第161回国会 参議院憲法調査会 第6号


平成十六年十二月一日(水曜日)
   午後一時開会
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   委員の異動
 十一月二十四日
    辞任         補欠選任
     白  眞勲君     喜納 昌吉君
 十一月三十日
    辞任         補欠選任
     江田 五月君     小川 敏夫君
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  出席者は左のとおり。
    会 長         関谷 勝嗣君
    幹 事
                愛知 治郎君
                荒井 正吾君
                武見 敬三君
                舛添 要一君
                若林 正俊君
                鈴木  寛君
                簗瀬  進君
                若林 秀樹君
                山下 栄一君
    委 員
                浅野 勝人君
                岡田 直樹君
                河合 常則君
               北川イッセイ君
                国井 正幸君
                藤野 公孝君
                三浦 一水君
                森元 恒雄君
                山下 英利君
                山本 順三君
                小川 敏夫君
                喜納 昌吉君
                郡司  彰君
                佐藤 道夫君
                富岡由紀夫君
                那谷屋正義君
                直嶋 正行君
                前川 清成君
                松井 孝治君
                松岡  徹君
                松下 新平君
                白浜 一良君
                山口那津男君
                仁比 聡平君
                吉川 春子君
                田  英夫君
   事務局側
       憲法調査会事務
       局長       桐山 正敏君
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  本日の会議に付した案件
○日本国憲法に関する調査
 (小委員長の報告)
 (憲法に関する各会派の検討状況の報告)
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○会長(関谷勝嗣君) ただいまから憲法調査会を開会いたします。
 日本国憲法に関する調査を議題といたします。
 二院制と参議院の在り方に関する小委員長から小委員会の活動経過について報告いたしたい旨の申出がございましたので、これを許します。舛添小委員長。
○舛添要一君 二院制と参議院の在り方に関する小委員会・小委員長報告(論点整理)、平成十六年十二月一日。
 二院制と参議院の在り方に関する小委員会の経過について御報告申し上げます。
 二院制と参議院の在り方については、従前より参議院憲法調査会が責任を持って調査検討を行うべきということが各会派共通した認識であり、本調査会では、このテーマに関し弾力的かつ機動的に運営できる小委員会方式により集中的に行うことが望ましいとの判断から、第百五十九回国会、平成十六年二月十八日の憲法調査会で、二院制と参議院の在り方に関する小委員会を設置いたしました。
 そして、同国会中に、三月十二日、二院制と参議院の在り方をめぐる論点、四月十四日、参議院改革、五月十九日、選挙制度の在り方について、引き続き今国会では、十一月五日、選挙制度を中心とした参議院の在り方、十一月十九日、参議院と衆議院の役割分担について、合わせて五回の調査を行いました。
 本小委員会では、多岐な方面にわたって活発な議論が交わされましたので、それらの議論を主な論点ごとに整理し、ここに御報告いたします。
 一、一院制・二院制の長所・短所、是非。
 一院制・二院制の長所・短所は、表裏の関係にあり、効率性や両院のすみ分けや調整の困難さ等の点から一院制を支持する意見がある一方、慎重審議や多様な民意の反映等の点から二院制を支持する意見が強くあります。
 是非と理由。
 小委員会におきましては、最初に二院制ありきということではなく、国民にとって一院制と二院制のどちらが望ましいかという立場からの議論が大事であるとの意見を踏まえ、議論してまいりましたが、二院制を堅持することで一致しております。
 その理由として、先進国で大国である国は安定性が高い二院制が主流、一億人を超える我が国の有権者の多様な意見を一院で集約できるか疑問、一院制では議会を構成する多数政党がそのまま内閣を構成するため、結果として立法府に対する行政府の権限強化につながるし、ドラスチックな変化が行き過ぎて政治的安定性が失われることも起こり得る、実際にも国論を二分する問題で参議院が有権者の意識を反映し大きな役割を果たしてきているなどの意見が出されました。
 ただ、理論的には二院制は自明のものではなく、多様化する社会の中で一院制とどう違いを発揮するかが重要、二院制が奥行きある政治をもたらすには第二院が政権から距離を置くことが必要、二院制の第一の目的は両院が互いの足らざるを補うことであり、参議院は与野党が対立する権力争いの場では抑制し、党派対立になじまぬ政策課題を処理することで国政に寄与できる等の指摘もなされ、その意味で、両院の違いを明確にすることが国民に理解を得る上でも重要との意見が多数を占めました。
 なお、地方議会と国会を同一視した一院制の議論に対しても疑問、一院制は冷静な議論ができる国民性でないと混乱を招く等の意見も出され、参議院の英文名、ハウス・オブ・カウンシラーズも実体を正確に表すよう変更したらどうか、つまりセネットというような言葉を使うかということですが、との提案もありました。
 二、参議院の機能、特に独自性を発揮すべき分野。
 参議院の存在意義が補完・抑制、多様な民意の反映等を果たす等にあることは多くの小委員から指摘されましたが、そのためには、独自性を発揮できる機能は何か、衆議院とどのようなすみ分けを行うかが大きな課題であることは一致した意見でありました。
 役割・機能分担の重要性。
 二院制をいかすには、良識の府、再考の府としての役割をはっきりさせること、また賢い熟慮の院にするために衆議院との割り振りやルール作りが必要、第一院と行政府による政策形成をダブルチェックするという大きな意義があるとの指摘が多数なされております。その際、解散のない六年の任期をいかにいかすかが決め手であり、衆議院とは違った視点を持つことが重要との意見が多数出されました。
 なお、今日、参議院が強くなり過ぎたと批判されることについて、活性化は日本には良いことであり、もっと弱くなれとはおかしいとの意見が出されたことを付け加えたいと思います。
 参議院の補完機能の充実は無論のこととして、衆議院との違いを明らかにするため、後者をどのようなものにするかが大きな議論となりました。
 独自性を発揮すべき具体的分野として、六点挙げたいと思います。
 第一、長期的、基本的な政策課題。
 長期的テーマは参議院で行うという点では意見は一致しており、基本法は参議院中心で審議すべき、年金や外交案件など中長期的な課題に取り組むべき、参議院調査会の立法などの成果は多様な意見を反映し、非党派的かつ客観的議論を背景に実現したものであり、これらを更に強化すべき等の意見が出されました。
 第二、決算。
 参議院は予算審査を簡便にし、決算審査は参議院が、予算は衆議院が中心に行う、参議院の決算議決内容は次の予算を拘束するような効果を持たせる、組織的には、会計検査院は参議院に帰属させ、その機能を充実させるべき等の意見が出されました。
 第三、行政監視、政策評価。
 国民の側に立った行政監視をすることが独自性発揮となる、国政調査や政策評価を更に充実させ、チェックに重点を置く監視の院としての権威を高めることが重要、行政監視の一環としてほとんど野放しになっている政省令のチェックが重要などの意見が出され、必要があれば会期にこだわらずチェックの院としての機能を果たすべきとの指摘もなされました。
 第四、人事案件。
 国会同意人事を参議院の専権とし、中立公正な立場からヒアリングも含めた審査を行う、特に司法部との関係を考え直すのも一案などの意見が出されました。
 第五、国と地方の調整。
 参議院が財政や権限など国と地方間の調整を行う仕組みを持つべきでないかなどの意見が出されました。
 第六、憲法解釈機能。
 最高裁判所がなかなか統治行為の憲法審査に踏み込まない状況の中では、参議院に憲法解釈ないし違憲審査権的な機能を持たせてはどうかなどの意見が出されました。
 以上六点に加えまして、運営に関する事項ですが、両院の役割分担は政党内の運営によりある程度可能との指摘がありました。また、議員立法をもっと活発に行うべき、参議院は必ず修正案や附帯決議を出すようにし、修正案提出ルールを整備して意見が修正案に結集するようにすべき、修正協議に対する弾力化・柔軟化が実質的審議活性化の突破口になる、委員会でより客観的、非党派的議論を行い、修正案提出を活性化させること及び議論を報告書にして国民に提供するなどの情報発信を期待する、民意の反映として請願の扱いは重要などの指摘がなされ、さらに権限を実効あらしめるものにするには、霞が関への政策人材一極集中を是正し、国会のスタッフを充実すべきなどの意見が出されました。
 三、両院間の調整、衆議院の優越規定及び意思不一致の場合。
 国会が衆参両院で構成されていることから、意思不一致の場合にどのように調整するか、その際、両院協議会が実質的に機能できるような制度・運営への改革・工夫が必要なのではないか、また、憲法の定める衆議院の優越条項は適切妥当かなど、多くの問題提起がなされました。
 三点申し上げます。
 第一、法律案再議決要件。
 一院制型両院制の考え方を推し進める観点から、五十九条二項を改正し衆議院による法律案再議決要件を単純多数決に改める、あるいはこれを緩和し停止的拒否権や遅延権にとどめるなどの指摘がありましたが、衆議院の権限強化となり、さらには行政権の強化につながるので参議院の権限を弱くすることには反対、三分の二を過半数に改めたのでは歯止めにならないなどの意見も出されました。
 第二、総理大臣指名。
 六十七条の改正も視野に入れるべきとの意見と反対との意見がありました。なお、指名は不行使にするなど明文改正なしでも運用で実質的に達成できるとの指摘もありました。
 第三、両院協議会。
 両院協議会が機能しないのは残念でありその使い方を工夫すべき、両院制の在り方や会期制などのマクロ的問題は両院が合同審査会等で議論し、それぞれ独自性を発揮できる体制を作る必要がある、などの意見が出されました。
 なお、参議院が扱う議案はある程度の絞り込みが必要との観点から、一般的な法案は衆議院のみで成立させ、特別の法案や条約は参議院まで回してはどうか、総理大臣指名・予算・条約等は参議院の議論で変わる要素がないことから審議の意義に疑問があるなどの意見が出されました。
 四、参議院と政党との関係。
 衆議院は政党を軸に活動しているので、参議院が衆議院に対する独自性を発揮しようとする場合は、政党から距離を置かなければならないのではないか、緑風会時代が最も参議院らしさを発揮していた、などの問題提起がなされました。
 必ずしも政党政治の枠にとらわれないことに参議院の意味がある、政党の中での意思決定の在り方は極めて重要で、衆参にまたがる党議拘束が参議院の独自性を阻害し、また立法過程最大の問題となっている、党議拘束については、特に参議院で再考の余地がある等の意見が多く出されたほか、脱政党化のためには、参議院では公的助成は一定の比率で議員個人にも行ったり、候補者段階から公的助成を行う等の方法が考えられるなどの指摘がありました。一方、選挙、特に再選されるためには政党の力が必要なので、緑風会の再来は難しいとの指摘、また、衆参の定数の較差により党派内の決定において参議院が従属となる現状をどうするかの議論が必要との指摘もありました。
 さらに、参議院は政権から距離を置くべきとの点ではほぼ一致したものの、閣僚等を参議院から出すことを自粛するかについては議論がありました。
 五、参議院の構成の在り方・選挙制度。
 多様な民意を反映させるため、参議院の議員構成をどのようにして衆議院とどのような違いを出すかは、二院制にとって根幹となる問題であり、そのためには選挙制度の設計が極めて重要であります。
 三点申し上げます。
 第一、直接公選制の維持。
 参議院選挙は定期的に行われ、また都道府県ないし全国の支持があって議員になることに意味がある、参議院も国民の直接選挙で選任されるべきで、任命制・推薦制はもちろん、間接選挙制も好ましくないというのはほぼ異論のないところでした。
 第二、選挙の在り方・方法。
