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第九十回帝國議會貴族院 帝國憲法改正案特別委員會議事速記録第十三號
付託議案◎帝國憲法改正案
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昭和二十一年九月十四日（土曜日）
午前十時十二分開會
○委員長（安倍能成君） ソレデハ會議ヲ開キマス、第三章ノ第十條ニ付テノ質疑カラ始メマス、佐々木委員
○佐々木惣一君 私ハ實ハ、昨日委員長カラ、各條毎ニ其ノ條ヲ立テテ題トシテ質問ヲスルト云フコトヲ伺ヒマシテ、其ノ前ニ既ニ第三章ニ關スル質問事項ヲ提出シテ居ルモノデスカラ、ソレガ此處ニ書イテアルコトニナツテ居ルノデアリマスガ、ソレデ今日又、各條毎ニ質問事項ヲ書イタモノヲ持ツテ來マシテ、先刻御渡シシテ置キマシタ、私ハソレデ申シマスガ、其ノ中ノ第十條ニ付テ、字句ニ付テ御尋ネ申上ゲマスコトガ、又色色ノ點ガアリマスガ、チヨット御尋ネ致シマスガ、其ノ一點トシテ國民ト云フ文字ヲ今使ツテ居ル譯デスガ、現行憲法デハ御存ジノ通リニ、日本臣民ト云フ文字ガ使ツテアル、此ノ臣民ト云フ文字ヲ廢メテ、國民ト云フ語ヲ使フト云フコトニ付テハ、何等カ特別ノ理由ヲ御持チニナツテ居ルニ違ヒナイノデスガ、其ノコトヲ先ヅ第一ニ御尋ネシテ見タイト思ヒマス
○國務大臣（金森徳次郎君） 今回ノ憲法ノ大體ノ建前ハ、國民全體ガ平等デアルト云フ氣持カラ出發シテ居リマス、其ノ結果在來ノ慣用語デアリマスル所ノ或範圍ノ言葉ハ、之ヲ削リ去ツテ、其ノ國民平等ト申シマスルカ、國ハ國民ガ協同シテヤツテ行クンダト云フ氣持ニ合フ文字ヲ選ンダノデアリマシテ、其ノ結果臣民ト云フ言葉ヲ國民ト云フ言葉ニ變ヘタ譯デアリマス、前ニ大臣ト云フ言葉ノ使ヒ方ニ付テ御質疑ガアリマシタガ、サウ云フノハ已ムヲ得ナイカラ殘シテ居リマスルケレドモ、外ノ點ニ於キマシテハ成ルベク此ノ憲法ノ建前ニ合ハセル言葉ヲ使ツテ居ルノデアリマス
○佐々木惣一君 サウシマスト云フト、私ガ是迄、日本ニ於テハ國民ト臣民ト云フノハ言葉トシテ違フ、臣民ト云フ時ニハ天皇ニ對シ奉ツタ立場ニ於テ言フノデアル、現行憲法デスナ、ソレデ其ノ方面カラ見テ居ルカラシテ、國民ト言ハズニ臣民ノ權利義務ト言フベキデアル、斯ウ云フコトヲ從來デモ總テノ人ガ言ツテ居ツタト思フノデスネ、ソレデ私ハ實ハ私自身ノコトヲ言ハシテ戴キマスレバ、サウ云フコトハ實ハ間違ヒデアツテ、日本ノ現行憲法デモ、國民ト言ツテチヨットモ差支ナイ、臣民ト言ハレヌト云フノデアリマセヌケレドモ、ソンナ所ニ臣民國民ノ區別ハナイノデアル、ソンナコトヲ思ヒマシテ、一般ニ外國デハ國民ダト云フケレドモ、臣民ト言ハズニ、サウ言ツテ居リマスガ、ソレハ私ハ、從來ノ建前デハ誤リデアツテ、外國デモ、例ヘバ、外國ノ文字ヲ使フコトヲ許シテ戴カナケレバナリマセヌガ、「サブジェクト」ト云フノハ、是ハ其ノ國家ニ對シテ從屬シテ居ル意味ヲ言ツテ居リマスシ、「フランス」語ハ「シュジェ」、「ドイツ」語デハ「ウンテルターニン」是ハ皆、或從屬シテ居ルト云フ建前ヲ示シタ文字デアツテ、詰リ日本ニ於ケル臣、臣民ト云フ文字ニ當タルノデアルト云フコトヲ言ツテ、ソレデ別ニソンナコトニ、何モ區別ハナイノデアルカラシテ、從來ノ憲法ノ時ニデモ、臣民トアルノハ即チ國民ト云フノト同ジコトダト言ツテ居リマシタ、私ハ實ハサウ云フ建前カラ、サウ云フヤウニ今度言葉ヲ御變ヘニナツタノダト思ヒマシタガ、今伺ヒマシタ處デハ何トカ、平等トカ、皆トカ云フコトカラ御變ヘニナツテ居ルヤウニ伺ヒマシタガ、チヨツト私ハ今理解出來ナイノデスケレドモ、今申シマシタヤウニ、從來言ハレタヤウナ意味デハ、臣民ト云フコトハ間違ヒダカラシテ、ソコデ國民ニシタト云フノヂヤナイノデスネ、言葉デスガネ
○國務大臣（金森徳次郎君） 過去ノ憲法ノ言葉ヲ批評スル意味ニ於テ變ヘタノデハゴザイマセヌ、全ク國ノ政治機構ニ付キマシテ、新ラシイ見地ヨリシテ、此ノ草案ノ文書ヲ作リマシタノデ、其ノ道行ニ於テ國民ト云フ言葉ノ方ガ適切デアルト云フ考ヲ持ツテ居ツタ譯デアリマス、尚在來ノ憲法ニ於キマシテハ、解釋上ノ差ハアルカモ知レマセヌケレドモ、天皇ト皇族ヲ臣民ノ外ニ置ク、憲法ノ解釋トシテハ恐ラク兩説有リ得ルト思ヒマスガ、兎ニ角臣ト云フ言葉ニ拘泥シテ、天皇及ビ皇族ヲ其ノ規定ノ外ニ置クト云フ風ニ考ヘテ居ツタノデアリマスルガ、今回ノ憲法ニ於キマシテハ左樣ナ考ヲ採リマセヌ、矢張リ國民ト云フ言葉ガ適切デアルト云フ一方的ナ見地カラ、文字ハ選ンダノデアリマス
○佐々木惣一君 マア、文字ノ善惡デナイ、唯御氣持ヲ、ソコデ第二點ニ移リマシテ、第三章ニ謂フ國民ノ中ニ、サウ云フ言葉ノ中ニハ、矢張リ天皇ヲ含ムト云フノデアリマセウカ、國民ト云フ言葉ノコトニ付テ、色々前カラアリマシテ、天皇ヲ含ム、含マヌト云フ話ガアツテ、御持チニナツテ居ルノハ、天皇ヲ含ムノダト云フコトヲ屡々仰シヤツテ居ル、サウナリマスト、第三章ニ於テモ當然ニ天皇ヲ含ムト云フ意味ニ理解シテ宜シウゴザイマスカ、サウ云フ意味ダト
○國務大臣（金森徳次郎君） 左樣ニ考ヘテ居リマス、含ムト云フ意味ニ考ヘテ居リマス
○佐々木惣一君 ソレハ私ノ考ニ依リマスト、併シ民ト云フ文字ノ中ニ、日本デハ天皇ナドハ含マヌト云フコトノ方ガ、言葉トシテハ妥當デアルト、私ハ今デモ信ジテ居ル、日本ノ言葉デ、國民トカ民トカ云フ時ニ、君主タル天皇ヲ含ムト云フヤウナコトハ、言葉ノ用法トシテドウモ、サウ云フ意味デ使ツタト仰シヤレバ仕樣ガナイデスケレドモ、是ハ前ノ問題ニナルノデスケレドモ、概念ヨリモ、觀念ヨリモ、言葉ノ用語法トシテハ、サウ云フモノハ避クベキモノト僕ハ思フノデスガネ、ソレハ姑ク措クトシテ、假ニ天皇ガ第三章ノ中ノ國民ト云フ言葉ノ中ニ入ラヌト致シマシテモデスナ、ソレハ私ノ思ヒマスルノハ、天皇ガ天皇ノ統治機關トシテノ御生活デハナシニ、即チ總攬、此ノ新憲法デハ總攬ト云フ文字ハ使ヒマセヌガ、天皇ガ統治、政治ヲナサルト云フ其ノ生活デナシニ、金森サンノ屡屡御用ヒニナル言葉ヲ拜借スレバ、「私」ト言ヒマスカ、私ノ關係ニ於ケル御生活ト云フモノニ付テ、國家ガ法的ニ定メル場合ニ、ソレハ何デセウ、國民ト云フ言葉ニ入ルトスレバ、當然ニ此ノ第三章ノ規定デ、他ノ國民ト同ジヤウナ定メノ適用ヲ受ケラレルト云フ方ガ論理的ニナルト思ヒマスガ、大臣ハ、象徴ダカラトカ何トカ云フヤウナ建前デ其處ニ持ツテオイデニナツタト云フコトヲ記憶シテ居リマスケレドモ、サウ云フコトデナシニ、別ニ第一條ノ象徴トカト云フコトデナシニ、別ノ理論デ、第三章ノ規定ハ適用ナイノダト云フ風ナコトハ言ヘマセヌデセウガ、天皇ニハ
○國務大臣（金森徳次郎君） 第三章ノ解釋トシテ、天皇ガ入ルカ入ラヌカト云フコトハ、是ハ解釋ニ付テ各人ガ御持チニナル御意見トシテハ致シ方ハゴザイマセヌケレドモ、原案ノ立場ト致シマシテハ、天皇ハ含マレテ居ルノデアル、斯ウ云フ風ニ前提ヲ作ツテ居リマス、從ツテ第三章ハ、詰リ天皇タル人ニ對シテ適用ガアルモノト考ヘテ居リマス、適用ノ上ニ、他ノ第三章以外ノ規定ノ影響トシテ變化ノ起ツテ來テ居ルコトモ、固ヨリ念頭ニ置イテ居リマス
