学大学院法務研究科教授
長谷部 恭男 君
  • 内閣の独断専行を避け、可能な限り憲法の定める制度を活用し、権力の抑制、均衡を確保するためには、衆議院議員の任期満了による総選挙の場合にも憲法54条を類推し、内閣は緊急集会を求めることができると考えることが適切であるとの見解
  • 外国による武力行使、大規模自然災害等により衆議院議員選挙が長期間困難と考えられる事態における衆議院議員任期延長の改憲論については、そうした事態に係る蓋然性が論点になるとともに、緊急事態においても基本権は可能な限り保障されるべきであり、繰延投票等により選挙の実施が部分的とはいえ可能である以上は、困難が解消され次第、可及的速やかに順次選挙を粛々と実施することが要請されるとの指摘
  • 衆議院議員の任期延長は、つまるところ、平常時そのものを非常時に近づけ、憲法制度の全てを永続する緊急事態へと変質させるリスクを含んでいる疑いがあるとの指摘
  • 憲法54条を素直に読むと、緊急集会を最大70日間にしか求めることができないかのように見えるが、国家の存立に関わる非常事態ではあらゆる考慮要素が総合的に勘案されるべきで、日数を限った規定の文言にこだわって議論を進めるべきではなく、そもそも同条が日数を限っているのは、現在の民意を反映していない政府が政権の座に居座り続けることのないようにとの考慮からであり、同様の規定は各国の憲法にも見られるとの見解
  • 緊急集会制度は、平常時と非常時とを明確に区分するとともに、そこではあくまで暫定的で臨時の措置のみがとられ、選挙を経て正規の国会が召集され次第、その当否は改めて審議、決定されるものであることを国民に広く示す意味があり、十分な理由に支えられ、これに新たな制度を追加する必要は見出しにくいとの見解
京都大学法学系(大学院法学研究科)教授
土井 真一 君
  • 両院制の例外である緊急集会を安易に認めることは適切ではないが、内閣が単独で法律に代わる措置を講じることはより重大な例外に当たり、緊急の場合でも憲法の定める制度をできる限り用いて権力の抑制と均衡を確保することが憲法の趣旨にかなうと考えられるので、衆議院議員の任期満了による場合にも憲法54条2項ただし書を類推適用し、国に緊急の必要があるときは内閣は緊急集会を求めることができると解すべきとの見解
  • 憲法54条1項から導かれる70日は、緊急集会について定める2項にとって、衆議院解散の日から次の国会が召集可能になるまでの期間の目安と位置付けるのが適切であり、大規模自然災害等で総選挙を実施できない場合、法は不可能を要求しないとの法原則に基づけば、緊急事態に対応するために総選挙の実施の延期を例外的に許容し、緊急集会を認めることは不合理ではないが、54条1項は可能な限り速やかに適切な方法で総選挙を実施し、国会を召集できるようにすることを求めているとの見解
  • 国会法99条、101条による緊急集会における参議院議員の議案発議権への制約の趣旨は、内閣と両議院により権力の抑制と均衡を図る制度設計にしたものだが、参議院は内閣提出の議案に修正案や対案を提出できると解すべきであり、また、緊急事態においては広範な措置を逐次講じる必要から内閣が開催要求時に示すべき案件も包括的なものにするほかなく、それに応じて参議院議員の議案発議権や質疑、討論等が及ぶ範囲も広範になることを認めざるを得ないとの見解
  • 緊急集会は、原則として内閣が示した案件に関連する範囲内で広く国会の権限を代行できるが、衆議院が存在しない例外的状況で暫定的な措置として行使できない権限が類型的に存在すると解され、このような例外として、憲法改正の発議、内閣総理大臣の指名等があるとの見解
  • 緊急事態への対応に関する検討に際しては、権力の簒奪や濫用の危険を防止するための仕組みが国会において慎重に検討されるべきであり、通常時への復元力の高い仕組みと、緊急事態において講じた措置の合憲性・合法性を通常時への復帰後に審査する機会を適切に確保することが、自由と民主主義を基礎とする立憲主義体制を維持しつつ緊急事態に対応するために不可欠であり、この点で緊急集会は合理的な設計に基づく制度の一つであるとの見解
【主な発言項目】
浅尾 慶一郎 君(自民)
  • 憲法の類推適用による衆議院議員の任期満了時における緊急集会の可否
  • 緊急集会を70日という期日を超えて開くことの可否
杉尾 秀哉 君(立憲)
  • 憲法54条1項に40日、30日と期限が定められている趣旨
  • 緊急集会の開催可能期間を70日間に限定せず、憲法54条2項の「国に緊急の必要があるとき」が終わるまでと解することの可否及び、憲法の立法経緯を踏まえた同項の趣旨
  • 緊急集会で対処できる国家緊急事態の内容や規模の制限の有無、憲法において国家緊急事態への備えができていると解することの是非及び70日間に限定しない必要な間の緊急集会の開催への見解
  • 国会の立法機能を代行する緊急集会制度があるにもかかわらず、国会議員の任期延長のために憲法改正をすることの政策的な必要性
  • 緊急集会と選挙を経ずに任期延長された国会のどちらに国民主権や議会制民主主義における正統性があるかについての見解
西田 実仁 君(公明)
  • 議員の任期延長や前議員の身分復活の場合における国会の権能の範囲は、暫定的、一時的であり、緊急集会との間で根本的な差異があるとまでは言えないとの所見に対する見解
  • 前議員の身分復活を、極めて例外的な場合を超えて容易に生じ得るような要件にまで広げた場合に緊急集会の意義を失わせるのみならず、参議院の存在意義の議論につながる可能性
  • 緊急集会プラス繰延投票のみでいかなる緊急事態でも対応すべきとの考えに対し、繰延投票ではなく、事態が収束するまで議員の任期延長等を行い、全国一律に投票を行うべきとの指摘に対する見解
  • 非常事態において緊急政令や緊急財政処分は不要であり、個別法の政令委任や予備費で対応すべきとの考えに対する見解
音喜多 駿 君(維新)
  • 緊急事態であることを理由に憲法の規定を幅広く解釈することは、権力の暴走を招くことではないかとの所見に対する見解
  • バッコーク判決を紹介するならば、憲法を改正してルールを変えることが望ましいとの結論になるとの所見に対する見解及び70日を超える緊急集会を容認する場合に期限等のルールを設けずに柔軟に運用した方が権力の暴走を招きやすいのではないかとの所見に対する見解
  • 緊急事態だからと緊急集会をルールなく容認し続けるよりも、議員の任期延長ができる期間を定め、再延長には再度国会の議決を必要とする等の仕組みの方が、緊急事態から平時に戻すためのレジリエンスが増すのではないかとの所見に対する見解
礒崎 哲史 君(民主)
  • 70日を超えて緊急集会が認められ得る最長期間
  • 繰延投票により随時選挙を行った場合の議員任期等についての考え方
  • 解散で衆議院議員の身分を失ったとしても、少なくとも元々4年という任期は国民からの信任を得ていたとすると、その部分の任期延長はあり得るのではないかとの考え方に対する見解
山添 拓 君(共産)
  • 任期延長された国会議員に、次の総選挙を行おうというインセンティブが働かなくなることへの懸念に対する見解
  • 緊急集会と内閣の判断で任期延長された衆議院議員が権限を持つ仕組みとでは、民主主義的な正統性という点で質的な異なりがあるとの所見に対する見解
  • 緊急事態条項や緊急集会をめぐる議論の必要性や根拠が、自然災害への対応、感染症の拡大、戦時対応と変遷を重ねてきたことへの所感
山本 太郎 君(れ新)
  • 戦争で原発が攻撃される可能性や自然災害で被害を受ける可能性を踏まえれば、まずは原発を即時停止し、核燃料を国の責任で安全管理することが憲法上の要請にかなうとの考えに対する見解
赤池 誠章 君(自民)
  • 民主主義国家である諸外国において任期延長された議員の民主的正統性についての議論の有無
  • 緊急集会とドイツ型の常置委員会との共通点と相違点
  • 緊急集会に関する各論点について否定説と肯定説があり、国民にとって憲法の法的安定性を揺るがすように思えるほど解釈が分かれている理由
小西 洋之 君(立憲)
  • 緊急集会を70日に限定し、平時の制度だとする理解は、権力の居座りを防ぐという解釈及び趣旨並びに元々の立法趣旨として災害などを想定していることからしても、解釈上無理があるとの考え方に対する見解
  • 議員任期の延長は、緊急集会制度の根本趣旨である権力の濫用の排除と矛盾するのではないか、立憲主義の見地からも問題があるのではないかとの所見に対する見解
  • 戦前の教訓に鑑みた、権力の濫用の排除という緊急集会の趣旨の価値
佐々木 さやか 君(公明)
  • 衆議院議員の任期延長により両院がそろった国会も、暫定的、一時的なものであり、緊急集会を超えるものとは言えないとの指摘に対する見解
  • 緊急集会と任期延長された衆議院議員のどちらが正常な状態に戻す力がより働き有効かについての見解