 衆議院と異なる選挙制度にすること、そのためには政党の側面よりも個人の側面をより重視すべきことが意見の多数を占めました。すなわち、同じような選挙制度の二院制は混乱のもと、選挙制度の設計が衆参の在り方と連動して論議されてこなかったことを反省すべき、衆議院は多数者の、参議院は少数者の意見が表れるのが望ましい、民意反映には地域の多数意見を反映させる形もあれば全国の意見分布を反映させる形もあり、両方の形をそれぞれの院が持つことが本来的意味のチェック・アンド・バランスになる、二院制諸国に共通する上院組織原理はないが、両院選挙が類似していることは両院制の趣旨を損なう深刻な問題などの意見が出され、そのために、政党単位ではなく個人を選ぶ制度を工夫すること、識見を持つ個人が当選し得る選挙制度が必要などの意見も出されました。また、上院として敬意を集めるには議員数を少なくし直接選挙で選出すべきで、全国単位と地方ブロックを併用し、定数是正はブロックごとに行えばよい、参議院には全国区及び都道府県単位等ある程度の広さの選挙区が必要、地方分権理念にのっとる地域代表院もあり得る、年金問題等においては若い世代に代表者が出せない問題があるので比例代表で世代別クオータを考えられないかなどの意見が出されました。なお、参議院の定数につき、どの程度の規模が適正なのかきちんと議論すべき、任期を更に長期化するとともに再選禁止とすることも一案との指摘もありました。
 第三、一票の較差問題。
 参議院の投票価値の較差是正は喫緊の課題である、一票の較差問題については、憲法が国民代表とする以上は地方代表性よりも一人一票原則が優先する、一票の較差の点からは比例代表制が最も優れているのではないかなどの意見が出され、また、重要なのは一人の等価値ではなく一票の等価値であり、投票率が高い選挙区ほど多くの議員が割り当てられる制度について参考人から提案がありました。
 今後、本小委員会では、次期常会においても引き続き「二院制と参議院の在り方」の議論を深めていくことが合意されております。
 以上、御報告申し上げます。
○会長(関谷勝嗣君) 以上で小委員長の報告は終了いたしました。
 ただいまの報告を踏まえ、一時間程度、委員相互間の意見交換を行いたいと存じます。
 委員の一回の発言時間は五分以内でお願いいたします。
 御発言は着席のままで結構でございます。
 なお、まず最初に各会派一巡するよう指名いたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。
 まず、荒井正吾君。
○荒井正吾君 まず、よくまとめていただいたと思います。小委員長に感謝申し上げますとともに、小委員会に参加されました委員、また、本日はおられませんが、参考人として意見をいただいた皆様に、冒頭でございますので感謝を申し上げたいと思います。
 この論点整理に、若干の補足と強調すべき点を発言させていただきたいと思います。
 一ページ目の真ん中よりやや、「是非と理由」の三行目でございますが、「二院制を堅持することで一致」、二院制の堅持というのは我々としてはとても大事なことで、強調し過ぎることはないとも思っております。
 次のページでございますが、二行目、「両院の違いを明確にすることが国民に理解を得る上でも重要」。二院でございますが、役割分担が重要とのことで、この点も強調しておきたいと思います。
 五行目の「参議院の英文名」。ハウス・オブ・カウンシラーズというのは、我が党でそのカウンシラーズに沿ったような参議院改悪案が提出されたこともあり、早急に英文名を改正するようアピールさせていただきたいと思います。そのページのちょっと発言をし、申し訳ございませんでした。
 後半の「独自性を発揮すべき具体的分野」、「長期的、基本的な政策課題」ということで、長期的テーマ、基本法は参議院中心ということで頭にありますのは、例えば、今後提出されるかもしれない財政再建基本法というようなもの、あるいは社会保障基本法というようなもの、効果が世代間にわたるようなものは参議院がじっくり時間を掛けて検討すべき課題じゃないかというふうに考えておりますので、補足さしていただきたいと思います。
 その中で、外交案件など長期的な課題ということでございますが、具体的な分野で条約の承認権ということが項目として挙げておられないわけでございますが、条約の承認については衆議院の現在優越でございますが、このような考え方に立てば、条約の承認は参議院先議あるいは参議院先決という考え方もあるし、私は賛成の立場であることを表明させていただきたいと思います。
 それから、「決算」の項目でございますが、決算の二行目でございますが、「参議院の決算議決内容は次の予算を拘束する」という内容でございますが、具体的には、参議院の議決は内閣の予算編成権を制約する。例えば、予算の内容とすべきでないと議決されたものについては内閣は予算編成の内容とすることはできない、あるいは予算の内容とすべきと議決されたものについては内閣は尊重するといったような内容でなるんじゃないかというふうに心に描いております。
 次のページの四の「人事案件」でございますが、国会同意人事を参議院の専決とすというのは、院が二院にわたって人事案件の意見が違うということは人事については望ましくないので、単院の専決とするのが望ましいと思いますが、その際は国会同意人事を絞る必要があるんじゃないかという考えも持っております。
 それと、ずっと行きまして、五ページ目になりますが、五ページ目の第一行、「直接公選制の維持」というのは、第二院の、両院の一翼を担う一院という立場からはとても大事な譲れない点だということを強調させていただきたいと思います。
 「選挙の在り方・方法」について。両院の役割分担ということをこれからの議論の中心にしますと、衆議院と異なる選挙制度とすると。同じような選挙制度の二院制は混乱のもと、選挙制度の設計が衆参の在り方と連動して議論されなかったことを反省すべきという点について、そのように思いますので、その点を改めて強調させていただきたいと思います。
 以上でございます。ありがとうございました。
○会長(関谷勝嗣君) 鈴木寛君。
○鈴木寛君 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。
 ただいま小委員長から御報告がありました論点整理に付け加えさせていただきたいと思います。
 まず、参議院の機能及びその独自性の議論でございますが、私は、公正な社会を作り上げるためには、正に民主主義と立憲主義、この双方のバランスが非常に重要だというふうに思っております。もちろん、立憲主義の実現を主として担うのは裁判所なわけでございますが、立法府にあっては、正に我々参議院がこの立憲主義の実現の一翼を担っていくという意識が重要ではないかなというふうに思っているところでございます。
 その中で、憲法解釈機能について小委員長報告の中にも触れられておりますが、正にこの違憲審査といったことを参議院が担っていくと。その際に、それを担うといったことになった暁には、そのスタッフを含めた陣容の充実ということが極めて重要だというふうに思っております。
 違憲審査のみならず、正にこの政治というのは、政権の獲得ということと政策の立案・実施・評価・改善と、この大きく言うと二つの側面を担っているわけでありますが、当然、参議院はこの後者の政策の立案・実施・評価・改善といったところを担っていくわけでありますけれども、その点に立憲主義的な役割をより発揮をしていくという制度設計が重要ではないかなというふうに思っております。
 それから、長期的な政策課題について参議院で議論をすべきであるといったことは全くそのとおりでございまして、年金、外交案件といったことが例示として挙がっておりますが、例えば教育とか環境とか、その政策の効果というものが極めて長期に及ぶ案件についても、参議院が独自にその役割を発揮すべき分野の例示としてふさわしいのではないかなというふうに考えております。
 それから、選挙制度の在り方の中で、その最後のところに、任期をさらに長期化するとともに再選禁止とすることも一案との指摘があるということをこの報告に盛り込んでいただきましたが、この点を、さらにその真意を詳しく申し上げますと、正に政党と議員個人との関係、さらに申し上げますと、政党から一定の独立性を持った議員個人の活動というものをいかに実質的に確保するかといった観点で、しかしながら、この参議院議員が議員として選出をされる上で、政党の力なくして議員に選出をされるというのは極めて厳しいという現状にかんがみてこのような案が提起をされたということは、背景として御理解をいただきたいと思いますので、あえて付け加えさせていただきました。
 と同時に、現在の選挙制度は、全国の代表は参議院、ブロックの代表は衆議院、そして都道府県の代表は参議院、小選挙区の代表は衆議院と、こういうふうな選出の形態になっているわけでございまして、正にどのような、もちろん国民意思なわけでありますが、国民意思の中でどういった人々の、その中でどのような意思をどういう人に託していくのか、あるいは信託をしていくのか、あるいは代議してもらうのかといったことについてのきちっとした理論的な理念的な整理というものが必要ではないかということでございます。
 そして、ここでは十二分に触れられませんでしたが、やや小委員会の枠を超える話でもありますので、今後の検討としていただきたいと思いますのは、やはり政党の在り方についての議論をきちっとすべきではないかなというふうに思います。
 この小委員会の冒頭にございました意見でございますが、参議院コピー論とか参議院不要論というものを唱える人はいても、参議院議員不要論というのは聞こえてこないと。それはなぜかというと、いずれの政党においても政党の政策立案活動の主翼を担っているのは参議院議員であって、そして、各政党において、各党所属の参議院議員が極めて精力的なその活動をしていることについては何の疑いもないという実態に基づくものでございまして、であれば、現在、国会の立法活動というものが政党における活動を抜きに論じられない現状にかんがみますれば、しかし一方で、政党というものは、政党助成法はございますが、政党法という形ではまだ確立をされておりません。
 正に憲法の統治機構を議論する中で、政党というもののもう既に大きな重要な位置を占めていることをかんがみて、憲法上にきちっとした地位を与え、そして正に公の党として、財政の公開あるいは活動報告の公開義務付けなど、憲法の附属法に準じた政党法の制定について議論をすべきではないかということを申し上げて、私の意見に代えさせていただきたいと思います。
 以上です。
○会長(関谷勝嗣君) 山下栄一君。
○山下栄一君 既に十一月十九日に考え方を述べさせていただきましたけれども、確認の意味で、また、今日報告がございましたので、報告に沿う形で意見を述べたいというふうに思います。
 一院制か二院制か、特に参議院不要論等もまだまだ根強くあるわけでございますけれども、国権の最高機関として、また議院内閣制であるからこそ特に立法府の権限強化していく、これは極めて重要であると。特に、この抑制、均衡の府、そしてまた良識の府、再考の府としての参議院の役割はますます重たくなってきているし、国民もそれを期待している、それがなかなか現状ではそうなっておらないところに大きな課題があるというふうに理解しております。特に、先ほどの選挙制度の件もそうでございますけれども、衆議院、参議院が似通った権能、選出方法、役割というところから、両院制の意義がともすれば薄れがちだというふうに言われる背景だというふうに思いますので、そういう意味で参議院の独自性、これを明確にしていく。特に良識の府、再考の府としての役割をはっきりさせる、これは二ページにも、報告の中の二ページにも書いてございますけれども、こういうことを特にこの調査会できちっとどんどん確認し、それを国民にアピールしていくことはますます大事であるというふうに思います。
 二ページのところで、役割分担、独自性を発揮すべき分野、こういうところがございますけれども、特に、一の「長期的、基本的な政策課題」、これは特に任期が長い又は解散権がない等々から参議院の役割が非常に重要だと。基本法は参議院中心で審議すべき、賛成でございますし、中長期的な課題をどういう分野にするかということはこれから、先ほども外交等、教育、環境のようなお話もございましたけれども、それを更に詰めていくことは重要であるというふうに思っております。
 二番目の「決算」。これも繰り返し強調されておりますように、そういう状況で改革も進んでいますように、この参議院の決算審査の強化は、役割、ますます大事になってきていると。
 特に、私は、この会計検査院、憲法上の機関であるにもかかわらず実際は権限がほとんどないと。特に行政府に対して権限が極めて弱い。人事院と比べても見劣りする。これが憲法が直接規定している機関かと、憲法上の機関かと言われるほど権限がない。
 十五年度の決算検査報告を見ましても行政府が軽んじている具体例が指摘されておるわけでございまして、そういう意味で、会計検査院法を改正し、改正案を出すのは、行政府は出しにくい、権限強化の意味のこの会計検査院法の改正は、やっぱりこれは立法府の役割ではないかと、こういうことを今回特に強く感じたわけでございますけれども、そういうことも含めて、会計検査院を三権から距離を置くのか、またここに書いてございますように、それを例えば参議院に帰属させるかということもこれから議論すべき課題ではないかと。
 三番目の「行政監視、政策評価」。参議院では二種の常任委員会に決算委員会だけではなくて行政監視委員会があるわけですけれども、行政監視委員会はまだ間もない、成立してから、委員会が設けられてからも間もないわけですけれども、これからも行政監視委員会の役割、非常に運営も含めまして検討をしていく必要があるんではないかと、参議院の権限強化という意味で大事ではないかというふうに思っております。
 四番目の「人事案件」。これも、国会同意人事は特に参議院の、専権とは申しませんけれども、大きな役割として位置付けるべき、特色作りをこういうところに持たすべきだと。特に、私もこの前憲法裁判所の方で申し上げましたけれども、裁判官、最高裁の裁判官の同意人事、これをこういう形で参議院がかかわる、そして具体的にそこでヒアリングするということ、国民に開示する、こういうことが裁判官を国民が身近に感じる大きなきっかけになるんではないかという意味で、裁判官の国会同意人事の在り方、特に参議院の役割、大事ではないかというふうに思います。
 運営に関する事項に書いてございますけれども、国会スタッフの充実、これは非常に大事な課題だというふうに思います。現在も、ちょっとこれはまあ私の考え方が強く出過ぎているかも分かりませんけれども、衆議院と比べると、参議院の調査室の、憲法調査室も含めてですけれども、非常に役割が大きいし、具体的に力を発揮しているというふうに私は思います。
