二 主な論点及びこれに関する各党・各小委員等の意見

 21世紀に相応しい、公正で活力ある社会を実現するためには、統治システム及びその相互関係の在り方をより進化・洗練させていく必要があるが、その具体化に当たって鍵となるのが、民主主義と法の支配のバランスであり、政治全体が事前調整型から事後チェック型になろうとする中でのチェック機能であり、また、複雑・多様化する国民の価値観を如何に反映するか等の諸点である。

 「二院制及び参議院の在り方」を考えるに当たって、法の支配の実現は、立法府においては参議院がその実現の一翼を担うべき、参議院がチェック機能を担うべき、また、一院ではできない多様な意見を反映すべきなどの意見が出された。

 今日の我が国において、国民主権の実効性を高め、基本的人権の保障を進展させ、地方分権と地方の自立を推進していくためには、参議院がこのような機能を発揮することが極めて重要であると考えられる。

 本小委員会においては、このような認識を踏まえ、多岐な方面にわたって活発な議論が交わされた。そこで、舛添要一小委員長の下で、その内容にしたがってこれまでの議論を論点ごとに整理した。

1 一院制・二院制の長所・短所、是非

 一院制及び二院制それぞれの長所・短所は、いわば表裏の関係にあり、一院制を支持する意見は効率的な意思決定や円滑な政権交代、また両院の役割・機能分担や調整の困難さ等の点を挙げる一方、二院制を支持する意見は慎重審議や多様な民意の反映等の点を理由とすることが多い。小委員会においては、最初に二院制ありきということではなく国民にとって一院制と二院制のどちらが望ましいかという立場からの議論が大事であるとの意見を踏まえ、熱心な議論を行った。

 是非と理由

 本小委員会においては、会派を超えて二院制を堅持することで一致した。

 その理由として、次のような理由が挙げられた。

  • 国民の総意を慎重審議を通じ正確に反映し、また、一院の専断を抑制し、衆議院の審議を補完し、世論の帰着について判断を的確にすることを目的とする二院制の趣旨は今日においても適切妥当なもの、
  • 一億人以上の有権者の多様な意思を反映するには二院制が望ましく、実際、世界の主要国も概ね二院制を採用し、世界全体としても二院制を採用する国が増加している。価値観が多様化し社会が複雑な日本においても民主政治を担保するために必要、
  • 国民の意思を完全に代表する第一院の実現は不可能ないし著しく困難、
  • 二院制が有するチェック・アンド・バランスの機能は、正に少数派の権利の確保・保障とも密接な関連がある、
  • 一院制では議会を構成する多数政党がそのまま内閣を構成するため、行政府に対する立法府のチェックが弱まり、行政の肥大化、官僚制の弊害等が増えるおそれがある。二院制は立法府自体の権力分立に一定の役割を果たす、
  • 時々の政治状況の中で解散のある衆議院と、解散がなく3年毎に必ず国民の意見が問われる参議院の二つの院で構成することは、第一院及び民意の暴走にブレーキをかけるという重要な意味がある、
  • 一院で議論して終わりという場合は、よほど冷静な国民でないと、大混乱が起きる可能性が避けられない、
  • 国論を二分する問題で参議院は大きな役割を果たしてきた。衆議院で審議した後、有権者の意識の変化を参議院がまた受け止めるという制度はどうしても必要、
  • 地方自治体議会は一院制で問題はないとの意見があるが、外交や防衛などの議論を内政の延長で行うのは危険、

 ただ、迅速な政策判断が求められる現代にあっては、効率的な意思決定と円滑な政権交代を可能にすることは、二院制を採用する場合でも忘れてはならないとの指摘もなされた。

 参議院の改革が今後も必要であることは各会派とも認識が一致している。この点に関し、両院の権能、選出方法、役割が似ていることが二院制の意義が薄れがちと言われる背景であり、それをそのまま維持すべきではなく、両院の違いを明確にすることが国民に理解を得る上でも重要との意見が出された。

 改革の方向として、

  • 抑制均衡・良識・再考の府としての役割をはっきりさせるべき、
  • 立法府では衆議院よりも参議院が立憲主義の実現の一翼を担うべき、
  • 一院ではできない、二院だからこそできるという論理を積み立て、二院間の役割及び機能分担を明らかにする、
  • 今は政策決定にスピード・ダイナミズムが必要。衆議院と重複する議論より、衆議院とは視点を変えた議論と役割分担が求められている、
  • 執行の院である衆議院に対して、決算や行政監視などチェックの院としての機能を強化することが必要、
  • いかに熟慮の院にするかという観点から、衆議院との割り振りやルール作りが必要、

などの意見が出された。

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