※上記発言項目は事務局において適宜抜粋し作成しております。発言の全体内容及び詳細については会議録を御参照ください。

令和5年5月17日(水)第5回

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日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査
(憲法に対する考え方について
(特に、参議院議員の選挙区の合区問題を中心として))
【主な発言項目】
片山 さつき 君(自民)
  • 地方自治が果たす役割の大きさを考え、歴史的、政治的、経済的、社会的、文化的にも一体性のある広域の地方公共団体としての都道府県と、住民にとり最も身近で密着している基礎的な地方公共団体としての市町村を、憲法条文に位置付けるべきとの見解
  • 合区問題は、都道府県の存在の重みをしっかり認識して考えねばならず、参考人から合区選挙による民主主義衰退の懸念等が示されており、投票価値の平等は極めて大切な問題だが、それのみを追求の余り、都道府県という単位が我が国の民主主義に果たす役割を軽視してはならないとの見解
  • 政権選択の衆議院に対し、参議院を地方代表的な性格と多様な意見を反映させる性格に重きを置いた院と捉え、都道府県単位の選挙区と全国比例から成る現行制度を基本にした上で、抜本的には憲法改正による合区解消を考えるが、地方の府としての参議院の特徴に着目し、投票価値の平等ということからこぼれ落ちる利益を確保する観点で、都道府県との結び付きを参議院の役割として制度化してはどうかとの趣旨の憲法学者の意見を踏まえ、法律改正による合区解消についても議論を進めることはあり得るとの見解
杉尾 秀哉 君(立憲)
  • 参考人は合区の解消策として憲法改正を挙げたものの、現実的な方策により早急に合区解消を図ることを優先すべきとの考えであり、法律による対処を認めているところ、参考人質疑の中で述べられた改憲論には様々な問題点があり、都道府県からの選出が必要との認識は、投票価値の平等という憲法14条に基づく人権を犠牲にすることを考えれば正当性の根拠が不十分と言わざるを得ず、参議院を地域代表制や地方の府とすべきとの主張も、憲法43条が規定した参議院が全国民の代表であることと矛盾すること等を考えれば、憲法改正による合区解消も別の憲法上の矛盾を生じさせ、究極の解決策とならないのは明らかとの見解
  • 合区の廃止は憲法改正によらずとも国会法及び公職選挙法の改正により解決する方策があること、二院制の下で参議院が国民のために果たすべき独自の役割や機能を構想し、それらの実現のためには都道府県選出の参議院議員が必要不可欠であること、具体的には、参議院として、人口減など構造的な地方問題の解決や災害対応機能の充実強化などを担うための新たな委員会設置などの国会改革が必要であることの指摘
  • このまま合区問題を放置すれば、次は飛び地や人口規模が異なる都道府県同士が合区になるケースが生じることも避けられず、今後、本審査会の合区問題の議論においては、一票の較差が大きい県の関係者や有識者のヒアリングなどを実施するとともに、参議院改革協議会の議論に資することが求められるとの見解
佐々木 さやか 君(公明)
  • 先日の参考人質疑では、合区対象県の知事等から、一部の県のみが合区対象となることへの不公平感を強く感じている旨の意見があったが、公明党が提唱している全国を11のブロック単位とする個人名投票による大選挙区制は、投票価値の平等と地域代表的性格の調和の観点に立つもので、一つの解決策になるとの見解
  • 憲法43条で衆参両院が全国民の代表とされていること、両院の権能もほぼ同等となっていることから、一票の価値の平等が重要な憲法上の要請となっており、平成24年最高裁判決にあるように、都道府県を参議院議員の選挙区の単位としなければならない憲法上の要請はないことから、現行憲法下で参議院の選挙区を都道府県単位として合区を解消することは現状難しいとの指摘
  • 令和4年6月8日の本審査会において、上田健介参考人から、権限と組織は相関関係にあると考えられ、参議院を衆議院と異なる形で民意を反映させるため、投票価値の平等にこだわらない選挙制度を考えるのであれば、特に立法に関する決定権限を弱めるべきとの意見があり、都道府県代表ということを考える場合には、権限と組織の相関関係について注意深く議論すべきとの指摘
東 徹 君(維新)
  • 合区問題は人口減少が大きな要因であるが、将来の人口推計を踏まえると、今の47都道府県が多いのは明らかであり、都道府県の合併や道州制を検討すべきとの見解
  • 参考人からは合区により投票率が下がったとの発言があったが、合区の対象となっている4県の投票率は他の都道府県を極端に下回っていることもなく、投票率を理由として合区解消を言うには余りにも時期尚早との見解
  • 合区は選挙制度をどうするかという話であり、憲法改正をしなければならないものではなく、参議院選挙で都道府県選挙区を維持し、毎回一人以上当選できるようにするのであれば、比例区の定数を大幅に減らし、それを都道府県選挙区の定数に回すことで、議員定数を増やさずとも一票の較差を抑えられるとの見解
大塚 耕平 君(民主)
  • 参議院における法の下の平等とは、単純な一票の平等ではなく、自身の居住する都道府県から少なくとも一人は代表を選出できる権利であることを立法府の意思として明確にし、裁判所が単純な一票の較差で判決を下すことのないように求めるべきとの見解
  • 選挙における平等を一票の較差で判断している日本以外の国とその判断の内容
  • 憲法や法律に一票の較差で選挙における法の下の平等を判断すると明記されていない中で、司法が一票の較差で判断を下し続けている結果、合区のような事態が生じていることは三権分立の観点から問題ではないかとの指摘
山添 拓 君(共産)
  • 憲法制定と参議院議員の選挙制度創設当初から、現在の選挙区である地方区選出議員に地域代表や都道府県代表としての要素は予定されていなかったと言うべきであり、1983年の最高裁判決が投票価値の平等を憲法上の原則と確認し、その要請を強めている下でこれを無視することは許されないとの見解
  • 4月26日の参考人質疑では、合区された2県の間で利害が異なることがあるとの意見が述べられたが、そもそも民意は多様で一つの県でも一つの意見ということはあり得ず、一方、小選挙区制では死票が多く、民意が反映されにくくなることが避けられないが、合区されれば一層深刻であり、地域の声が国政により届かなくなるのは言うまでもないため、投票価値の平等を実現するとともに、多様な民意が正確に議席に反映する制度とするために、比例代表を中心とする全国10ブロックの非拘束名簿方式の選挙制度とすることの提案
