10 実効的な人権保障制度

 憲法の人権規定が十分にいかされていない理由として、差別禁止法等の個別人権法の不備や人権侵害に対する救済機関の不備等が一因であると言われる。また、司法的な人権救済には限界があるため、司法だけを見ていたのでは不十分であり、迅速・実効的な人権擁護機関、立法府による人権保障のサポート、実効的な人権救済啓発を通じた国民の人権意識の高揚を図る必要があるとも言われる。

 そこで、裁判所による人権救済制度の充実は当然のこととして、さらに人権保障の実効性を高める制度について、議論が行われた。

 憲法上何らかの規定を設けるべきとする立場からは、

  • 党の憲法調査会中間報告(平成16年)は、準司法的機能を有する独立性の高い、裁判所ではない第三者機関、例えば人権に関する人権委員会等も憲法上の位置付けを与えたらよいのではないかとしている(民主党)、
  • 党の憲法調査会報告(平成14年)は、現行の司法制度を始め人権擁護制度では種々の限界が明らかになっており、人権保障制度の見直し・適切な救済手段の整備が急務としている、また、司法的救済以前の段階での私権保障としての人権救済手段の充実も急務とし、制度上の独立性を確立し、より実効的な救済機関とするために、人権救済機関を憲法に明記することも検討すべきとしている(民主党)、
  • 人権保障は、実体面で規定されるだけでは絵にかいたもちとなるため、手続面での保障が不可欠であり、他のすべての国家機関から十分に独立した人権擁護機関を設置することが必要であり、あらゆる国家権力から独立したものとして、憲法に直接の根拠を有する制度として設計することが重要(民主党)、
  • 人権委員会は実質的に憲法機関であり、将来憲法を改正するときは、人権擁護のための機関をつくれということを憲法に規定してほしい、

などの意見が出された。

 また、法律レベルでの対策として、

  • 人権救済の分野では紛争解決代替措置(ADR)の充実も必要。余り深刻でない人権侵害については、時間と経費の掛かる訴訟に代わる救済措置が導入されることを期待、
  • 基本的人権の尊重を実現する上で、体制整備のため内閣に新たに人権省を設置し、人権尊重・平等確立社会基本法といった人権基本法を制定し、早急に人権侵害救済法を制定することが重要、
  • 裁判所による人権救済は解決まで時間が掛かるため、人権オンブズパーソン制度があればもっと救済に役立つのではないか、

などの意見が出された。

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