○佐々木惣一君 ソレモマア、當然ニ國民ト云フ中ニ天皇ガ入ルト云フ、サウ云フコトカラ生ズル前提カラ當然ノ歸結トシテ、サウ仰シヤツタノデスガ、是ハ正シィコトト思ヒマスガ、其ノ立場ニ於テハ、私ハ斯ウ云フ風ニ、從來ノ現行憲法ニ付テ考ヘテ居ツタノデアリマスルガ、其ノ點ニ付テ御意見ヲ伺ヒタイノデス、私ガ間違ツテ居ルカモ知レマセヌカラ、私ハ無論、「私」ノ立場デハ天皇ハ國民ノ中ニ入ル入ラヌト云フコトハ、當然入ラナイノデスカラ、私カラ言ヘバ、ソレハ別トシテ、天皇ノ只今申シマシタヤウナ、即チ「私」ノ御生活ニ關スル定メデスナ、法デ定メル場合ニハ、ソレハ他ノモノ、一般國民ト申シテ置キマスガ、其ノ一般國民ノ定メトハ別ニデスナ、之ヲ定メルト云フノガ、從來我ガ國ニ於テ認メテ居ラレマスル所ノ、成文法以外ノ條理法ト私ハ名附ケタイト思フノデアリマスガ、條理法、ソレノ定メデアル、斯ウ云フ風ニ私ハ理解シテ居リマス、詰リ一般國民ニ關スル法ノ定メト、天皇ニ關スル法ノ定メトハ、是ハ別々ニシテ定メルノダ、別々ニスルト云フコトハ、其ノ定メノ内容ガ必ズシモ異ナツテ居ルト云フ意味デハアリマセヌ、唯別々ニ定メル、從ツテ、詰リ第三章ハ日本ノ臣民トカ、今回ノ國民ト云フコトニ關スル定メハ、當然ニハ詰リ天皇ニ關スル定メデハナイノデアル、内容ハ同ジニナリマスガ、別々ニ定メルノデアルト、斯ウ云フ風ニ從來カラ私共ハ考ヘヲ居ツタノデアリマスガ、ソレト違フ譯デスナ
○國務大臣（金森徳次郎君） 現在ノ考ヘ方ニ於キマシテハ、御説ノ通リト思ツテ居リマス、此ノ憲法ノ改正案ハ、共處ニ變更ヲ來シタ趣旨ノ考デ居リマス
○佐々木惣一君 ソレヂヤ、マア天皇ノコトハ、ソレデ濟ンダト致シマシテ、更ニ御尋ヲ申上ゲタイノハ皇族デスナ、皇族ハ、是ハ矢張リ無論國民ノ中ニ入ルモノデモアリ、是ハ御尋ネシナクトモ分ルコトデアリマスネ、先般來ノ御説明デ、ソコデ皇族ノ地位ニ付キマシテハ、皇族ノ地位ニ關スル定メハ、一般臣民ノ地位ニ關スル定メトハ何カ特例ヲ設クルト云フヤウナ御考ヲ今御持チニナツテ居ルカドウカト云フコトナンデスネ、ソレヲ御尋ネ致シマス
○國務大臣（金森徳次郎君） 皇族ニ關シマシテモ、原則トシテハ憲法第三章ガ文字通リ當テ嵌マルノデアリマスルガ、憲法第一章ノ規定ニ依リマスル影響トシテ、一般國民ト異ナル若干ノ規定ガ出來得ルモノト考ヘテ居リマス
○佐々木惣一君 ソレデ大凡ノ立場ハ分ツタヤウデスガ、皇族ガ國民デアルカドウカト云フコトハ、是ハ現行ノ臣民ノ中ニ入ルカドウカト云フコトガ、ソレ自身何ヨリ問題デアリマシテ、私ハ皆臣民ノ中ニ入ル、天皇以外ノ者ハ皆次ノ位ニシテ居ルノデスカラ、サウ云フ風ニ思ツテ居ルケレドモ、實ハ此ノ點ハ多數ノ人ハ、皇族ハ臣民デナイト云フ風ナ説明ノ方ガ多イカト私ハ記憶シテ居リマスガ、ソレハ私ハ誤リヂヤナイカト思ヒマスガ、現行憲法デ、併シ孰レニ致シマシテモ、皇族ガ新憲法ニ依リマシテ、今大臣ノ御説ノ通リニ、明カニ國民ノ中ニ入ルト云フヤウナ御解釋ハ、私ハ是ハ非常ニ賛成致シマス、唯其ノ特例ヲ設クルト云フコトモ、ソレ自身私ハ決シテ不賛成ヂヤナイ、矢張リ特例ヲ設クルコトガ必要ダラウト思ヒマスガ、唯特例ヲ設クルコトノ法的根據ニ付テ、少シ今ノ御説明デハ納得出來ナイ、第一章カラト仰シヤイマスガ、此ノ憲法ノ第一章カラハ皇族ニ付テハ出テ來ナイト思フノデアリマスガ、天皇ニ付テハ、或ハ出テ來ルト言ツテモ宜イカト思フケレドモ、ソレデ現行ノ制度ニ於キマシテ、國家制度及ビ皇室制度ニ關スル規定ニ於キマシテ、皇族ガ臣民デアリナガラ、私ノ言葉デハ、從ツテ新憲法ニ依リマスレバ國民デアリナガラニナリマスガ、併シ其ノ地位ニ關スル定メガ、定メル方法及ビ定メラレル内容、共ニ他ノ臣民トハ別ナ特例ヲ設ケ得ルト云フコトハ、現行制度ニ於キマシテハ特別ノ根據ガアル、即チソレハ皇室典範デアリマス、皇室典範ノコトヲ此處デ諄々シク申上ゲル必要ハアリマセヌデスケレドモ、皇室典範ニ於キマシテ、皇室ニ於キマシテハ、一般臣民ト違ツタヤウナ特別ノ定メヲ設クルヤウナ法的根據ヲ與ヘテ居ル、ソコデ詰リ一般ノ臣民ニ關スル法令ト、ソレカラ皇室ニ關スル法令トノ根據ガアルト思フノデスガ、今ノ御説明デハ、サウ云フ特別ノ根據ナルニ、唯直接ニ憲法ノ第一章ト云フモノカラ、サウ云フ定メガ出來ルト云フ風ニ伺ツテ居ルノデスガ、私ハソレハドウモ少シ理解出來ナイデス、法的根據ノ問題デスヨ、第二章ニ於テ總テ同ジ國民デアルニモ拘ラズデスナ、其ノ國民タル皇族ト他ノ國民トノ定メガデスネ、別々ニ内容ヲ以テ定メ得ルト云フヤウナコトガ出來ルカ、ドウモ私ハ腑ニ落チヌノデスケレドモ、併シマア此ノ問題ニ付キマシテハ、外ノ人ノ御質問ノ時間ニモ差支ヘマスカラ、唯、今ノ御説明ニハ納得出來ヌト云フコトダケヲ申上ゲテ止メテ置カウカト思ヒマス、ソレカラ第十條ニ「日本國民たる要件」トアリマスガ、之ニ付テチヨツト御尋ネ申上ゲタイト思ヒマス、第十條ニハ「日本國民たる要件」、現行法デハ確カ「日本臣民タルノ要件」トアツテ、「ノ」ノ字ガテツタ方ガ文章トシテハ、日本文的ニハ意味ガ強イヤウニ思ヒマスガ、ソレハマア別トシテ、新憲法草案ニハ前ノ第一ノ政府案トハ違ツテ、「法律でこれを定める」ト云フ規定ヲ御設ケニナツタノデアリマスガ、此ノ「法律でこれを定める」ト云フコトニハ、私モ全ク賛成デアリマシテ、政府ノ第二ノ案ノ方ガ宜イト思ヒマス、是ハマア宜イノデスガ、ソコデ御尋ネシマスガ、此ノ「日本國民たる要件」ニ付テ、是ハ其ノ權利、或ハ主義ト云フモノニ關シテ、何等カ政府デ法律ヲ作ル時ニ始メテ考ヘレバ宜イト云フノデアルカ、今現ニ何等カノ主義ヲ豫定シテオイデニナルカト云フコトヲチヨツト御尋ネ致シマス
○國務大臣（金森徳次郎君） 日本國民タルノ要件ニ付キマシテハ、實質的ニハ現在ノ姿ト違ツタコトヲ考ヘテ居リマセヌ、研究ノ結果、細カイ所ニ變化ガ起ルカモ知レマセヌケレドモ、現在ノ所ハ、現在ノ制度通リニ踏襲シヨウト云フ風ニ思ツテ居リマス
○佐々木惣一君 サウスルト、所謂建前ハ屬人主義デスナ、詰リ日本人ノ子デアルト云フ、日本人ノ子デアル者ヲ日本國民トスル、大體サウ取ツテ宜シウゴザイマスネ
○國務大臣（金森徳次郎君） 左樣デゴザイマス
○佐々木惣一君 ソレハマアソレデ宜イノデスガ、次ニ御尋ネシタイノハ、日本國民タルノ國籍ニ付テヾアリマス、其ノ地位ヲ或ハ取得シ、或ハ喪失スルト云フコトニ付テ、日本ノ國家ノ方ノ意思ト云フモノガ、ドノ程度迄及ブノカ、國家ノ意思ト云フモノト無關係ニ、サウ云フ國籍ヲ得タリ、又喪ツタリスルト云フヤウナコトニ付テ、ソレハ自由ダト云フ風ナ建前ヲ執ラレルノデアリマセウカ、ドウデアリマセウカ、ソレダケノコトヲチヨツト
○國務大臣（金森徳次郎君） 國籍ヲ特ニ付與致シマスル時ニハ、固ヨリ國家ノ意思ガ必要カト思ツテ居リマス、國籍ヲ離脱致シマスル場合ハ、此ノ憲法ノ中ニ離脱ノ自由ヲ可ナリハツキリ規定シテアリマスノデ、其ノ趣旨ト背馳セザル程度ニ於テ然ルベキ制度ヲ設ケタイ、斯樣ニ考ヘテ居リマス
○佐々木惣一君 ソレデ是ハ二十二條ノコトニナルノデスカラ、其ノ時ニ御尋ネスベキデアルト思フノデアリマスケレドモ、今御話ニナリマシタカラチヨツト御尋ネ致シマスガ、二十二條ノ所ニ行ツテ、更ニ詳シク御尋ヲ致シマス、自由ニ國民タルノ地位ヲ備ヘルコトガ出來ルト云フヤウナコトハ、國民タルノ消極的ノ要件デスカラ、ソレデ此處デチヨツト御尋ネシテ見タイノデスガ、其ノ時ニハ國家ノ意思ハ入ラヌノデスネ、ソレハドウ云フ理由デセウカ
○國務大臣（金森徳次郎君） 二十二條ノ場合ニ、「自由を侵されない」ト云フコトハ、國家ノ意思ガ入ラナイト云フコト迄ハ含ンデ居ルノデハナイト考ヘテ居リマス、此ノ考ヘ方ガ程度問題デアリマスケレドモ、國籍ノ問題ニ付キマシテハ、成ルベク人類全體ト云フモノヲ考ヘマシテ、其ノ流動ヲナダラカニシヨウト云フ趣旨カラ、二十二條ノ國籍離脱ノ自由ノ規定ヲ設ケテ居ルノデアリマスガ、之ニ對シマシテ、公益上ノ枠ハ入ツテ居リマスカラ、或程度ノ制約ヲ加ヘ得ルモノト見テ居リマス
○佐々木惣一君 私ハ此ノ二十二條ノコトハ此處デハ言ヒマセヌ、他日先ニナツテ申上ゲマス、唯此處デハ、大臣ノ方カラ御話ガアツタモノデスカラ、今ノ大臣ノ御説明デハ立法上ノ理由ソレ自身ニ、私ハ少シ疑問ヲ持ツノデスガ、疑問ヲ持ツト云フコトハ留保シテ置イテ、是デ私ハ質問ヲ打切リマス