  • 2022年参議院選挙の較差訴訟判決において、合区解消のための憲法改正の議論を当該判決の憲法判断の根拠・理由として明記しているものはなく、この問題は、当審査会の議題ではなく参議院改革協議会などで各会派が意見を出し合い前に進めるべきとの見解
山本 太郎 君(れ新)
  • 合区による弊害は事前に警鐘が鳴らされたとおりであり、合区を導入すれば当然地元から不満が噴出し、憲法改正が必要だという声が上がると分かった上で、憲法改正につなげる動きの一つとして合区を行ったのではないかとの指摘
  • 合区の弊害を想像せずに合区を導入したのであれば、その不見識について国民にわびるべきであり、謝罪なしに憲法改正での合区解消を主張するのは説得力が全くないとの見解
山谷 えり子 君(自民)
  • かつては、選挙区について人々のつながり、地域的なまとまり具合を考慮することは許されると言っていた最高裁が、近年、これらの要請は憲法上の要請ではないという判断に傾いていった背景
  • 最高裁は、合区解消のために国会がどのような努力、対応をしたかによって判断するようにもなっているが、本来、憲法14条の平等論の議論であるはずなのに、立法不作為の違憲性の議論になっているとも捉えられる最高裁の判断の読み解き方
  • 議員と国民有権者との近接性は民主主義にとり重要との専門家の見解
福島 みずほ 君(立憲)
  • 選挙制度が目まぐるしく変わること、日本の憲法が硬性憲法であることを踏まえ、合区を解消するかどうかは、100年、200年単位で考えるべき憲法ではなく、公職選挙法の改正で行うべき問題であるとの指摘
  • 歴史的な政治、経済、社会ユニットである都道府県から議員を選出するために、他県の国民の投票価値の平等という憲法14条を犠牲にすることの正当性が問題となり得ることを踏まえ、国会は、投票価値の平等は重要な憲法上の権利であるとの考えを根拠とし、どのような選挙制度を取れば実現に近づけるかについて知恵を結集すべきとの指摘
  • 地域代表制にすべき、参議院を地方の府にすべきという意見については、国会議員が全国民の代表であることと矛盾しかねず、参議院の権能を弱めることにもなりかねないとの指摘
中西 祐介 君(自民)
  • 2025年参議院通常選挙までの合区解消を実現するため、現在行われている参議院改革協議会の下、院の改革も踏まえた超党派での法律改正による合区解消を目指すべきとの見解
  • 今後法律改正してもなお、以降の最高裁でより厳しい投票価値の是正を求める判断が下される可能性は否定できないことから、中長期的には憲法8章の充実の議論や、47条に人口を基本としつつも行政区画や地勢等を総合的に勘案すべきと提起する自民党改正案等の議論も本審査会で深めるべきとの見解
猪瀬 直樹 君(維新)
  • ロシアがウクライナを侵略しているようなときに憲法9条問題や自衛隊の位置付けをテーマにしないことは時事的な当事者性に欠けており、人口減少で過疎化が進行することは不可避であって合区問題に前向きな解決策はなく、これを今、憲法審査会で議論することには意味を見出せないとの指摘
  • 対政府質疑では、質問通告をしないときちんとした答えが返ってこないが、国会議員同士が討議する場合には質問通告は要らないので、自由討議の場でテーマに柔軟性を持たせ、キャッチボールのように議論を展開できれば具体的な中身に深まっていくと思うとの指摘
矢倉 克夫 君(公明)
  • 参議院では決算や行政監視に力を入れているが、地方代表の議院と位置付けると、従来と同様に中央政府の決算や行政監視に力を発揮できるかについて議論が出てきてしまうとの見解
  • 合区解消を目的に憲法に参議院の地域代表性を書き込むとなると、規定ぶりによっては、国会議員が選出母体である地方の指令の枠内でのみ代表権を持つにすぎないという形になってしまうとの議論が生じ、また、参議院の比例代表との整合性という問題もあり、立法府としては、二院制を採用した趣旨や参議院の独自性といった本質に立ち返った検討をしていくことが必要との見解
打越 さく良 君(立憲)
  • 地域代表制を理由に投票価値の平等の要請を後退させるためには、弱い参議院を制度化し、権限を弱めた上で、立法や政府統制において適切な題材につき、地域、都道府県の立場、観点から審議、調査を行う組織、手続を導入することとされるが、参議院において対等、平等の院から権限縮小を行うことにコンセンサスは得られないと考える旨の見解
  • 現行の選挙制度はいまだ3回しか実施されておらず、合区の是非、さらには選出された議員の正統性についてなどの総括が求められるとの指摘
小林 一大 君(自民)
  • 解散により民意を常時問われる衆議院とは異なる在り方が制度的に求められている参議院において合区制度が今後も続くことは、かえって民意が阻害されていくことにつながりかねないとの指摘
  • 国と地方のパイプ役としての代表をしっかりと確保していくことが今後も求められており、その意味で、国と地方との関係を強固にしていく国の形を国家の根本法規である憲法を改正し定めることが大切であることから、合区問題について本審査会での議論が深まることを望むとの見解
石川 大我 君(立憲)
  • 合区を廃止するために憲法を改正して各都道府県当たり最低一名の定員を定めたとしても、なぜ都市部の有権者の投票価値の平等を犠牲にして地方の県単位の選挙区から一人を選出しなければならないのかという問題は永久に付きまとい、憲法の基本原理である基本的人権の尊重と国民主権、議会制民主主義の根幹に照らし、このような憲法改正の取組には深刻な憲法上の問題があるとの指摘
  • 我が会派は、二院制の下における参議院の在り方として、地方問題の解決や災害対処などの機能強化などの国会法の改革と公職選挙法の改正のセットで行う合区廃止案を提案しており、また、国会改革においては、都市部も含めた県単位の課題解決の取組の推進により、都市部も含めた地域住民の福利に資する検討が必要との指摘
山本 太郎 君(れ新)
  • 投票価値の平等が民主主義の基本であり、都道府県単位の選挙区制を憲法に明記すれば、投票価値が改善される余地がなくなるので、合区により毀損されたものを正すため、短期的には議員定数増も含め、現行憲法下でできるあらゆる手段を講じるべきとの見解
  • 長期的には、都道府県にこだわらず、比例代表制やブロック制などを組み合わせるなどして、投票価値の平等と国会議員は国民の代表であることを担保することを目指すべきとの見解
青山 繁晴 君(自民)
  • 憲法96条の憲法改正規定は、立法府の発議を前提として、国民投票で主権者の意見を直接問うものであり、必要があれば憲法が改正されることを期待しているものであって、本当の意味の護憲主義とは96条も生かすべきときに生かすことであるとの指摘
  • 憲法審査会で、立法府の議員同士が、自由に討議をして意見を闘わせることは非常に有意義との見解

