第161回国会 参議院憲法調査会二院制と参議院の在り方に関する小委員会 第2号


平成十六年十一月十九日(金曜日)
   午後一時開会
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   小委員の異動
 十一月九日
    辞任          松井 孝治君
 十一月十日
    補欠選任        松井 孝治君
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  出席者は左のとおり。
    小委員長        舛添 要一君
    小委員
                愛知 治郎君
                荒井 正吾君
                武見 敬三君
                藤野 公孝君
                森元 恒雄君
                山下 英利君
                郡司  彰君
                鈴木  寛君
                富岡由紀夫君
                松井 孝治君
                山下 栄一君
                吉川 春子君
                田  英夫君
    憲法調査会会長     関谷 勝嗣君
    憲法調査会会長代理   簗瀬  進君
   事務局側
       憲法調査会事務
       局長       桐山 正敏君
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  本日の会議に付した案件
○二院制と参議院の在り方に関する件
 (参議院と衆議院の役割分担)
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○小委員長(舛添要一君) ただいまから憲法調査会二院制と参議院の在り方に関する小委員会を開会いたします。
 二院制と参議院の在り方に関する件を議題といたします。
 本日は、参議院と衆議院の役割分担について、二時間程度、小委員相互間の意見交換を行います。
 まず初めに、各会派を一巡して、それぞれ十分程度で御意見をお述べいただきたいと存じます。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、御意見のある方は順次発言願います。
 荒井正吾君。
○荒井正吾君 自由民主党の荒井正吾でございます。
 限られた時間でございますが、発言をさしていただきます。
 憲法調査会小委員長の、参議院の在り方について、論点別に発言さしていただきたいと思います。
 論点として考えられますのは、一院制か二院制かという点。二番目に、二院制とすれば衆参の役割分担はどうなのか、参議院が独自の機能を持つべき分野はどこかと。それから三番目に、国会の意思決定の在り方について、両院の意思の調整をどのようにすれば効率性を達成できるのか。四番目に、その第二院、参議院と政党との関係はいかなるものか。第五番目に、院の構成、その役割分担を反映した院の構成、選挙制度はいかなるものかと。いろいろ分け方あると思いますが、そのような論点として考えてきております。その論点についての意見を述べさしていただきます。
 まず、一院制か二院制かということですが、これは二か一に決めなきゃいけないことだと思います。何ゆえかというよりも、一か二に決めないと次の議論が出ないと。それで、今の状況をやれば、やはり二院制を前提とすべきだと。一院制は否定して考えるべきじゃないかというふうに思います。
 理由は幾つかありますが、二院制をより効率的に機能すべきだと。二院制だから国家の統治機能に害を及ぼしているということではないと。それから、一院制にするということがよしんばベターであっても、その過程のコストというのは十分考えなければいけないというふうに思います。
 二院制の元になった身分制に基づく二元的な国家の内容、あるいは連邦制ということから地方の立場を国民、国家の中で二元的に反映するということは今なくなってきているように思いますが、民主主義、自由主義、市場経済主義、法の支配、多元主義というようなものが普遍的原理になっている中で、政治が賢明に迅速な効率的な判断をしてそれをリサイクルするという機能は、二院制でどのような役割分担を持つべきかというのが重要な論点になるように思います。
 それで、二番目の二院の役割分担でございますが、同じことを補完的に垂直的に分担する、重複的、垂直的に分担するのから、その分担をずらして、より水平的に分担する、あるいは時差的に分担するというふうに考えたらどうかと思います。重複する部分はどのように調整するかという機能を考えるべきじゃないかというふうに思います。
 それで、参議院が独自性を発揮すべき分野は、いろいろな考え方ありますし、自民党の中でもいろいろありますが、私は独自性を発揮するとすればということで発言さしていただきますが、決算は参議院が行う、予算は衆議院が行う。具体的には、参議院で議決された内容は次の予算を拘束する、覊束するというのが一つの考えでいいんじゃないかと思っております。組織的には、会計検査院は国会に帰属するのではなく参議院に帰属するという方がいいんじゃないかと思っております。
 それから、国会同意人事は参議院同意人事とする。両院の同意というのも調整が難しい。参議院の同意人事とすべき。それからまた、これは運営の話になりますが、参議院で人事のヒアリングを実施してもいいんじゃないかと思いますが、ただ、今の国会同意人事全部をヒアリングを実施するというのも煩瑣であると思いますので、絞りを掛けて実施するという運営の課題もあろうかと思います。
 一方、衆議院の分野と分けるには、予算とか予算関連法は衆で成立するというふうに割り切ってもいいんじゃないかというふうに思います。非予算関連は参議院先議というようなやり方もあるんじゃないかと思います。国際関係で条約、場合によっては大使人事は参議院で承認する、予算に関連するものは衆も含むということも考えられるかと思います。
 それから、そういたしますと、参議院で法案審議を効率化するということが必要であります。同じ数の法案を違う人数で処理する、同じ時間を掛けるというのはどうしても物理的に無理が生じるわけでございますので、例えば衆議院で、先ほど予算関連は衆止まりというか、衆でほとんどやるということのほかに、衆議院で第一野党が賛成した、あるいは三分の二以上が賛成したようなものは審議を省略する、簡略化するというふうに参議院で割り切ってもいいんじゃないかと思います。
 その反面、国政調査を充実させるということも必要じゃないかと思います。常任委員会で基本的テーマを継続的に審議するとか、基本法は参議院で先議すると、継続的に審議するとかというようなことがあろうかと思います。
 それから、審議ルールでございますが、カメラが入ったり、IT化したときに、全部定足数、審議の定足数を守らないかぬのかどうかと。アメリカのように、十五分間で議長が声を掛けたら来れる場所にいることによって、その席に座っていなくてもいいと、必要な人だけ席に座るというような審議の時間拘束、定足数の在り方も見直す対象に入るんじゃないかと思います。
 別の項目ですが、裁判官訴追、弾劾裁判、あるいは考えられる憲法裁判に係る国会権限は参議院に帰属するということも考えられると思います。
 一方、内閣と距離を置くという関連で、内閣総理大臣の指名は参議院を省くということもあろうかと思います。
 また、地方公共団体を、連邦制じゃありませんので代表するということはありませんが、地方公共団体の長、知事とか市町村長との協議、意見交換の機能を参議院に創設するという考えもあろうかと思います。
 また、内閣総理大臣指名しない一方、参議院は内閣に入らない、閣僚、政務官に入らない。しかし、閣僚の人事承認権は参議院が持つという、大変ドラスチックなあれかと思いますが、そのような独自の案も考えられると思います。
 三番目に、両院の意思決定の調整でございますが、そのように法案審議を分担すると、立法機能の分化ということになりますので、意思不統一の確率は低下すると思いますが、衆議院で接戦法案あるいは長期的な視野に入れた法案は大変見込みが難しいので、投票が分かれるかもしれませんが、それを再審議、参議院にして、否決した場合の再議決要件は、現在のような三分の二ではなしに過半数でいいとか、両院協議会のような調整の場で条項修正をして、その部分のみ単独過半数で衆議院で可決否決をしてもらうとか、その集約した分担があろうかと思います。
 そういたしますと、院の調整機能を増すことによって法案の各政党の事前審査の必要性を軽減する、法案は国会で審議し修正するという機能を高める必要があろうかと思います。
 それから、法案の審議の内容でございますが、衆は短期迅速な決定をする。やはり、選挙がありまして、短期的視点で現世代の利益を反映し温存することになりがちでございますが、参議院は長期的視点の国会審議、短期的視点の立法をチェックする、世代にまたがる案件については次世代の代表として権限を行使するという機能も意識すればいいんじゃないかと思います。意思決定調整の必要性を軽減して、必要な場合の仕組みを整備するということが必要ではないかと思います。