 そういう意味で、行政府との人事交流はできるだけしないで、そして更にいい人材が集まる、そういうことの工夫も大事ではないかと。政策立案の観点からの国会スタッフの充実は極めて重要な課題であるというふうに感じております。
 それから、党議拘束、政党との関係のところですけれども、政権から距離を置く、四ページに書いてございますけれども、こういう観点は大事だと。特に、総理大臣の指名権、そしてまた閣僚を出すか出さないか、こういうことも含めて政権から距離を置く具体的な検討は大事ではないかというふうに感じておりますし、それが党議拘束の緩和につながるのではないかと、こういうふうに考えます。
 選挙制度につきましても、今もお話ございましたように、やはり特色のある選挙制度を考えていく必要があると。今日の本会議でも参議院改革協の報告がございましたですけれども、そういうところでも、またこの場でも、これは明確になるような形の議論が必要ではないかというふうに思います。
 一の「直接公選制の維持」、これは憲法四十三条をどう理解するかということもあると思いますけれども、これはやはり国民の公選制ということで理解、解釈すべきだというふうに思いますし、直接公選制は維持、堅持すべきだというふうに考えます。
 この二の「選挙の在り方・方法」のところで、参議院の定数につきどの程度の規模が適正なのかをきちんと議論すると。これは最高裁の判決との関連も含めまして、これは非常に重要な課題ではないかというふうに思いますし、三に書いてございます、これは小林参考人からあったことでもございますけれども、重要なのは、ちょっと読みますと、「一人の等価値ではなく一票の等価値であり、投票率が高い選挙区ほど多くの議員が割り当てられる制度について」と書いてございますので、これも非常に一考に値する考え方ではないかと、こういうことを感じました。
 以上でございます。
○会長(関谷勝嗣君) 仁比聡平君。
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 私は、この臨時国会から本調査会に参加をさせていただきましたので、二院制と参議院の在り方に関する論点の整理が小委員長から報告をされるに当たって、小委員会の会議録を読み直させていただきました。その中で、そもそも参議院の意義、役割をどう考えるべきかという大本の問題についての北海道大学名誉教授、高見勝利参考人の意見陳述に紹介された松本烝治説明書に大変示唆を受けました。
 参考人の紹介によりますと、松本説明書は、憲法制定に当たって、当初総司令部案にあった一院制ではなくあえて二院制を採用すべきとした日本案の理由について、世界各国の例に倣うとか、貴族院の伝統を墨守するといった横並び、後ろ向きのものからではなく、それは不当なる多数圧制の抑止と行き過ぎたる偏奇の制止にあるとしています。すなわち、議会政治はややもすれば多数党の専制を生じ、多数党の政策は時には一党の利害に専念する弊害があることは、従来幾多の実例が示すところであり、二院制を採用すれば、衆議院多数派の横暴なる提案はある程度参議院においてこれを抑止し得るだけでなく、こうした抑制機関の存在自体が多数党をしてもとよりその横暴を戒める機能を生み出すことになるというのです。
 この参議院の抑制機能がいかにあるべきかについて、我が憲法は、法律案再議決要件を特別多数決とし、参議院の構成についても国民代表である議員によって組織されるものとした結果、参議院は民主的で強力な抑制の府へ、すなわち強い参議院へと憲法制定当初からその役割を与えられることになったというのが高見参考人の紹介でした。
 憲法四十一条は国会が国権の最高機関であることを定めています。議院内閣制は立法と行政の抑制と均衡、協働を求める、その意味で高度のバランスを求める統治機構であると言われますが、仮に立法府が一院制であるとき、一院を構成する多数政党がそのまま内閣を組織し、これに対する第二院のチェック機能がなくなって、肥大化する行政権力、官僚制の弊害はますますひどくなるのではないか。三権分立と議院内閣制を国民主権のためにより良く機能させるには、全国民の代表として唯一の立法機関であり、強大な行政権力を監視すべき重大な任務を負った国会が本来の役割を果たしていくこと。そのために衆参の両院がともに多様な民意を反映し、抑制と協働の働きを果たしていくことが重要だと考えます。
 このような二院制の趣旨は、今日の参議院無用論、有害論そのものを考える上で大変重要なものだと思います。日本大学教授岩井奉信参考人は、強過ぎる参議院という批判を三つの点で整理されています。つまり、衆議院は自民党が単独過半数を取っているにもかかわらず、参議院の問題から連立を組まなければならないとか、政権交代効果といったようなものを結局のところ阻害してしまうのではないかとか、参議院の独自性が発揮されるときは立法機関としての効率性が阻害されるなどの点です。
 しかし、このような議論で参議院の無用、有害論を唱えることは、憲法が本来予定する三権分立と議院内閣制の本来の在り方を傷付け、かつて松本説明書が正に指摘したように、不当なる多数圧制による行き過ぎたる偏奇をもたらすものではないでしょうか。
 岩井参考人によれば、そもそもの一院制論というのは財界から出てきたことです。非常に効率よく法律を審議し成立させてほしいというのですが、しかし、現実に提案される法案が、憲法に照らし、そもそも国民と国の在り方にとってどういう意味を持つのか。現に重大な権利侵害や生活破壊、平和主義の侵害が法律によって行われてきた幾多の経験、また行われ得ることを直視するなら、より重要なのは、法案成立の効率性ではなく、民主主義の府として徹底した審議を十分に尽くし、国民の意思形成のかなめとなることだと考えます。
 また、一院がぎりぎりまで混乱して、どうなったか分からないような形で強行採決をされるとき、参議院がそれを良識の府として再考する大きな役割を果たしてきた数々の経験は、二院制の本来の趣旨を実証するものだと思います。
 本来の議会制とは何か、民主主義とは何かを考えるとき、本当の意味の非効率とは審議がきちんと行われていないことにあるとの指摘を今後の二院制と参議院の在り方を考えるときに正面から受け止めなければならない、このことを、私自身、本院の一員として改めて胸に刻み、その重い責任を果たすために自らを律しなければならないと痛感したことを申し上げて、発言とさせていただきます。
 ありがとうございました。
○会長(関谷勝嗣君) 田英夫君。
○田英夫君 小委員長の御報告は大変、私も出ておりましたから分かりますけれども、良くまとめていただきましたので、小委員会の中の意見はこれをお読みいただければ皆さんもよく分かってくださると思います。
 あえて付け加えるといいますか、私の参議院に対する思い入れのようなものが新聞記者をやっていたころからありまして、それと今の参議院と違う部分があります。
 私が取材をしていたのは緑風会時代の参議院でありました。選挙制度がそんなに違うわけではないんですけれども、実に不思議なことに、イデオロギーの違いを超えて、緑風会には非常に高度の知識や人格を持った方が集まっておられたと。したがって、衆議院と参議院の雰囲気が全く違いました。つまり、緑風会の中には、当時、保守、革新ということがやかましく言われた中で、両方一緒におられました。同じ会派の中に保守の方もあれば革新の方もある。そして、党議拘束をしないと。したがって、事務方の方は、本会議の採決は全く数が見当が付かないということで苦労をしておられましたが、そういう中で、やはり衆議院とは全く違った、本会議のやじを一つ取ってみても、現在はやや衆議院的に参議院もなっていると思いますけれども。
 結局、どうすれば参議院らしい参議院になるのか。これは非常に難しいところですが、一つは選挙制度。これも小委員長の御報告にもありますし、議論もいたしました。今が一番悪い制度になっているんじゃないでしょうか。つまり、選挙区とそれから比例区の組合せで、衆議院は御存じのとおり小選挙区。それで、その分がこちらでは都道府県という大きさの違いになりますね。政党の名前を書いて投票するという部分が参議院に取り入れられてしまった。これは、取りも直さず参議院の政党化ということにつながっているわけであります。そういうことを、しかもどういう選挙制度を取ればそれがそうならないのかという選挙制度の専門家の皆さんの話を聞いても、なかなか参議院にふさわしい選挙制度というのはないように思います。
 それから、実際の活動という面では、一つ今長所として挙げていいのは、調査会の存在。現在三つで、内容が変わったことはありますが、三つという数でずっと来ています。これをもう少し数を増やして、調査会的な活動を、結果を、三年間でテーマを変えておりますが、その結果を行政府には出しているようですけれども、もっと世の中広く、参議院の何々調査会の結果としてこういう考え方がまとまったということができるような。
 例えば、私が国際問題調査会におりましたときに超党派で小委員会を作って、ODA基本法を作ろうと。で、具体的にその作業にも掛かりましたけれども、残念ながら途中で衆議院解散ということになりましてこれは実らなかったんですが、あれがもし実っていれば、ODAというものがもっと国民の皆さんに親しめる、内容もよく分かる、そういうもので参議院から一つの大きな成果が発出できたのではないかと思います。
 それから、今、日本で若い皆さんの中にいわゆるNGOという、市民運動とも言っていいんですが、そういう活動が非常に多岐にわたって活発に行われている。この人たちの心境は、あるいは国会をも批判してやろうということが中心なのかもしれませんが、こういう人たちの考え方を、あるいは活動を参議院の中で生かすことができないんだろうか。選挙制度とも絡むんでしょうが、これも私もまだ具体的な提案をするところまでは行っておりません。
 以上です。
○会長(関谷勝嗣君) 各会派を一巡して御発言をいただきましたが、ほかに御意見のある方は挙手をお願いいたします。
 愛知治郎君。
○愛知治郎君 会長、ありがとうございます。自民党の愛知治郎でございます。
 私自身も小委員会に所属させていただきまして、いろんな様々な議論に参加をさせていただきました。そして今回、小委員長の報告ございまして、非常にその中の議論を公平な観点から非常によく取りまとめていただいているというふうに存じます。改めて感謝を申し上げます。
 その上で、私自身も言えなかったこともあるんですが、改めて私自身の、これは個人と言って構わないんですが、考えも、また御提案もさしていただきたく、今発言をさしていただきたく存じます。
 といいますのも、どこまで行っても、この中にありますけれども、四ページの四番、「参議院と政党との関係」、すべての問題、私自身も壁を感じておりまして、いろんな議論、いろんなアイデア、様々な御意見ございましたけれども、どうしてもこの壁に当たってしまう。その点で、私自身の考え方、また今の憲法が意図していることを踏まえてお話をさしていただきたいというふうに思います。
 といいますのも、憲法上、衆参の役割、衆議院においてはより直接民意を反映するような形、つまり解散があるということ、一番大きいと思うんですが、直接的に民意を反映していく。参議院の場合には、また長期的視点から様々な民意をどちらかというと間接的に反映していく。つまり、直接的に選ぶのか、その政策を選ぶのか、それともどういった考えを持っている代表を送っていくのかということが大きな違いであると思います。
 つまり、端的に言うと、衆議院においては政権選択選挙のような形、そして参議院においては代表を選出する選挙の形といった、国民がかかわるのか、国政にかかわっていくのかということを憲法は想定していると思います。その帰結として、衆議院においては、やはり一つ政党の存在というのは不可欠であります。ただ、この点において参議院、どうしても壁がある、この政党との関係、壁があることにおいて、一つの提言、問題提起をさしていただきたいというふうに思います。
 憲法上、今、政党の存在というのは全くございません。触れられてもいないということにもかんがみまして、四十三条、私自身の考え方なんですが、四十三条において、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」とあります。これに憲法上ただし書を加えてみたらどうか。つまり、四十三条に加えて、ただし、参議院においては政党に属さない議員でこれを構成すると。まあ表現においてはいろいろありますけれども、政党の存在を否定するような形を入れるというのも一つの案ではないかというふうに思います。
 ただ、誤解があると困りますのではっきり申し上げますけれども、私自身は今、自由民主党に所属しておりますし、この理念、考え方に賛同して参加しているということではございますし、今変えるつもり全くございません。が、その政党、例えば首長選挙なんかにもありますけれども、政党に直接所属していないけれども考え方を同じにする、例えば推薦の形ですね、歩調、歩みを同じにするような形、いろんな形考えられると思いますけれども、少なくとも法制度上、法制度上、政党の存在を否定するというのも一つの形ではないかというふうに思います、実質的なことはまた別として。
 例えば、それに派生して、公職選挙法であるとか政治資金規正法、様々な、政党助成法もそうですけれども、規定を変えなくてはいけないということはございますが、一つ、憲法上これを入れるということもアイデアではないかと。また、参議院で否定することによって、憲法上、正式に衆議院でその政党の存在を肯定するということの反対解釈にもなりますので、一個の問題提起だと思っていただきたいと。
 それから、この政党との関係というのは絶対に避けて通るわけにはいかない議論ですので、是非委員の先生方のお考え、どんどんぶつけていただきたいというふうに存じます。
 以上です。
○会長(関谷勝嗣君) 若林秀樹君。
○若林秀樹君 民主党の若林でございます。