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令和5年5月10日(水)第4回

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日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査
(憲法に対する考え方について(参議院の緊急集会について))
【主な発言項目】
堀井 巌 君(自民)
  • 憲法54条2項に明示されている衆議院の解散には、衆議院議員の不存在という状況を踏まえた類推解釈から、衆議院の任期満了後で総選挙が行われる前が含まれるとの見解
  • 両院同時活動の例外である緊急集会の期間が70日間を大きく超えることは憲法の想定外との見解
  • 行政監視に重きを置いてきた参議院の役割から、緊急集会による緊急政令等への一定の関与が考えられるとの指摘
  • 緊急集会の議論と併せて、国会議員の不存在や国会の召集不可能時への対応、緊急政令等の制度に係る憲法改正の議論と同時に、緊急政令等への民主的統制として緊急集会を活用することについても参議院が率先して議論すべきとの指摘
杉尾 秀哉 君(立憲)
  • 緊急集会は、明治憲法下での緊急勅令や緊急財産処分を認めず、国会中心主義の立場から、緊急時においても国会が対応しようとする制度であることは明らかとの見解
  • 緊急事態における衆議院議員の任期延長は、議院内閣制の日本の場合には内閣総理大臣の延命を意味し、権力持続化の危険性を十分に認識する必要があるとの見解
  • 二院制の枠内で設けられた緊急集会について二院制の例外との主張があるが、緊急集会は緊急事態に際しても国会中心主義や国民主権を貫くために設けられた制度であり、例外だから問題というのであれば、議員の任期延長は国民主権の例外であることや、緊急政令を可能にする緊急事態条項が立憲主義など近代法の基本原理の例外であることこそ問題にすべきとの指摘
  • 在外邦人選挙権制限違憲訴訟最高裁判決が、国が国民の選挙権の行使を可能にするための所要の措置をとらない不作為により選挙権を行使できない場合も憲法違反と指摘したことを踏まえれば、大災害等であっても選挙を実施可能とするための投票環境の整備等の議論を行わず、任期延長の改憲という選挙権制約の議論を先行させることは、国会議員の存在自体の正統性の根拠を失わせることにもつながりかねないとの指摘
西田 実仁 君(公明)
  • 災害等の緊急事態には、権限が集中する政府の活動を国会で適切に監視するため、できる限り選挙を通じて議員の民主的正当性を確保する必要性が高く、選挙によらない議員の任期延長は国民から選挙の機会を奪うとの見解
  • 衆議院解散後の緊急事態に元衆議院議員の身分復活を認めることについては、内閣と衆議院との間に解消し難い対立関係がある場合に果たして機能するのか等、慎重な検討が必要であるとの見解
  • いかなる緊急の事態でも緊急集会プラス繰延べ投票で対応し得るという考え方を基本とし、極めて例外的に衆議院議員の任期延長や身分復活を認める場合でも、その権能の範囲や期間の上限についても民主的正当性の観点から限定的なものとし、身分復活には緊急集会での議決を伴わせるべきとの見解
音喜多 駿 君(維新)
  • 緊急集会は、長期にわたる場合を想定していない、総理が提示した個別具体的案件しか議論できない、という2点の限界があるため、緊急事態条項が必要であるとの見解
  • いかなる緊急事態にあっても、国会機能や二院制の原則を維持し、権力の統制を果たすことは極めて重要で、選挙が実施できないことにより国会議員が不在となる事態を避けるためにこそ、憲法改正、緊急事態条項の制定が必要であり、これは緊急集会の存在意義や権能を軽視するものではないとの見解
  • 緊急集会では補い切れない長期にわたる緊急事態は想定しておくべきであり、その際の行政、権力の暴走を止めるためにも、緊急事態条項、議員任期延長の創設につき早急に前に進め、緊急集会の権能や議論についても早急に取りまとめを行うべきとの見解
舟山 康江 君(民主)
  • 70日を超えて緊急集会を開くことの妥当性
  • 緊急集会における長期にわたる予算の議決が許容されるか否か
  • 権力濫用を防ぎ民主的な統制を強めるためにこそ、緊急事態条項による議員任期延長と緊急集会のすみ分け等も含めた議論を行い、憲法改正をすべきとの指摘
山添 拓 君(共産)
  • 明治憲法の非常大権や戒厳令は戦時や国家事変を対象としていたが、日本国憲法は戦争を放棄し軍隊を持たないとする9条を掲げたため、緊急事態条項をあえて定めず、権力分立による権利保障を貫く在り方を追求した結果、国際的にもユニークな緊急集会という規定に結実したとの指摘
  • 明治憲法下で唯一衆議院議員任期が延長された例は、1941年の対米開戦に向かう情勢下でのものであり、日本国憲法が議員任期の延長を定めず、衆議院の総選挙の間は緊急集会により対応することとしたのは、侵略戦争を一層深刻化し、内外でおびただしい犠牲を招いた痛苦の歴史を踏まえたものにほかならないとの指摘
  • コロナ危機やロシアのウクライナ侵略に乗じて緊急時対応のために改憲が必要とあおる議論が重ねられているが、こうした危機を経てなお改憲は政治の優先課題とはなっておらず、今求められているのは憲法を徹底的に生かす政治であり、乱暴かつ前のめりに改憲論議を重ねることではないとの見解
山本 太郎 君(れ新)
  • 緊急集会について、衆議院議員任期満了時に招集できるのか、70日間以上の開催が可能かなどの指摘があるが、これは解釈と運用ルールで解決でき、そのために憲法改正が必要との論立てには無理があるとの見解
  • 緊急集会の開催要件や期間を広く取る憲法解釈と集団的自衛権の合憲解釈のどちらにより憲法解釈上の無理があるかは言うまでもないとの指摘
山田 宏 君(自民)
  • 衆議院解散後70日を超えた場合の緊急集会についての通説
  • 緊急の危機の場合に衆議院と参議院が開けないとき、政府が国会に代わり当分の間、緊急財政処分、緊急政令を行うのは当たり前のことであり、人命を救うことが先で、憲法はそれに合わせることが原則であるとの見解
辻元 清美 君(立憲)
  • 緊急時に政令対応が必要な事項があるならば、平時から必要な対応を検討し、法律改正をしておくことこそが立法府の責務であり、憲法改正の必要はないとの指摘
  • 東日本大震災当時に自治体の長より、緊急事態においては中央政府ではなく、知事の権限を強めてほしいとの意見があったこと等を踏まえた危機対応の議論を行うべきとの指摘
安江 伸夫 君(公明)
  • 緊急集会が70日を超えて長期間開会されることが明示的には予定されていないことは大きな憲法的課題であり、少なくとも70日を超えてからは緊急集会の憲法上の許容性は経時的に後退すると考えざるを得ず、この点について現行憲法の想定していない限界事例と捉え、対応を検討する余地があるとの指摘
  • 議員任期延長等の論議の際に留意すべき点として、選挙を通じた民主的正統性がより保持された参議院の意義を明確にしていく観点から、衆議院議員の任期延長等の国会承認には衆議院の優越等は認められないと考えること、身分を失っている議員の身分復活をまずは民主的正統性が担保されている緊急集会において決するとすること、任期延長等を経た議員で構成される院の措置はそれを補完するための作用として選挙を経た議員で構成し直した院による同意を必要とすることの問題提起
浅田 均 君(維新)
  • 憲法改正を最終的に決定するのは国民投票なので、改憲項目について国民レベルでの議論が必要であり、国民が議論の前提としての現行憲法についての問題点や改正提案の内容と理由を知らなければ議論は前に進まず、合区解消と緊急集会の議論について、期限を切って一定の結論を得ないことには次のテーマに移れないとの指摘
  • 緊急集会だけでは十分ではないので、緊急事態条項の創設が必要であり、憲法9条の中身について「国の交戦権」の意味を明確にするための議論等が必要との見解
古庄 玄知 君(自民)
  • 権力者が自己に有利に類推するおそれがあること、一定の国民の権利を制限する場面で類推解釈することは妥当ではないこと、緊急集会は例外的、緊急的措置である以上、厳格に限定して解釈すべきであること、憲法は国の根本規範なのでこれに類推解釈を適用することは間違っていることから、憲法の条文を類推解釈することは妥当ではないとの見解
  • 憲法54条2項の解散の中に任期満了は含まれないと考えるが、類推解釈を合憲と考えることは解釈の問題と必要性の問題を混同しており、憲法改正してこの問題に終止符を打つべきとの見解
打越 さく良 君(立憲)
  • 憲法改正による議員任期延長について、立法事実が定かでなく、内閣の権限濫用のおそれと国民主権原理への弊害を拭うことができないため反対であるとの見解
  • 参議院は改憲自体が自己目的化した議論を避けるべきとの指摘
小林 一大 君(自民)
  • 衆議院での緊急事態に関する議論は、パンデミックへの対応や北朝鮮の弾道ミサイルへの対応等、平時とは異なる次元の事態への対応が課題となっているが、国民の生命と財産を守る責任を担う国会議員が国家の重大な危機に対してどう向き合うかが問われており、本院としても緊急集会の議論とともに現実的な課題として緊急事態の対応に取り組んでいくべきとの見解
  • 国会議員の任期延長については、憲法に定められた緊急集会の意義を十分に踏まえた上での丁寧な検討が求められており、本院においても緊急集会の在り方について具体的な議論が一層進むことがこの問題を考える上での大前提であるとの見解
古賀 千景 君(立憲)
  • 緊急集会が災害などの有事を想定していない平時の制度であり、開催期間は70日間が限度であるなどの主張は、憲法制定の立法事実に反し、憲法と参議院をないがしろにするものであるとの見解
  • 衆議院憲法審査会で行われている議員任期の延長と緊急政令の改憲議論は、権力の濫用を防ぐために作られた緊急集会の根本趣旨も議論せずに濫用可能な憲法改正を議論するもので、立憲主義への理解が問われる事態であり、任期延長が時の総理や国会多数派に濫用される危険に真正面から向き合い、緊急集会の意義を確認し、むしろその機能強化の議論を行うのが日本国憲法下の国会議員の使命であるとの指摘
熊谷 裕人 君(立憲)
  • 憲法54条により、衆議院解散と総選挙の間は40日以内、総選挙と国会召集の間は30日以内とそれぞれ限定されているのは、行政による解散権の濫用を防ぐためで、緊急集会は70日を超えて開催することも緊急の事態にはやむを得ず、国民主権の観点から衆議院の任期満了時にも認められるべきとの見解
  • 国民の代表者である議員を選挙により制定する国民の権利は、国民の国政への参加の機会を保障する基本的権利として議会制民主主義の根幹を成すものであるため、緊急事態下にあっても選挙を実施するための所要の措置をとることが必要であり、措置をとらないことは国会の不作為となりかねず、まずは選挙実施を可能とする郵便投票の拡充やオンライン投票の法整備などの所要の措置を考えなければいけないとの見解
山本 太郎 君(れ新)
  • 緊急集会を70日以上開けない国会の空白期間を生じさせないよう緊急事態条項や議員任期延長の必要性を主張する会派こそ、これまで国会の空白期間を生み出してきたとの指摘
  • 違憲状態の中で苦しむ国民の現状について憲法審査会で議論することが優先順位の最上位であり、審査会のテーマ設定をやり直すべきとの指摘