 四番目に、政党との関係ですが、参議院、例えば自民党の最大のライバルは政党本部であります。財政再建は党主導では難しいように思います。増税というふうなことは、常に選挙が争点、意識されて争点になりますので、政党間で一方賛成、一方反対では、なかなか財政再建がいけない。院での議論決定の仕組みが必要じゃないか。財政再建は国会が機能しないと財政再建ができないという各国の経験もございます。
 それから二番目に、党議拘束でございますが、立法機能を分担すると、例えば党の、これは各党で違うと思いますが、事前審査、政調の部会人事等は、例えば非予算であれば、その部会は、非予算部会は参議院が主導的にやると、予算関連部会は衆議院が主導的にやるというふうなこともあろうかと思います。
 総じて言いますと、参議院の役割を独自にすると、国会というところの機能を重視、中心にするということでございますので、内閣、政党から距離を置くということになろうかと思います。ちょっと寂しく感じられる方もおられるかもしれませんが、そのような方向もあろうかと思います。
 最後になりますが、参議院の構成、選挙制については、参議院の役割を反映したものと、それから参議院の選挙制度を考えると、衆議院の選挙制度と同時に検討すべきだという意見が出ております。自民党でも検討しておりますが、この選挙制度の意見は多岐にわたっております。今日紹介できるほどなかなか整理されたものは出ておりませんが、選挙制度、院の構成、役割分担について、総じて立派な政治家を育てる機能を参議院はよく考えるべきではないかと思います。
 最後になりますが、今の再度の発言ですが、英文名はやはり評議員と訳すしかないように思いますので、役割分担あるいは将来志向にふさわしい英文名をこの際考えていただきたいというふうに思います。
 以上でございます。
○小委員長(舛添要一君) 松井孝治君。
○松井孝治君 民主党の松井孝治でございます。
 今、荒井委員の御発言に私も共感するところも多々ございます。私としての、まず二院制についての是非については私も同じような見解でございまして、専門家の御意見もありましたが、やはり一億人以上の有権者の多様な意思を反映するのに二院制というのは私も望ましいと思っております。ただ、じゃ、現実の参議院がそれをきちんとした一億人以上の有権者の意思を反映しているかというと、およそそう思えないわけでありまして、これだけ政治や行政にスピードが要求されているわけですから、熟慮の院ということで議論を垂直的に繰り返していては意味がない。その意味では、今の参議院は機能の在り方をやはり水平的に衆議院と分担していくべきであろうと考えております。
 じゃ、具体的にどういう機能を強化すべきかということについて申し述べたいと思いますが、一つは、よく言われておりますように、チェック機能でございます。
 衆議院の、まあどうしても政治的な闘争が前面に出る、あるいは解散がいつか分からないという中で、制度、政策の根っこに踏み込んだ議論がやっぱり衆議院ではなかなか行いにくい。それに対して参議院は、任期も長く安定しておりますので、より衆議院に比べて、どこが変わったかということではなくて、その制度の根っこまで立ち入った議論を行うべきではないかと思っております。その意味で、正に政策の評価を行う、あるいはそれがどう実行されているかということをチェックを行う、あるいは今、荒井委員からもありましたけれども、いろんな人事的なことまで含めてそういうチェックを行うということにより機能を強めてはどうかというふうに考えております。
 議論の仕方も、これは会期の在り方等にもかかわりますけれども、もっと法律も逐条的な審査を行うとか、あるいは政治日程と独立に委員間で具体的な制度、政策についての突っ込んだ意見交換を行うというようなことも必要ではないかと思います。
 もう一つ、今の日本において見逃されている点は国と地方の関係でありまして、正に三位一体の改革の議論が行われているわけでありますが、国と地方の権限調整、財源調整、今ほとんど霞が関がこの実態を握っていると。これはやはり、民主的コントロールに服させるためにも、霞が関の一部局が財政統制をしているというようなことではなくて、国と地方あるいは地方間の水平的な財政調整機能というのは、これは国会が担うべきであると。そのときに、やはりこの問題についても非常に政治的な対立の中で議論をするというよりは、参議院、これはドイツの参議院なんかがそうですけれども、参議院で地域間、地方間の調整、財政調整などを行うという仕組みを持つべきではないかというふうに考えております。
 さらに、参議院が果たすべき機能としては、憲法解釈というのは非常に重要な機能であろうと思います。最高裁判所がどうしても統治行為に踏み込んでいかないという中で、国会が憲法解釈の議論をほとんどしませんので、結果的には内閣法制局が行う憲法解釈というのが非常に絶対的な地位を占めているというのは、どう見ても不健全でございます。内閣は内閣として憲法解釈機関を持つのは自由でありますが、本来であれば国会が自らの憲法解釈についての見解を示すべきでありまして、これも正に、しかし反面、政治的にそれが使われるということになってくるとこれは危険なわけでありまして、国会で憲法解釈の権限を持つとすれば、それは参議院がより大きな役割を恒常的に担っていくべきではないかと思います。
 さらに、必要なことは、これも今の法案ほとんどが閣法という形で内閣から提案されているわけですが、議員立法を行う、より活発に行うという意味での参議院の機能は非常に重要だと思います。現に、参議院の調査会がこれ定期的に議員立法を生み出すベースとなってきたことは、私は率直に評価をすべきではないかと。そういう意味で、中長期的な課題、任期の長さ、安定性から見ても、中長期的な課題について、閣僚を交えた議論をせずとも、参議院の各会派間である意味では会派の利益を超えて議論をすることによって一つの見識を示していく、それは基本法的なものが中心かもしれませんが、それを参議院で定期的に生み出すという努力は、これは地道ではありますけれども、非常に私は重要なものなのではないかなと思っております。したがいまして、これは先ほど申し上げました審議の在り方にもよりますけれども、ある意味では行政府と一線を画して、参議院で会派を超えて調査会的活動で議員立法をより強めていくということが非常に大事だと思っております。
 ただ問題は、そのときのリソース、人的資源を、どうやってそういう政策議論に必要な人的リソースを確保するかという問題でございまして、先ほど会計検査院の話が荒井委員からございましたけれども、私は、その会計検査院の在り方も含めて、チェックの院として会計検査院的リソースが必要である。同時に、霞が関と独立して立法府が本当に必要な立法活動を行うための政策スタッフをこの際参議院で抜本的に充実強化をし、先ほど申し上げましたような憲法解釈の議論もするということになってくると、これは日常的にいわゆる、これは憲法を改正しなくてもできる問題だと私は思いますけれども、通年国会的に、ただ、国会法の規定の会期不継続とか、あるいは衆議院と参議院が同一会期であるかどうかというのは、これは検討しなければいけないと思いますけれども、会期も基本的に通年国会的に、政策機能を抜本的に充実して、チェックの院として参議院が立法機能をより広範に果たすべきではないかと思っております。
 その意味で、ある意味では執行権からは参議院は一線を引くべきではないかという先ほどの荒井委員の御意見にも私は賛成でありまして、首班指名あるいは閣僚を参議院議員から出すかどうかということについて一線を引く、そして政争からは一線を引く。その代わり、チェック院として恒常的にある種通年国会的に活動をする、法律の中身についてももっともっと衆議院ではできないような緻密な逐条審査も含めて議論をする、そういう院としての参議院が構築できるかどうかが今後の言わば政と官の関係を、きちんとした関係を確立するためにも私は非常に重要な点ではないかと思っております。
 その意味でも、やはり我々参議院は霞が関に依存した立法活動をしたんでは何の意味もありませんから、繰り返しになりますが、調査機能あるいは行政評価機能、決算機能、さらには憲法解釈機能、そういったことがきちんと果たされるような充実したスタッフを持ち、やはり権力の院ではなく、権威の院としての機能を十全に発揮すべく、これは党派を超えて議論を行うべきだと考えております。
 以上でございます。
○小委員長(舛添要一君) 山下栄一君。
○山下栄一君 今の荒井、松井両議員からお話あったこと、大分重なる部分がありますし、非常に共感しながらお聞きしておりました。
 唯一の立法機関は二つの合議体で構成すると、こういうふうに憲法になっております。国会の意思の形成に二つの院が参加する制度と。
 これ、憲法の昭和二十二年当時の制定経緯を考えましても、元々GHQの方は一院制を主張し、それに対して当時の日本側は二院制を主張しておったと、主張の違いがあったと。その二院制が主張された背景は、選挙で直接選ばれる衆議院に対して、直接選ばれるという観点ではない、ある意味じゃ旧来の部分とか保守的な部分、そういう役割をもう一つの院に果たさせたいというふうな背景があったのかも分かりませんけれども、いずれにしても日本側の主張がこの二院制という背景になっているということがあるわけですけれども、いずれにしても、組織やまた役割、機能が、また選挙制度も似たようなものでは両院の意義が薄れるということから、参議院の独自性が特に最近強く叫ばれておるというふうに考えております。