 基本的に小委員長報告の内容に賛意を示しつつ、若干の感想を申し上げたいというふうに思います。
 とりわけ、衆議院との違いを明らかにするため、やっぱり独自性を発揮すべき分野をより強化をしていくということは賛成であります。
 ただ、全体的には、今ある力の上に強化するんじゃなくて、逆に弱めるところ、やらないところをもう少し明示的にはっきりさせることも今後のまとめ方では必要ではないか。予算に対する審議の機能を弱めると言いますが、弱めることの幅もありますし、中途半端にやるんだったら思い切ってもうやらないぐらいの、やっぱりやらないことをきっちり決めることも必要じゃないかなというふうに思います。
 その中で、私は、特に行政監視、政策評価というところでその機能を強化すべきではないか。ただ、やはりどんなに個人の議員が頑張ってもやはり調査力、情報力がありませんので、全体的に国会の力をその部分において強めることが必要ではないかというふうに思っております。
 例えば、先ほど田議員の方からODAの話が出ましたが、今ODA大綱というのは外務省がパブリックコメントを求めつつも自ら作り、実際にODAをやり、そして自ら評価してそれを閣議に報告するというのは、もう間違いなくそれはお手盛りになる可能性が非常に高い。その機能こそ、我々は第三者の機関として参議院がその調査、評価をきちっとできる、そのためにはやはり情報力、調査力がないと難しいので、その意味でのそのスタッフ力を強化していくことが必要ではないかなというふうに思いますんで、その分野においてもう少し国会の力を合わせて一緒に付けていくことが重要ではないかなというふうに思います。
 それから、一つ気になったのは選挙制度であります。
 これ見ますと、「参議院も国民の直接選挙で選任されるべきで、」云々という、「ほぼ異論のない」というふうにありますが、ここに書かれている参議院の在り方、趣旨からいえば、むしろ専門性なり有識者がやっぱり必要ではないかという観点から、本当に例えば全国レベルでそういう有識者が選べるのかどうか。舛添先生みたいに有名な有識者は選ばれる可能性はあると思いますが、そうじゃない有識者も一杯います。その方が本当に直接選挙で全国レベルでやると、なかなかやっぱり難しいんで、あるそういう枠はやっぱり政党に一部ですけれども残しておいてもいいんではないかという観点から、選挙制度そのものももう少し抜本的に考え、ややちょっとこの部分については違和感も感じないわけではありません。
 以上です。
○会長(関谷勝嗣君) 松井孝治君。
○松井孝治君 民主党の松井孝治でございます。
 まず最初に、舛添小委員長、非常にいいまとめをしていただいたと思っております。常識的に言うと、なかなか取り入れられないような意見もこの報告の中に取り入れていただいた、この御英断は私は本当に感謝をしたいと思います。
 例えば、任期の長期化と再選禁止というのは、これはなかなか現職の議員が集まって議論をするときに、こういうことを報告書に入れるというのは、私も発言しておいて言うのもなんですが、これはなかなか難しいかなと思いながら言っておったんですが、これはたしか小委員会で会長自らの御発言をいただいたというのも私は正直言って驚いたわけでありますが、そういうことを真剣にこういうところに入れられたというのは私は率直に評価すべきだと思いますし、いや、これは参議院の議員同士の議論というのは、ある意味ではこの小委員会が正に少人数で私は一つのモデルだったと思うんですが、それぞれの会派や個人の政治家としての利害を超えたような発言が非常にございましたし、それを報告書にまとめていただいたことにまず感謝を率直にいたしたいと思います。
 その上で、これは私、参議院のその議論の方向性にも関連するんですが、やはりこういう形の委員相互間の議論というのをもっと参議院はできるんじゃないか。参議院の日程を、その審議日程を見ますと、やっぱりどうしても衆議院と競い合うような形で、まず閣僚の日程をどれだけ確保するかというところから審議日程が組まれていくと。もっと言うと、その今の会期、限定された会期等、会期不継続の原則というものがその背景にあるわけでありますが、やはりこれが参議院が自らの手を縛っている部分があるんじゃないか。今、若林委員がおっしゃいましたけれども、思い切って重複を排して参議院はここはやらない、衆議院に任せるというところと、むしろここは徹底してやると。
 私は、そういう意味では、会期の問題も含めて参議院は独自のものを持つべきだというふうに思っていますが、その上で、例えば閣僚がいなくても議論をして、例えば政府の参考人を呼んで有識者と一緒に議論をするようなやり方をしていけば問題についての切り込みは必ず深くなりますので、私は実際、決算委員会のメンバーでもあるんですが、決算ではそういうことも含めて実際にこの憲法調査会における議論を反映をさせて、審議の在り方をもう直ちに変えていくべきではないかと思います。
 その意味では、先ほど山下委員がおっしゃいましたけれども、例えば会計検査院の在り方、これ与野党超えて合意があったと思うんですけれども、これは今の憲法上の規定に、精神にどこまで抵触するのかどうか分かりませんが、会計検査院を参議院に附属させるという一つの考え方を、会計検査院法の改正でできるのかどうか分かりませんが、もしできるんであれば、そういう議論を具体的に参議院で、憲法調査会の議論を受けて、憲法改正を待たずに始めていくというのも一案ではないかというふうに考えております。
 それから、政策人材の霞が関の一極集中の議論も取り上げていただきました。これは非常に私は日本の今の政治、行政の姿としては深刻な問題だと思っておりまして、いずれにせよ、参議院が閣僚を出すか出さないかは議論があるというふうにしながらも、執行権は基本的に衆議院の方にあるという方向性だと思います、この報告書も。
 そうであるとすれば、衆議院の方は内閣を構成し、その内閣の各閣僚のスタッフであるところの行政各部というものをスタッフとして持ち得るわけであります。それに対して、参議院が別のパワーソースを作ってチェックをし、場合によってはその改善を提案するときに、参議院はそれに対抗するだけの本当に政策人材を集めておかなければ、幾らこれは議院の在り方、活動の在り方を変えるといってもおのずと限界がありますので、その問題をやはり端的にもう取り上げ始めるべきではないか。
 具体的に言うと、定員の問題があります。そういう政策人材を集めるといっても、じゃ、定員をどこから持ってくるのか。そうしたときに、私は、今の財政状況から見て、公務員の定員を、じゃ、それだけ増やせますかということにならない。そうだとしたら、行政と立法府、またがって政策人材をどういうふうに、どこの無駄な人材の定員をどうやって移してくるのか、そういう議論を正に国会で始めていかなければいけない。正に参議院の在り方を考える上でも、例えばそういう霞が関から立法府への人員の移替え、特に参議院の調査機能を強化する上でどういう形でそれを移せるのか、これを現実課題として取り上げていくべきであろうと思います。
 蛇足になるかもしれませんが、この憲法調査会の議論も非常に私は有意義であったと思いますが、特に、二院制小委員会ぐらいの人数ですと委員相互間の議論も非常に活発ですし、ああいう形の小委員会というのも今後の憲法調査会での議論を進める上で是非有効に更に活用していただきたいということを申し添えまして、私の意見とさせていただきます。
○会長(関谷勝嗣君) 舛添君。
○舛添要一君 小委員長として、ちょっと先ほどの報告、私の説明が悪かったかと思いますので、今の松井委員に対して補足説明をいたしたいと思います。
 ペーパーの三ページ、会期制の問題でございます。ペーパーの三ページお開けください。ここに、「行政監視、政策評価」ということで書いておりますところの、「必要があれば会期にこだわらずチェックの院としての機能を果たすべきとの指摘もなされました。」というところで実は今おっしゃいました会期制の問題を触れたんでございますけれども、当初、もう会期全く考えずにチェックの機能を果たそうというふうに書いたんでございますけれども、共産党の吉川委員の方から、そこまで書いちゃうと会期制なんて捨ててしまえというふうに読まれてもまた困るというごもっともな御意見ございましたので、「必要があれば会期にこだわらず」ということで、今問題提起いたしていただきました会期については、公平な立場でこういうふうにお書きいたしましたということを補足させていただきます。
 ありがとうございました。
○会長(関谷勝嗣君) 若林君。
○若林正俊君 今、舛添小委員長が触れられた点ですけれども、私は、いろいろなことがあります、この提言されています検討してきた課題、いずれも注目すべき事柄ですから、これから詰めていかなきゃいけないと思いますけれども、今の会期のことについて言えば、もう参議院は会期なしでいいんじゃないかという、むしろ私は、参議院はもう会期なしでいつでもやれると、やっているということにすれば、衆議院と全くそこのところ違っちゃうんですね。そんな考えはどうであろうかと思います。
○会長(関谷勝嗣君) 吉川春子君。
○吉川春子君 会期制も含めて二、三述べさせていただきたいと思います。
 私は、会期制というものを非常に重要な人権保障の一つの仕組みだと思っています。
 といいますのは、幾つかの国会にかけて継続、継続、継続でようやく成立した法案、結局は成立しなかった法案というのがあるんですけれども、それはやっぱり国民の権利を侵害するのではないか、こういう疑いを持たれた法案で、世論の反対がだんだん盛り上がって、継続の末廃案となる例もあるわけです。私は、会期というのは、小委員会でも申し述べましたが、土俵だと思います。この土俵の中で決着が付かないのはやはり国民の支持の得られない法案ということで、それはもう廃案になるということだと思いますので、この土俵を全くなくしてしまうということはやはり賛成できないと思います。それで、先ほど舛添小委員長の方に御意見を申し上げたわけです。
 そういう意味で、私は、会期制を今取っていますけれども、しかし、会期延長というのを臨時国会だと二回まで、通常国会だと一回ですかね、そういうことがあって、会期は必要に応じて広められているのが通例ですので、この範囲の運営で十分だと思います。
 具体的にその会期の延長について反対、賛成ということはその都度党としての意見表明していますけれども、そういうことで会期の問題は私は必要だというふうに考えております。
 委員長、ついでにもう一、二点よろしいでしょうか。
 立法機能の強化ということについて、小委員長の報告の中に入っています。これは非常に重要なことだと思います。
 実は、参議院の共生調査会では三年前にドメスティック・バイオレンスの防止法を初めて立法化いたしました。これは大変、暴力に苦しんでいる女性から、あるいはそれをサポートしている方々から好評を受けました。そして今年、もう一度改正をいたしました、三年たったということで改正をしたわけなんです。これも本当に、普通の委員会とか全部こなしながら、数か月で二十五回も各会派で意見を闘わせまして、とことん条文をたたきにたたいて、そして今度は女性の自立ということにウエートを置いた改正案が成立して、この秋からたしか施行されているわけです。そういうことを考えましたときに、やはり非常に私は国会らしい、立法府らしい活動であったということを思っております。
 もう一つは、これはもう超党派で調査会でやったわけですけれども、やっぱり個人でもいろいろなテーマに関心を持って立法提案をするときに、今、二百五十二の議席のときの数値で、予算を伴うものは二十一議席以上、予算を伴わないものは十一議席以上ということで、小会派の立法権というのは非常に制限されているわけです。議席が十減ったにもかかわらずこの数字が維持されているということも一つあります。これはまあしかし技術的な問題でして、私は、もっと抜本的に、少人数でも議員立法ができるように、国会法の改正を参議院として是非提起していくべきではないかというふうに考えています。
 それから、二院制の堅持という点では、もうこの報告書にも書かれていますけれども、二院制の優れた点、是非必要だという考えが圧倒的でして、私もそのように思います。同時に、二院制の参議院の構成メンバーである議員は、直接選挙によって選ばれた議員で構成されるべきであると考えています。これがやはりチェック機能を強く発揮する上でも、推薦制その他ということであってはとても発揮できませんので、現行憲法上のように直接選挙された議員によって構成されるべきであるというふうに考えております。
 それから、もう一点だけ述べさせてください。
 選挙制度については、選挙制度は比例代表制度というのが非常に優れていると思います。同時に、今定数是正の話合いの場が参議院に設けられるわけですけれども、その際に、選挙区の一票の格差を是正するためにその財源、資源を比例代表を減らして持ってくるというような考え方に立ってはならないと思うわけです。やはり比例代表は比例代表としてむしろ拡充していくべきであって、ここを更に減らすというようなことは、私としては参議院の機能を強化するという点からも賛成できないということを申し述べます。
 以上です。
○会長(関谷勝嗣君) 松井孝治君。
○松井孝治君 済みません。
 会期の問題について今小委員長及び吉川委員から御発言がありましたので、私の考え方を補足的に申し上げますが、私は、そもそも会期というもの、あるいは不継続の原則というのが与党事前審査ということと相まって全く国会日程政治というんでしょうかね、国対的、要するに審議の中身をどんどんやるというよりは、会期末にできるだけ懸案を先送りするという方向に野党は働き、与党はもう国会というのはできるだけ迅速に無傷で通してくれればいいというようなビヘービアにつながっているというのが今の国会の機能不全の根源にあると思っておりまして、そもそも今の会期制というものについては疑念を持っております。