※上記発言項目は事務局において適宜抜粋し作成しております。発言の全体内容及び詳細については会議録を御参照ください。

令和5年4月26日(水)第3回

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日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査
(憲法に対する考え方について
(特に、参議院議員の選挙区の合区問題を中心として))
【参考人の意見骨子】
鳥取県知事
平井 伸治 君
  • 都道府県単位で選ばれた議員が国政と地方をつなぐパイプ役になることが想定されていたにもかかわらず、合区により都道府県の境目が取り払われたことで、中長期的に民主主義が衰退する懸念があるため、政治的・経済的・社会的ユニットである都道府県から議員が選出されるような制度設計の再考の要請
  • 合区により、鳥取県の参議院議員選挙における投票率の低下と無効票投票率の上昇が見受けられ、民主主義の屋台骨である投票制度自体が問われているとの指摘
  • アメリカでは人口によって一定程度配慮することもせずに、上院議員の定数が各州2人ずつであるなど、欧米では上院と下院が違った構成を求めている国があるとの指摘
  • 昭和58年大法廷判決において、立法裁量が広く認められ、社会的・経済的・政治的ユニットごとに代表を選出することについて合理性があり、人口比例主義は一定程度の譲歩・後退を免れないというのが判決の骨子であり、その後も基本は変わっていないとの指摘
島根県知事
丸山 達也 君
  • 合区された二つの県間で利害が対立する問題が生じた場合、合区で選出された議員がどのような姿勢で臨むかについて地方選挙や県議会の議決等の各県民の意思を確認するすべがなく、大きな問題であるとの見解
  • 選挙区のエリアが広がったことにより、有権者が候補者の考え方、行動力などを肌で感じる機会が著しく減退し、この弊害が投票率の低下に顕著に表れていることから、合区制度が国民主権、民主主義に資するものなのかどうかについて大いに疑問を感じるとの指摘
  • 今の状況では人口が比較的少ない二つの県がたまたま隣接しているが、今後は飛び地や人口規模が相当程度異なる都道府県同士が合区になるケースが生じ、人口の少ない方の県の声がますます届きにくくなる可能性が高くなるとの指摘
  • 合区解消の手段としては論理的には憲法改正、法改正いずれもあり、早急な解消を求める立場からすると法改正を望むところではあるが、法改正で解消した場合に違憲判決で手戻りになるリスクを考えると、最終的には憲法改正による合区の解消が必要との見解
徳島県副知事
勝野 美江 君
  • 合区は投票率の低下のみならず無効票の増加も招き、国民が政治に関心を持つような制度であるべき選挙制度が真逆の状況を起こしており、民主主義の根幹を揺るがす重大な問題であるとの認識
  • 合区によって地方の声が国政に届きにくくなることは日本全体に不利益をもたらすおそれがあるほか、合区の対象になった県のみが県単位の民意を国政に届けることができなくなる点において、一票の価値の不平等とは異なる自治体間での不平等性を有するとの指摘
  • 農林水産、医療等のあらゆる組織、団体が都道府県単位で合意形成を行っていることは、都道府県ごとに意見が集約される仕組みが十分機能してきたことの表れであり、合区の導入によって、都道府県ごとに集約された意見を国政に反映させる場としての参議院の機能が後退するとの指摘
  • 一票の較差に起因する合区問題の根本的解決には、地域代表制を採用しながら、参議院に地方の声を都道府県単位で国政に反映する仕組みが必要であり、憲法改正などの抜本的な対応により合区を解消し、全ての都道府県の代表が国政に参加できる参議院の選挙制度の実現の要請
高知県副知事
井上 浩之 君
  • 参議院の徳島県及び高知県選挙区では、投票率が合区導入後に過去最低を記録し、その後は低迷している状況にあり、無効投票の割合が急増しており、これは一県一代表ではない合区制度に起因する県民の関心の低下や失望によるのではないかとの指摘
  • 合区の固定化や拡大は断じて容認できず、一刻も早い解消を求めるとともに、昨年7月の参議院議員選挙前に高知県の地元メディアが行った世論調査では合区を解消すべきとの意見が8割を超えており、そのような県民の声に応えていかなければならないとの見解
  • 合区解消のための方法論として、憲法改正によらず、参議院独自の役割や機能を国会法に明確に位置付けた上で、それとセットで都道府県単位の議席配分を行う考え方もあるが、一票の較差に係る司法の見解を踏まえると、憲法改正により抜本的な対応を図ることが必要ではないかとの見解
  • 憲法改正を前提とした参議院の在り方について、例えば米国の上院なども念頭に置き、衆議院よりも人口比例の原則を緩和した形で位置付けることが妥当であり、地域の代表として各地方単位での多様な意見を反映させる、言わば地方の府として位置付けることにより、二院制の意義を踏まえたよりバランスの取れた制度、組織体系になるとの見解
【主な発言項目】
浅尾 慶一郎 君(自民)
  • 一定程度の時間が掛かることを踏まえても憲法を改正して合区を解消することの必要性
  • 参議院議員選挙だけでなく衆議院議員選挙や統一地方選挙等も含めた投票率低下の状況
杉尾 秀哉 君(立憲)
  • 合区による県民意識の変化、行政上の具体的な障害
  • 憲法改正による合区解消と投票価値の平等を定めた憲法14条及び国民代表原理を定めた憲法43条との関係についての知事会での議論
  • 二院制における参議院の役割として、人口減・超少子高齢化など構造的な地域問題の解決、災害対応機能の充実強化などを担う必要があり、こうした役割をより効果的に実施するための新たな委員会の設置などの国会改革の必要性
佐々木 さやか 君(公明)
  • 投票価値の平等と地域代表的性格の調和の観点から提唱している全国を11のブロック単位とする個人名投票による大選挙区制に対する評価
  • 合区の影響と考えられる投票率の低下についての年代別の傾向
音喜多 駿 君(維新)
  • 自治体の首長と参議院議員の兼職を認めることの実現可能性
  • 中央政府を解体して連邦制にする道州制の考え方
  • 広域自治体における連携は課題が多いが、一足飛びに道州制が実現しない中での広域自治体における連携の状況及び今後の展望
礒崎 哲史 君(民主)
  • 居住する地域から代表を選出することこそが法の下の平等に当たるという考え方に対する感想
仁比 聡平 君(共産)
  • 地方で進む人口減少・高齢化と東京一極集中現象の大きな要因と考えられる国の経済政策の抜本的転換や消費税減税・廃止の必要性
  • 合区は特定の県にのみ著しい不公平をもたらす不合理な制度であり、選挙区から一人しか選ばれない小選挙区の弊害を一層深刻にしていることについての見解
山本 太郎 君(れ新)
  • 憲法改正や定数削減ではなく定数を増やすことで合区を解消するという提案
  • 被災地から見た災害対応における国と地方との関係の在り方
中西 祐介 君(自民)
  • 法改正等により、地方の課題を総合的、集中的に審議する場を参議院に常設し、そのために一定の較差を許容しながらも全都道府県の代表を選出して、例えば全国知事会などからも、兼職をするという形でなくても審議に参画する場を作った際の知事会の協力の可能性
  • 憲法第8章の議論を充実させる必要性
福島 みずほ 君(立憲)
  • 時代の要請や人々の意識からも大きく影響を受ける選挙制度を硬性憲法である日本国憲法に規定することは不的確であり、合区解消は公職選挙法の改正により行うべきとの見解に対する所見
西田 実仁 君(公明)
  • 投票価値の平等という憲法の要請と県単位での議員の選出との調和を考えたアイデアの一つとして、6年に一遍議員を県単位で選出する方法への評価
  • 全国知事会の「参議院選挙における合区の解消に関する決議」に大阪府が反対した理由
東 徹 君(維新)
  • 比例区を廃止し、参議院議員の定数全てを選挙区に割り振ることで合区を解消する制度に対する評価
舟山 康江 君(民主)
  • 知事会として提言を出す前の議論の中で、憲法改正にその解を求めるのではなく、法解釈、若しくは国会が裁量権の中であるべき選挙制度を提言すべきとの議論の有無
熊谷 裕人 君(立憲)
  • 大災害が発生した場合の緊急集会において、被災した合区対象県の国会議員がいない場合に想定される問題