 特に参議院の果たす役割としては、既にお話がございましたけれども、やはり抑制、均衡、また補完、そして政治的安定性、異なる民意の反映ということが考えられるわけですけれども、まとめて言えば、やっぱり良識の府、再考の府としての役割をはっきりさせるという方向で改革をすべきだというふうに考えております。
 参議院独自の役割、役割分担の観点ですけれども、まずはやはり今もう既にお話ございますように、行政監視機能の役割を参議院が果たしていく、そういう観点から決算審査重視と。
 また、長期的展望に立った、という観点からは基本法の参議院の先議権。
 また、三番目には、国会同意人事の、参議院の専権事項にするか優先にするか、いずれにしても国会同意人事は参議院ということ。これも行政監視の観点でございます。
 また、中長期的な政策の調査研究、調査会の充実、これは既に行われておりまして、更に強化していくと。議員立法が可能な、そういう実績もございますけれども、そういう役割をどんどん果たしていくべきだと。
 法案の再可決の要件、これについても、再議決権の一定期間行使停止の上でもう少しハードルを下げて過半数で足りるというふうにする、こういうことで参議院のこの独自の役割を果たしていく。
 選挙制度につきましても、既にこれは国会、公職選挙法の観点で、法律のマターですけれども、議員選出の工夫がいろいろございますけれども、任期が長い、また定数の面、そして三年ごとの半数改選、これは憲法事項ですけれども、被選挙権三十歳、こういうことは引き続き大事にして、この独自の役割を果たしやすい、そういう選出の工夫は引き続きやはりやっていくべきだと。
 党議拘束については、余り党としては具体的な提案しておりませんけれども、やはりこの脱政党、また政権そのものから距離を置く、そういう観点が大変重要であると。閣僚を出さない、また首相の指名権はなくすというふうなことから、党議拘束をできるだけ弱めていく、工夫していく、見直していくという。独自性の障害になっているのが、このやっぱり党議拘束の面があると思いますので、そういう観点からの取組は極めて大事だというふうに考えております。
 調査会の機能を強める、また決算審査を強化するという意味では、先ほど松井議員おっしゃいましたように、参議院の調査室は非常に、衆議院と違いまして現在も非常に活躍されておるわけですけれども、できるだけ役所との交流はしない方向で、また参議院のこの調査室スタッフの充実、これは極めて重要な観点だというふうに考えております。
 党の論点整理の観点から今、私申し上げましたけれども、非常にお話聞きながら、参議院のこの独自性を発揮していくという観点から非常に各会派、各党一致する部分が大変多いのではないかということから、これをどんどんアピールしていき、そしてそういう観点からまとめていくという、この小委員会ですね。そういう機が熟しつつあるなということを非常に感じております。
 以上でございます。
○小委員長(舛添要一君) 吉川春子君。
○吉川春子君 日本国憲法について審議をしていた帝国議会貴族院帝国憲法改正特別委員会で、金森国務大臣は、二院制の意義について次のように述べています。
 二院制というものは、一院専制というような傾き、又は議会の審議が慎重を欠くうらみがあるということ、及び世論が何を目当てに集結されるかということにつき、判断を的確ならしめるというような三点は二院制政治の美点として挙げられると。単純な一院制の多数決によって方針を決めることは幾つかの欠点がある。一院だけだと自己の力を信頼するに急で無理押しをする危険もある。十分に審議を尽くさないうらみもある。要約すれば、専横に陥る危険があり、議事が周到に合理的に判断される点において幾分不十分な点がある。世論は問題を前に置いて漸次集積してくるので、新しい問題が国民の十分了知されないうちに国の問題となって、国論が安定していくためには相当な時間を有する。各方面において議論されている間に、国民の世論もよく熟成し、この国会の政治を中心としつつ、うまく取り入れられていく点があるとされています。
 私はこの指摘に同感し、二院制は国民の声を政治に反映していく点で欠かせないと考えています。国会は、異なる時期と異なった選挙制度で選挙された議員を持つ衆参両院での審議を通じて、国民の意思をより正確に反映できることにあります。
 かつて参議院は、消費税廃止法、被爆者援護法を可決しています。これは、私は参議院の存在意義を発揮したものと考えています。また、時間を掛けて世論が熟成していくという例として、私の在職した以降の点ですけれども、八九年の消費税導入、九三年の自衛隊海外派遣のPKO法、九五年のいわゆる政治改革での小選挙区導入があります。この法案は、政府の提出当初から重大法案としての認識は一般にあったものの、衆議院段階ではさしたる混乱もなく通過したと記憶しています。
 しかし、時間を追って世論が熟成し、参議院の審議段階では世論はかなり高まり、採決時にはPKO法は数日間の徹夜の牛歩が行われ、また小選挙区法案は参議院では否決されました。一院のみであったらこうした世論の熟成は経験せずに終わったでしょう。
 このことをもって、だから参議院の権限を弱くしておいた方がいいと考えるならば、民主主義とは逆方向をたどらざるを得なくなり、その代償は計り知れない大きなマイナスになることでしょう。二院制は、主権在民の憲法の基本原則から見て欠くべからざるものだと言えます。
 以上の点から、参議院の権限を弱くしようという意見には賛成できません。逆に、衆議院の権限を今より強化することは、議院内閣制を取る我が憲法において行政権の更なる強化につながります。
 最近、マスコミ報道された自民党改憲案大綱原案には、国民からひとしく選挙されたという現行憲法を改正して、参議院に推薦議員を導入するというくだりがありますけれども、これは参議院の弱体につながります。行政権をチェックし、衆議院とのチェック・アンド・バランスの機能は、国民の直接選挙というこの足場を置くことによって十分果たすことができるからです。この点でいえば、参議院の議員定数の削減も、私たちは二百五十二から十議席削減したことについても反対したわけです。
 最近の二大政党制と参議院の在り方について述べます。
 参議院の選挙制度について、小林教授はさきの当委員会で、都道府県ごとの比例代表制を提案されました。その中で、民意の反映という点を強調されました。非拘束名簿方式との組合せという点について、私と意見が違いまして検討の余地はあると思いますけれども、比例代表制度そのものは民意の反映という点で最も優れた選挙制度だ、そういう提案をされたことに私は注目をいたしました。同時に、民意の反映という点では、二大政党制は国民の多様な民意を二つに絞るという点で逆行する懸念を持ちます。
 小選挙区に偏りを持つ選挙制度で行われた総選挙、この夏の参議院選挙でいわゆる二大政党制が一挙に進みましたけれども、複雑な現代にあって、国民も多様な生き方を選択している中で、政党だけが二つに絞られていくということを誘導するような選挙制度は民主主義という点からふさわしいことなのかどうか。むしろ参議院にこそ多様な民意、すなわち、政党の議席を保障し、議論に参加させていく、そういった選挙制度や院の運営のルールが望ましいのではないでしょうか。
 政党政治について、参議院が政党化していくことについて批判的な意見もありますけれども、私はそうは思いません。
 かつて吉田茂首相は、二院制を置いたゆえんは、政党化を防ぐというのではなくて、国政を慎重に審議する時間を十分に与える、たとえ衆議院において可決した法律案といえども、更に時間を置いて参議院で慎重審議するというところに参議院の妙味があるのでありますと、既に民主政治であり、また政党政治を取った以上、参議院のみが政党化を防ぐということはできないと述べています。
 多様な民意、多様な政党の意見を議席に反映し、いかに反映していくかということが求められていくと思います。とりわけ、首班指名など憲法上の優位が認められている衆議院に対して、政権と一定の距離を保ち得る参議院のより重要な責務であるとも言えると思います。
 以上の点から、二院制の下でより参議院の機能を発揮できるように、選挙制度、運営ルールを用いていくことが求められており、憲法改正とは別次元の問題だと考えています。憲法ができている、その参議院制度を積極的に機能させていく努力が求められていると考えます。
 最後に、参議院の改革については近々発足するとされております各派代表者会議等で検討されると聞いていますので、私たちの党は、日本国憲法を前提として、より民主的な参議院にするために積極的にこの場でも提案していきたいと考えています。
 以上です。
○小委員長(舛添要一君) 田英夫君。
○田英夫君 各党の御意見を伺っていて、この二院制の問題については基本的に余り違いがないんじゃないかという印象を持っておりますが、その中で特に申し上げたいのは、衆議院というのはやはり政権を、各党が政権を目指して争うといいますか、そういう場であると思います。これに対して参議院というのはそうではないということから、具体的にいろいろ考えられる。例えば、大臣を出さない、行政府にかかわらないということも一つの考え方として出てくると思います。それから、衆議院の暴走と言ってはしかられるでしょうが、をチェックすると。つまりチェック機能、衆議院だけではなくて、行政府とつながっている衆議院を含めて、それに対してチェック機能を発揮するということで幾つかまた役割が考えられると思います。