○小山完吾君 チヨツト二、三分關聯シテ質問ヲ致シタイ、私ハ金森國務大臣ニ御尋ヲ致シタイノデアリマスガ、天皇ガ國民ト云フ文字ノ中ニ入ツテ居ルト云フ御答辯デゴザイマスガ、是ハ明文ノ上デ入ツテ居ナイト云フ解釋ヲシテハ、何カ御差支ニナルコトガアルノデゴザイマセウカ、此ノ質問ヲ申上ゲル私ノ疑問ハ何處カラ來ルノカト云フト、此ノ憲法草案ニ依リマシテモ、政府ノ最初ノ原案十三條ニ依リマスト「すべて國民は、法の下に平等であつて」ト云フコトガ書イテアリマス、是ハ所謂西洋ノ「天ハ人ノ上ニ人ヲ作ラズ、人ノ下ニ人ヲ作ラズ」ト云フヤウナコトノ思想ガ之ニ盛ツテアルノデアリマス、ソレカラ又、一國ノ元首ト申シマスカ、此ノ憲法草案ノ所謂象徴ト云フ文字ノ上カラ言ヒマスト、一般外國ノ憲法解釋等ニ依リマスト、甚ダ氣障ナコトヲ申上ゲルヤウデゴザイマスケレドモ、「キング・キヤン・デゥー・ノー・ロング」ト云フヤウナコトヲ言ツテ、此ノ象徴タルベキ至善ノ人ニ対シテハソレゾレ尊嚴ヲ保持スル色々ノ法制ガアル、此ノ憲法草案ニ於テハ、何處ニモサウ云フ文字ガ現レテ居リマセヌ、私ハ此ノ文字ヲ此ノ中ニ必要トスルト言フ敢テ論者デハアリマセヌ、併シナガラ國民ノ中ニ在リナント云フコトヲ言ハナクテ、本當ノ日本精神ニ依ツテ國民ノ上ニ在ラセラレルノダト云フ私ハ解釋ヲ持ツテ居リマスルカラ、ソンナ無答責ノ規定ト云フヤウナモノハ無クテ宜シイト思ツテ居ツタノデスケレドモ、只今國務大臣ハ、國民ノ中ニ在リト云フコトヲ言ハレ、一方ニ人ハ總テ平等デアル、人ノ上ニ人ヲ作ラズ人ノ下ニ人ヲ作ラズト云フコトヲ謳ツテ居ルノデス、サウスルトソレハドウナリマスカ、ソンナ細カイコト迄言ハナクテモ、私ハソンナ問題ニ觸レズニ國民ノ上ニ在ラレルト言ツテ差支ヘナイト思ヒマスガ、其ノ解釋デハ都合ガ惡イノデゴザイマセウカ、其處ヲ教ヘテ戴キタイ
○國務大臣（金森徳次郎君） 仰セニナリマシタ所ハ、常識的ニ言ヘバ其ノヤウニ考フルコトガ、色々ノ見地カラ妥當デアルヤウニ考ヘマス、併シ此ノ法律ノ上デ論議ヲ致シマス時、及ビ或根本的ナ問題ヲ考ヘマスル時ノ心ノ建前ト致シマシテ、矢張リ原案ニ考ヘテ居リマシタヤウナ、總テ御一人タル立場ニ於テハ、國民ノ中ニ含マレテ居ル、斯ウ致シマシタ方ガ妥當デアルト信ジテ居リマス、其ノ理由ハ、一ツハ天皇ガ國民ノ上ニ超越シテオイデニナルト云フ考ヘ方ハ、結局過去ノ或考ヘ方ヲ其ノ儘踏襲シタモノデアリマシテ、之ヲ論理的ニ推シ詰メテ行キマスルト、何ト申シマスカ超越的ナ地位デアツテ、結局國家ノ中ニ二ツノ階級ニ屬スル人ガ住ンデ居ル、治メル者、治メラレル者、是ガ國家ノ中ニ住ンデ居ル、斯ウ云フコトニナリ易イト思フノデアリマス、御互ニ此ノ國ヲ組立テテ居ルト云フ所ニ重點ヲ置キマスルナラバ、天皇ハ國民ノ中ニ含マルヽモノトシテ考ヲ進メテ行キマスルコトノ方ガ、君民一如ノ實體ニソグフモノデハナイカト、斯ウ云フ風ニ思ツテ居ル次第デアリマス、ソレガ根本ノ考ヘ方トシテ、左樣ニ此ノ思想ヲ懐イタ譯デアリマス、ソレカラ第二ノ實際的ノ規定ノ方面カラ考ヘテ見マスルト、天皇ノ個人ノ御地位ニ付キマシテ、色々ナ矢張リ法律的ナ關係ガ起ラザルヲ得ナイノデアリマシテ、サウ云フコトガ實際ニ起ルト云フ譯デハアリマセヌケレドモ、一番起リ易イノハ、財産關係ヲ中心トシタ民事上ノ問題デアラウト思ヒマス、或ハ租税ノ關係、是モ財産ニ關係シテ來ル問題ト思ツテ居リマス、サウ澤山必要ノ起ルコトハナイト思ツテ居リマスルガ、大體サウ云フヤウナ風ニ考ヘテ行キマシテ、個人タル御地位、個人タル財産、其ノ他ノ權利ノ關係ニ於キマシテ、矢張リ外ノ國民トハ、ドウ云フ關係ニアルモノデアラウカト云フコトヲ考ヘナケレバナラヌ場面ガ起ツテ來ルコトハ、是ハ必然ノコトト存ジテ居リマス、ソレヲ國民ノ憲法ノ外ニ置キマスルナラ、サウ云フ場合ニ、天皇ノ基本的ナ法律上ノ地位ヲドウ考ヘテ宜イカト云フコトニ原則ヲ失フノデアリマシテ、矢張リ何處カニ基本ノ考ヘ方ガ現レマスルヤウナ筋ヲ立テテ行ク方ガ宜イト思フノデアリマス、ソコデ、第三章ノ中ニ於テハ、私人タル御地位ノ上ニ於テハ、第三章ガ當テ嵌マル、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居ル譯デアリマス、唯現實ノ問題ト致シマシテハ、天皇ガ象徴タル地位ヲ御持チニナリ、度々繰返シマスル八面玲瓏タル御地位ト併セ考ヘマシテ、規定ノ實質ハ變ヘナケレバナラヌ場面ガ起ツテ來ルト思ツテ居リマス、斯ウ云フコトハ、此ノ場合ダケニ付テ申シマスルト、甚ダ或ハ奇異ナコトト御考ニナルカモ知レマセヌケレドモ、此ノ第三章デ、國民平等ト云フコトヲ言ツテハ居リマスルケレドモ、是ハ建前ガソレデアルト云フダケデアリマシテ、實質的ナル、合理的ナル場面ガ起リマスレバ、茲ニ不平等ノ起ルコトハ、一般ノ場合ニアルト思ヒマス、ソレハ不平等デハナイ、本質ハ平等デアル、規定ノ上ニ於テ不平等ガ起ルト云フコトニナラウト思ヒマス、極ク卑近ナ例ヲ申シマスレバ、選擧權ト云フモノハ、原則トシテ總テノ國民ガ持ツテ居ルト云フコトニナリマスルケレドモ、選擧ニ關係スル特殊ノ官吏ハ、其ノ行使ノ上ニ相當ノ制約ヲ受ケルト云フコトモ起リマシテ、ソレヲ何人モ怪ンデ居リマセヌ、詰リ原則的規定ハ他ノ種々ナル理由ニ依ツテ、此ノ憲法ノ許ス特例ガ有リ得ルモノト考ヘテ居リマシテ、サウ考ヘテ行キマスト、不合理ナ點モ起ツテ參リマセズ、マアサウ云フコトヲ考慮致シマシテ、斯樣ナ私ノ考ヘ方ヲ推シ進メテ居ル譯デアリマス
○小山完吾君 ドウモ私ハ、餘リ法律ノコトハ暗イノデ分リマセヌケレドモ、常識的ニ考ヘテ、サウ云フコトニナリマスト云フト、私ハ益々不安ニナルノデスガ、現在ノ天皇陛下ト云フモノヲ目ノ前ニ置イテ、サウ云フ論ヲスルト云フコトハ、甚ダ私ハ好マナイノデスケレドモ、抽象的ニ考ヘテ、天皇ト云フモノハ、矢張リ自然人ニ、「クラウン」サレタモノガ天皇ニナルノデスカラ、ソレハ例ヘバ是カラ非常ニ御自由ナ世ノ中ニ在ツテ、往來ニ散歩ヲナサルトカ何トカ云フコトガアツテ、何カノ間違ヒデ人ヲ撲ルトカ、或ハ宮中ニ於テ人ヲ傷ケルト云フヤウナ、私ハソンナコトヲ一體此處デ議シタクナイデスガ、國務大臣カラ法律的ト云フ御言葉ガアリマシタカラ、法律的ニ申上ゲマスガ、サウ云フ場合ニサウスルトドウナルカ、天皇ト雖モ癇癪ヲ起シテ人ヲ撲ルト云フコトモアラウ、マア、サウ一々、具體的ノ言葉ヲ用ヒルト云フコトハ甚ダ忍ビマセヌ、甚ダ聞キ苦シイコトデス、自然人トシテノ天皇ガ「ミスコンダクト」ヲシタ時ニ、何デ無答責ニシマスカ、此ノ規定ノ上デハ無答責ニスルコトハ出來ナイ、若シ政府ノ解釋ニ依ツテ國民ノ中ニ在リトスルナラバ、無答責ニスルコトハ出來ナイ、私ハソンナ込ミ入ツタコトヲ御言ヒニナラナイデ、イヤ、國民ノ上ニ在ラセラレル、象徴ダト言ヘバ、自然サウ無答責ノ規定ヲ規定シナクテモ宜シイ、現在ノ憲法ニ於テハ、甚ダ「ミスティック」ナ言葉デスガ、「天皇ハ神聖ニシテ侵スベカラズ」ト言ツテ、政治上ニ於テモ、私法上ニ於テモ、或ハ刑事上ニ於テモ、無答責ト云フコトガ明カニナツテ居リマスカラ、ソレデ宜シイノデスガ、其ノ邊ハドウナリマスカ、私ニハマダドウモ分リ兼ネマス