※上記発言項目は事務局において適宜抜粋し作成しております。発言の全体内容及び詳細については会議録を御参照ください。

令和5年4月12日(水)第2回

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日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査
(憲法に対する考え方について(参議院の緊急集会について))
【主な発言項目】
牧野 たかお 君(自民)
  • 憲法54条に明示されている衆議院が解散されたときとは、それほど長くない期間の一時的な衆議院議員の不存在の例示であり、任期満了後の衆議院議員の不存在の場合も解釈により含まれるとの見解
  • 緊急集会で議員が発議できる議案の範囲は、国の最高機関の一翼を占める参議院の位置付けを踏まえれば事実上広く、また、緊急集会の権能の範囲は、それほど長くない期間の衆議院議員の不存在を念頭に民主政治を徹底させる趣旨を踏まえれば国会の全権能に及ぶとの考えの下、特別会の召集を待てない程度の即時に対応すべきものに限り広く認められるとの見解
  • 緊急集会を超えた事態が発生したときに、憲法に条文がないエマージェンシーパワーに委ねることには民主政治の視点からの議論が必要であり、早急に結論を得るべき論点の一つは、衆議院解散後70日を超え国会召集できない程の緊急事態が発生しているときでも緊急集会で対応するか、議員任期の特例を認めるかであるとの見解
杉尾 秀哉 君(立憲)
  • 民主政治を徹底させ国民の権利を十分に擁護するため、万年議会である参議院に国会代替機能を定めたという緊急集会の根本趣旨は、衆議院ではほとんど議論されておらず、いわゆる70日間限定説のような改憲ありきの意図的かつ便宜的な解釈論とは参議院は一線を画すべきとの見解
  • 衆議院議員の任期満了後にも緊急集会が可能というもちろん解釈や類推解釈の法的正当性が明らかであること、憲法54条3項の衆議院の事後同意が担保されていること、衆議院が存在しない状況で緊急集会を認めなければ内閣が独断で必要な措置を講ずる事態を招きかねないことを考えると、任期満了後の緊急集会も可能と解することは立憲主義とも符合するとの見解
  • 衆議院議員の任期満了後も緊急集会を開催できるという憲法解釈に立った場合において、現行の国会法の条文改正は必要ではなく、また、その憲法解釈と両立するものとして、国会法や公職選挙法の改正により任期満了前に必ず総選挙を実施するという制度改革案があることの指摘
安江 伸夫 君(公明)
  • 緊急集会は、衆議院の不存在の状況において、緊急の必要があるときに国会の機能を維持して民主的な統制を維持するために設けられたものであり、任期満了の際も開会でき、その開催期間については緊急の必要が継続する限り開催できると理解することが妥当との見解
  • 緊急集会の権限の範囲を法改正等により拡大する場合の問題や、衆議院議員のみならず参議院議員の任期延長についても議論を深めるべきとの見解
  • 緊急事態対応として、緊急政令や緊急財産処分に類する規定の要否については、緊急集会の制度が創設された経緯等を踏まえると憲法上の許容性には疑義があり、また、法律に基づく政令委任や予備費などで措置可能であることから必要性に乏しいとの見解
浅田 均 君(維新)
  • 緊急集会は衆議院が解散されたときに国会の機能をどう維持するのかという議論であり、これは緊急事態のごく一部の話でしかなく、司法機能も行政機能も立法機能も喪失した事態をも想定しておく必要があり、私たちは現実的な緊急事態条項を条文化したとの見解
  • 憲法9条に関して、現行憲法には国家主権が何であるかの記載や、我が国の独立という言葉がなく、また、国際法と憲法の関係について、憲法起草当時、国際法がどれだけ理解されていたかは不明であるとの指摘
  • 緊急事態が要求しているのは、カール・シュミットが言う例外状態において誰が何をどのように守るべきかの議論であり、いかにして例外状態を法秩序につなぎ止めることができるのかという議論が不可欠との見解
礒崎 哲史 君(民主)
  • 緊急集会についての規定は、二院制の例外であることから、その運用がどこまで許容され得るかについて丁寧に議論を重ねていく必要があるとの見解
  • 仮に緊急集会に国会の一般的な権能を代行させようとすると、国会法102条の2との関係で緊急集会の性格が変化することに注意が必要であるとの見解
  • 日本維新の会、有志の会、国民民主党で合意した衆議院議員の任期延長に関する提案の根幹は、緊急集会があくまで臨時対応で長期間の対応が困難とした場合に、いかなる緊急事態においても国会機能を維持し、権力を統制、分立することが重要との考えに基づいているとの見解
山添 拓 君(共産)
  • 日本国憲法は、明治憲法の緊急勅令や緊急財政処分といった政府の専断で処理できる仕組みを排除したことに大きな特徴があり、いかなる緊急事態であっても国会の関与を求め、行政権の専断を許さないこととしているとの指摘
  • 権力分立を維持し、国民の権利保障を全うしようとした立憲主義を貫こうとするのがこの憲法であるが、自民党の2012年日本国憲法改正草案はこれとは異なり、立憲主義を一時的に停止し、それをいつまで続けるかも内閣次第であり、歯止めがないとの指摘
  • 緊急事態であればなおさら民主政治を徹底し、国民の審判の機会を保障することこそ必要であり、憲法で定めた参議院の機能を否定するかのように議員任期の延長、緊急事態条項の創設など改憲論へ突き進もうとするのは歴史の教訓を踏まえない暴論であり、断じて認められないとの指摘
山本 太郎 君(れ新)
  • 緊急集会を衆議院議員の任期満了の場合にも開催することは学説上も無理のない解釈であり、緊急集会の規定は政府への全権委任等を避けるために設けられたもので、その理念に沿う限りにおいては柔軟な解釈による運用を認めるべきであるとの見解
  • 緊急集会は、70日間の期間を超えては開催できないとの主張もあるが、この70日という期間は、衆議院解散後40日以内に総選挙を行い、選挙日から30日以内に国会を召集するという規定にひも付いており、非常時でこの期間中の総選挙の実施が不可能な場合、70日という期間に縛られずに緊急集会を行う運用も検討する余地があるとの指摘
  • 緊急集会ではフルスペックの国会機能が果たせないので、衆議院議員の任期延長が必要であるとの意見があるが、非常事態の例外的な議会運営にフルサイズの権限を与えないことが憲法の趣旨であり、緊急時に、選挙で選ばれた期間を超えて任期延長された議員から成る議会にフルサイズの権限を与えることは、民主主義をないがしろにするとの見解
片山 さつき 君(自民)