 そういう中で一つ具体的に申し上げたいのは、既にありますけれども、調査会ですね。これ今まで三つしか置かないことになっていて、国際問題調査会はずっと続いておりますが、そのほか幾つか替わっておりますね。
 そういうことも考えながら、私は産業・資源エネルギー調査会長というのをいたしましたけれども、非常に勉強になりました。今、中国とのガス田の問題など出てきても、すぐキャッチできるという感じがしますし、最近は調査会によっては、さっきもお話ありました議員立法が調査会の中から出てくるということも起こっているようでありますが。
 かつて私は、国際問題調査会のときに、ODA基本法というのをその調査会で議員立法で作ろうではないかということで小委員会を作って、与野党含めて合意に近づいていて、最後に残念ながら提出するに至らなかったという経緯がありました。小委員長は自民党の方で、非常に積極的にまとめようとしていただいたことを記憶しております。
 こういう制度は、やはりもっと数を増やして、調査会の数を増やして対応できるようにする。しかも、それは今までは、残念ながら調査会としての報告書を議長に提出するというところでとどまっておりましたけれども、それをもっと世の中に公開をして、行政府に対しても提出をして、行政府から回答を出させるというところまでやりませんと、大変惜しいことだと思います。議論をずっと詰めていて、まあ両論併記になるところもあってもいいから、そういうことをやった方がいいのではないかと思います。
 それから、行政府をチェックするという意味から、先ほどもどなたかから会計検査院との結び付きを言われました。決算重視ということはもう今や具体的に行われている状況になってきましたけれども、以前は決算が三年ぐらい遅れていたという時代がありましたから、それからすると進歩をしましたけれども、会計検査院と参議院の結び付きというのをもっと具体的に考えられないかなと。
 それからもう一つは、同じようなあれで、公正取引委員会というのは、今、最近は特に役割を果たしているように思いますけれども、それでも参議院ともっとこう関係を深めるというようなことはできないか。行政をチェックするという意味で言うと、そこのところも具体的に考えられないかということがあります。
 それから、選挙制度のことは別の機会に申し上げましたから重ねては言いませんけれども、一番問題は、やはり選挙制度、参議院の選挙制度だと思います。
 特に、現状は最も悪い状態になっているんじゃないか。やはり、過度の政党化は避けなければいけないし、それから六年間という任期で一つの問題に十分取り組んでいけるというこの長所をどう生かすのかという。選挙でやるということは基本になるわけですから、選挙制度というのをもう少し、お互いに自分たちで考えるんじゃなくて、もっと第三者機関を設置してそこの意見を出してもらって決めていかないと、自分たちで自分たちの選挙制度を決めていくということだけでやりますと、どうしても大きな政党に有利になるのは当たり前でありますし、この問題も今後の課題として提起しておきたいと思います。
 ありがとうございました。
○小委員長(舛添要一君) 以上で各会派一巡いたしましたので、これより自由に意見交換を行います。
 小委員の一回の発言時間は五分程度でお願いいたします。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、御意見のある方は挙手をお願いいたします。
 愛知治郎君。
○愛知治郎君 自民党の愛知治郎でございます。
 各委員の先生方の今お話を聞いて、なるほど非常に勉強になりまして、いろんな考え方ございますし、これから取り組んでいかなければいけない課題というのも大変参考になりました。
 私自身は、私からはいろんな意見、もちろんあるべき姿という話はされていますけれども、少なくとも現行憲法が衆参の役割どのように考えてその規定を置いているか、その原則論、もう恐縮ですが、改めて私の考えを述べさせていただきたいというふうに思います。
 端的に言いまして、衆議院、参議院、大きな違い、解散があるかないかという話がございます。任期の問題もございます。それから、現在これは憲法的にはないんですか、年齢の問題もございますけれども、一番大きな解散、民意を問うという形なんですが、先ほど参議院も民意をより充実して問うべきだという話あったと思うんですが、私自身は、少なくとも現行憲法上はそれは逆であろうというふうに思います。
 といいますのも、衆議院は解散をして民意を問う。より民意を反映する形、直接民意が反映されるような形を想定している。ただ、これは人類の歴史でもそうですけれども、直接民主制というのは結構間違いを犯す、その時事的な問題で冷静に判断ができない可能性が多いので、そのためのチェック機能として参議院、これは民意を直接問うというよりかは、長期にわたる任期を持った議員、人物を選出して、その方々、専門的なその良識に任せてチェックをするというのが基本的な原則だと私自身は考えております。
 現実もそうですけれども、解散というものも一つですし、選挙区制度が変わった、選挙制度が変わったという部分もありますけれども、マニフェスト、政権選択だということで、直接その具体的な政策論争の場になっているのが衆議院であり、参議院はやはり違うんではないか。長期的な視点で、それからその時事的な問題、具体的な政策だけではなくて、やはり理念的なもの、それからどういった人物を選出していくかというのが重要になっていくんじゃないかというふうに思います。
 それで、最後になるんですが、このような憲法が想定する制度、人類の歴史上、いろんな経過を踏まえた上での制度なんですが、それが実行されているか、現実に機能しているか否かがやはり一番重要であって、私自身は、まず現行憲法の想定する基本的な考え方を実現させるためにどのような補完的な機能というか制度を整備していくかということが一番重要だと思います。それが可能でないならば、また改めて憲法を改正して、どのような在り方にすべきかということも議論すべきだというふうに思います。
 以上です。
○小委員長(舛添要一君) 鈴木寛君。
○鈴木寛君 私も、本日御発言のございました松井議員の意見に基本的に賛成するわけでありますが、補足的に御意見を申し上げたいと思います。
 私も、実態上官僚内閣制であります我が国が、真の意味で議院内閣制になるというために参議院が果たすべき役割、極めて大きい、特に行政に対するチェック機能という点で大きいということを御主張申し上げたいと思います。
 松井議員は、特に予算の執行に関する決算機能の充実ということをお話しになりましたが、それに加えまして私が申し上げたいのは、正に国会の権能は予算と法律をこれ作るということがその権能でございます。で、私が申し上げたいのは、この予算と並び非常に重要なこの法律、しかも法律の施行という観点についてでございます。
 結局、日本の国の官僚内閣制をなかなか修正できない理由は、法施行に関する政令、省令の決定というものが完全に行政府にその権限があって、そして我々立法府がこの政令、省令について、及びその運用について事実上口を挟めないと、この点に私は大きなポイントがあるんだろうというふうに思います。明らかに、本来、政令、省令というのは法律の委任の範囲の中で定めなければいけないわけでありますが、それを逸脱した、あるいは極めてグレーな政令、省令、そしてその運用というものがなされていると。
 本来は、それは裁判所のところで行政訴訟等によって修正をされるということを憲法は想定しておるのかもしれませんが、我が国の行政訴訟は事実上具体的な行政の処分性、事件性を要求しておりますので、なかなか司法がそこに介入するというステージがかなり遅れた段階で出てまいります。
 私が申し上げたいことは、この三年間、本当にその決算委員会に従事されてこられた松井先生を始めとする目覚ましい決算委員会の充実、決算の改善ということがなされておりますが、と同時に、やはり行政監視機能と、特にこのほとんど野放しになっております政令、省令というものの在り方、あるいはその内容についてきちっと、特に参議院が率先してチェックをしていくという必ずしも事件性、処分性を伴わない前段階で政省令が事実上の法秩序、制度秩序というものを形成していくという実態にかんがみて、ここについてきちっとチェック、点検、そして更なるこの政省令が法律案の趣旨、目的を逸脱している場合にはその改正を迫る、行政府に迫るといった機能というものについて参議院のチェック機能として追加的にその重要性について付言をさせていただきたいと思います。
 当然そういうことになりますれば、会計検査院が参議院の決算機能を支援をするということと同様に、正にGAOのような行政のありようについての監視、改善といったものについての参議院の機能を支援をするスタッフの充実、あるいは権限の充実と、これは田先生がおっしゃった公正取引委員会との連携というところとも考え方としては通ずるわけでございますが、こうした点についても併せ、検討をしてはいかがかということを申し述べたいと思います。
 以上でございます。
○小委員長(舛添要一君) 松井孝治君。
○松井孝治君 今、最初に発言させていただきましたが、その後も各委員の方々の御発言で趣旨において共感するところが多いわけで、これは党派を超えて正にこういう小委員会あるいは憲法調査会で議論をして実際参議院改革協にもつないでいけるんではないかという非常に希望が見えてきた思いがしております。