 しかし、その上でも、若干吉川委員の御意見、理解できなくないこともありまして、要するに土俵論というものがあるとしたらば、それは私は衆議院で、これは衆参でどういう役割分担をするかですけれども、政党間のある意味では権力闘争は衆議院でやってもらう、参議院はどちらかというと政党を超えた本当のチェック、あるいは中長期的な課題を議論するとすればそれはむしろ会期を問わずに徹底して議論をする、別に夜間だって土日だって議論したっていいじゃないかと。徹底的に国会で議論をしてくれというのが私は国民の声だと思います。
 参議院が本当に良識の府というんならば、そういう権力闘争と一線を画して、本当の意味での中長期的な課題、あるいは国民の視点に立ったチェック機能というものはこれはもう徹底して議論をすればいいんじゃないか。会期末に政権を追い込むというような議論ではなくて、そこは良識の府としての参議院の在り方として衆参の会期の議論を分けて議論をすることも一案なんではないかという意見を申し添えておきたいと思います。
○会長(関谷勝嗣君) 愛知治郎君。
○愛知治郎君 済みません。愛知治郎ですけれども。
 今の話、会期の話もあるんですけれども、結局、先ほど私が言ったとおりに、行き着くところは同じで、政党の議論というのを避けては通れないというふうに思います。たとえ会期をなくしたところで、同じような政党の形があれば同様の問題が常に起こってしまう。
 私自身、一国民としての立場としてお話をさせていただきたいんですが、やはりいろんな議論、もちろん深い議論で大切な議論ですけれども、やはり国民側から見て一言で言ってどのような違いがあるのかはっきりと説明できるか否かというのは重要になってくると思いますんで、この点、繰り返しで、私自身もこれからもまだ議論どんどん出ていくと思うんでずっと言っていきたいと思いますが、この政党の問題、避けて通れないということだけもう一度お話をさせてください。
 以上です。
○会長(関谷勝嗣君) 直嶋正行君。
○直嶋正行君 今、会期の問題をめぐっていい議論が続いておりますので、ちょっと触発されて一つ私も申し上げたいんですが、先ほどの土俵論等も含めて、私は、もう一つ頭に置いて是非検討しなきゃいけないのは、二院制の問題ではなくなるんですが、政府と与党との関係だと思います。
 要するに、議院内閣制の下における政府と与党の関係が、例えば同じような制度を取っているイギリス等と比べますと日本はやはりかなり違うと思うんですね。議院内閣制ですから、多数を取った政党が与党として内閣を構成する、そういう仕組みからいいますと、本来的な意味で与党と内閣との関係はやはり一体でなければいけないと。
 ところが、今の政府と与党の関係を見ますと、政府として議論してきたことがまた再度与党の中で議論されて、まあこういう場ですからあえて申し上げますと、特に連立時代になってきますと政党間の調整もそこに加わってきます。そうしますと、ますます国会が、与党の立場から見ますと、いわゆる議論をして積み上げてきたものをいかに成立をさせるか、その目的のために国会の運営をどうするか、こういう性格にどんどん色が強くなってきておると。私は、土俵論も含めて、やはり根本的にはここのところに問題があるんじゃないかなというふうに思っています。
 これが例えば、さっき政府・与党と、こういう言い方をしましたけれども、本当は政府を預かっている内閣と与党なんですね。ですから、内閣を構成する与党は一体であって、政府案を作る段階で既にその議論は終わって、与党内の議論は終わって、内閣としてやはり法案を出すと。あるいは、いわゆる政府に加わっている大臣以下の官僚とそれに加わっていない与党の議員との関係というのは、もう少し政府との関係において切り離した存在にしていただいて、国会の場で与党の方も自らの意見を言うと。そういう立法機関と行政機関の在り方の問題も、この二院制、参議院の在り方をどうするかということに深くかかわってくるんじゃないかと思います。
 憲法でどう整理するかという問題だけではなくて、実態面も含めて、法律等でもどう整理していくかということも含めて、私はそこは考えていかなきゃいけないんじゃないかと。もしそういう整理がきちんとつくのであれば、おっしゃっているように、会期制をなくして、参議院は特に会期にとらわれずに議論をするということも成り立ってくるんじゃないかというふうに思います。
○会長(関谷勝嗣君) 他にございませんか。
 富岡由紀夫君。
○富岡由紀夫君 ちょっと私も小委員会に参加させていただいて議論に加わらしていただいたんですけれども、今いろいろとまとめていただいて自分の整理もできたんですが、今、愛知議員がお話しいただいた政党の問題というのは、やっぱり避けて通れない問題かなというように私も認識いたしました。
 幾らこの機能を分けても、やっぱり衆議院と参議院の間の党議拘束とか、そういうのがあれば結局は同じ結論が出てしまいますし、やっぱり政党の問題があるから選挙制度の問題もいろいろ関連してくるし、内閣総理大臣を指名する問題とか大臣を輩出する問題も、すべてやっぱり政党とのかかわりがパッケージとして大きくのし掛かっているんじゃないかなというような感じいたします。
 いろんな制度を参議院の中で、在り方、制度を変えても、やっぱり政党の在り方、党議拘束の在り方、選挙の在り方、そういった大臣の指名の在り方を政党として整理しないと、本当、衆議院と参議院の明確な機能の役割分担というか、そういうのがやっぱりできないんじゃないかなというふうに思いました。
 ちょっと、すごく愛知さんから刺激されて、私もそうかなというふうに思いましたので、一言申し述べさせていただきました。
○会長(関谷勝嗣君) ございませんか。
 郡司彰君。
○郡司彰君 時間が限られているようですので、簡潔に申し上げたいと思いますが。
 一つの議論として、これは二院制の在り方というよりも、立法府の在り方といいますか、民主主義のコストとして、大体、例えば国の予算でありますとかGDPでありますとか、そういうものの議論というものもどこかで必要なんではないかなと。
 例えば、ちょっと話が違うようですけれども、議員年金をどうしようという話もありますけれども、いろんな理由がありますが、例えば年金が廃止をされて、それならば一生涯議員をやっていこうなんということになりますと、これは正常な入替えというふうなことも可能ではないようなことも出てくるわけでございます。
 それから、分権の問題で、例えば今地方の方でも議員の定数を減らそう減らそうという議論があるけれども、本当にその議論だけでいいんだろうか、議会というものの在り方、立法府の在り方、民主主義のコストというものは常に一定程度確保される必要があるだろうというふうに思っておりまして、そういうような議論というのも二院制の在り方の中で一考ではないかなというようなことをちょっと申し添えておきたいと思います。
○会長(関谷勝嗣君) ありがとうございました。
 他に御意見もあると思いますが、次の憲法に関する各会派の検討状況の報告の時間になりましたので、小委員会の報告に対する自由討議は一応これで締めさせていただきます。
    ─────────────
○会長(関谷勝嗣君) 次に、憲法に関する各会派の検討状況について、それぞれ十五分以内で報告を聴取いたしたいと存じます。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 若林正俊君。
○若林正俊君 私は、参議院憲法調査会において、我が党の日本国憲法改正の検討経過と検討状況について御説明の機会を得たことを大変うれしく思いますとともに、このような場で、参議院憲法調査会の調査審議に参画してきた各党会派がそれぞれ日本国憲法に関する論議の現況を報告し合うということを極めて意義深いものと高く評価するものでございます。
 自由民主党は、昭和三十年の立党に際し、平和主義、民主主義及び基本的人権の原則を堅持しつつ、現行憲法の自主的改正を図ることを明らかにし、憲法の自主的改正を立党以来の党是としております。
 そのため、立党直後に憲法調査会を設置し、現行憲法の各条章について検討を重ね、昭和三十一年には「憲法改正の必要と問題点」と題する中間報告を行っております。当時、国会では、内閣に憲法調査会を設置するための憲法調査会法案が審議されている最中でありました。
 この中間報告では、前文を全面的に書き改め、天皇の対外的代表制の明確化、シビリアンコントロールの明記、基本的人権条項への女子・老人保護等の追加、参議院組織の合理化、最高裁判所の国民審査制の見直し、憲法改正国民投票制度の再検討等が盛り込まれております。
 昭和四十年代に入り、昭和四十七年六月に憲法改正大綱草案を公表しています。
 この草案では、第一として日本国憲法改正の基本方針を示し、第二に憲法改正の方向を明らかにしています。
 第一の基本方針には、天皇の地位について、我が国の歴史と伝統に基づき天皇が代表することを明確にするとし、世界平和への寄与と我が国の安全保障の確立、社会連帯の理念による文化的福祉国家の建設、人種平等、民族の自主性尊重に基づく世界連邦の建設の四項目を基本方針として憲法を改正するとしております。
 草案の第二の憲法改正の方向では、現行憲法前文から第十章最高法規までの改正の方向が示されております。
 昭和五十年代には、昭和五十六年五月に憲法総括小委員会を設置し、主として日本国憲法前文について審議、検討を行いました。次いで、昭和五十七年二月に日本国憲法各条章を専門的に検討を続けるために憲法総括小委員会に四分科会を設置し、各分科会の取りまとめた報告書を踏まえて昭和五十七年八月に日本国憲法総括中間報告を作成し、公表しています。
 この日本国憲法総括中間報告は、現行憲法の前文を改め、現行憲法百三か条すべてを網羅するものであり、四分科会における各条章ごとの改正論と改正不要論の両論を併記する形を取っております。
 中間報告は、前文において、憲法が完全に日本国民自身の手で作られたことを確認するとするとともに、その焦点を第九条に置き、戦争放棄、武力不行使を規定した第九条一項は存続させる、戦力不保持とその交戦権否認をうたった第二項は削除し、その第二項に自衛隊を置くことと内閣総理大臣の最高の指揮監督権を明記する、第三項として内閣総理大臣の防衛状況宣言権を明記するというものでありました。
 平成に入りましてからは、平成五年、今、国民的憲法論議は必要か、必要とするならばどのような手法が望ましいか、点検すべき事項という三項目に絞って論議を行い、中間報告として意見集約を行っています。
 この中間報告では、今こそ憲法論議を喚起し、国民的論議に高めることが政治に強く求められるところであるとの意見集約をし、憲法の見直しを行う上で国民各界各層の参加を求めることが必須条件であり、そのためには内閣に調査委員会等を設置するか、あるいは国会に憲法調査会を設置しなければならないとの提言を行っております。
 平成十五年には、さきの総選挙の政権公約において、平成十七年十一月の立党五十周年までに新しい憲法改正草案をまとめることを明らかにいたしました。総選挙後、この政権公約を受けて我が党の憲法調査会に憲法改正プロジェクトチームを設置し、前文を含め日本国憲法百三か条の全条文に関して、各条章ごとに審議、検討を行いました。その検討会の大半は、国民の理解を得、その論議を喚起するという観点から、報道各社に公開の会合とするとともに、その議論の概要をインターネットを通じて全国民に公開しております。その後、参議院選挙を前にして憲法改正プロジェクトチームの検討結果を自由民主党の総務会に報告し、その了承を得てこれを論点整理という形で取りまとめ、公表いたしております。
 そこで、この論点整理の基本的な考え方について御説明をいたします。
 まず、新憲法が目指すべき国家像として、国民だれもが自ら誇りにし、国際社会から尊敬される品格ある国家であることを明らかにし、基本的に国というものはどういうものであるかをしっかりと書き、国と国民との関係をはっきりさせることによって国民の中におのずから愛国心が芽生えるようにする。その際、戦後我が国に定着した国民主権、平和主義、基本的人権の尊重という三原則などを高く評価し、このような人類普遍の価値を維持し、さらに発展させるものでなければならないとした上で、現憲法が制定されたとき、連合軍の占領下において置き去りにされた我が国の歴史、伝統、文化に根差した国柄とも言うべき固有の価値や、日本人が元来有してきた道徳心など、健全な常識に基づいたものでなければなりませんし、日本国、日本人のアイデンティティーを憲法の中に見いだすことができるものでなければならないとしています。
 次に、新憲法は、我が国の平和主義の原則が不変のものであることを明確に世界に宣言するなど、二十一世紀の新しい日本にふさわしいものにするとともに、科学技術の進歩、少子高齢化の進展等新たに直面することとなった課題に的確に対応すると同時に、人間の本質である社会性が個人の尊厳を支える器であることを踏まえ、家族や共同体が共生の基本を成すものとして重要な位置を占めなければならないとしています。
 なお、今後憲法改正を進めるに当たって、憲法が権力制限規範にとどまるだけではなく、国民の利益、ひいては国益を守り増進させるための公私の役割分担を定め、国家と国民とが協力し合いながら共生社会を作ることを定めたルールとしての側面を持つものであることをアピールしていくことが重要であるとしております。
 次に、各論の主な分野について若干御説明いたします。
 まず、現行憲法の前文については、これを全面的に書き換え、翻訳調の表現を改め、文章は平易で分かりやすいものとし、模範的な日本語の表現にする。その内容については、現行憲法の基本原則である国民主権、基本的人権の尊重、平和主義は今後とも堅持するとともに、さきに基本的な考え方で述べた国家像などを盛り込むこととしますが、具体的には憲法の各条章と深くかかわることから、これら各条章の議論が進んでから改めて詰めることとしております。
 次に、天皇についてであります。
 象徴天皇制については今後とも維持すべきであるとし、我が国の文化、伝統と密接不可分な存在であることを踏まえ、現在の象徴的地位を実質的に位置付け、元首として明記すべきかどうか、天皇の祭祀等の行為を公式行為とすべきかどうか、女帝問題については皇室典範の改正という観点から今後検討すべき論点であるなどの意見が出されています。
 次に、安全保障についてでありますが、自衛のための戦力の保持を明記することについて大多数の同意が得られております。また、戦後日本の平和国家としての国際的信頼と実績を高く評価し、これを今後とも重視すること。我が国の平和主義の原則が不変のものであり、決して侵略国家とならないことを明確にすること。個別的、集団的自衛権の行使に関する規定を置くべきであること。内閣総理大臣の最高指揮権及びシビリアンコントロールの原則に関する規定を置くべきであること。非常事態全般、すなわち有事、テロ、大規模な暴動などの治安的緊急事態、自然災害の場合に関する規定を置くべきであることなどの意見が出されています。さらに、平和への貢献を行う国家となるべきであるという観点から、自衛権や国際協力、国際貢献のルールをどこまで新憲法に書き込むか、検討することとしております。
 次に、国民の権利及び義務については、時代の変化に対応して新たな権利、新たな義務を規定するとともに、国民の健全な常識感覚から乖離した規定を見直すべきであるということについて、異論はございませんでした。その上で、いわゆる新しい人権に関しまして、環境権、IT社会の進展に対応した情報開示請求権やプライバシー権、科学技術の進歩に対応した生命倫理に関する規定、犯罪被害者の権利に関する規定を設けるべきであるとの意見、さらに、政教分離の規定を我が国の歴史と伝統を踏まえたものにすべきであるとの意見が出されています。
 一方、公共の責務に関しまして、社会連帯・共助の観点からの公共的な責務、例えば国の防衛及び非常事態における国民の協力義務や社会保障制度を支える義務、責務を設けるべきである、また、家族を扶助する義務に関する規定を設けるべきであるとの意見も出されました。
 次に、国会及び内閣の政治部門について、政治主導の政策決定システムをより強化し、時代の変化に即応してスピーディーに政治判断を実行に移せるシステムとすべきであること、現在の二院制については、両院の権限や選挙制度が似通ったものになっている現状をそのまま維持すべきではないことにつきましては、共通の認識が得られています。
 次に、司法につきましては、最高裁判所による違憲立法審査権の行使の現状には不満があること、憲法裁判所制度あるいは最高裁判所の改組などについて検討すべきであること、民事、刑事を問わず裁判の迅速化を図るべきであること、最高裁判所裁判官の国民審査の制度は廃止し、廃止後の適格性審査の制度については更に検討を行うべきことなどの点につきましては、異論はありませんでした。さらに、国民の司法参加に関する規定を置くべきであることなどの意見も出されています。
 次に、財政につきましては、財政民主主義をより実質の伴うものにする方向で見直すべきであるということについても異論がありませんでした。その上で、私学助成に関する規定を置くべき、決算に関する国会の権能に関する規定を置くべきなどの意見が出されました。
 次に、地方自治につきましては、地方分権をより一層推進し、また、地方分権の基本的な考え方や理念を憲法に書き込む必要があるという点で大多数の同意が得られました。その上で、いわゆる道州制を含めた新しい地方自治の在り方について、自己決定権と自己責任の原則など、その基本的事項を明示すべきであるなどの意見が出ています。
 次に、憲法改正手続についてですが、現憲法の改正要件はかなり厳格であり、これが時代の趨勢に合った憲法改正を妨げる一因になっているのではないかとの意見が強く主張され、憲法改正の発議の要件である各議院の総議員の三分の二以上の賛成とありますのを、各議院の総議員の過半数とするなどの改正を行うべきではないかという具体的な提案もあり、これについても今後慎重に検討をすることとされております。
 以上が論点整理の概要であります。
 そこで、さきの参議院選挙後、我が党憲法調査会はこの論点整理を受けて、さらに、安全保障、国民の権利及び義務、国会と内閣等に関し自由濶達な意見交換を行いました。そして、去る十月十九日には憲法調査会の下に憲法改正案起草委員会を設置し、起草委員会の場で審議、検討を行っております。
 今後、起草委員会において、衆参両院における憲法調査会の論議や自由民主党内の意見を踏まえて、意見集約に向けて更に議論を重ね、できるだけ早い機会に自由民主党憲法調査会において検討できるよう鋭意努力をしているところです。
 もちろん、現実的な憲法改正は、両議院の三分の二以上の多数の合意が必要ですから、各党間の具体的な憲法改正協議によっては、我が党が現在検討しているような全面改正という形にならないこともあり得るのですが、我が党が志向するあるべき新憲法の全体像を示すことは公党としての国民に対する責務であると考えていることを申し上げて、御報告といたします。
○会長(関谷勝嗣君) 簗瀬進君。
○簗瀬進君 民主党の簗瀬進でございます。
 民主党の憲法改正問題についての検討状況についての御報告をさせていただきたいと思います。
 民主党は、一九九九年から党内に憲法調査会を設置をいたしまして、総論、それから統治機構、人権、地方分権、国際・安保と五つの小委員会を作りまして鋭意憲法問題について検討を進めてまいり、本年の六月二十二日に中間報告をまとめさせていただきました。
 本日は、その中間報告の中身についてまずは御報告をさせていただきたいと思います。ちなみに、現在はその小委員会が引き続きその中間報告でまとめられた内容について成文化等の作業を精力的に続けております。
 まず、憲法提言の背景でございますけれども、我が国の現在の憲法状況は大変な問題点があると。まず第一番目は空洞化であり、第二番目は形骸化であろうと。
 この二つの問題点、なぜ発生をしておるのかということで分析をいたしますと、まず内政面では、中央集権システムの下で官僚による恣意的な行政指導が続いたと。そして、法の支配という大変重要な民主主義の基本が形骸化をしていくと、こういうことが内政面での国内的な原因の一つであると。
 それからまた、第二番目に、これは国際関係の中での原因ということでありますけれども、やはり初めにアメリカありきといった外交によってルールがはっきりとしない自衛隊の海外派遣が繰り返されて、あたかも日米関係が憲法を超えるかのような政治実態が生まれてしまっていると。それもやはり空洞化、形骸化の背景を成すものかなと。
 こういう状況の中で、憲法を本当に国民に身近なものとして生きた憲法にするためにどうしたらいいんだろうかと。正に創造的な憲法の改正についての考え方をまとめていくべきだろうということになったわけでございます。
 さて、その中で、まず第一番目の総論、これは文明史的転換に対する、対応する憲法の創造、創憲ということをやっていくべきだと、ということでまとめさせていただきました。
 文明史的な転換点というのはどういうことかというと、幾つかあるわけでございますけれども、まず第一番目は、国家概念を超える新たな問題が現代において発生している。国際テロとか民族浄化、宗教紛争、新型ウイルスの発生、地球温暖化問題等々の旧来型の国家を超える新たな問題にどのように対処していったらいいのかというのが第一番目。それから第二番目は、情報化によるコミュニケーションの革命でございます。また第三番目は、その結果として、当然、地球市民的価値が生まれてきていると。そういう地球市民的発想というようなものが生まれたというのが現代だろうと。それから四番目、そういうことで、やっぱり国境を越えた市民間の連帯というようなものが地球規模で起こっていると。このような大きな文明史的転換に対応した憲法の姿というようなものを作っていかなければならない、これが総論におけるまず第一番目の指摘でございます。
 そのために、新たなタイプの憲法を創造していくべきであろうと、ということで、今までの憲法のスタイルとは若干違うかもしれませんけれども、新しいタイプの憲法というのは、まず何よりもまず日本国民の意思を表明して世界に対して国の在り方を示すという一種の宣言規定を充実させていかなければならない。そして第二番目に、旧来型のいわゆる規範としての法であります。法規範としての機能を充実化させていくと。このように宣言的機能と規範的機能、この二つをきちんと持った憲法を創造していくべきだろう。
 それから、その上で、憲法を国民の手に取り戻すためには、実際その空洞化、形骸化の大きな背景を成しているのはやっぱり憲法九条の問題だと。世界屈指の軍隊としての実態を自衛隊はやっぱり持っている。その海外派遣を繰り返していく姿と憲法九条のこの乖離というようなものに大変国民は疑問を持っているということで、憲法を国民の手に取り戻すためにも、国民による直接的な意思の表明と選択が大事であると、ということを民主党として強くやっぱり受け止めるべきだと、このように考えております。
 次に、第二小委員会の統治機構の部分でありますけれども、国民主権に基づく確かな統治を目指してということで、九項目にまとめさせていただいております。
 第一番目は、国民主権と権力分立であります。三権分立がやっぱり行政優位型になっていると、そういうことで、権力分立に関する明示的な規定をしっかりと作るべきだ。
 それから第二点は、分権国家としての日本の姿を明らかにすべきだろう。中央政府の役割についてはむしろ限定列記、そして地域にできることは地域においてこれを担うということを憲法上明記する。
 それから第三番目、これは首相主導の議院内閣制の制度の確立というようなものをやっていかなければならない。首相権限の強化とか、あるいは内閣が遂行していくというのは行政ではなくて執行権ということで、内閣ではなく内閣総理大臣にこの執行権が帰属するということを明確に、行政権が帰属するということを明確にしておくべきだろう等々がこの第三点でございます。
 それから第四点、二院制の在り方と政党の位置付けの明確化ということでございます。二院制の在り方については、先ほどの小委員会報告でも様々な検討が行われているわけでございまして、我が党もこの点については検討課題として挙げております。
 そこでは、参議院議員の大臣指名の廃止とか、衆議院における予算審議と参議院の決算審議の役割分担とか、長期的視野に立った調査権限や勧告機能の拡充等を検討課題として挙げてございます。
 また、選挙制度を改めて、地域代表制を中心として、専門性も加味した選任方法へと改革をすべきなのではないのかということも検討課題に挙げてございます。
 さらに、政党に憲法上の地位を与える。
 また、選挙制度の在り方も、議員のお手盛りで簡単に変わるということではない、ルールをきちんと憲法に明記しておいた方がいいのではないのかということにも触れてございます。
 第五番目は、国民投票制度の検討でございます。
 例えば、EU等に見られるように、主権の移譲を伴う等の大変な重大な決断をしなければならないことがある、そういう場合には国民投票制度の拡充を図っていくべきだろう。
 それから第六番目に、憲法調査機能の拡充と違憲立法審査制の確立ということで、憲法裁判所若しくは憲法院など、憲法審査のできる固有の審査機関を新たに設置するということを検討すべきだ。
 それから第七番目、会計検査、公会計、財政に関する諸規定の整備・導入と。
 それから第八番目は、準司法的機能性を有する独立性の高い、裁判所ではない第三者機関、例えば人権に関する人権委員会等も憲法上の位置付けを与えたらいいのではないのか。
 それから第九番目は、硬性憲法と憲法改正手続ということでございまして、先ほど、国民の手に憲法を取り戻すためにもやはり憲法改正手続をもっと国民に近いものに直していく方向を考えるべきだろうと。具体的には幾つかございますけれども、時間の関係で省略をさせていただきたいと思います。
 次に、第三小委員会では、人権保障について検討させていただきました。
 人権保障については、まず第一番目に、国際人権法という考え方をしっかりと憲法上も位置付けをいたした上で、例えば条約の尊重・遵守義務のみならず、適切な措置を講ずること等まで含めて憲法に新たに積極的な規定をすべきなのではないのか等の国際人権法の尊重というようなものを司法の項にきちんとうたうべきだ。このような総論的な提言をさせていただいた上で、九項目にわたる様々な提案をさせていただいております。時間の関係が、時間がないんでちょっとあれなんですけれども。
 第一番目は、新しい人権としてプライバシー権、名誉権、知る権利、環境権、自己決定権等を挙げてございます。
 また、人権保障と第三者機関として、先ほど申し上げた国家機関から独立した人権保障についての人権委員会等々を憲法上に位置付けるべきだ。
 それから第三番目は、法の下の平等でございますけれども、差別禁止が私人間についてもきちんと規制できるような形で、そういう方向性が出るように、国家対個人の関係じゃなくて、私人と私人の関係でも憲法十四条が及ぶような積極的な規定を新たに設けるべきだと。これが第三番目でございます。
 それから第四番目は、情報化社会と表現の自由の関係でございまして、巨大マスメディア、インターネットなどの新しい媒体によって随分新しい表現の自由との新たな問題が出ておるので、これについての憲法上の考え方をきちんとしておくべきなんではないのか。
 第五番目は、職業選択の自由というようなものを更に精度の高い規定にしていくべきであろう等の議論でございます。
 それから第六番目は、外国人の人権でございますが、この保障を憲法に明文規定を設けるべきである、また永住外国人に地方参政権を認めるべきである等々の提案がここでございます。
 また財産権、第七番目でございますが、財産権の保障と制約ということでございまして、合理的な財産権の行使と制約というようなものを憲法上にきちんとやっぱり、受忍限度等の判例等の積み重ねもございますが、憲法にこれをきちんと明らかにしておいた方がいいのではないのか等々の提案でございます。
 第八番目は、子供の権利についても憲法にこれを明記すべきであろう。
 それから第九番目は、信教の自由と政教分離のルールの在り方ということでございまして、特に、国家と宗教との厳格な分離を基本理念としながら、許容される限度、許容されるかかわり合いがどの程度なのかという、そういうことについて憲法上の判断基準を明らかにしておいた方がよいと、等々の提案がございます。