  • 緊急集会に関して、衆議院議員任期満了の際に開会できること、内閣が提示できる議案の範囲、衆参同時選挙の場合の出席要件及び定数要件について、国会法の改正等の方法で明確化を行い、機能する緊急集会にすることが憲法上本来あるべき姿の実現であるとの指摘
  • 緊急集会への登院が物理的に困難な非常事態に、各議院の3分の2の多数で任期の特例を認めることや、国会に両院の議員としての身分があるが出席困難な場合に内閣が個別法に基づく緊急政令を制定できることを憲法上明確にしておくことは必要であるとの見解
辻元 清美 君(立憲)
  • 日本国憲法の緊急事態法制は緊急集会を軸に組み立てられており、立法機能や予算承認機能は万年議会である参議院の緊急集会が担い、緊急集会すら直ちに開催困難な場合の災害緊急事態などにはあらかじめ法律の委任を受けた個別の緊急政令の仕組みが措置され、必要であればまず法律改正で対応すべきとの見解
  • 緊急政令という事実上の内閣への白紙委任のような改憲を唱える姿勢は、立法事実を欠き、民主政治を徹底させて国民の権利を十分擁護するとの根本趣旨に立つ緊急集会を基軸とする日本国憲法の緊急事態法制の考え方と根本的に矛盾するとの見解
矢倉 克夫 君(公明)
  • 緊急集会について、衆議院では緊急時における議員任期延長の前提的な議論として進んでいるが、参議院の院の自律権の問題に絡むものとして、本院において真正面からしっかり議論すべきとの見解
  • 緊急集会については、適用場面、開催期間、緊急性、案件の範囲の4つの発動要件に関する論点のほかに、効果について、緊急集会で首班指名等を行い得るのか、事後の衆議院の同意が得られない場合の効力をどうするかという論点があり、憲法学者等の意見も拝聴しつつ議論を深めるべきとの指摘
東 徹 君(維新)
  • 自民党条文イメージたたき台素案では、テロや武力攻撃が行われた場合の緊急事態対応には触れられておらず、昨今の情勢の変化に応じた党としての最新の条文案が示されていないため、具体的な条文案を憲法審査会に示し、議論をリードしてもらいたいとの意見
  • ロシアのウクライナ侵攻や台湾有事の可能性を考えると、憲法9条に関する議論も行わなくてはならず、緊急事態条項に関する議論がまとまれば、次は憲法9条に関する議論を進めてもらいたいとの意見
青山 繁晴 君(自民)
  • 憲法54条は、パンデミック、大災害、テロ、有事を想定しておらず、不幸にも参議院議員もいなくなるような別次元の事態を想定していない点で抜けがあるとの指摘
  • 安全保障は主権がないと存在しないため、占領下の実質的に主権のない時代に公布、施行された日本国憲法は国民を守るための規定が薄くなっており、憲法96条の改正条項を生かすことが必要との指摘
石川 大我 君(立憲)
  • 憲法改正の発議、内閣総理大臣の指名等は、緊急の必要の要件を満たさない等により緊急集会の権限外であると考えられるが、両議院同意案件や予算の審議、議決は緊急集会の権能として認められることの確認
  • 緊急集会の権能については、憲法前文が定める国民主権原理、代議制の原理及び二院制の趣旨等も踏まえ、その基本的な在り方及び個別の対象事項についての議論を深めていくべきであるとの見解
進藤 金日子 君(自民)
  • 緊急集会は憲法が採用する両院同時活動の原則等の例外であり、緊急事態に対する暫定の措置であることが明確に示されており、国家の機能が失われる可能性も排除できない大災害を想定した場合、暫定措置のみに緊急事態対応を委ねるのではなく、国会議員の選挙の適正な実施が困難と認められるときは、任期の特例を定めることができることを憲法改正により明文化すべきとの見解
  • 緊急集会に関する政府見解は、解散という予測しない事態の場合に限って特に明文の規定をもって認めたとする見解と、任期満了後、類推適用が許されるという見解の両論があり、結論に至っておらず、学説も二分されており、緊急集会の期間や権能の範囲についても解釈上議論があるので、現状及び想定し得る将来を見据えて、解釈等で曖昧な部分は、更に議論を重ねて結論を得るべきとの見解
古賀 千景 君(立憲)
  • 緊急集会を開く期間については、地震等の大災害で緊急の立法措置を講じる必要が生じた場合に備えて措置された旨の緊急集会の立法事実や、全国民を代表する議員から成る国民代表機関であり、全体の改選期のない万年議会である参議院に国会代替機能を求めることにより民主政治を徹底するという根本趣旨を踏まえれば、これらと明確に矛盾する議員任期延長の改憲の根幹の考えである70日間限定説に対して、会派として明確に反対するとの見解
  • 緊急時における国会機能の確保のためと称して議員任期延長の改憲議論がなされているが、現行憲法が定める臨時の緊急措置の一つである臨時国会の召集要求に政府や与党が応えなかった例があり、この問題が議論されていないことは法の支配、立憲主義の観点から重大な課題であることから、本審査会で臨時国会召集義務違反の調査の実施が必要との指摘
臼井 正一 君(自民)
  • 衆議院議員の任期満了の場合にも緊急集会が開き得るとしても、衆参同時選挙の場合等、非改選の参議院議員という僅かな数の議員で重要な意思決定を行うことは、きちんと民意が反映されたものと言えるのかとの指摘
  • 議員が選挙で選ばれることは重要であるが、東日本大震災の場合等に、臨時特例法による地方議員の任期延長は大きな批判なく行われており、国会議員の任期延長についてのみ賛成できないことは理解できないとの指摘
熊谷 裕人 君(立憲)
  • 緊急集会中に国に緊急の必要性がある新たな案件が発生した場合、内閣総理大臣は当該緊急集会で審議すべき新たな案件を示すことができ、それに関連する議案を議員側が発議できるようにし、参議院から内閣総理大臣に対して新たな案件を示すように促す制度に関し、仮にこれらの制度を措置する場合の憲法上の問題や国会法の改正の必要性の確認
  • 緊急集会中に国に緊急の必要性がある新たな案件が発生し、内閣から新たな案件が示されない場合、参議院において内閣総理大臣が示した案件に関連のある議案以外の議員による発議を認めること等は議論の余地があるとの見解
加藤 明良 君(自民)
  • 緊急集会については、権能の限界や開催日数に関する論点整理のほか、武力攻撃、存立危機、大規模災害の規模等、緊急の必要がある場合の判断基準についても、十分なシミュレーションが必要であり、また、ねじれ国会の状況においては、緊急集会で内閣の提案が否決され、国会機能が停止するといった混乱が想定されるとの指摘
  • 大規模な自然災害、外国からの武力攻撃、感染症のパンデミック等はいつ日本で起きても不思議ではない状況であるので、いかなる緊急事態にも対応できる体制整備が必要不可欠であり、そのために必要なのは緊急事態条項による対応であるとの指摘