 今、田委員の方から公正取引委員会、そして鈴木委員の方から政省令の問題が出ましたが、正にその公正取引委員会に代表されるような国家行政組織法三条組織、これは執行権からのある程度の中立性を確保するために三条委員会というのがあって、この三条委員会違憲説というのもあるわけでありますが、それぐらい逆に言うと執行権から中立的である、そういうものをチェックの院としての参議院に持ってくるというのは非常に私も新鮮な議論で、そういう考え方もあるんだなと思いました。
 それから、今の鈴木委員がおっしゃった政省令のチェックも含めて、これは法律のチェックもそうですが、これは私、政省令のみならず、もっとひどいものは通達で法律の趣旨をゆがめるようなものも現実にあるわけでありまして、そういうところまで含めてやっぱりチェックの院として機能していくというのは非常に重要であると思います。
 ただ、そのためには非常に膨大な労力が要りまして、具体的に政府が政省令あるいは通達、告示等まで含めていろんな行政指導をやっていることについてきちんと情報収集して、それを指摘していくという、これは参議院議員にもそういう資格、あるいは忍耐まで含めてその活動に根気が求められますし、同時に、先ほどから申し上げているように政策スタッフを充実しないと、霞が関になかなか対抗できないという思いがいたします。
 その意味で、私は是非この政策評価院的なもの、これはどこかの政党が言い出したとかそういうことを超えて、今日の各委員の方々のお話を伺っても、そういうものを参議院に作り、行政に対するチェック機能を高めていく必要があるんじゃないか。
 それから、中長期的な問題でいいますと、私いつも不思議に思うのは、年金の一元化の議論を国会でやるということであれば、年金制度が政権交代のたびにころころ変わるわけにいかないわけでありますから、本来であれば、そういう問題は参議院に年金問題についての各会派から集まってもう少し、もう一度中長期的な在り方を検討しようというようなものを付すべきであると思っておりまして、そういう意味で時の権力に対して中立的なチェック機関としての参議院、あるいはそういう政争を超えて中長期的に知恵を生み出さなければいけないときの一つの母体としての参議院というものの機能をどう高めていくか。それを具体的な形にしていくというのは、私は、今日の皆さんの意見を聞いておりまして、やっぱり参議院発でいろんな組織的な提言を具体化していくべき時期に至っているのではないかという思いを強くいたしました。
○小委員長(舛添要一君) 森元恒雄君。
○森元恒雄君 私、今お聞きしていまして、各委員の皆さん方がおっしゃられたことに、そんなに私も違和感を覚える部分はございません。
 それで、二点申し上げたいと思います。
 一点は、連邦制をしいている国家におけるその参議院、上院の役割というのは、中央政府と地方政府の調整という大きな一つの役割があるわけですけれども、日本のような単一国家の場合にこの第二議院が何をやるべきかということについては、今もお話がございますように、やはり行政の監視、チェック機能を強化するというのが一つの大きな柱になることは間違いないと私も思います。
 それで、その点に関連して、先ほど荒井委員の方から、会計検査院を国会、特に参議院に所属させてはどうかと。これについて私も異論はありません。
 やはり監視をするというときに、やっぱりそれは具体的なこの行政の中身、執行、実態をつぶさに承知しないとチェックのしようがない。それを我々委員、議員レベルでやろうと思っても、おのずとといいますか、極めて限界がある。どうしてもマスコミ等で報道されたようなことに目が行きがちであります。それはもう物理的にしようがないという面があるんじゃないかなと。それをカバーするためには、やっぱり実動部隊を足下に置いておくということが非常に大事じゃないかというふうに思います。
 そういう点でいえば、会計検査と同時に、現在、行政の執行面での評価、チェックをやっているのが総務省の行政評価局ですけれども、政府の部内の中にあるということも全く意味がないとは言いませんが、やっぱりおのずとこれまた限界があるんじゃないかと。やっぱり、むしろこの行政評価局そのものも、国会、参議院にそういうものを置くということも一つの考え方としてあり得るんではないかというふうに思います。
 それからもう一点は、この参議院の審議をより実質的なものにするための改善として、これまた荒井委員の方から今お話がありましたように、私も議決のこの定足数は当然でありますけれども、議事の際の定足数というのは原則これは外すべきではないかと。
 特に、衆議院から法案が送られてきて、会期末が迫った中で参議院で審議というケースが多いわけですけれども、そうしますと、どうしても実のある、時間の制約に追われて実のある審議ができないと。これはやはり議長と質問者と答弁者さえおればそれで十分果たせるわけですし、それから、特に昨今のように衛星放送あるいはインターネットの、実質テレビが普及していますので、やっぱりより広く、国会の中で幾らオープンにしていてもそれは限度がある。むしろ国民に対して開かれた形で審議をするということを重視すれば、やっぱり全部議員がそろっていないといけないと、一定数以上出席していないといけないというのはもう少し考え直した方がいいんじゃないか。
 それよりは、時間に余り制約をしないで、時間を気にしないで実のある議論を徹底してできるような措置を考えるべきじゃないか。そのためには、定足数というものをやっぱり外す方がより中身のある審議ができるんじゃないかと、こういうふうに思います。
○小委員長(舛添要一君) 藤野公孝君。
○藤野公孝君 今の森元先生の意見とか、ちょっと敷衍することになるんですけれども、二院制、要するに参議院の役割、皆さんがおっしゃったことに基本的にも同調する面がもう本当に多いわけですけれども、今この国益、国とか国益というような問題について、衆議院が小選挙区になっていて、しかもそれ政権をいろいろねらって、それぞれの、その何というんですかね、利害の対立の中で争うという構造は、なかなか国益という、ナショナルインタレストなんて今ほとんどもう何か死語になっている、口では言いますけれども、本当の中身、制度設計も含めた中身を考えるときの国益を考えるところというのは、私はやっぱり参議院しかもうあり得ないような気がしておるわけです。
 明治の初めのころというのは、多分国益ということを考えたんでしょう。そのような状況にまだ今立ち入っている中で、正に我々、今この時点で参議院にいる者として、やっぱり私は、国家とか国益というようなことを考えるきちっとしたところというのは、私は参議院しかないというようなことを思って、まあ国家基本戦略何とかというようなこともあります、委員会もありますが、正にこういうことこそ参議院の一番大きな使命だと思っております。
 それに関連して、立法府といいますけれども、やっぱりこの立法というのがはっきり言って閣法がほとんどで、最近議員立法も出てきて、先ほど田先生なんかのお話でも、調査会からそういう立法が出るようになったと。それは確かにそういう芽が出てきているんですけれども、本当にこの参議院が、さっきも言った国益とか国家のあれを見据えた、まあ法律にもいろいろあるわけですけれども、基本的な長期的な制度設計に基づく立法というのは、やっぱり参議院がこれから一番目指していかなきゃいけない問題だろうということが第一点。
 それから、第二点は、荒井先生もおっしゃったんですけれども、その身分とか、そういう地域地域の代表じゃない、連邦制のようなことではないんですが、これから例えば道州制というようなものが入ってきたときに、それがしかも憲法改正の中でも今議論がされている中で、そういう、いわゆる県ではなくて、この前の小林先生の話、県ではなくてやっぱり道州制となったときに、私は、国ではないし県でもない、いわゆる地域でもない、そういう道州制の独立性、自立性というようなものもあるんでしょうけれども、そういうものの代表というものを考えるとしたら、やっぱりこれは参議院が受けて立つ、代表の出し方の問題ではなかろうかと、こういうふうに思います。
 その二点でございます。
○小委員長(舛添要一君) 山下英利君。
○山下英利君 ありがとうございます。
 私から二点なんですが、やはり委員の皆さんの意見を聞いておりまして、衆議院と参議院の役割の分担ということが一番大きなポイントではないかなと思っております。
 荒井委員の方からの御指摘もありました。ただし、現在、参議院の在り方を見ておりますと、行政に対するチェック機能ということは言われるんですが、実質的に、その行政に対するチェック機能だけではなくて、衆議院に対するチェック機能というふうな意味合いも感じられるところであります。ですから、衆議院と参議院と役割を分担しましょうといった場合に、じゃ衆議院に対するチェック機能をどう考えるのかというところというのは一つ考えていかなければいけないのかなと思います。
 確かに、法案のベースでいえば、これは参議院が審議をしなくて、もう衆議院の採決によってそれをもう成立とするという考え方は確かにあるかもしれませんけれども、そうした場合には、本当の意味での立法府としてのいわゆる牽制といいますか、セーフティーネット機能みたいなものは、ここは参議院に求められているという観点からすれば抜け落ちてしまうんではないかなと、そのように感じるところでありますから。