○國務大臣（金森徳次郎君） 御尋ノ點ハ、結局天皇ガ其ノ象徴タル地位ト云フコトニ基本ヲ置イテ、ドウ云フ現實ノ法律ノ影響ヲ御受ケニナルカト云フコトニ歸着スルト思ヒマスガ、前々カラ御説明申上ゲマシタ通リ、原案者ノ考ヘ方ト致シマシテハ、斯樣ナ象徴的地位ニ在ラセラレル天皇ハ、政治的ノ行動ニ於テモ、又刑罰上ノ扱ヒニ於テモ無答責デアルコトガ根本ノ條理デアル、是ハ態々成文ヲ俟タナクテモ、斯樣ナコトニナルモノト思フト云フ風ニ了解ヲ致シテ居リマス、且又斯樣ナ成文ヲ設ケマスコトガ、國民常識ニ寧ロ合ハナイ、デスカラ無クテモ宜イ規定デアリ、之ヲ入レルコトガ却テ國民常識ニ合ハナイト云フノデアルナラバ、無イ方ガ宜イト云フコトニナリマシテ、此ノ第一章ニハ左樣ナ規定ハ含マレテ居リマセヌ、併シ解釋ト致シマシテハ、當然無答責ノ原理ガ存在シテ居ルモノト考ヘテ居ルノデアリマス、併シソレハ一般ニ謂ハレテ居リマスヤウニ、政治ノコト、及ビ天皇ノ御地位ト相應ハシカラヌコトデアル所ノ範圍ニ限定サレテ居リマスガ故ニ、例ヘバ民事上ノ責任ナドハ、是ハ除外サルヽコトハ直チニハ有リ得ナイト思ツテ居リマス、左樣ナ民事上ノ責任等ニ付キマシテ、ドウ云フ風ニ致シマスコトガ、天皇ノ御地位ト調和スルデアラウカ、ト云フ問題ガ起リマシテ、ソレハソレ等ノ私法關係ヲ規律致シマス場合ニ、妥當ナ制度ヲ設クル、斯ウ云フ考ヲ持ツテ居リマスカラ、御議論ノ實質ニハ觸レナイヤウニ、運用及ビ解釋ハ出來上ツテ居ルヤウニ存ジテ居リマス
○小山完吾君 只今ノ御答辯デ分ツタ點モアリ、分ラナイ點モアリマシテ、殊ニ私法上ノ事柄ハ又別ノ法律デナルト云フヤウナ御口吻ガアリマシタガ、是コソ、天皇ノ最モ大切ナル尊嚴ヲ傷ケルコトデ、左樣ナ問題コソ、憲法ニ規定サルベキモノト私ハ考ヘテ居リマス、サウスルト、結局議論ノ相違ニナリマスガ、唯、私ハ質問ヲ打切ルニ付キマシテ一言申上ゲマスコトハ、何故ニ現ニ問題ニナツテ居リマス憲法草案ニ於テ、天皇ハ國民ノ中ニ在リト解釋シナケレバ、差支ガ生ズルカ、私ハソンナ差支ハ生ジナイ、是デ宜シイト思ツテ居ルノデスガ、ソレヲ強ヒテ國民ノ中ニ在リト云フ御解釋ハ、アチラコチラニ差支ヲ生ジテ、ドウ考ヘテ見テモ、天皇無答責、「キング・キヤン・デゥー・ノウ・ロング」ト云フ保障ハナケレバナラヌ筈ダト思ヒマスケレドモ、ソレハ議論ニナリマスカラ、ソレダケノコトヲ申上ゲテ置キマス
○松本學君 私モ今、小山サンノ御質問ニ關聯シテ伺ヒマス、私モ小山サント同ジヤウナ考ヲ持ツテ居ルノデアリマシテ、天皇ハ國民ノ外ニ居ラルベキダト思フノデアリマスガ、併シ是ハ此ノ憲法ヲ審議スル上ニ於テ、金森國務相ガ、何時モ國民ノ中ニ天皇ガ在ラセラレルト云フコトヲ仰シヤツテ居リマスノデ、一應、私ハソレニ同意ヲシテ居ルノデアリマス、併シソレハ、斯ウ云フ意味ニ於テ私ハ了解シテ居ツタノデアリマス、第一章ノ前文ニアリマス、主權ハ日本國民ニ在ル、アノ日本國民ト云フ、其ノ意味ノ日本國民ノ中ニハ天皇ガ御在リニナルト云フコトハ、是ハ私ハ一應了解ガ出來ル、併シ第三章ノ「國民の權利及び義務」ノ此ノ國民ノ中ニハ、天皇ヲ御含マシメテ居ルノデナイト云フ風ニ私ハ實ハ了解シテ居ツタノデアリマス、ソレハドウ云フ意味カト言ヘバ、第一條トカ前文ノ日本國民ト云フ此ノ國民ハ、歴史的ニ二千數百年來、ズツト續イテ來テ居ル此ノ日本國民デアリ、サウシテ又未來永劫、子孫ニ續イテ行ク日本國民ト云フ意味ニ私ハ解釋シテ居ツタ、デアリマスカラ、現代ノ我我七千五百萬ノ日本國民ト云フ意味ニ私ハ取ツテ居ナイノデス、一ツノ歴史的ナ一貫シタ日本國民、其ノ中ニ主權ガアル、其ノ中ニ天皇モ公トカ私トカト云フコトデナシニ‥‥、元來、私ハ天皇ニ公ノ資格トカ、私ノ資格ト云フモノハナイト思フ、天皇ハ公私ヲ一ツニシタ御存在ヂヤナイダラウカ、苟モ天皇ヲ論ズル時ニ、公ノ御地位トカ私ノ立場ト云フコトハ私ハ考ヘラレヌコトヂヤナイカト思フ、サウ云フコトデアルト云フト、「日本國の象徴」デアルトカ、「國民統合の象徴」ト云フ尊嚴サガナクナルノヂヤナイカ、公私ヲ超越シタ存在ト云フ風ニ私ハ考ヘルノデアル、苟モ天皇ノ御身分ヲ、公ノ場合ト私ノ場合トニ分ケテ考ヘルノハ、根本的ニ誤ツテ居ルノヂヤナイカト思フ、サウ云フ意味ニ於テ、第一章ノ日本國民ト第三章ノ國民ト云フコトトハ、私ハ觀念ガ違フノヂヤナイカト思フ、第三章ノ國民ト云フノハ、是ハ歴史的ノ存在デアル國民ヲ意味シテ居ルノデヤナクシテ、現代ノ我々、生キテ居ル此ノ國民、言葉ヲ換ヘテ言フナラバ、我々一人々々ノ國民ガ天賦ノ人權ヲ持ツテ居ル、基本的ナ人權ヲ持ツテ居ル、斯ウ云フ意味ニ實ハ解釋シテ居ツタノデアリマス、サウ云フ風ニ解釋スルナラバ、第三章ニ於テハ、一應此ノ中ヘ個人的ナ天皇ヲ含メテ置イテ、而モソレガ第一條ノ象徴デアルカラ、此ノ中ノ條項ノ或ハ第何條ト第何條ハ天皇ニ適用サレナイノダト云フ、窮屈ナ御解釋ヲナサラヌデ宜イノヂヤナイカ、私ハ斯ウ云フコトヲ申スノハ、先達ツテ私ガ總理大臣ノコトニ付テ御尋ネシタ時ニ、金森國務相ハ、原案ノ九十五條ノ國務大臣ト云フ解釋ノ中ニハ、總理大臣ガ入ツテ居ル、七條ノ第五號ノ國務大臣ノ中ニハ總理大臣ガ入ツテ居ナイト云フ御解釋デアツタ、私ハ其ノ時ニ、一ツノ憲法ノ中ニ同ジ國務大臣ト云フ文字ガアツテ、其ノ中ニ、或場合ニ總理大臣ヲ含ム、或場合ハ含マナイト云フコトニシテ、解釋上ヲカシクナルノデハナイカト云フコトヲ申上ゲタノデアリマスガ、サウ云フ解釋モ出來ルダラウト思フ、サウデアルトシマスナラバ、今、私ガ申上ゲタヤウナ意味ニ於テ、國民ト云フ意義ヲ第三章ノ國民ト一條及ビ前文ニ於ケル日本國民ト云フモノトハ、別ナ御解釋ヲナサツタナラバ、只今小山委員カラ御話ノヤウナ疑問モ起キナイデ解決ガツクノデハナイカト思フノデアリマスガ、如何ナモノデアリマセウカ
○國務大臣（金森徳次郎君） 御説ノ趣旨ハ能ク了解致シマシタ、併シ繰返シテ申シマスヤウニ、法律ノ考、詰リ極メテ法律家的デアルト云フ譯デハナイ立場ニ於テ、之ヲ論議致シマスレバ、恐ラク御説ノヤウニナツテ然ルベキモノト思ツテ居ルノデアリマス、併シナガラ純理ヲ盡シテ法律家的ナ考ヘ組立ヲ以テ行キマスルト、若シモ天皇ヲ此ノ第三章ノ國民ノ中ニ含セナイトスレバ、實際的ニ申シマシテモ天皇ニ關スル法的根據ト云フモノガ非常ニ稀薄ニナリマシテ、却テ筋ノ通ラナイコトニナルト思ツテ居ル譯デアリマス、併シ私共ノ着想ハ寧ロ其處デハナクテ、我我ハ天皇ヲ出來ルダケト云ヒマスカ、絶對的ニ國民ノ中ニ置イテ之ヲ把握シヨウト考ヘテ居ルノデアリマス、國ノ中ニ全然別ニ考フベキ人ガアルト云フ考ヘ方デハナクテ、全ク一視同仁、或ハ君民一如ト云フコトヲ徹底致シマスナラバ矢張リ一ツノ概念ノ中ニ入レテ、サウシテ各種ノ規定ヲ設クルコトガ國民精神ノ行キ道ニ合フモノデハナカラウカト考ヘルノデアリマシテ、ソレカラ先ハ各々御議論ガアルコトト思ヒマスルガ、私共ノ過去ノ經驗カラ申シマシテ、日本ノ此ノ近キ過去ニ於キマスル多クノ思想ノ混亂ノ根源ハ何デアルカト云フト、天皇ヲ超越的ナル立場ニ置イテ、國民ノ外ニ置イタト云フ思想ガ禍ヒヲ爲シテ居ルノデハナイカ、天皇ガ我々ノ中ニ、心ノ結附キノ中心トシテオイデニナルコトヲ忘レテ、外ニアルト云フ風ニ着想シ、ソレガ素朴的ナル國民ノ間ニ言葉通リニ流レ込ミマシテサウシテ忌ハシキコトガ起ツタト云フ風ニ考ヘテ居リマス、サウ云フ考ヘ方ヲシナイデ、勿論識者ハ御覽ニナリマスレバ、ドウ云フヤウニ此ノ規定ヲ構成致シマシテモ間違ヒハ起ラナイト思ヒマス、簡單ニ、明瞭ニ國民ノ中ニ天皇ハ御在リニナルト云フコトヲ達成致シマス爲ニハ、此ノ憲法ノ行キ道ノヤウニ包容的ナル規定ノ仕方ヲスル方ガ妥當デアルト考ヘ、又事物ノ本質ニ適ツテ居ルト思フ次第デアリマス、唯實行的ナ面ニ於キマシテハ、少クトモ、モウ固ヨリ、天皇ニ第三章ノ個々ノ規定ガ言葉通リニ當テ嵌マルノデハナイト思ツテ居リマス、且ツ又、憲法ニ基イテ諸般ノ法令ガ出來マス時ニデモ、其處ニ國民ヲ刺激スルヤウナ規定ヲ設クルコトハナイト信ジテ居リマス、併シ物ノ考ヘ方ト致シマシテハ、私ノ御説明ヲ申上ゲマシタ行キ道ノ方ガ妥當デアル、殊ニ又釣合ノ點カラ考ヘマシテモ、第一章ト前文ノ中ニハ天皇ガ入ツテ居ル、第三章ニハ入ラナイ、或ハ皇族ハ國民デアツテ天皇ニ御成リニナルト國民デナクナル、天皇ハ國民カラシテ、天皇ト云フ特殊ナ國民デナイモノニ御成リニナルト云フヤウナ思想ハ、是ハ附隨的ナコトデハアリマスケレドモ、私共ノ説明ノ立場カラ申シマスト、何トナクソグハナイヤウナ氣ガスルノデアリマス、ドウモ天皇ハ其ノ地位ニオイデニナル前ト後ニ於ア、滑カナ其ノ地位ノ御説明ガ出來ルヤウナ風ニ考フルコトガ妥當デアルヤウニ考ヘテ居リマス