※上記発言項目は事務局において適宜抜粋し作成しております。発言の全体内容及び詳細については会議録を御参照ください。

令和5年4月5日(水)第1回

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日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査
(憲法に対する考え方について(参議院の緊急集会について))
【川崎参議院法制局長の説明骨子】
  • 緊急集会制度の趣旨、制定経緯、制度の概要、これまでの実例、主な論点等
【主な発言項目】
山本 順三 君(自民)
  • 衆議院議員の任期満了と憲法54条2項の解釈の整理、解釈ごとに考え得る課題と対応措置
  • 憲法54条2項の「緊急の必要があるとき」に、武力攻撃事態や災害緊急事態が含まれると考えるのが自然であるが、当該緊急事態下で憲法が想定する期間内に総選挙ができない場合に備えた議論の必要性
  • 緊急集会の権能の範囲
杉尾 秀哉 君(立憲)
  • 民主主義を徹底させ国民の権利を十分に擁護するため、行政権の自由判断の余地をできる限り少なくする緊急集会制度の根本趣旨に照らせば、衆議院の改憲議論にある緊急事態の類型、70日を超えて選挙の一体性が害される広範な地域などの抽象的な要件には極めて広範な内閣の裁量の余地があり、この根本趣旨に全く反しているとの見解
  • 緊急集会の根本趣旨という参議院の在り方そのものに照らしても、議員任期の延長のための改憲には明確に反対するとの見解
  • 憲法が緊急事態対応を、全国民を代表する議員から成る国民代表機関であり、全体の改選期のない万年議会である緊急集会に委ねていることは、民主的正当性と実効性、国家緊急権濫用の危険性の徹底排除という全ての観点からも世界に誇るべき制度であり、その更なる十全な機能強化の議論を進めていくべきとの見解
西田 実仁 君(公明)
  • 緊急事態において国会機能を維持するための対応策については、緊急集会制度の意義及び特徴を振り返った上で、参議院において丁寧かつ慎重に議論することが必要ではないかとの指摘
  • 緊急集会の開催要件、案件の範囲等、検討すべき論点は多岐にわたり、憲法の規定を超える事態に対して議員任期延長という憲法改正で対応すべきか、解釈や法律で対応できるかについては大いに議論があるとの指摘
  • 緊急集会について限定説を採るべきか無限定説を採るべきか、その間に落ち着かせるか、参議院憲法審査会で議論を深め、いずれかのタイミングで憲法学者の意見等も聴取したいとの見解
音喜多 駿 君(維新)
  • 憲法54条は、二院制が存続する現時点において、民主政治を徹底させて国民の権利を十分に擁護するためにも必要不可欠であるとの指摘
  • 緊急集会を開くことができる期間は最長でも70日までであり、緊急事態が70日を超えるような長期にわたる場合、緊急集会だけでは十分に対処できず、武力攻撃、内乱、テロ、自然災害、感染症の蔓延など、選挙ができないほどの事態が長期にわたる場合には、国会議員の任期を延長する緊急事態条項を設けることが必要であるとの見解
  • 緊急事態条項を導入するに当たり、憲法上の基本的人権や自由を制限することがあるため透明性の確保が必要であり、例えば、憲法裁判所の関与、議員任期延長以外の国会権能維持のための措置、絶対に制限してはならない人権に係る規定等の条文などが適切に設計される必要があるとの指摘
大塚 耕平 君(民主)
  • 緊急集会を開催する緊要性が生じるタイミング別の緊急集会の意味の分析
  • 緊急集会の過去の2実例が異例の制度である緊急集会の運用に足る事案であったかを検討する必要性
  • 緊急事態の定義及び緊急集会で決定対象とすべき事項について可及的速やかに議論し国会における合意を形成する必要があるとの見解
山添 拓 君(共産)
  • 緊急集会を議論の対象とするのは緊急事態条項の創設という狙いがあることは明らかであるが、東日本大震災、コロナ禍でも憲法に緊急事態条項がないため対応できなかった事態は起きておらず、国民の多くが改憲を政治の優先課題として求めていない中、憲法審査会を動かすべきではないとの見解
  • 憲法は人権保障を十分なものとするため国会の関与を必須としており、緊急集会も国民代表である国会における審議と討論、採決を要求しているため、国会の関与を否定し憲法を停止する緊急事態条項とは全く性質が異なるとの見解
  • 緊急集会で対応できない場合があるので衆議院議員の任期延長をという議論があるが、議員任期の延長は内閣や多数党の専断を許し、国民の選挙権行使を通じた参政権を奪い憲法を停止するものであり、緊急集会とリンクさせて議論すべきでないとの見解
山本 太郎 君(れ新)
  • 憲法審査会は、憲法がその趣旨どおりに実施されているか、憲法違反が生じていないかを調査する役割を持っているにもかかわらず、この役割を果たすための議題設定や議論がほとんどなされていないとの指摘
  • 生活保護基準の引下げにより憲法25条が定める最低限の生活が壊され、また、旧優生保護法下で強制不妊手術を行ったことは憲法違反との判決が出ても全ての被害者に十分な保障をするための法整備はできていない等の指摘
佐藤 正久 君(自民)
  • 緊急集会は緊急事態に対応するための重要な規定であり、緊急事態という国家の根本概念が現行憲法で規定されていない中、様々な対処法を考えておくべきであり、緊急集会もその一つの方法として活用していくべきとの見解
  • 緊急事態が起きているときに、衆議院議員の任期が満了になるから解散し、あとは緊急集会でというのは緊急事態の対処としては間違っており、これについては、憲法を改正し、緊急事態における議員の任期の延長を認めるべきであり、あらゆる事態に備えるよう、憲法に緊急事態条項の整備を進めていく必要があるとの見解
打越 さく良 君(立憲)
  • 緊急集会制度は本院の存在理由の一つとされ、これを否定、毀損しようとする議論は本院の権威をおとしめるものにほかならず、その運用の細部について学説を検討する際は本院の権威を一層高める方向で議論すべきとの観点に立てば、衆議院議員の任期満了後の場合にも緊急集会を求め得る学説を採るべきとの見解
  • 衆議院が存在しない状況で緊急集会を認めなければ、内閣が緊急事態の法理に依拠するなどして単独で必要な措置を講じる事態を招きかねないとの見解
赤池 誠章 君(自民)
  • サイバー攻撃、大規模自然災害、新型感染症の流行等の危機が複合的に発生するという最悪の事態を想定し、いかなる緊急事態であろうとも国民を守るために国家体制が機能し続けなければならないとの見解
  • 緊急集会の規定が緊急事態に際して機能するのか、運用面の問題はないか等の議論が十分になされていないのではないかという危惧があり、国会議事堂が使用できない事態が発生した場合にどこで国会を開会するのか等、実際の緊急事態においてどのようにして国会を開会し続けるかを具体的に議論することが必要との見解
熊谷 裕人 君(立憲)
  • 緊急集会中に国に緊急の必要性がある新たな案件が発生した場合、内閣総理大臣は当該緊急集会で審議すべき新たな案件を示すことができ、それに関連する議案を議員側が発議できるようにするとともに、参議院から内閣総理大臣に対して新たな案件を示すように促す制度の提案
  • 緊急集会中に国に緊急の必要性がある新たな案件が発生し、内閣から新たな案件が示されない場合、参議院において内閣総理大臣が示した案件に関連のある議案以外の議案の議員による発議を認める余地に関し、憲法との整合性も含めて検討することの必要性
山田 宏 君(自民)
  • 緊急事態は天災、パンデミック、戦争、様々なものが考えられるが、平時ではなく、緊急事態には緊急事態の考え方があるとの見解
  • 緊急事態について議論すべきは、ウクライナ情勢のようなことや、関東大震災、もっとひどいパンデミック等を想定しあらゆる対策を取っていくことだが、緊急集会についての憲法54条は狭い範囲のことしか定めておらず、これでは対応できないとの見解
福島 みずほ 君(立憲)
  • 緊急集会の規定は、権力の暴走を許した戦前の反省と参議院の半数改選という特性を生かし、国家権力による濫用を排除し、優れた機能性を具備した世界に誇るべき条項であるとの見解
  • 衆議院では緊急事態条項を取り入れるために衆議院議員の任期延長等が議論されているが、民主主義を徹底する見地から規定が設けられた緊急集会をしっかり議論すべきであるとの見解
佐々木 さやか 君(公明)
  • 二院制をもって臨むことができない緊急の場合、緊急集会は全国民の代表として行政権に対する民主的コントロールを及ぼす重要な役割を担い、衆議院の同意を要する暫定措置とはいえ、緊急時に国民の基本的人権を保障し、行政権の濫用を防ぐためにも、緊急集会が果たすべき責務は極めて重く、その要件や制度の詳細について検討することは緊急時への備えとして極めて重要との見解
  • 衆議院の任期満了の際に緊急に国会が対応する必要が生じた場合、現実問題として緊急集会で対応するほかないのではないかとの指摘
猪瀬 直樹 君(維新)
  • ミサイルが官邸に落ちて国会しか残らなかったり、国会が半分潰れたりというような国家の意思決定が色々な形で阻害されたときに意思決定をどう担保するかを考えることは非常に重要な課題であるとの見解
  • ウクライナに対する支援のあり方を当事者性を持って検討するとともに、参議院が最後の意思決定の場所となる可能性を検討し、有事について真剣に考えるきっかけにすべきとの見解
松川 るい 君(自民)
  • 憲法の条文上、緊急集会は解散から40日以内に総選挙が行われることを前提とした平時の制度であり、緊急事態を想定したものではないとの見解
  • 二院制を採る我が国において参議院だけで国会機能を担うことには疑問があり、緊急事態において国会の開会状態を維持する規定を設け、内閣による衆議院の解散や衆議院による内閣不信任決議案の議決の禁止も必要との見解
仁比 聡平 君(共産)
  • 日本国憲法は、大日本帝国憲法の緊急事態条項を廃し、全国民を代表する選挙された議員で組織される国会こそが国権の最高機関であり唯一の立法機関であると定め、緊急の必要があるときには緊急集会で対応することとしたが、それは戦前、戒厳令や非常大権などの緊急事態条項により国民の自由と権利が圧殺され、軍国主義に進んだ深い反省に立つものであるとの見解
  • 非常事態を好機とし、国会も開かず、国民の生活や権利を政府が勝手に制限できるようにする緊急事態条項を持ち込もうとすることは筋違いとの指摘
小林 一大 君(自民)
  • 緊急の対応を要する事態は、衆議院の解散後であろうと、衆議院議員の任期満了後であろうと発生し得るので、どのような場合に緊急集会を開けるかについて議論を深めるべきとの見解
  • 緊急集会の性質が二院制の例外であり暫定的なものであったとしても、具体的な状況により緊急集会において参議院が担う役割は決して小さなものではなく、様々な可能性を持つとの見解

※上記発言項目は事務局において適宜抜粋し作成しております。発言の全体内容及び詳細については会議録を御参照ください。

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