 そして、行政に対するチェック機能ということで考えた場合には、先ほど田先生からのお話もございましたが、例えば会計検査院あるいは公正取引委員会、そうした行政に対するいわゆる検査機能ですね、外部としての検査機能というのはこれが参議院にあってもいいのかなと思います。
 その場合に、じゃ参議院に、そういってチェック機能に徹するんであれば、じゃ今度は議員立法といったような形の法案を作るといった部分における参議院の在り方というのは、また別な議論として詰めていかなければいけないのかなと思います。と申しますのも、この間、小林先生からお話もございました、いわゆる選挙ということで選ばれてくるわけですけれども、選挙といった場合に、例えば比例代表制という形になったらますます政党色が強くなってくると。政党色が強くなると、参議院としての今度は独立感というものに対しても障害になってくるんではないかなというふうに思います。最終的には個人だというふうなこの間御発言ありましたけれども、個人でやるならば、比例代表制というのはむしろ逆に向くんではないかなというふうな私も気持ちがいたしております。
 それと、衆議院に比べて参議院は議員定数が半分少ない状況にありますから、その中で、じゃ参議院の役割分担というのを考えるべきなのか、そういった点をちょっと私なりに問題意識として感じさせていただきました。
○小委員長(舛添要一君) 吉川春子君。
○吉川春子君 ありがとうございます。
 立法府でありながら閣法を成立させているというのが、今の国会の姿だと思うんです。
 私は、学生のときは、内閣に法律を提案する権利があるかどうか、内閣が法案を提案するというのは違憲ではないかというような学説さえ勉強して、国会へ来ましたら今度は、もうほとんど、今よりも、もう二十年以上前ですから、ほとんど閣法だけを審議するという国会の姿にちょっと本当にびっくりいたしました。立法府であるからには、やっぱり立法をもっと可能にするような条件、人的なものも含めて、それが求められていると思います。
 それで、数年前の参議院の改革協で、実は立法の要件として、今は十一人以上が議員立法の提案、それから二十一人以上が予算を伴うというふうになっているんですけれども、実は、自民党から共産党まで各会派合意で、三人いれば立法ができるようにしようじゃないかという、そういう案をまとめて議長に提出したことがあるわけですけれども、それがまだ国会法の改正につながらなくて今日に至っているわけですけれども、そういう点で、やっぱり今の、まあ参議院に限らないんですけれども、立法できるのは大きな党が議員立法もできると、こういう形になっている点については、やっぱり早急に提案ができるように、私は一人でも議員としては立法ができるようにすべき、それが理想かなとは思っているんですけれども、そういう点についての改善が求められていると思います。
 いずれにしても、皆さんの御意見を伺っていて、憲法を変えるという形で参議院をどうこうしようという場合は大体、参議院の弱体化、チェック機能の低下につながっていくかなと。会計検査院とかその他の問題は憲法を変えなくても、今ちょっと条文で確かめてみたんですけれども、国会に所属できるとか、そういうことを考えますと、私たちは憲法を改正しないという立場だからあえて言うわけではありませんが、やはり参議院の機能を高めて本当にチェック機関として、あるいは民意の反映の機関としていけるようにするために私たちの努力が求められているのではないかということを追加的に発言いたします。
○小委員長(舛添要一君) 荒井正吾君。
○荒井正吾君 ちょっと追加で発言をお許しください。
 先ほど院の構成、選挙制度の在り方について十分自民党の中での意見出てきたとだけ申し上げて、もう少し紹介できなかったんですが、時間で。今、各委員の発言を踏まえますと、もう少しだけ言わせていただきたいと思います。
 衆議院が全国三百の小選挙区になるということを踏まえた参議院の選挙区の在り方が議論になりました。例えば、神奈川県でございますと、十八選挙区、衆議院でございます。横浜だけで八つの選挙区があると。その中での参議院の代表というのはどういうことだろうかと。広いその地域の代表は衆議院がなかなかできないと、地域の代表は参議院になってきているという意見があったことを御紹介いたします。
 その中で、参議院の定数問題と、人口比例で参議院の定数も考えなきゃいけないということに対して、その地域代表性入れると定数の条件が緩和されるんじゃないかという議論もございますので、これはいろいろ意見があろうかと思いますが、御紹介だけをさせていただきたいと思います。
 さらに、全国区というのは大変選挙としても厳しい面があると、また全国区の意味というのは職域代表という面もあるわけでございますが、全国区のそういう難点はどうなんだろうかと、ブロックの代表という考えもあるんじゃないかという意見もございました。
 さらに、参議院は個人をもう少し中心で選んでもらった方がいいんじゃないかというふうな意見がございました。
 それと、そこから敷衍した議論でございますが、政治は、政治のシステムを、基本的なシステムをどう選択するかという時代は今ないように思います。国家運営の、あるいは国際関係の基本システムはどうも統一されてきていると、自由主義、民主主義その他。結局、基本OSが、基本がもう統一されてきていると、インテルとかマイクロソフトとかというふうに、国家の運営システムがもう統合されてきているような時代になった。
 実は、国家の政治の機能が後れた地域、後れた人々、トラブルに見舞われた人々をどう救済するかという機能がより期待されているように思うわけでございますが、と考えるわけでございますが、そういたしますと、政治の在り方ももう少し変わってくる。
 それと、その中で、行政が行った結果を、そういうふうに政治への期待がマッチ、国家への期待がマッチしているかどうかということをチェックするには、決算という数字なり行政の結果を見るとともに、私は、統計というのはとても国家の機能で大事かと思っております。統計が整備されていない国で発展した国はないように私は思いますが、その統計がばらばら、まだ非効率であると。統計を参議院が十分手につかんで、それを基に行政のチェック、指導、世の中の希望を、期待を察知するという手法が開発されるべきじゃないかという意見を持っておりますので、ちょっと披露させていただきました。
 以上でございます。
○小委員長(舛添要一君) 郡司彰君。
○郡司彰君 やはり私も、この二院制考える場合には、選挙制度と無関係に考えるというのはちょっと無理があるのかなと。やはり解散がない、六年間という任期の中で立法府として何をできるかというふうなところから考えると、先ほど皆さんから出ていますように、決算でありますとか行政監視でありますとかというところに行き着くような感じがするんですね。
 もう一つ、私は、何にも勉強しないで国会に来たという感覚でおりますと、請願というものがあるんですけれども、それの扱いというものが非常に粗略に扱われているなというのを感じておりました。
 いつも、例えば一千万であろうと数が少なかろうと、会期の最後のところでもって、このようになりましたということでもって、言葉は悪いんですけれども、葬らされてしまっているような感じがする。これはやはり、民意の反映というのが選挙の結果に出るけれども、民意の一つの表れとしての請願というものがあるならば、これを立法化をするというような義務というのはどこかで立法府というのは持っていないんだろうかというふうなことを思っておりまして、そのことを考えると、解散がない参議院というのはこの請願の扱いというものをもっと大事に扱うという、そういう院であってもいいんではないかなというような感じがしておりまして、そういうところを少しこの二院制の在り方の中で、参議院の優位性という形の中で御議論をいただければ有り難いなという感じがしております。
 それから、これは二院制とは直接関係ない議論に行く可能性の方が多いんでありますけれども、今、衆議院、参議院とも、それぞれ予算は同じような額で作られております。ですから、参議院だけが独自ということにはならないんだと思いますけれども、立法府ということで考えると、余りにも、この行政のところから組まれている予算の中で、民主主義のコストとしてはそれほど十分なのかというような思いがありまして、例えば、立法府の職員というのをスタッフという言い方をしてもいいですけれども、どこにいるんだというと、この地域にしかいらっしゃらないわけですね。
 私どもがその地域ごとの、あるいは先ほどの会計監査を使うかどうかは別にして、行政監視の問題を含めても、やはりこの東京というこの場所にだけ立法府の職員というものの配置があって、それで十分なんだろうか。もう少し、道州制という問題は別にしても、どういう分け方をするのか、全国的にそういう人の配置があって、何らかの役割を担うような部門があることによって立法府に民意を届けるような形も、逆に国民の方からもやりやすくなるんではないかと。そういうところの議論と参議院の在り方というものが結び付けば私は非常にいいのではないかなというちょっと感じを持っておりまして、発言させていただきました。
○小委員長(舛添要一君) 富岡由紀夫君。