 新しい国家追悼施設、これはちょっと憲法とは違うかもしれませんけれども、靖国神社参拝問題が随分これからのアジア関係あるいは日本の外交戦略でも一つの大きなネックになっているわけで、それを解決する意味でも新しい国家追悼施設を建設・整備をすべきなんではないのかと、等々がこの人権の分野でございます。
 それから、第四小委員会は地方分権ということで、分権国家の創造を目指すということで、中央集権国家から分権国家へ転換する、また自治体に優先的立法権限を認める、また多様な自治体の在り方を認めるべきなのではないのか、また課税自主権、財政自治権を憲法上しっかりと保障をする、また現在の地方交付税の制度に代えて新たな水平的財政調整制度を創設する等の提言がなされてございます。
 第五小委員会は国際関係あるいは安全保障ということでございますが、まず、日本国憲法又は九条の原則的立場は、徹底した平和主義とか、あるいは武力の行使について強い抑制的姿勢を貫いていくという、これが現憲法の九条の立場でありますけれども、これらの原則的立場については今後もきちんと引き継いでいくべきであると、このように結論を出しております。
 そして、その上で、国際協調主義に立った安全保障の枠組みの確立をということで、まず第一番目には、憲法の中に国連の集団安全保障活動を明確に位置付けるべきであるということが第一点。そして、第二点としては、いわゆる自衛権についてはもちろん我が国固有の権利として持っているわけでありますけれども、自衛権を行使する際の制約原理を憲法にきちんと明記をしておくべきであるということで、その制約原理としては三つ、緊急やむを得ない場合に限ると、それから国連の集団安全保障活動が作動するまでの期間に限る、そして活動の展開に関しては国連に報告をすると、このような制約原理を明確化しておくということでございます。
 それから第三番目として、武力の行使については最大限抑制的であるということの宣言、あるいは集団安全保障への参加と専守防衛を憲法上も明示した上で自衛権の行使に徹するということを憲法規定として明らかにしておくべきなのではないのかな等々の検討でこの中間報告がまとめられた次第でございまして、今後はこの五小委員会が引き続き、先ほども申し上げましたけれども、成文化等も含めての次の第二ステージでの活動を今精力的に行っているところでございます。
 以上でございます。
○会長(関谷勝嗣君) 白浜一良君。
○白浜一良君 公明党の白浜一良でございます。
 我が党の憲法調査会の現状について述べさせていただきたいと思います。
 我が党もずっと憲法につきまして党内議論を進めておりまして、前文から各条項における議論の論点整理は取りまとめてございますが、今日はもう時間もございませんので、要約的に四点にわたりまして述べさせていただきたいと思います。
 まず第一点目は、憲法に対する我が党の基本的な考え方でございます。
 我が党は、現行の日本国憲法は優れた憲法であると、また戦後の日本の平和と安定、発展に大きく寄与してきたと高く評価しております。中でも、国民主権、恒久平和主義、基本的人権の保障の憲法三原則は不変のものとしてこれを堅持すべきだと考えております。
 また、憲法九条は、アジアの諸国民に多大な犠牲を強いたさきの大戦に対する反省と、再び戦争を繰り返さないというメッセージを諸外国に発信してきた平和主義の根拠であり、戦後の日本の平和と経済発展を築く上で憲法九条の果たしてきた役割は極めて大きいものがあったと認識しております。
 しかしながら、日本国憲法は、制定以来六十年近い歳月が経過しております。憲法が制定されたころとは時代状況が大きく変化し、制定時には想像さえされることがなかった新しい国民の権利や新たな問題が提起されております。例えば、生命科学の急速な発展に伴う生命倫理の問題や、高度情報化社会の中における個人のプライバシー保護の問題など、基本的人権にかかわる現代的なテーマが惹起しております。また、冷戦終結後、憲法前文でうたわれた国際協調主義の具体的な実践として、国連を中心とした紛争予防、平和維持、平和構築の活動に我が国としてどうかかわっていくか、貧困や飢餓、感染症対策など個々の人間の生命、生活、尊厳の確保を目指す人間の安全保障の実現にどうかかわっていくかなど、我が国を取り巻く環境も大きく変化してきております。
 憲法は国の在り方を規定する柱であり、憲法論議は、二十一世紀の日本をどういう国にするのかという、未来を見据えた形で進めなければならないということでございます。
 二点目に、我が党の加憲という考え方が極めて現実的な方式だということを述べさせていただきたいと思います。
 現行憲法は維持しつつ、そこに新しい条文を書き加え、補強していく加憲という方式は、以下のような理由から極めて現実的な方法だと考えております。
 第一に、現行憲法は優れた憲法であり、それが広く国民の間に定着し、積極的に評価されているという基本認識があるということです。
 第二に、諸外国を見たときに、時代状況に合わせて憲法を補強していくというスタンスを取る国が少なくないからです。アメリカは従来の条項をそのまま置いた上で修正条項を加えていくアメンドメント方式を取っていますし、フランスの憲法においては一七八九年の人権宣言が今も有効とされております。
 第三に、憲法改正について規定した憲法九十六条第二項では、憲法改正について、国民の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布するという条文があり、この一体を成すものという表現にはアメリカ式の加憲のニュアンスが出ています。事実、九十六条の改正の英訳はアメンドメントという英語が当てられていますし、日本国憲法は本来的にアメリカ的なアメンドメント方式、つまり増加型改正が基本になっていると、こういう指摘されている学者もいるということでございます。
 三点目に、未来志向の憲法論議ということについて述べさせていただきます。
 憲法問題について、国会では衆参両院に憲法調査会が設置されてから既に五年近くが経過しております。最終的な調査が精力的に行われていますが、我が党においても憲法調査会を中心に活発な論議を進めておりますが、その論議の方向性は、二十一世紀の日本をどうするかという未来志向に立ち、国民主権をより明確にする視点、国際貢献を進めるための安全保障の視点、知る権利やプライバシー権など新たな人権条項を加え人権を確立する視点、環境を重視する視点から議論を深めております。
 例えば、知る権利やプライバシー権、環境権といった新しい権利は、現行憲法でも、十三条、個人の尊重、幸福追求権、公共の福祉及び二十五条、生存権、国の社会的使命の規定などの解釈によって導き出されるとの見解がありますが、これらの諸権利が最高法規である憲法に明確に定められてあれば、それより下位の法律を制定するときにより強い内容を持つ法律にすることができます。
 また、教育については、現行憲法に教育を受ける権利、教育を受けさせる義務が定められていますが、生涯学習といった観点を含め、より積極的な人間主義的教育観を主張する声もあります。
 地方自治に関しても、現行は九十二条から九十五条までの四つの条文でしか規定されていませんが、より地方の権限を明確にした規定を置く必要があるという主張があります。
 新しい人権に関する憲法論議においては、あくまで憲法における権利のインフレ化に注意しつつ、二十一世紀日本のあるべき姿を目指して論議を進めておるということでございます。
 四点目が、憲法九条問題への我が党の対応でございます。
 国会の憲法調査会でも焦点になっている憲法九条の問題については、我が党においても、タブーを設けず論議を積み重ねてまいりました。その主な論点は、自衛隊の存在、国際貢献の在り方、集団的自衛権の行使の問題などに立て分けることができますが、これまでの党内論議では、現行九条を堅持すべきとの論議、議論が大勢であります。
 党内の九条論議を概括いたしますと、平和の党として九条を大切にし、今後も堅持すべきだという強い意見があります。一方、専守防衛、個別的自衛権の行使としての自衛隊の存在を認める記述を憲法に置くべきだという意見や、その反対に、既に実態としての合憲の自衛隊は定着しており、あえて書く必要はないという指摘も党内ではございます。
 また、国連憲章は、国連による国際公共の価値を追求するための集団安全保障における武力行使を認めておりますが、日本政府は、集団安全保障にあっても武力行使は許されるべきではないとしています。
 我が党においては、あくまで民生中心の人道復興支援を主体とすべきだとの意見が大勢でございます。また、国際貢献については、明確化を望む指摘がありますが、九条に書き加えるか、前文に盛り込むか、別建てで起こすか、又は法律にゆだねるかなど、意見が現在のところ分かれております。
 一方、集団的自衛権の問題については、個別的自衛権の行使は現行憲法でも認められておりますが、集団的自衛権の行使は認められないという意見が我が党の大勢でございます。国民の間には憲法九条を変えることに対する危惧があることも事実であり、見直しについては、国民的な合意を形成する観点から、慎重に議論を進める必要がございます。
 今後の九条論議に当たっては、九条の一項の戦争放棄、二項の戦力不保持の規定を堅持するという姿勢に立った上で、自衛隊の存在の明記や我が国の国際貢献の在り方について、加憲の論議の対象としてより議論を深め、慎重に検討していく方針であります。
 憲法は国の在り方を決める根幹でありますから、国民生活、社会生活に大きな影響を及ぼす条項が並んでおります。今後も、現行憲法を評価しつつ、総合的にバランスの取れた憲法論議をしていこうというのが我が党の現状でございます。
 以上です。
○会長(関谷勝嗣君) 吉川春子君。
○吉川春子君 日本共産党の吉川春子です。
 この調査会が二〇〇〇年二月十六日スタートした時点で、橋本敦元参議院議員と私は、何を行うべきかについて我が党の基本的考えを述べました。憲法の広範かつ総合的調査の内容は、日本国憲法の優位性、現実との乖離、憲法制定経過についての三点です。私はこの点に沿って、今日までの調査を踏まえて意見を述べます。
 第一は、日本国憲法の優位性についてです。
 私は、日本国憲法の五つの原則、すなわち国民主権と国家主権、恒久平和主義、基本的人権、議会制民主主義、地方自治は、二十一世紀の日本の指針として将来にわたって擁護、発展させるべき先駆的なものと考えています。とりわけ平和と基本的人権は世界の最先端を行く内容であって、改正する必要は全くないと考えています。
 憲法九条は、国権の発動たる戦争と武力による威嚇を禁じ、陸海空その他の戦力を保持しないとしています。ここまで恒久平和主義を徹底した憲法は、世界にほとんど例がありません。憲法九条は、戦争の違法化という二十世紀の歴史の大きな流れの中で最も先駆的な到達点を示した条項として世界に誇るべきものです。そして、それは二十一世紀に向けて沸き起こりつつある平和と進歩の国際的流れをリードしているのです。
 二十一世紀は軍事力による紛争の解決の時代ではなく、国際的な道理に立った外交と平和的な話合いが世界政治を動かす時代にしなければなりません。とりわけ平和と進歩の力強い潮流が沸き起こりつつ、アジアでは憲法九条の値打ちはいよいよ精彩あるものになるだろうと考えています。
 憲法九条の先駆性については、国際民主法律家協会副会長のロラン・ベイユ氏が赤旗二〇〇三年十一月三日で次のように述べています。
 まず、国連憲章は歴史的に見れば革命的な文書であり、それまでの国際法の考え方、力で世界を分割する大国の論理を、紛争の平和的解決を目指す自由な人民の世界の論理に取って代える必要性を宣言したというのです。その上でベイユ氏は、この点では日本はこの国際法に則した憲法を持っていることを世界に誇ることができるとして、重要なことは、日本が時代錯誤に陥るのではなく、世界じゅうが日本のモデルに従うように日々闘うことです。日本の憲法は他国に対して一つの模範なのであり、それを放棄することは他国に対して犯罪的なことだと述べているのです。
 私は、憲法九条の世界史的到達点、世界政治の上での重要な価値にかんがみれば、日本国民がこの憲法を守り生かすことこそ平和な二十一世紀への最大の貢献であると確信します。
 また、環境権やプライバシー権を明記していないなど、新しい問題に対応していないことを理由に改憲しようとする主張がありますが、憲法は国民の経済生活上の権利を含む、世界でも先駆的な基本的人権の規定を持っており、それを基礎とすれば、環境やプライバシーの問題も十分対応できます。こうしたことを改憲の入口として利用することには強く反対します。
 なお、十一月十七日、当委員会にお呼びしたお二人の参考人は、プライバシーの権利は憲法十三条に含まれている、環境権は憲法に条文として書き込むことになじまないし、環境保護のために法的な措置を早急に行うべきであり、この点で改憲の必要はないということが共通した意見であったことが印象的でした。
 第二は、憲法と現実政治の乖離です。
 平和も人権も今の憲法を変えなければ解決できないものは一つもありません。九条と現実政治の乖離については、自衛隊の現実に合わせて九条を取り払う方向での解決ではなく、世界史的にも先駆的な意義を持つ九条の完全実施に向けて、憲法違反の現実を改革していくことこそ政治の責任であると考えています。
 人道復興支援などを口実にした自衛隊のイラク派遣は直ちに中止すべきです。主要国が反対し軍隊の派遣も行わず、さらにオランダも来年三月には撤退すると通告し、アメリカ追随の日本はこの問題で国際的にもますます孤立を深めています。イラクで激しい戦闘が続く中、小泉首相は、自衛隊がいるところが非戦闘地域などと言って、自衛隊派兵を引き続き行おうとしています。憲法上、到底認めることはできません。この上、集団的自衛権を憲法に書き込むことは、アメリカの戦争にどこまでも協力させられることになってしまうのではありませんか。戦争のできる普通の国になるのではなく、平和という人類の理想に向けて努力することが日本の重要な国際貢献だと思います。