○松本學君 私モ金森國務相ト同ジ考デアルノデアリマス、天皇ハ別ナ所ニ捧ゲテ、唯別個ノ御存在トスルコトハ、只今御話ノヤウナ弊害ガ起ツテ來ル、何ダカ親シミノナイ感ジヲ持ツノデアリマス、我等ノ天皇ト云フ意味ニナレバ、國民ノ中ニ天皇ガオイデニナルト云フコトヲ私ハ信ジテ居リマス、又ソレヲ恐ラク國民モ信ジテ居ルダラウト思フ、其ノ點ニ於テハ同ジナノデアリマスガ、唯私ガ此處デ申上ゲマシタコトハ、此ノ憲法ヲ解釋スル上ニ於テ、第三章ノ國民ノ中ヘ、一應國民ト云フ文字ガアルカラト云フダケデ、又國民ノ中ニ天皇ガ含マレテ居ルト云フコトガアルト云フコトダケデ以テ、此ノ第三章ノ中ヘ天皇ヲ一應入レテ置イテ、サウシテ無答責トカ、色々ナ問題ガ起キル時ニ、國民デハアルケレドモ、第一條ガアルカラ別ナ扱ヒヲスルノダト云フヤウナ御説明ヲナサルヨリモ、國民ノ中ニ天皇ガ居ラレルコトハモウ明カナコトデ、是ハ第一條ニ於テハ前半ニ於テモ日本國民ト云フ中ニハ、先刻申上ゲタヤウナ意味ニ於テ、私ハ此ノ面ヲ解釋スレバ、天皇ガ其ノ中ニ含マレテ居ルコトハ當然ナコトデアリマスガ、三章ノ國民ノ中ニハ、天皇ヲ御含ミシナイト云フコトニ御説明ニナツタナラバ、此ノ憲法ヲ解釋スル上ニ於テ、法理論ニ於テモ何等ノ支障ガナイト思フ、ソレハ何故カト言ヘバ、沿革的ニ申シテモ、臣民ノ權利義務ハ現行憲法ニアルノデ、其ノ臣民ノ權利義務ト云フ意味ヲ、其ノ儘第三章ガ承ケテ居ルノヂヤナイダラウ、サウスレバ、此ノ國民ト云フ言葉ハ、謂ハバ臣民ト云フコトデアツテ、先刻私ガ申上ゲタヤウニ、現代ノ、今日日本ヲ拵ヘテ居ル此ノ我々、現代ノ此ノ一人一人ノ國民、サウ云フ意味ニ御解釋ニナレバ、三章ヲナダラカニ御説明ガ出來テ、天皇ヲ、サウ云フ窮屈ニ、一應此ノ中ニ入レテ置イテ、又一條ガアルカラ之ヲ除クノダト云フヤウナ御説明ヲナサラナイデ濟ムノヂヤナイカト實ハ思ツタモノデスカラ、御尋ネシタ譯デアリマス、併シ是ハ私ノ、又今言ハレタヤウニ意見ノ相違カモ知レマセヌガ、併シ一應、私ハサウ考ヘマスガ如何デアリマセウカ、臣民ノ權利義務トアリマシタモノガ、此ノ三章デ國民ノ權利義務ト變ツタノデアリマスカラ、サウ云フ意味ニ御解釋ガ出來ナイモノデアリマスカ
○國務大臣（金森徳次郎君） 第三章ニ於キマシテ、此ノ國民ノ中ニ天皇ガ含マレルダラウト云フ議論ハシタクナイノデアリマスケレドモ、既ニ法律的ニ摘發サレタ限リハ、ドウシテモソレニ對スル政府ノ態度ヲ述ベナケレバナラヌ、斯ウ云フヤウナ譯デアリマシテ、恐ラクハ是ハ理論ヲ満足セシムル間ニ起ル問題デアリマシテ、本當ヲ言ヘバ、ソレニ深入リシナイコトノ方ガ適當ダラウト思ツテ居ルノデアリマス、併シ強ヒテ言フト云フコトニナリマスルト、諸般ノ考ヘ方、私ハ曩ニ色々ナ考ヲ述ベマシタガ、サウ云フ考ヲ綜合シテ説明シテ行ク道行カラシテ、私ノ申シマシタ範圍ヲ超ユルコトハ可ナリ困難ナ問題ト存ジテ居リマス、只今此處デ起リマシタノハ、含マヌト云フ考ヲ是認セラルヽ傾向ノ御質疑デアリマシタケレドモ、一方、又區域ヲ離レマスルト、含マセナケレバ承知シナイト云フ議論モ相當アルノデアリマシテ、論理的ニ言ヘバ相當充實シテ居ル考デアルト思ツテ居リマス、今私共ハ矢張リ所信ヲ以テ當初カラノ考ヲ甚ダ相濟ミマセヌケレドモ、變ヘナイデ申上ゲテ居ル次第デアリマス
○松本學君 モウ意見ノ相違デアリマスカラ、私ハ是デ止メテ置キマス
○霜山精一君 關聯質問ヲ致シタイ
○委員長（安倍能成君） 霜山君、簡單ニ願ヒマス
○松村眞一郎君 松本君ニ關聯スル譯デアリマセヌガ、私ノ質問ハ十條ヲ言ウテ居ルノデ、私共モ言ヒタイノデス、關聯ノ方ガ先ニナリマスト、通告シテ居ル方ガ後ニナルト云フ譯デゴザイマスガ、私ハソレハ重大視シテ居ル、國民ノ意義ト云フコトデ關聯質問、關聯質問ト云フコトデ行キマスト、通告質問ノ方ガ後ニナリマス
○委員長（安倍能成君） 霜山君、簡單ニヤツテ下サイ
○霜山精一君 佐々木委員ノ御質疑ニ關聯スル質問ヲ致シタイト思ヒマス、天皇ヲ國民ノ中ニ含マナイカト云フコトハ、今議論ノ焦點ニナツテ居ルノデアリマスルガ、是ガ金森國務相ノ言ハレル如ク含ムト致シマシテ、第三章ノ國民ノ權利義務ノ規定ガ如何ニ天皇ニ適用サレルカト云フコトヲ考ヘテ見マスルト、殆ド適用セラレル規定ハナイノデハナイカト考ヘルノデスガ、ソレハソレトシテ國民ノ中ニ含ムト云フコトニスレバ、天皇及ビ皇族ノ權利義務ト云フモノハ一般ノ國民ト異ナツテ居リ、別ナ權利義務ガアル譯デアリマス、此ノ天皇及ビ皇族ノ權利義務ニ付キマシテハ、今日デハ皇室典範ト云フモノガ基本ノモノニナツテ居リマシテ、其ノ皇室典範ノ下ニ、色色ナ天皇、皇族ニ關スル皇室令ト云フモノガ出テ居リマス、是等ニ依リマシテ、一般臣民ト異ナル權利義務ガ規定セラレテ居ルノデアリマスルガ、皇族ニ付キマシテハ例ヘバ皇族身位令ト云フ皇室令ガアリマシテ、此ノ中ニ失踪ノコトナンカモ規定シテアリマス、元來失踪ノコトハ民法ノ規定シテ居ル所デアリマスケレドモ、皇族ニ付テハ、特別ナ失踪ニ關スル規定ヲ設ケテ居リマス、又懲戒ノ規定ガアリマシテ、普通、懲戒ト云フノハ官公吏ニ付テアルコトデアリマセウガ、皇族ニ付テハ特ニ懲戒ノ規定モアルヤウデアリマス、或ハ又皇族ニ付キマシテハ、住所ノ制限ト云フモノガアリマシテ、東京市内ニ住所ヲ持ツテ居ナケレバナラヌ、或ハ皇族ハ商工業ヲ營ミ營利ヲ目的トスル法人其ノ他ノ團體ノ社員、會員又ハ役員トナレナイ
○委員長（安倍能成君） 成ルベク簡單ニ願ヒマス
○霜山精一君 ソレカラ皇族ハ報酬ヲ受ケル職ニ就クコトガ出來ナイ、或ハ公共團體ノ吏員又ハ議員トナルコトガ出來ナイ、斯ウ云フ風ニ色々ナ制限ヲ受ケテ居リマシテ、法ノ下ニ平等デアルベキ國民ノ一人トシテ、相當ニ寧ロ不平等ナ取扱ヲ受ケテ居ルノデアリマス、尚又皇族ニ付キマシテハ、皇室裁判令ト云フモノガアリマシテ、裁判ニ付テモ特別ナ規定ガ出來テ居リマシテ、一般ノ國民ト同ジヤウナ裁判トハ規定ガ違フノデアリマス、其ノ外又、色々即位ノ場合ノ登極令トカ、或ハ攝政令トカ、或ハ立儲令、皇太子ヲ立テル令トカ、色々ナ皇室令ガ出來テ居リマシテ、特別ナ權利義務ノ關係ニ立ツテ居ラルヽノデアリマス、是ガ總テ皇室令ニ依ツテ出來テ居ルノデアリマスルガ、斯クノ如キ天皇及ビ皇族ノ權利義務ニ關スル規定ハ、今後法律ヲ以テ定メルコトガ必要ナノデアルカドウカ、國民ニ付テハサウ云フ重大ナル權利義務ニ關スルコトハ、大體法律デ決メテ居ルノデアリマスルガ、國民以上ニ特殊ノ超越シタ地位ヲ持ツテ居ラレルノデアリマスルカラ、斯ウ云フ權利義務ニ付テハ法律ヲ要スルノデハナイカト思フノデアリマス、皇室典範ハ法律ト云フコトハ書イテアリマスルケレドモ、皇室典範ニ規定セラレテ居ラナイ、今申上ゲタヤウナ權利義務ニ關スルコトモ、矢張リ法律ヲ以テ定メルコトガ必要ナンデハナイカト考ヘルノデアリマシテ、其ノ點ニ於キマシテ、是ハサウ云フ權利義務ニ關スルコトハ法律デ定メル、斯ウ云フヤウナコトガ憲法ニ一ツ要ルノデハナイカト云フコトヲ考ヘルノデアリマシテ、普通ノ命令、政令ノヤウナ簡單ナ法律デサウ云フコトヲ定メルコトハ當ヲ得ナイ、重大ナル問題デアリマスルカラ法律ヲ要スル、法律ヲ要スルト云フコトハ、憲法ニ規定シテ置カナイト、必ズ法律デヤラナケレバナラヌト云フコトニナリマセヌカラシテ、是ハ憲法ニ何カ其ノ點ノ規定ヲ設ケル必要ガアルノデハナイカト考ヘルノデアリマス、此ノ點ニ付テ‥‥
