本法律案は、日本国憲法96条に定める日本国憲法の改正についての国民の承認に係る投票に関する手続及び国政における重要な問題のうち憲法改正の対象となり得る問題等(国政問題)に係る案件についての国民の賛否の投票に関し定めるとともに、あわせて憲法改正の発議及び国政問題に係る案件の発議に係る手続の整備を行おうとするものであり、その主な内容は以下のとおりである。
国会法の一部を改正し、憲法改正原案を発議する場合の賛成者の員数要件、憲法改正原案を審査する憲法審査会の設置、そして憲法改正原案という重要議案を審査することに伴う憲法審査会における審査手続の特例等を定める。
(1)憲法改正原案の発議
議員が憲法改正原案を発議するには、衆議院では議員100人以上、参議院では議員50人以上の賛成を要する。憲法改正原案は、内容において関連する事項ごとに区分して個別に発議するものとする。両院の不一致の場合は両院協議会で調整される。
(2)憲法審査会の設置
各議院の「憲法調査会」の後継機関として、日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制について調査し、憲法改正原案、日本国憲法の改正手続に係る法律案等を審査するため、各議院に憲法審査会を設ける。附則により3年間は改正原案に関する審査は行われないことになっている。また、合同審査会の開催が可能であり、衆参各審査会への勧告機能が付与される。
(1)国民投票の期日
国会が憲法改正を発議した日から起算して60日以後180日以内において、国会が議決した期日とする。
(2)投票権者
日本国民で年齢満18歳以上の者(成年被後見人を除く。)とする。本法施行までに公職選挙法、民法その他の関連法制を整備する(経過措置は規定しない)。投票人名簿は投票日前50日を基準日として調製する。
(3)国民投票広報協議会
憲法改正の発議があったときは、憲法改正案の内容の広報活動を行うため、国会に、両議院の議員各10名で構成する国民投票広報協議会を設置する。委員は基本的には会派の所属議員の比率に応じて配分するが、反対会派からも選任されるようできる限り配慮する。同協議会は国民投票公報の原稿の作成、憲法改正案の要旨の作成等、国民に対する広報を行う。公報には憲法改正案及びその要旨、憲法改正案に係る新旧対照表その他参考事項に関する分かりやすい説明、発議の際の賛成意見・反対意見が掲載される。改正案・要旨等の記載等は客観的・中立的に行い、賛成・反対の意見の記載等は公正かつ平等に扱う。
(4)投票の方法・国民の承認
投票者は投票用紙に印刷された賛成、反対の文字のいずれかを囲んで○をつけることとするが、×や二重線による意思表示も有効と認める(白票は無効投票となる)。賛成投票の数が賛成票と反対票の合計の2分の1を超えた場合は、憲法改正について国民の承認があったものとする。
(1)運動主体
運動は基本的に自由とし、投票の公正さを確保するための必要最小限の規制のみを設ける。投票事務関係者等の国民投票運動は禁止する。公務員等・教育者がその地位を利用した国民投票運動を禁止する(罰則は設けない)。公務員が憲法改正の発議から投票期日までの間に行う国民投票運動及び憲法改正に関する意見の表明並びにこれらに必要な行為については、国家公務員法、地方公務員法等の公務員の政治的行為の制限規定は適用しない。
(2)一般放送事業者による国民投票放送の規制
一般放送事業者等を対象に国民投票に関する放送について、放送法第3条の2第1項(政治的公平などの編集準則)の趣旨に留意する規定を置く。国会の発議から国民投票期日に至るまで全期間有料広告放送は禁止する(罰則は設けない。)。
(3)無料広告
政党等に対するテレビやラジオにおける無料意見広告枠の提供などの国民投票運動の一部公営に関する規定を設ける。割当は賛否平等とし、政党による指名団体に行わせることも可能とする。意見広告と合わせ、広報協議会による憲法改正案に関する客観的・中立的な広報枠も設ける。
投票の公正さを確保するための必要最小限の規定のみを設けることとする。組織により多数の投票人に対して行う買収・利害誘導、公務員等の職権濫用による国民投票の自由妨害、投票の秘密侵害等について罰則を設ける。
この法律の規定のうち国民投票の実施に関する部分は、公布の日から起算して3年を経過した日から、また、国会法の一部改正の部分は、公布の日以後初めて召集される国会の召集の日から、それぞれ施行することとする。
手続違反等に限定して、無効訴訟制度を設ける。案件を限定して対象は憲法改正国民投票に限る。国民投票において国民の承認がなかった改正案と同一内容の改正原案の発議について、当該国民投票の結果を十分に考慮するものとする。
(1)国政における重要な問題のうち憲法改正の対象となり得る問題、統治機構に関する問題、生命倫理に関する問題その他の国民投票の対象とするにふさわしい問題として別に法律で定める問題に係る案件(国政問題に係る案件)を国民投票に付すときは、国会の議決で発議する。議員が国政問題に係る案件に係る議案を発議するには、衆議院では議員100人以上、参議院では議員50人以上の賛成を要する。
(2)国政問題に係る案件は、国民が賛成又は反対を表明できる明確な設問とする。
(1)国政問題国民投票の実施
国会が国政問題に係る案件を発議したときは、国政問題国民投票を行う。国政問題国民投票の結果は、国及びその機関を拘束しない。
(2)国政問題国民投票の検討・措置
附則において「この法律が施行されるまでの間に、国政問題国民投票に関し、日本国憲法の採用する間接民主制との整合性の確保その他の観点から検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとする」との規定を置く。