○富岡由紀夫君 私、まだ今回初めて、実質初めての臨時国会で、まだ間違った見方をしているかもしれないんですけれども、私が議論の中で感じたのは、国会の役割と、あと国会の中の参議院の役割、分けてちょっと述べたいと思うんですけれども、国会の役割というと、やっぱり三権分立の中で、もう先ほど来から出ていますとおり立法だと、立法府だということで立法が一番重要視されているというか、その役割を担っているんですけれども、なかなか本当に議員立法とかそういうのが行われているかというと、なかなか行われてないんじゃないかと私も思っております。
 その原因の一つに何があるかというふうにちょっと私も思っているんですけれども、委員会なんかで、衆議院でかなりもう議論されてきた、行政府から提案があった法律に対して衆議院で議論されているのに、参議院でもまた同じ時間ぐらい取って議論するようなケースがあるんじゃないかと今感じているんですけれども、そこはやっぱり私は、参議院の役割としてそんなにもう、衆議院で議論され尽くした、これ理事の方の役割が大きくなってくるんですけれども、そういう判断した場合は参議院ではもう本当に短時間でいいやと、もうこれについてはいいやと。それよりは、その時間を使って議員立法の時間に体力を割いてそっちにやろうとか、そういう、何というんですか、柔軟な対応というやり方だけでも、それだけで参議院の役割というのはかなり上げることができるんじゃないかと私は思っております。本当に必要な審議であれば、衆議院に対するチェック機能という意味で、衆議院よりもっと大きな長い時間を取って審議すればいいわけでありまして、そのところは柔軟に対応できるような体制がやっぱり必要じゃないかと思っています。
 衆議院に対するチェックという観点からいいますと、今いろんな学説というか議論の中でも、参議院に否決されたら、三分の二以上衆議院で賛成があればもう一回それは通るという話なんですけれども、それを二分の一にしたらどうだというような御意見もありますけれども、そうしたらチェックする機能が意味がなくなってしまうんだと私は思うんですね。衆議院でちゃんと採決されたけれども、衆議院で採決されたけれども参議院では否決された。それはその法案は駄目だと言って初めてそのチェック機能というのが働くのであって、そこでまた衆議院に戻して成立しちゃってしまったのであれば、その衆議院と参議院という二院制のチェック機能というのは全くなくなってしまうと私は思いますので、そこのところはよく議論する必要があるんじゃないかと思っております。
 そういった意味から、私は、さっきの時間的な問題と、あと体力的な問題で、やっぱり本当に議員立法をやるのが参議院の、参議院というか国会のレーゾンデートルだと思っているんですけれども、それやるにしても、時間的な問題と体力的な問題ありますので、さっき言った政策スタッフの充実とか、あと審議時間の柔軟な対応によって議員立法をちゃんと可能にする時間の確保と、そういったことをやっぱり考えていく必要があるんじゃないかというふうに私は思っております。
○小委員長(舛添要一君) 簗瀬会長代理。
○会長代理(簗瀬進君) 発言の機会、与えていただきましてありがとうございました。
 今日、委員の皆さんの大変すばらしい御意見を聞かせていただき、私も大変勉強になっております。
 三点ほど、ちょっとこの問題を考える際の前提となるべき問題が大変大きな問題があるのではないのかなと私は思っております。それは、いわゆる二十一世紀の民主主義の在り方に対応してこの国の形を全体的にどう整えていくのかなと、こういう視点だと思うんです。
 まず第一番目は、私は、二十世紀から二十一世紀にかけてコンピューターというすごいツールが出てきて、その結果として、非常に一人一人の国民が情報に大変アクセスすることが可能になってきたと、これは大変大きな文明史的な転換なんだろうなと思っております。
 それに対応した政治の姿をどう整えるのかという観点からいってみると、どうしても私は直接民主制的なそういう色彩が強まっていかざるを得ないし、政治やあるいは仕組みがそれをきちんとそういう国民の要望にこたえていないと、逆なフラストレーションが起こって仕組みがまずくなっていくと、こういうことだろうと思うんです。
 でありますから、そういう観点から、私は首相公選的な問題がどうしてもやっぱり出てくるだろうと。仮に首相公選を取ったとしたら、その首相公選に見合った形で議会をどういうふうに整えていくのかという、こういう問題として次に考えなければならないのではないのかな。
 正に、そういう意味では、この衆参の在り方、あるいは、さらに国会の在り方というようなことを考えていく前提問題として、この直接民主制に対する国民の要望に対してどういうふうにこたえていくのかなという部分が大きなポイントとしてやっぱりきちんと結論付けられていなければ、憲法の制度提案には行かないのかなという思いが一つございます。
 それから第二番目に、三権分立の在り方でございます。
 現在の日本国憲法も三権分立、行政、司法、立法と、こういうふうな形を整えておりまして、ある意味では古典的な三権分立の前提に立っておるわけでございますけれども、先ほど来からの委員の皆さんの御発言で私も全く同感なのは、例えば司法自体も行政化をしている、それから立法自体もある意味で行政権限に押しまくられているという形で、立法も行政化をしている。正に三権分立の姿というようなものが行政の突出的な肥大化現象の中で非常に取りづらい現状になっていると思います。
 そうしたことを前提としてこの三権分立の在り方をどういうふうな形で現代的に整えていくのかなという大きな問題があり、そしてその次に、やっぱり国会の在り方はどうなのか、衆参の在り方はどうなのかというふうに話を続けていかなければならないんではないのかなと、こういうふうに思っております。
 第三点、これは政党の位置付けということだと思うんです。憲法の中で政党規定をきちんと置いている憲法と置いていないところもありますけれども、私どもの憲法では政党は憲法上きちんと位置付けられているわけではありません。
 しかし、民主党も今政権交代こそ新しい時代の到来だと、というようなことで政権交代、いわゆる政党を入れ替えることによって新しい社会状況を作っていこうという、それが政権交代の意味だと思うんですけれども、そういうふうなアプローチをしているわけであります。
 しかし、そういう形ですべてが解決をされるのかなと思うと、意外にそうじゃない部分もあるんではないのかな。例えば政党単位で物を考えてまいりますと、選挙のときに立てた公約というようなものがその後も政党を縛り続けるような形にどうしてもなってくる。昨今の例えばイラクの問題にしても、自民党の中にはやっぱりいろいろな意見もございますし、例えば三位一体の改革でも郵政改革でもいろんな議論がある。これは、自民党だけじゃなくて、我々民主党の中にも同じような状況というようなものがあるわけです。しかし、政党単位で物を考えると、いったん決めてしまったものは、将来ともに一定期間はやっぱり拘束をするというような形でお互いの縛りになってしまう。
 でありますから、正しいことを言いたくても黙ってしまって、言うならば政策が時代状況に対応できなくなった誤った状況が現実に分かっていながらも黙ってしまう、こういう一つの政党政治の隘路みたいなものがあって、それをどういうふうに乗り越えていくのかなというところで、例えば参議院の意味というようなものが出てくるのかなと、こういうふうな感じもございます。
 この三つの問題提起させていただきましたけれども、じゃ、おまえアイデア持っているのかというとないんですけれども、やっぱりそれらと、総合的にこの衆参の在り方というようなものを、参議院の在り方というようなものを考えていかないと、本当の意味でのいい憲法というようなものができてこないんではないのかな、こういうふうに思っておりますんで、意見として言わせていただきました。
○小委員長(舛添要一君) 愛知治郎君。
○愛知治郎君 ありがとうございます。
 追加的にお話をさせていただきたいというふうに存じます。
 私自身、頭が固いせいか、この憲法調査会、基本的に憲法論議だと思っているんで、憲法の話中心にその原則論を話をさせていただいたんですが、先ほど来いろんなアイデア出て、現状を見ますと、確かに今の在り方、いろいろアイデアを出してもっと機能させようということは、非常にいいアイデア、先生、各先生方から出していただいたというふうに思います。
 しかしながら、私は、また原則論で恐縮なんですけれども、なぜ二院制なのか。山下先生が先ほどおっしゃられましたけれども、衆議院に対するチェック機能、衆議院に対する牽制だという話おっしゃられましたけれども、例えば先ほど来出てきている行政に対する監視、チェック機能に関して言えば、これは二院制、参議院ではなくて、もちろん衆議院の拡充というか、両院でともにやるべき話ですし、参議院がという話ではないんではないか、どうしてもそこで議論しなくてはいけないことなのかなというふうにちょっと疑問を感じました。
 二院制ということがなぜ二院制なのか、一院であってもいろんな機能を充実していけば問題ないのか、根本的な話になってしまうと思うんですが、やはり私自身は二院制の意義、それを中心にもう一度しっかりと議論をさせていただきたいと思いますし、委員の先生方、それに対する意見があるようでしたら是非聞かせていただきたいというふうに存じます。
 以上です。
○小委員長(舛添要一君) 松井孝治君。
○松井孝治君 済みません、何度も。
 二点だけ補足的に発言をさせていただきたいと思います。