○子爵大河内輝耕君 議事ノ進行ニ付テ、只今ノ霜山君ノ質問ハ、私ガ十三條デ訊カウト思ツテ居ツタコトヲ御訊キニナツタ、ソレ迄待ツテ居ツタ、ソレ迄御答ヲ御待チニナツテ戴キタイ、私ガ訊カウト思フコトナンデス、十三條ノコトナンデス
○松村眞一郎君 議事ノ進行ニ付テ發言デアリマス、私ハ今ノ場合ハ關聯ト思ヒマセヌ、通告シテ居ル者ヲ先ニヤツテ戴イタラドウデゴザイマセウカ、成ルベク本當ノ關聯デアルカ、關聯ノ程度ニ、出來ルダケ「コンデンス」シテ戴キタイ
○子爵松平親義君 議事ノ進行ニ付テ、差出ガマシイコトヲ申上ゲルヤウデゴザイマスガ、關聯質問關聯質問ト仰シヤイマシテ段々御發言ニナリマスト、只今ノヤウナ混亂ガ起キル虞ガゴザイマスルカラ、關聯質問ノ御發言ノ要求ガアリマシタ場合ハ、委員長ニ於カレマシテ、ドウ云フコトニ付テ關聯事項ノ質問デアルカト云フコトヲ一應御尋ネ下サイマシテ、其ノ上デ然ルベク委員長ノ御判斷ニ依ツテ、後ニソレト同樣ナ質問ガアルト云フヤウナ場合ニハ、其ノ發言ヲ委員長ニ於テ御禁ジニナルト云フヤウナ形ニシテ、關聯質問デアルカラト云ツテ無制限ニ御許シニナルト云フト、只今ノヤウナコトガ起ルト思ヒマスカラ、私ハサウ云フ風ナ希望ヲ一言申上ゲテ置キマス
○川村竹治君 私モ其ノ點ニ付テ、ドウモ都合ガ悪イト思ヒマスカラ、斯ウシタラ如何デセウカ、其ノ通告ノ人ガ質問ヲ終ツテカラ後ニ、關聯質問ヲスレバ宜イ、サウスルト關聯質問ノ人ガチヨツト機會ヲ失スルヤウナ場合ガアルノデアリマスガ、チヨツトサウ云フコトニ願ヒタイ
○委員長（安倍能成君） ソレデハ關聯質問ニ付テハ通告ノ後ニヤツテ戴クコトニシマス、特ニ非常ニ急ヲ要スルト云フヤウナ場合ハ、ソレハ其ノ内容ニ依ツテ特ニ許可スルコトニ致シマス、殊ニ是ハ第十條ダケノ問題デスカラ、殆ド皆關聯質問ト云フコトニナル、サウ云フ場合デアリマスカラ、少クト此ノ第十條ニ付テハ、通告ノアツタ方ノ後ニ質問シテ戴キマス、サウ云フコトニ致シマス
○澤田牛麿君 私ノ御伺ヒシタイコトハ、モウ關聯質問デ大部分解消シテ居リマスカラ、モウ立タナクテモ宜シイノデゴザイマスケレドモ、通告シテアリマスノデ、チヨツト又違ツタ、今迄ノ御發言トチヨツト違ツタ所モアリマスカラ、ソレダケ申上ゲテ置キマス、金森國務相ノ御答辯ニ依レバ、此ノ立法者ノ解釋ハサウ云フ風ニスルケレドモ、解釋ハ勝手デアルカラ、必ズシモ立法者ノ解釋ガ動カス可カラザルモノト云フヤウナ、窮屈ナモノデナイト云フ御答辯ガアツタヤウデアリマス、ソレハ誠ニ其ノ通リデアルト思ヒマス、併シ私ハ假令サウデハアツテモ、成ルベク立案者トソレカラ之ヲ解釋スル人トノ解釋ガ一致スルヤウナ方向ニ事ヲ進メテ行クト云フコトガ望マシイコトト思ヒマスカラ、ソコデ先程金森サンノ仰シヤツタヤウニ、解釋ハ勝手アルトハ言フモノノ、政府ノ解釋モ、又我々質問者ノ中ノ或者ノ解釋ガ適當デアルトスレバ、時ニ御改メニナツテモ、憲法其ノモノヲ破ル譯デモアリマセヌカラ、御改メニナツテモ宜イノヂヤナイカト斯ウ思ヒマス、ソレデ國民ノ中ニ天皇ヲ含ムカドウカト云フ第十條ノ問題ハ、是ハ金森サンガ含ムト云フコトヲ固守ナサルノハ、一條ヤ何カノ關係カラ、ドウモ已ムヲ得ズサウ言ハザルヲ得ヌト云フ、マア、是ハ法理論デアリマセウケレドモ、サウ謂ハザルヲ得ヌト云フヤウナ關係ニ御立チニナツテ居ルト云フコトヲ察シマシテ、御苦心ノ點ヲ御同情ト言ツテハ失禮デスケレドモ極メテ御同情的ノ解釋ヲスルノデアリマス、ソコデ一ツ金森サンニ其ノ點ダケハ御改メニナツテハドウカト云フ一ツノ材料ヲ提供シタイト思ヒマスケレドモ、新草案ハ成ル程、現行憲法ヲ仝然顧ミナイ案デハアリマスルケレドモ、併シ七十三條ト云フコトニ依ツテ、兎モ角モ是ハ議論ハアリマスケレドモ、現行憲法トノ繋ガリヲ持ツテ居ルモノト云フコトニ一應落チ著イタト思ヒマスカラ、其ノ意味カラ申シマスト、現行憲法ノ規定ト云フモノガ矢張リ或場合ニ於テハ參考ニナルモノ、法律解釋ノ材料ニ矢張リナルベキモノト思フノデアリマス、サウスルト丁度是ハ何カソレニ當ルカドウカ知レマセヌケレドモ、「ローマ」法ノ「レセブション」ト云フヤウナ關係ガ、此ノ現行憲法ト草案トノ間ニ、或程度ニ於テハ私ハ存在スルモノト思ヒマス、其ノ意味カラシマスト此ノ第三章ノ國民ノ權利義務ト云フコトハ、現行ノ憲法ニ臣民ト云フ規定ガシテアルノデセウカラ、ソレノ矢張リ一種ノ繼續デアルト思フノデアリマス、唯言葉ガ臣民ト云フト封建的ダト云フ此ノ頃ノ流行デ、人民トセナクテハイケナイ、人民ト言ハナケレバナラヌ、國民ト言ハナケレバナラヌト云フノデ、臣民ト云フ字ヲ國民ト換ヘタニ過ギナイノデアツテ、是ハ天皇ト云フモノヲ全然含マナイ考ト云フモノガ矢張リ繼承サレテ居ルモノト思フノデアリマス、サウ云フ意味カラ見マスト、現行憲法ヲ解釋上ノ一ツノ援助トシテ、何ト言ヒマスカ、援用ト言ヒマスカ、援助ト言ヒマスカ、サウスレバ、此ノ三章ノ國民ト云フコトハ臣民ト云フコトト同ジヤウナ意味ダ、臣民ト云フ言葉ガ不穏當ダカラ變ヘルノダケレドモ、意味ハ同ジモノダト解釋スルノガ正當デナイデセウカ、サウスルト金森國務相ノ御答辯ハ、誠ニ御苦心ノ點ハ御想像申上ゲル譯デアリマスルガ、其ノ點ニ限ツテハ御改メニナツテ、成ル程國民ト云フ字ニ二樣ノ意味ガアルト云フコトハ、或意味カラ言ヘバ、解釋上不當ダト云フコトガ言ヘマスケレドモ、此ノ草案ノ中ニモ二樣ノ意味ノアルヤウニ使ハレテ居ル場所モアルヤウデアリマスガ、此ノ場所ニ限ツテハ天皇ヲ含マナイ國民ト云フコトト内容ハ同ジダト云フコトニ御改メニナツテハ如何デゴザイマセウカ、唯ソレダケヲ申上ゲテ私ノ質問ハ打切リマス
○國務大臣（金森徳次郎君） 固ヨリ非ト認メマスレバ改メルコトハ欣ンデ之ヲ致スベキ次第ト考ヘテ居リマス、併シ今迄私ノ申上ゲマシタコトハ、私自身ノ見ル所ニ依リマシテハ、當初ノ考ヲ今日迄ノ道行キニ於テ改メナケレバナラヌトマダ考ヘ及ビマセヌ、甚ダ申譯ナイ次第デアリマスケレドモ、私ノ所見ヲ斯ク申上ゲテ置キマス
○松村眞一郎君 私ハ國民ト云フコトハ第三章ノ表題ヲ言ツテ居ル條文ニ付テ申出ヨト云フコトデアリマスカラ十條ニナツテ居リマスケレドモ、三章ノ表題ヲ先ヅ先ニ論ゼラルベキコトト思フノデアリマス、其ノ意味ニ於キマシテ第三章ノ表題デ私ハ議論致シマス、色色金森國務大臣ノ解釋ヲ改メヨトカ云フヤウナ御注文ガアリマスケレドモ、私ハ解釋ト云フ字ヲ此ノ際使フノハ、ソレハ誤デアルト思フ、我々ハ立法ヲ致シテ居ル、如何ナル意味デ此ノ文字ヲ使フカト云フコトヲ研究スベキデアリマス、解釋ハ出來テカラ後ノ話デアリマス、ソンナコトヲ此處デ論ジテ居ルガ故ニ、金森國務大臣ノ解釋ヲ改メテ貫ヒタイト云フヤウナ御注文ヲシナケレバナラヌヤウナコトニナルト思ヒマス、私ハ斷乎トシテ此ノ國民ノ中ニ天皇ハ含マナイコトハ先達テモ申上ゲマシタ私ハ金森君ノ御意見ヲ伺ツテ私ノ意見ヲ決メルヤウナ態度ヲ執ツテ居リマセヌ、自分デ決メテ參リマス、ソコデ、私ハ此ノ國民ノ中ニハ天皇ハ含マナイト云フコトノ意味ニ於テ‥‥解釋ヂヤアリマセヌ、サウ云フ意味ニ於テ此ノ立法ヲスルコトニ協賛スルノデアル、解釋ハ出來テカラノ問題デアル、ソンナコトヲ、裁判所ノコトヲ今カラ研究スルコトハナイ、解釋ト云フ字ハ今カラ止メテ御議論願ヒタイ、解釋論ハ後ノ話、ソコデ私ハ此ノ國民ノ中ニ天皇ハ入ラナイト云フ意味ハ、只今澤田サンノ仰シヤツタコトモ私ハ考ヘナケレバナラヌト思ヒマス、元來第三章ノ國民ノ權利義務ト云フコトハ、是ハ沿革ヲ離レテ論ズルコトハ出來ナイ、是ハ必ズシモ大日本帝國憲法ノ沿革ノミデハナイ、是ハ十八世期トカ、十九世期トカ二十世期トカ云フコトニ付テ度々權利義務ニ付テ、詰リ國民ノ基本的義務ニ付テハ牧野博士モ高柳博士モ總テ學者ノ方ハ度々仰シヤツテ居ル、モウ少シ現代的ニシヨウヂヤナイカト云フコトヲ仰シヤツテ居ルノデ明カナル如ク、是ハ沿革的ニ解釋スルノ外アリマセヌ、ソコデ從來ノ憲法ノ議論ヲ致シマスト、主權者ノ統治權ナリ、大權ナリ、立法權ナリノ制限ノ規定ナノデアリマス、國民ノ權利ヲ斯クノ如キヤウニ保護シテ立法スベシ、斯クノ如クニシテ行政ヲ行フベシト云フ、斯ウ云フ規定デアリマスカラ其ノ中ニ天皇ガ入ル譯ハアリマセヌ、ソレヲ色々天皇ハ入ルト云フヤウナコトヲ仰シヤツテ居ツテ、國民ト天皇トハ一體ニナラナケレバイカヌト云フコトハ、是ハ憲法論デナイソレハ國民誰デモ考ヘテ居ルコトナノデアル、處ガ憲法ハ法デアリマスカラ此ノ法ノ中ニ其ノ感情デ以テ、國民ノ中ニ入レナケレバ感情ガ崩レルト云フヤウナ考デ憲法ヲ立法シテハイカヌヂヤナイカ、私ハ斷乎トシテ天皇ハ入ラナイ、天皇ガ入ルト金森國務大臣ノ言ハレル如ク一旦入レテ置イテ後カラ出サナケレバナラヌト云フヤウナ説明ヲサレル、是ハ何人モドウシテモ承服シテ居ナイ、立法論ニナリマスト斯ウナリマス、立法ノ際ニ於テ國民ト云フ字ヲ書イタ場合ニハ、私ハ斷乎トシテ入ラナイト云フ解釋ヲ取ツテ居ル、政府ハ入ルト云フ解釋ヲ取ツテ居ルノハ何故カ、此ノ儘出シタナラバ、今度ハ解釋ニ入ツテ行クト、兩方ノ解釋ガ出來マス、立法者ガ斯クノ如ク二ツノ解釋ヲ殘スヤウナ、生ズルヤウナコトヲ立法ノ初ニヤルト云フコトハ、解釋ノ自由ノ範圍ニ任セルノデアルト云フ態度ヲ取ルカドウカト云フコトガ我我ノ立場デアル、若シ立法ヲスル二人ノ間ニ、其ノ中ニ入ル、入ラヌト云フコトヲ規定スル場合ニハ國民ト書イテ天皇ヲ含ムト書カナケレバナリマセヌ、含マザルモノハ、天皇ヲ含マズト、斯ウヤラナケレバナラナイ、國民ノ意思ハ立法ノ際ニドツチニモ決メテナイコトニナリマス、我々ノ態度デス、我々ガ國民ノ中ニ‥‥政府ノ方ト我々ガ御相談シテ、此ノ國民ノ中ニ‥‥金森君ノ解釋如何ニ關係アリマセヌ、此ノ國民ノ中ニ天皇ヲ入レルコトニシテ立法シヨウカ、入レナイコトニシテ立法シヨウカト云フコトヲ我々ハ相談スレバ宜イ、私ハ入レナイコトニシテ立法スベキデアル、斯ウ云フ斷案ヲ以テ私ハ申上ゲル、併シナガラ政府ハ入レルト云フコトニ付テ説明サレテ居リマスカラ、入レテハイカヌト云フコトノ理由ヲ言フ外ハアリマセヌ、元來第三章ハ今申シマシタヤウニ、本來ノ關係ガソンナ譯デアリマスカラ、今沿革的ニ澤田サンノ仰シヤツタ通リデスガ、大日本帝國憲法ノ沿革ダケヲ言ツテ居ルガ、ソレヂヤイカヌ、モツト長イ沿革ヲ入レナケレバナラヌ主權者ハ入ラナイ、私ハ天皇ハ主權者ト考ヘテ居リマスカラ‥‥、是デハ國民ガ主權者ト云ツテ居リマスガ、私ノ考ヘテ居ル主權者トハ違ヒマス、天皇ノ主權ハ此ノ憲法ノ中ニ書イテナイ、茲デハ今質問ノ際デスカラ申シマセヌ、ソコデ、サウ云フヤウナ譯デアリマスカラ、矢張リ簡單明快ニ、此ノ中ニ天皇ガ入ツテナイト云フコトニシテ一向差支ナイ、先程小山サンハ上トカ下トカ言ハレマシタガ、上デモ下デモナイ、横ト考ヘタラドウデスカ、ソンナコトハ別ニ考ヘルト云フコトデ、横モ縱モナイデス、別ニ書クト云フコトデス、若シ上トカ下トカ御心配ニナルト云フコトデアレバ、横ニ書ケバ宜イデセウ、横ナレバ御尊敬モ御輕蔑モアリマセヌ、サウ云フ譯デアリマスカラ、横トカ縱トカ云ハナイデ（小山委員「言葉尻ノ問題ヂヤナイ、法理ノ問題ダ」ト述ブ）法理デスカラ私ハ別ニスルト斯ウ云フノデアリマス、國民タルノ要件モ此處ニアリマス第十條ト關聯シテ居リマスカラ、「國民たる要件」ト云フノハ矢張リ個々ノ要件デアツテ、天皇ノ國民タル要件ト云フモノデハ私ハナイト思ヒマス、ドウシテモ第十條ニ入ツテ直グニ國民ト云フモノハ天皇ヲ含ンデ居ナイト云フコトハ當然デアルト思フ、「國民たる要件」は、「法律でこれを定める」ト云ツタ場合ニ、天皇ノ要件ヲ法律デ定メルト云フコトハアリ得ベカラザルコトデアル、是ハ國政上ノコトヲ云ツテ居ル、第十條カラ直グ引掛ツチヤフ、天皇ヲ含マザル國民デアルト云フコトハ明瞭デアリマス、サウ云フ譯デアリマスカラ、十條‥‥十條ト申シマセヌ、第三章ノ「國民」ト云フモノハ天皇ヲ含マナイト云フコトニ私ハ解シテ宜カラウト思ヒマス、ソレカラ民事訴訟法ノ問題、刑事訴訟法ニ付テハ矢張リ含マナイコトニシタ方ガ宜イト云フ御結論ノ樣子ガ、多方面ノ考ヲ承リマストアルヤウデス、民事訴訪法ノ關係デ言ヒマスト、爭ノアルコトヲ想像シテノ御考デアリマセウガ、今日既ニ天皇ニ對シテ訴訟ト云フヤウナコトハ、是ハ實際起ツテ居ナイデス、サウ云フコトガアツタ時ニ、民事訴訟ガ何トカ考ヘテヤラナケレバナラヌノデアルト云フヤウナ御心配ノ下ニ、天皇ヲ中ニ含メテ置カナケレバナラヌト云フ説ハ、私ハ要ラヌト思ヒマス、ソレハ、天皇ト、天皇ヲ含マザル國民トノ間ニ民事許訟ガ起ルト云フコトハ想像スルコトガ出來ナイコトデアツテ、サウ云フ爭ノアルト云フコトハ、何處カニエゴチナイコトガ行ハレルカラデアルト思ヒマス、サウ云フコトハ私ハ想像シマセヌ、例ヘバ論語ナラ論語ハ、孔子ハ訟ヲ無カラシメムト云フコトヲ云ツテ居リマス、政治ノ要諦デス、民事訴訟ガ起ルト云フコトヲ想像シテ、其ノ爲ニ國民ノ中ニ天皇ヲ入レテ置カナケレバナラヌト云フコトハ、議論トシテハ成ラナイヤウニ私ハ思ヒマス、是ハ非常ニ惡イ考デアルト思ヒマスカラ、サウ云フ意味ニ於テ、國民ノ中ニ入ラナイト簡單明瞭ニ言ツタ方ガ明快デアルト思ヒマスカラ、其ノ意味ニ於キマシテ、私ハサウ云フ意味ヲ以テ臨ミマスト云フコトヲ申上ゲテ置キマス、ソレニ對シテ金森サンノ御意見ガアレバ承リマス
○國務大臣（金森徳次郎君） 私カラ御質疑ニ對シテハ成ルタケ御答ヲ致シタイト思ツテ居リマスルガ、御意見ノ批評ハ此ノ際愼ミタイト思ツテ居ルマスル故ニ御答ヲ致シマセヌ、（拍手）唯一ツダケ私ノ説明ガ足リナカツタト思フヤウナ節ヲ補ツテ置キマスルガ、私ハ君主ガ人民ヲ統治シテ行カルヽト云フ人的ノ上下關係ニ於テ、諸般ノ自由權ヲ規定スルト云フ考ヲ持ツテ居リマセヌ、御説ノ如ク此ノ國民ノ權利及ビ義務ト云フモノノ起リマシタノハ、政ヲ行フ者ト其ノ政ヲ受ケル者トノ間ニ於ケル一ツノ意思ノ爭ヒト申シマスカ、主張スル處ノ結果ガ斯樣ナ人民ノ權利義務ト云フ法規ノ一端ヲ生ミ出シマシテ、諸國ノ憲法ニ採入レラレテ居ルト云フコトハ、沿革的ニソレデアルニ相違アリマセヌ、併シ此ノ憲法ノ建前ト致シマシテハ、統治スルモノヲ人ト考ヘマセヌ、國家ガ國民ヲ統治スル場合ニ此ノ制約ニ従ハナケレバナラヌ、從ツテ又國家ノ事務ヲ分擔スル者ガ此ノ制約ニ從ハナケレバナラヌ、斯ウ云フ處ニ重點ヲ置イテ居リマス、従ツテ君主對國民ノ關係ニ於テ此ノ權利ヲ解スルノデハナクテ國家對國民ノ關係ニ於テ解スル、サウ考ヘテ行キマスルト、君主ノ地位ハ自ラ別ニ沿革ノ線ニ沿ヒツヽモ、其ノ程度ノ補正ヲ加ヘテ御理解下サル、餘地ガアルノデハナカラウカト云フ風ニ存ジテ居リマス
○松村眞一郎君 只今ノ御答辯ニ對シマシテ更ニ申上ゲマス、ソレデアリマスルト云フト、國ニ對スル訴訟ハ、其ノ相手方ノ國ハドコニ入ツテ居リマスカ、國ニ國民ガ訴ヘル場合ニ其ノ國ハ此ノ國民ノ中ニ入リマスカ、民事訴訟デモ明カニサウ云フコトハ起ルト思ヒマス、ドウシマスカ
○國務大臣（金森徳次郎君） 是ハ法人ノ場合ヲ其ノ國‥‥何ト言ヒマスカ政治團體ヲ此ノ國民ト云フ中ニハ數ヘテ居リマセヌ、併シ今御示シノ趣旨ハ恐ラクハ天皇ノ御地位ニ關係シテ御質疑ニナツタト思ツテ居リマスルガ、天皇ト國トヲ一切ノ關係ニ於テ同一視スルト云フ前提ハ執ツテ居リマセヌデス
