8 人身の自由と刑事手続上の人権

 戦前に人権侵害が多く起こった実態に対する反省の表れから、日本国憲法は、18条で人身の自由、31条以下で刑事手続上の人権を規定した。刑事人権規定は、人権規定の3分の1に及び、比較憲法的にみても詳細なものである。その中でも、31条の適正手続条項は、沿革に照らし手続内容の適正をも要求するものと解され、32条以下の刑事人権に関する個別規定を総括すると同時に、規定にない刑事人権を補充的に保障する役割を果たしている。

 人身の自由と刑事手続上の人権について、

  • 死刑の存在あるいは自白に頼った有罪認定などを考えると、誤審は防げないとすれば、被疑者、被告人を含め、人権保障、国民の人権保障のために、憲法31条以下、デュープロセスの規定の厳密な適用が求められる、
  • 裁判手続・判決が捜査過程や社会に影響する以上、裁判所は正義の観点から役割を果たすべきときがあり、一連の捜査過程における違法性の承継については、かなり厳格に考えた方がよい、
  • 勾留などの身体拘束においても、現実には、人権よりも捜査の事情が優先されているのではないか、

などの意見が出された。

 また、違法収集証拠の証拠能力の問題は、実体的真実主義対適正手続という意味で、刑事手続における最も根幹的な問題を提起していると言われるが、これに関して、

  • 違法収集の証拠禁止原則を裁判過程・判決が厳守することは、刑事捜査の実態を変えていく力を持っており、権力の濫用を防ぐため、あえて司法が役割を果たすべき場面ではないか、

などの意見が出された。

 受刑者の人権について、
  • 拷問禁止条約の選択議定書は国際機関による刑務所への査察を認めるものであり、日本もこれを批准すれば変わると思われる、
  • 監獄法改正においては、過去に提出された刑事施設法案の内容に加え、第三者の目を導入すること、刑事施設職員の人権意識を向上させること、矯正医療を充実させることが必要、

などの意見が出された。

ページトップへ