１　基本的人権

• 党の新憲法起草小委員会の検討（平成17年）においては、基本的人権と国民の義務に関する10条から40条に関しては、おおむね存置することとしている

• 党の論点整理（平成16年）は、国民の権利及び義務については、時代の変化に対応して新たな権利及び義務を規定するとともに、国民の健全な常識感覚から乖離した規定を見直すことについて、異論がなかったとしている

• 人として生まれた以上、地球上のどの国や地域に生まれても、肌の色がどうであろうとも、人として尊ばれなければならないということが地球上の普遍的原理となったのであり、人類の到達点としての普遍的人権の日本における実現という視点が人権保障には大切

• 人権について、地球市民に普遍的に保障される人権を具体化した地球憲法を構想し、これと整合性のある日本の憲法はどういう姿になるかを論じあうべき

• 基本的人権は、多数決原理により成立する法律によっても侵害されないところにその本質がある。公益、すなわち多数者の利益に反してでも、人間の尊厳を確保するため、最低限侵害されてはならない私的な利益こそ基本的人権

• 基本的人権の尊重は日本国憲法の根本的な規範であり、今後とも遵守していくべき（民主党の見解）

• 基本的人権は個人が生まれながらにして有する自然権的権利の総称であり、人権保障の目的を達成するために統治機構があるといっても過言ではない

• 人権規定は、政治的マニフェストであり、憲法制定権力又は国家・政府が人民に示す国家として追求すべき価値を表すもの

• 憲法上の人権は、時の法律により変えることができないという効果を持つため、法律で認める人権とは明確に区別される

• 人間の権利とは、他者がいて初めて成立するものであり、他者への配慮がないような人権は成立しない

• 11・12・13・97条という基本的人権の根源的規定の重みを共有する作業が必要

• 憲法は、人権の面でも、社会権を規定するなど先駆的内容を持っており、改正の必要はない

• 最近、国民の人権が制限・統制の方向に進んでいるのではないかと懸念する

• 人権は恒久平和の前提であり、人権は平和によってこそ守られる

• 憲法の基本的人権規定は国際的に見ても先駆的内容を持ち、戦争の反省と教訓の上に規定されたことは重要であり、基本的人権が侵されることのないよう、憲法を守り、いかしていくべき

• 基本的人権は幾多の試練を経ながら獲得したものという97条の規定は重要な意味を持つ

• 治安維持法被害者の救済、従軍慰安婦問題の解決など明治憲法下の人権問題について、日本がより積極的に行動をとることが日本を実際に世界の水準に高めることになる

• 基本的人権は世界共通のものであり、日本人が海外で生活し、外国人が日本で生活することを考えると、国際的な問題としてとらえていくべき

• 19世紀、20世紀の人権論の主眼は人間の尊厳の制度的確保にあったが、21世紀の人権論としては、環境破壊や暴走する市場経済原理主義の調整などを入れ込む必要がある

• 富の再配分を目指した従来の社会的請求権に加え、それぞれの国民が豊かな人生、生活実現のための能力・機会を付与され、支援される権利ということも必要になってくる

• 人権の実現は判例の積み重ねをおいてなく、判例のない憲法の規定は無意味。裁判官は立派な判例形成をもっとしてほしい

• 人権関係の法律については、行政府が提出する場合、人権保障の責務が当該行政府に発生するのを避けるため、消極的所管争いなどが生じがちであり、議員立法によることが望ましい

• 基本的人権の保障については、憲法レベルの検討に併せ、個別法の保障が重要であり、特に人権擁護法案、監獄法の全面改正、司法アクセス拡充法制の整備が重要

• 党の憲法調査会報告（平成14年）は、日本を人権保障を促進する能動的な国として自らを位置付け、率先して基本的人権の確立に取り組むことを強く希求するとしている

• 基本的人権の尊重を実現する上で、体制整備のため内閣に新たに人権省を設置し、人権尊重・平等確立社会基本法といった人権基本法を制定し、早急に人権侵害救済法を制定することが重要