 二十五条以下の生存権規定についても、生活保護始め福祉の切下げによって、健康で文化的な最低限度の生活の保障は守られていないこともるる指摘してきました。この憲法と実態の乖離を埋めることこそが政治の責任です。
 自民党憲法改正草案大綱は、国民が社会保障その他の社会的費用を負担する責務を有するものとするとしていますが、憲法は権力者に対して手を縛るものであり、国民に責務を課すものではありません。自由権でいえば、政府の国民の自由を侵す行為を厳しく禁じることであります。社会権でいえば、政府に対して健康で文化的な生活を営む権利を実現する義務を課しているのです。社会保障負担の義務を憲法に規定すれば、国民はかつての朝日裁判や最近の無年金者裁判のような訴訟すら制約を加えることになりかねません。何のための憲法でしょうか。世界的にも先進的な到達点に立つ日本国憲法を骨抜きにしてしまうようなことは許されるべきではありません。
 また、男女平等の観点からいえば、自民党案のたたき台の家庭の保護は性的役割分担を押し付け、進み始めた女性の政治参加、政策決定の場への進出に障害を持ち込むことになり、障害物を持ち込むことになり、国連や世界の各国の動向にも反する時代錯誤だと思います。憲法を改正して憲法の現実の乖離を固定するのではなく、憲法の理想に近づける努力を行うべきではありませんか。
 第三は、改憲はだれの要求かという問題です。
 改憲論として、アメリカから押し付けられた憲法、すなわち制定経過を根拠にする見解が根強くあります。しかし、当時の国民は日本国憲法が自分たちの意思に反して押し付けられたものと感じていたでしょうか。かつて吉田首相が「回想十年」で、マッカーサー元帥から日本国憲法について日本国民は一両年に再検討をし、改正することも可能であるとの極東委員会の決定を受けた書簡を受け取ったことを明らかにしています。この文書は衆参両院議長に報告されていたこと、学会方面からは再改正試案が法律雑誌に発表されたが一般の空気は盛り上がらなかったことなどが記述されています。
 改憲論は決して国民の要求から生まれたものではないと私は考えています。それは、後世になって憲法九条が邪魔になった人々から改憲の口実として持ち出されるようになったのではないでしょうか。
 初めに強く要求してきたのは皮肉にもアメリカです。憲法施行の翌年にはその意思は明らかになっていました。ごく最近の例でいうと、二〇〇〇年十月に、米国国務副長官になる前、アーミテージ氏が中心となって作成した対日報告書は、集団的自衛権を禁じていることが両国の同盟協力を制約していると集団的自衛権行使を求めたことが日本国内の自民、財界の意向と結び付いて、相次ぐ自衛隊の海外派兵立法と改憲論が盛んに行われるようになった起動力です。
 今年二〇〇四年夏、アーミテージ国務副長官(当時)から、自民党中川国対副委員長に対して、憲法九条は日米同盟の妨げの一つになっていると述べ、日米同盟強化のためには憲法九条改正が望ましいとの考えを示しました。このことは、アーミテージ報告後も一貫した動きとなっています。内政干渉とも言える発言に対し毅然とした態度を取ることが九十九条で憲法擁護義務を課せられている国会議員の取るべき態度ではないでしょうか。
 財界からの改憲の要請、動きも活発です。
 戦争放棄の九条からも武器輸出を全面的に禁止することが当然で、国是となってきました。しかし、経団連は、武器輸出三原則の見直しを求める提言をしています。国の基本問題検討委員会では来年一月に論点整理をまとめ、提言を出すと報道では伝えられています。ミサイル防衛計画、MDを始め、防衛産業の強化をねらってのことと思われます。憲法九条が財界にとって障害物であるということなのでしょうか。私には到底この議論は認められるものではありません。
 憲法は侵略戦争の反省から戦争放棄を宣言しており、憲法九条を変えることはアジア諸国に重大な緊張感を引き起こすことは必至です。憲法問題を調査するに当たっても、歴史問題を避けて通れません。
 十一月二十二日に行われた日中首脳会談で中国の胡錦濤主席は、中日関係を進めるに当たっては、歴史をかがみとして未来に向かい、友好関係を前進させる、歴史は避けて通れない、困難は日本の指導者が靖国参拝をすることだと述べ、さらに、戦争を発動した戦犯に対しては中国人民は深く憎しみ、嫌っている、靖国神社問題を考えるとき、日本の指導者は被害国民の感情と日中友好の大局を考えるべきだと述べたと新華社通信は報じています。
 十七日に報道された自民党改憲草案に対し、同十七日に韓国国会議員七十一名が署名する「日本は二十一世紀に帝国主義の復活を夢見るのか」と題する批判の声明を発表し、改憲案が自衛隊を自衛軍に変え、海外での武力行使を可能にしていると指摘、改憲案は過去の侵略に対する痛切な反省なしに、再び日本を戦争国家化し、軍事大国の陰謀を実現するための具体的な行動だとしています。改憲によって朝鮮半島での戦争の危機が一層高まるとも指摘しています。
 侵略戦争に無反省で、隣国への配慮に欠ける発言も後を絶ちません。文部科学大臣は別府市で、歴史教科書について、極めて自虐的で、やっと最近いわゆる従軍慰安婦、強制連行といった言葉が減ってきたのは本当に良かったと述べて、歴史教科書を批判しました。何万、何十万もの人々が日本軍国主義によって拉致され、強制労働に従事させられ、慰安婦とされ、同じ軍国主義が日本の人々にも多くの不幸をもたらしている事実はしっかりと教科書に書くことは当然です。中国であれ韓国であれ、日本の侵略を受けた国々は忘れ難い痛みを持っていることを日本の子供たちが学ぶことは、隣国と平和共存していく上で不可欠です。この発言は文部大臣の資質を強く疑わせるものであると言わなくてはなりません。
 最後に、我が党としては、初めに述べましたとおり、憲法の平和的、民主的原則を擁護するという立場に立って論議と調査を行ってきました。本調査会を憲法改正、特に九条改正の足掛かりにすることは許されないと考えております。
 以上で発言を終わります。
○会長(関谷勝嗣君) 田英夫君。
○田英夫君 社民党の考え方を申し上げます。
 私どもは、現在の日本国憲法を全く変更する必要はないと考えています。特に、憲法第九条の平和主義、不戦の基本は最も大切なものであり、人類のスケールで考えて、世界に誇るべき条項だと思っております。
 特に、中心になって作られた幣原元総理の言われているとおり、原子爆弾ができた以上、人類はもう戦争をしてはならないという言葉は、これから先も日本人の一つの生きていく基本として、世界の中で動いていく基本として大切にしなければならないものだと思っています。特に、広島、長崎の体験、唯一の核兵器の悲惨な体験を持っている我が国は、この問題を世界の先頭に立って、戦争をしてはならないということの基本として考えなければならないと思います。
 その具体的な私どもの行動ですが、残念ながら現在政治の大勢は逆さまの方向に進んでいるように思いますけれども、まず日本がやるべきことは、具体的な行動として、この世の中から核兵器をなくすと、そして憲法に書いてあるとおり軍隊は持たないと、不戦の国、不戦国家ということをまず衆参両院で決議をする。その決議を受けて、総理大臣が宣言という形で、日本は不戦国家であるということを世界に向かって宣言をする。その宣言を国連総会が受け止めて、日本は不戦国家であるということを国連総会として承認をすると。こういうことを私どもは主張しています。
 これは前例のないことではないので、今、モンゴルが非核国家宣言というのをして非核国家になっております。一九九二年に大統領の名においてモンゴルは非核国家の宣言をいたしました。それから、世界各国に国連の場を通じてこのことを訴えて、六年後の一九九八年に国連総会がモンゴルは非核国家であるということを承認しております。
 日本の場合は、これを不戦国家ということで、最終的には国連総会がこれを承認すると。もちろん世界で初めてのことですけれども、これは誇るべき地位だと、こう考えるべきではないでしょうか。それは、この人類の社会から戦争というものをなくす第一歩です。
 残念ながら、人類という生物は、何千年か何万年か分かりませんけれども、戦争を続けてきました。しかし、それをすれば人類が消滅するという時代になったということを私どもは考えなければならない。今の憲法は、その意味で、幣原さんを中心に人類というスケールで人間の生き方を世界に向かって提案したすばらしいものだと思います。
 残念ながら、まだ世界の多くの国は軍隊を持ち、現にイラクで戦争がある、各地で紛争が起こっていますが、私は、小泉総理に、小泉さん、あなたは戦争というものをどういうものだと考えていますかという質問をしたことがあります。それに対して小泉総理は、それは国と国が武器を持って戦うことだというごく当たり前のことを言われました。私は、もっと簡単なことです、人間が人間を殺すことですよという答えをこちらから示したんですが、それに対しては反論も何もありませんでした。
 私は、個人のことになりますが、恐らく今、国会の中で本当に数少ない、自分自身が軍人として戦争に行って死に掛けたという体験を持っております。その戦争というものがどんなに人間にとって悲惨なものか。それは命がなくなって体の中に鉄砲玉が撃ち込まれるというだけではないのですよ。もっと精神的なものを含めて、しかも近代の戦争は、昔は戦争といえば軍人が死ぬというものでしたが、現在は、第二次世界大戦は特にひどかったようですが、軍人の死んだ数よりも一般人の死んだ数の方がはるかに多い、各国とも。
 したがって、小泉総理が靖国神社に参拝をする、被害を受けた方の中国や韓国の人からすればそれはもっとひどいことですけれども、靖国神社に参拝をすれば亡くなった方の霊を慰めることができるというそういうものではありません。靖国神社に行っても、広島、長崎で亡くなった一般の人の霊はあそこにはおりません。軍人しか祭ってない。明治維新の戊辰戦争以後、二つの例外があります。一つは沖縄のあの少女たちが祭られています。民間人です。なぜ祭ってあるのかと靖国神社に問いただしたら、これは銃を持って戦ったからだと、こういう答えです。もう一つの例外は、今、中国などがしきりに問題にしている十四人のA級戦犯。もちろん東条のような軍人もいますが、何人かの文人、シビリアンがおりますね。そういう意味で、昨日、ここ数日の間の小泉総理の言葉は非常に気になります。
 さっき吉川さんが言われたように、チリのAPECで中国の胡錦濤国家主席と会われたり、最近はラオスで中国の温家宝首相と会われた。同じ言葉を言っておられますが、靖国神社に参拝するのは、心ならずも戦争で亡くなった方を慰霊する、それと不戦のための、不戦の誓いをするためですと、こう言っておられますね。二度とも同じ言葉を言っておられます。靖国神社に参拝をすると不戦の誓いになりますかね。
 これは、私はじかに小泉総理にこの場に来ていただいてお聞きしたいなと思っているんですが、靖国神社に行って不戦の誓いをする、総理が不戦の誓いをしておられるなら、憲法をどうして改正する必要があるんですか。憲法第九条は正に不戦の誓いです。第一項でそのことがずばり書いてある、そしてそのために軍隊は持たないと書いてある。これをそのまま大事にしたらいいじゃないですか。
 私どもは、あと余り多くて挙げる時間がありませんけれども、この憲法九条を守るために何をしたらいいか。さっき一つだけ申し上げました、不戦国家宣言を国連で承認してもらうと。同時に、幣原さんが指摘しているように、この根源は核兵器です、広島、長崎の核兵器ですから、この世界から核兵器を根絶する、なくしてしまうために、日本は国を挙げて取り組むべきだと、世界の国々に呼び掛けて率先をしてこれをやるべきだと。
 既に、確かに、非核地帯条約を結んでいる。一九六五年に中南米非核地帯条約ができました。そして、今や南半球は全部、南極大陸を含めて核のない地域になりました。残念ながら、私どもの北半球はありません。中国、ロシアは持っていますし、朝鮮半島、これは南北で一九九二年に、対立しながらもこの半島は非核地帯にしようと合意しているんです。モンゴルは、先ほど申し上げたとおり、非核国家宣言をしている。日本は非核三原則を持っています。この四つの国は今すぐにでも非核地帯になれるんじゃないでしょうか。こういう問題を、憲法を改正するよりも、こういう問題を先駆けて推進する役割を日本はやるべきじゃないでしょうか。
 ニュージーランドのことも申し上げようと思いましたが、時間がありませんから、簡単に言えば、ニュージーランドで二十年ほど前、ロンギ首相は、核を積んだアメリカの軍艦や飛行機の着陸、入港を禁ずる法律を作りました。日本と同じように、日本の安保条約と同じように、ニュージーランドはオーストラリアとともにANZUS条約を結んで、一種の安全保障条約をアメリカと結んでいるにもかかわらず、こういうことをあえてやりました。
 なぜこういうことができるのか。私はニュージーランドにすぐ行きました。それで分かったことは、全く数人の女性が始めた核のない家という小さなシールを張る市民運動です。それが全国に広がって、本当に家の入口に、玄関に張ってあります。一つの道路が全部張った家になると、その通りは非核ロードになる。ちょうど交通標識と同じような大きさの同じデザインのものが道に立ちます。その町の道路が全部非核道路になると、その町は非核シティーになります。
 その運動を始めた女性は、私が行ったときにはオークランドの市長でしたが、今、もうニュージーランドは全部のシティーが非核シティーになりましたから、もう非核国家です、こう言っていましたが。したがって、ロンギ首相は労働党ですけれども、反対党の国民党が政権を取ってもこのやり方は全く変わらず、今日に至っています。
 日本が本当はやらなければならなかったことをニュージーランドが今やっています。これからでも遅くはないと思います。
 以上です。
○会長(関谷勝嗣君) 以上で憲法に関する各会派の検討状況の報告は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時三十二分散会

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