 一つは、先ほど来議論になっておりますが、政策スタッフというのが、非常に日本の場合、霞が関の官僚に独占的になっているという点をどうにかしなければいけない。霞が関の中でも、省庁ごとに実はもう行政ニーズが低くなったところにたくさんの人員がストックされて、本当は行政ニーズがあるところに異動できないという問題もありますが、こういう問題を解決する以前に、霞が関の一極集中をどうやって是正して別のところの政策人材を作っていくかというのは、これは政治主導の政策運営を行う意味でも絶対に必要なことなんですね、野党だから言っているとか、与党だからそれに反対ということではなくて。そのときに、本来はやっぱり国会周り、アメリカの例をもう見るまでもなく、例えば国会全体としての、先ほど例えば会計検査院を国会に附属、参議院に附属という議論もありましたが、それだけじゃなくて、例えば委員長にある種の政策スタッフを付けるということもあってもいいと思いますし、もう一つの政策人材のプールを作るという意味において、これは我々国会議員がきちんと団結すれば、全体としての公務員を増やすことなく、今の霞が関もはっきり言って閉塞状態にあって、あれだけ人数が要るかというと要らないわけですよ。
 それをむしろ霞が関とは違う視点でチェックをする、あるいは別の政策提言をする、立法活動の補助をするという形の人員に振り向けていく。これは定員をそういうふうに霞が関から国会に振り向けて、同じ公務員の定員の中で振り向ければ、そしてそこで新しいリクルーティングをすればいいわけでありますから、これは是非、参議院あるいは政治の主導で私はできることだと思いますし、やるべきだと思います。
 それから、先ほど来の自分自身の意見も含めて、参議院の独自性を発揮するときに、やっぱり一つの大きな障害は政党であることは明らかだと思います。これは私の記憶では、前か前の前の委員会で公明党の山下委員がおっしゃったような気がするんですが、そのときに、これは我々は言いづらいことでありますが、やっぱり選挙を行う以上、国政選挙を行う以上、政党の支配力が強まるのは当然だと思うんです。それを、政党の支配力を弱める、より個人の良識に従って行動ができる院を作ろうとすれば、一つの答えは、再選をさせない、再選禁止規定を置いて、しかし任期を長くする。まあ、フランスなんかではこれと逆行する動きがあるというのも承知していますし、それは物事にはすべてプラスマイナスがありますが、そういう考え方、例えば八年とか九年という任期を確保して、しかしもう単一の任期でやると。
 そうすると、そういう議員は、ある意味では選挙活動をせず、その選挙を過度に気にすることなく、また政党の拘束というものに縛られることなく、議員としての良識に従って行動できるわけでありますから、これはなかなかそれぞれの事情があって簡単には、言うのは簡単ですが、なかなか現実には難しい議論もあろうと思いますが、そういうことも含めて、じゃ、どうやって政党の束縛というのを少し緩くしていくのか、あるいは選挙を通じた政党の支配というものを逆にどうやって緩くしていくのか、そこまで含めて、今申し上げたような再選禁止規定を置くということまで含めて我々は選挙制度の議論をしなければいけないのではないかということだけ申し述べておきたいと思います。
○小委員長(舛添要一君) 田英夫君。
○田英夫君 ありがとうございます。
 参議院が行政府をチェックするということを結果的にできた一つの例を申し上げて御参考にしたいと思うんですが、十年前の阪神・淡路大震災のときに、現地の市民の被災者の皆さん、もちろん衆参の関係議員のところにいろいろおいでになったんですが、たまたま私のところに被災者市民が何組か一緒になって来られた。今度は皆さん超党派で有志に呼び掛けて現地調査に行こうというので、自分たちで行ったんですね。二十人ぐらいいたかと思います。それで、実態がよく分かってきたときに、何とかこれ、被災された方の皆さんの意向を法律作って実現しようということになったんですが、具体的に進めようとするとなかなか壁が厚くて、これ何だろうと思ったら、政府は、行政府は、過去に公的資金を天災のときに出したことはない、こういうことが分かってきたんです。つまり、天災は自分の手で立ち直れと、立ち上がれと、そういう原則が行政府、具体的には当時は国土庁でしたけれども。
 それを確かめて、これは何とかこの壁を破らなければできないということで、超党派で話合いを進めていく中で、はっきり申し上げると、与党の自民党はその原則があるからなかなかできないんだというところにぶつかっちゃったんですね。そうしたら参議院法制局が非常に熱心に調べてくれて、たった一つその公的資金が出ている法律があると。それが災害弔慰金に関する法律という、亡くなった方に対しては百万円出すという、国が。
 変な話になるけれども、この法律を改正する法律案というのを、元の法律より大きいことになっちゃうんだけれども、そういう案を作ったら通るかもしれないという、そういう知恵を授けてくださって、結果的に、今も自民党で参議院におられますけれども、当時の政調会長、参議院の政調会長ですか、が積極的に動いてくださって、自民党の中でも野中さんなども動いてくださって、この法律が結果はできたんです。百万円にその代わりなってしまいました。去年それが三百万円に増えましたね。今度の新潟や台風の災害では本当に役に立っているというか、三宅島なんかも間に合いましたし、そういうことがあるんですね、やっぱり。
 これは、つい衆議院はやっぱり行政府と近いですしね、感覚的な問題として、やっぱり参議院だから役に立つという。参議院から議員立法で出して、それで衆議院もその間に説得してでき上がったという歴史があります。
 どうもありがとうございました。
○小委員長(舛添要一君) 関谷会長。
○会長(関谷勝嗣君) 私が発言していいのかどうか悩んでおりましたが、簗瀬代理がされましたのでそれではさしていただこうかなと思いまして、一言述べさせていただきたいと思います。
 私は、今、小委員の先生方のお話を伺っておって、ここのこの会議、これが本来の参議院なんです。皆さん、だれ一人として党派を背負った発言はないでしょう。皆さん、参議院を思い二院制が必要だということでお話をされていらっしゃる。ですから、本当に、どう言いましょうか、自分の考え、どこにも拘束されてない御意見を述べられていて、私は非常に、どう言いましょうか、すばらしいなと思いました。
 それで、今、愛知治郎さんが少し触れていましたけれども、やはり我々が大学だとかそういうふうなところで学んだ二院制の一番の目的は何かというと、両院がお互いの足らざるところを補うということ。そしてまた、世間では参議院が衆議院の、確かに衆議院というのは、私はよく言うんですけれども、衆議院のメンバーというのは走りながら物事を考えておると。参議院は六年間解散がないんだから、じっくりとその判断をして勉強をしてチェックするんだと。だから、参議院の方が衆議院をチェックをするという感覚で私はこの憲法の中に二院制がうたわれておるんだろうと思うんでございますが、その憲法が当初、作られた当初の参議院というものに対する、参議院という身分ですね、政党との関係、そういうようなことは、今のこの現参議院のお互いにはないいわゆる状況の参議院を私はその憲法を作った当初は考えていたんだと思います。
 今はもう全く政党に縛られているでしょう。もう衆議院と参議院と本当に、私、今、衆議院にいましたから、こちらでお世話になっておりますけれども、本当にそっくりですね。ですから、チェックするというような状況ではなくなっておる。
 ですから、我々が、元々憲法にあります衆議院をチェックするというか、あるいはお互いがお互いの欠陥を補っていくという立場であるならば、それはやはり選挙制度というのを変えていかなければならないと思います。だんだんだんだん衆議院と参議院の選挙制度が似通ってきております。
 それから、政党と我々国会議員との関係というのはもう今は衆参全く一緒であるというようなことですから、これを私は解きほぐしていかなければ、まあ決算を主流にやっていくということも、それはいいでしょう。しかし、それは私はまだ小さな部分じゃないかと思います。本当にもっと世間から信用されて、仮にもカーボンコピーなんて言われることは絶対ないように、我々はそういうことで。ですから、政党法というものもまたしっかりと作っていかなければならないなと、そんなことを思っております。
 そして、今どなたかの御意見にもありましたように、それがためには、それは期間を延ばしてでも、あるいは再選をないようにするとか。ですから、内閣に入らないというようなことも一つの、第一歩かもしれませんですね。入閣はしないということ。昨日、私、自分のグループで、冗談じゃないと、入閣したら参議院を辞任するなんて、そんなことがと言ってちょっと怒りましたけれども、今、皆さんのお話聞いておると、そうかなと。もうそれぐらいをやらないとこの参議院の、どういいましょうかね、チェック機能が発揮できないかなと。
 ですから、いろいろなことを考えて、そういう二院制というものはやっぱり私はしっかりと堅持したいなと、そのように思っています。
○小委員長(舛添要一君) 他に御発言はございませんか。他に御発言もないようですから、本日の意見交換はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時三十三分散会

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