• 党の憲法調査会中間報告（平成13年）は、日本を人権保障を促進する国として自らを位置付け、率先して基本的人権の確立に取り組むべきとしている

• 親の子殺し等日本の社会状況を見ると、人権保障の前に人間の存在基盤が崩れつつあるという現実についての認識を共有すべき

• 憲法の徹底した人権尊重主義は外国の憲法規定と比べても先駆的である。ハンセン病訴訟を始めとする憲法訴訟は、権利のための闘いこそ人権保障の確立と発展の力であることを示してきた

• 権利保障を強めるには、各分野の基本法に権利概念を明記するとともに、その権利を実現するための具体的権利、例えば環境権であれば、事業の差止請求権、環境団体の訴訟上の権利などを法律で定めることこそ当面の課題

• 人権の尊重を徹底させるため憲法に新しい条文を加えるべきとの意見があるが、むしろ、抽象的な憲法の条文を具体化する立法が決定的に欠けているのではないか

• 抽象的な憲法の規定を具体的権利として保障するためには立法が必要であり、立法府たる国会の責任は大きい

• 日本の人権保護の不十分さの原因は、憲法の規定ではなく、立法の不備にあることが参考人の意見によりかなり証明されたのではないか

• 憲法の掲げる基本的人権は市民的、政治的、経済的分野など社会のあらゆる分野で保障されるべきであり、その自由と権利は人権法又は個別法の整備充実で現実のものとされるべき

• 社会を成り立たせる基礎として、道徳や文化などがインフラとして重要であることは承知しているが、それらは成文法として規定する憲法に書くことのできる価値とは異質のものではないか

• 日本では個の確立は厳格には追求されず、和の精神や思いやりが重視され、人権問題を法規制やルールというよりマナーや道徳の問題として考える傾向があった。個の確立や人権救済手段は重要であるが、その実現手段は、日本流でよい

• 党の新憲法起草小委員会の検討（平成17年）においては、「すべて国民は、個人として尊重される」に加えて、自己の尊厳を保持しなければならないことを追加するとしている。なお、自己の尊厳については、前文に書くべきとの意見もあるとしている

• 個人の尊厳こそ憲法の基礎であり価値である

• 改憲、護憲という立場の違いはあっても、基本的な人間の価値を守るということについては、これからも議論を深めていくことが必要

• 世界人権宣言やＥＵ憲法にあるように、人権規定の普遍的な考え方である人間の尊厳という原点に立ち返って、すべての人権を再定義したいと考える（民主党の見解）

• 従来の人権は、自己決定能力を有する者が前提となっていたが、自己決定能力のない者も人間としての尊厳を実現する権利を有するはずであり、人間としての尊厳を実現する権利を憲法に盛り込むことができれば画期的ではないか

• 憲法や国家像の議論では中心となるべき理念が重要であるが、それは人間の尊厳ではないか

• 憲法が目指す究極の目的は、個の尊厳、すなわち、すべての人の平和、幸福、人間の尊厳、生命の尊厳であり、これは今後も不変の目的である

• 国家と個人の間における人権だけではなく、環境権、プライバシー権に代表されるような、社会と個人、個人と個人の間における人権についても十分論議すべき

• 新憲法においては、個人と国家という主体に加え、中間集団を社会の重要な主体として位置付けるべきと考えるが、その場合、個人と団体の間の私人間効力という議論も必要になる

• 党の憲法調査会中間報告（平成16年）は、法の下の平等については、私人と私人の関係でも14条が及ぶような積極的な規定を新たに設けるべきとしている

• 私人間の関係であっても、人間の尊厳を破壊する個人的、社会的暴力を厳格に禁止する規定を設けるべき。具体的には、配偶者間や子供への暴力、セクハラ、インターネット時代における暴力に絞って検討すべきと考える（民主党の見解）

• 私人により個人の尊厳が脅かされる事態が深刻であるが、私人間の人権が衝突しバランスを失する事態を修正する役割が立法、行政、司法のそれぞれの活動に求められている

• 企業対労働者では社会的に著しい力の差があり、人権侵害の救済を当事者間にゆだねることは憲法が望むことではないが、この場合、労基法、雇用機会均等法、パートタイム労働法の整備を行い、立法、司法、行政が憲法の積極的活用、適用を行うべきであり、憲法改正の必要はない。差別禁止を私人間にも適用できるよう憲法を見直すとの意見には、賛成できない