○松村眞一郎君 私ハソレヲ申シテ居ルノデハナイノデス、國民ノ中ニ天皇ヲ含メテ置ケバ總テノ問題ガ含ムカト云フコトノ見地カラ言ツテ居リマス、サウ云フコトニナラナイノデス、今甲シマシタ通リ國家ニ訴訟ヲ起ス場合ハ國家ハ國民ヂヤナイノデス、ソレハ此ノ中ニ入ラナイヂヤアリマセヌカ天皇ガ入ラナイト云フコトヲ非常ニ御心配ニナリマスガ、國ニ對スル訴訟ガ此ノ中ニ入ツテ來ナイ、國ハドコニ入リマスカ、國民ノ中ニ國ハ入リマスカ、入ラナイコトハ明瞭デセウ、サウスレバ此ノ規定ニ何モ彼モ入ルト云フ考ヘ方ガ間違ツテ居ルト云フコトヲ申スノデス、ダカラ明瞭ニ天皇ヲ入レナイデ進ミセウ、是ハ御相談デス、サウデセウ、國民ノ中ニ國家ハ入ラナイデセウ、國家ニ對スル訴訟ハ此ノ第三章ノ規定デハイケナイ、ソレハ明瞭デセウ、ダカラサウ云フコトニナリマスカラ何モ網羅的ニ國民ト云フコトヲ考ヘル必要ハナイ、此ノコトハ能ク御分リニナルダラウト思ヒマス
○國務大臣（金森徳次郎君） ドウモ相濟ミマセヌガ、此ノ第三章ハ人、詰リ通常ノ意味ニ於ケル人ヲ念頭ニ置イテ其ノ權利義務ヲ考ヘテ居リマスルカラ、通常ノ意味ニ於ケル人デハナクテ、觀念的ニ考ヘラルヽ國ノ如キハ直接ニ入ツテ居ナイコトハ御説ノ通リデアリマス、併シ國ニ屬スル人ハ總テ此ノ規定ニ盛込ムト云フ考ヘ方モ十分成立シ得ルモノト存ジテ居リマス
○松村眞一郎君 言葉ハ色々仰ツシヤイマスケレドモ、兎モ角國ハ入ラナイト云フコトハ明瞭デス、ソレダケ御認ニナツタコトト致シマス、私ノ質問ハ此ノ點ハ終リマス
○山田三良君 私ハ此ノ第十條ニ付テ伺ヒタイト思ツテ居リマス、色々ト既ニ他ノ方カラ御質問ガアリマシタノデ、成ルタケ簡單ニ今迄問題ニ觸レラレナカツタ點ダケヲ申上ゲルコトニ致シマス、先ヅ第一ニ此ノ第十條ノ衆議院ニ於テ修正セラレマシタ案文デアリマスガ、是ハ「日本國民たる要件は、法律でこれを定める」斯ウ書イテアリマスガ、現行憲法ニ「日本臣民タルノ要件ハ法律ノ定ムル所ニ依ル」此ノ條文ヲ承ケ繼イダモノト思ハレマス、書キ方ニ於テハ憲法ノ規定トシテハ是デ大體ニ於テ宜シイト思ハレマスケレドモ、ドナタカラカ御注意ノアリマシタヤウニ「日本臣民タルノ要件」ハト言ヒマスト云フト、日本人トハ何デアルカト云フコトニ對シテ、斯ウ云フ性質ヲ備ヘテ居ル者ハ日本人デアルト云フ風ニ見チヤイマスカラ、此ノ言葉ハ甚ダ不十分デアル、現行憲法デアリマシテモ「日本臣民タルノ要件ハ」トアリマスケレドモ同ジヤウナ問題ガ起リマスガ、併シ「ノ」ノ一字ガアリマス爲ニ日本臣民トナルノ要件ハト云フコトニ解釋出來マシテ、此ノ憲法デアリマシテモ、現行憲法デアリマシテモ、皆一個人ガ日本臣民トナルノニハドウ云フ風ニスルノカト云フコトヲ言ツテ居ルノデアリマス、ソレヲ法律デ決メル、其ノ法律ハ即チ國籍法デアリマス、國籍法ノ規定ト此ノ規定ト相俟ツテ何人ガ日本人デアルカト云フ問題ガ解決セラレルコトニナルノデアリマス、ソコデ此ノ日本國民トアリマスケレドモ、是ハ廣イ意味ノ日本國民ヂヤナイノデアリマシテ、一個人ガ日本國民トナルノハドウシタラ宜イカ、例ヘバ日本人カラ生レタル子ハ血統主義ニ依リマシテ日本人デアルトカ、外國人タル女ガ日本人ノ妻トナレバ夫ノ國籍ニ、日本ノ國籍ヲ取得スル、或ハ外國人ガ長ク日本ニ居リマシテ一定ノ條件ニ依ツテ歸化ヲ願出デマシテ、國家ガ歸化ヲ許シタナラバ日本人トナル、斯ウ云フ風ニ日本人ノ子孫並ニ外國人ガ如何ナル條件ノ下デ日本人トナルカト云フコトヲ決メルト云フコトガ法律デ決メルト云フノデアリマス、此ノ法律ハ即チ現行ノ國籍法デアリマス、從ツテ今迄起リマシタ問題ノ日本國民ト云フ廣イ言葉デアリマスケレドモ、此ノ日本國民ト云フ言葉ニハ天皇ハ含ンデ居ラナイト云フコトハ最モ明白デアリマシテ、日本國民トアリマスケレドモ、個々ノ日本人トナルト云フ意味シカナイノデアリマスカラ、個々ノ日本國民ト云フ言葉ハ是ハ前ノ色々ナ所ニ出テ來マス日本國民ト云フコトト意味ガ非常ニ違ツテ居ルト言ハネバナラヌコトニナリマス、從ツテ衆議院ノ改正セラレタル英文ノ譯ヲ見マスト云フト、「日本國民たる要件は」ト云フコトヲ「コンディションズ・オブ・ジャパニーズ・ナショナリティ」「ピープル」ト書イテアリマセヌ、「ジヤパニーズ・ナショナリティ」日本人トナルノ必要ナ條件ハト斯ウ書イテアリマス、是デ英文ノ方ヲ見マシテ誠ニ明白デアリマシテ、個々ノ人間ガ日本人トナルニ必要ナル條件ハ法律ノ定メル所ニ依ル、斯ウナツテ居ルノデアリマス、此ノ意味ニ於キマシテ天皇ガ日本人タルノ要件ハ、ソンナコトハアリ得ナイノデアリマスカラ、天皇ガ此ノ日本人タル要件ノ中ニ入ツテ居ナイコトハ明白デアリマシテ問題ハナイノデアリマス、同樣ニ第三章ニ於キマシテ表題ニ於テ國民ノ權利義務ト廣クナツテ居リマスケレドモ、是ハドナタカ、委員カラノ御話ニナツテ居リマスルヤウニ、是ハ現行憲法ノ臣民ノ權利義務ト云フモノヲ承ケ繼ギマシテ、サウシテ國民ノ權利義務ニナツテ居ルノデアリマス、臣民ト云フ言葉ヲ避ケテ、ソレニ代ハルベキ言葉ヲ、「サブジェクト」デアルカライケナイ「シティズン」トカ「ピープル」ト云フ意味カラ臣民ト云フ言葉ヲ避ケテ、國民權利義務トナツテ居ルニ過ギナイノデアリマスカラ、ソレハ松本君其ノ他カラ御指摘アリマシタヤウニ、天皇ガ第三章ニ謂フ所ノ國民ノ中ニ含マレテ居ルト云フコトハ非常ニ無理ナ解釋デアルト言ハネバナラナイノデアリマス、ノミナラズ第十一條以下總テ第三章中ニハ「國民」ト云フ言葉ヲ用ヒマシタリ、或ハ「何人も」ト云フ言葉ヲ用ヒテ居リマスガ、何レモ「インディヴイデュアル」ノコトヲ言ツテ居リマシテ、廣ク國民全體ト云フヤウナコトデハナイコトハ明瞭デアリマス、個々ノ人間ガ家宅ノ自由ヲ侵サレナイトカ、或ハ學問ノ自由ヲ享有スルトカ、婚姻ノコトトカ言ヒマスノハ、是ハ皆サンノ御指摘ニナリマシタヤウニ、矢張リ日本臣民タル個々ノ人間ガ之ニ依ツテ保護セラレルト云フコトヲ言ツテ居ルノデアリマシテ、是等ノ中ニ天皇ノコトヲ規定スルト云フ精神ニ非ザルコトハ、其ノ他ノ法文ヲ見マシテ明瞭ナコトデアリマス、從ツテ此ノ第三章ノ國民ト云フ言葉ノ中ニ天皇ガ包含セラレテ居ルト云フ解釋ハドウシテモ無理デアルト言ハネバナラナイト思ハレマス、然ラバ同ジ言葉ヲ用ヒテ居ツテ、第三章ハ天皇ヲ含マナイ言葉デアル、「プレアンブル」デアルトカ或ハ第一條ノ中ノ國民ト云フモノニハ天皇ヲ包含シテ居ル、斯ウ云フコトニナリマスガ、主權ガ國民ニアル、斯ウ云フヤウナ言葉ヲ用ヒラレテ、其ノ國民ト云フ中ニハ天皇ト云フモノモ包含セラレテ居ツテ日本國民全體デアルト云フ金森國務大臣ノ解釋ハ一應御尤モナコトデアリマシテ、斯ウ云フ規定ガアル以上ハ私ハ、「プレアンブル」並ニ第一條等ニ於テノ國民ト云フ言葉ハサウ解釋セラレテ御尤モナコトト思ヒマスガ、第三章ヲ同一ニ解釋シナケレバナラヌト云フ點ニ非常ニ御無理ガアルヤウニ思ハレマスカラ、第三章ノ意味ハ臣民ノ權利義務ニ代ツタル國民デアルト御解釋ニナツテ、前ノ第一條「プレアンブル」等トハ、同ジ國民ト云フ言葉デアリマスケレドモ、意味ガ違ツタモノダ、斯ウ御採リニナレバ同一ノ憲法ノ中デ場所ニ依ツテ違フト云フコトハ甚ダ好マシクハナイコトデアリマスケレドモ、併シ其ノ全體ノ性質カラ考ヘマシテ、天皇ヲ含ンデ居ル意味ノ國民ト、天皇ヲ含マナイ國民ト云フコトハ、第三章ノ規定ト併セ考ヘマシテ極メテ明瞭デアリマスカラ、サウ云フ風ニ御解釋ニナルコトガ私ハ適當デナイカト思ハレマスカラ、此ノ點ニ付テモ尚、度々仰シヤツテハ居リマスガ、御意見ヲ簡單ニ伺ヒタイト思ヒマス、ソレト牽連シマシテ、金森國務大臣ニ伺フノデアリマセヌガ、又今日答辯ヲ直チニ願ハウト云フコトデハアリマセヌガ、國民ト云フコトノ要件ニ付キマシテ、今申シマシタヤウニ、第十條ニ「日本國民たる要件は、法律でこれを定める」トアリマスケレドモ、日本國民トナルノニハ必ズシモ此ノ規定ノミニ依ラナイノデアリマス、此ノ憲法ノ規定ノミニ依ラナイ、又又國籍法ノ規定ノミニ依ラナイ、ソレハドウ云フコトガ起ルカト言ヘバ、領土ノ變更ト云フ場合ニ何十萬、何百萬ト云フ人間ガ日本人トナツタリ、日本ノ國籍ヲ失フト云フコトガ出テ來マス、ソレハ此ノ第十條ニ豫言シテ居ル所デナイ、例ヘバ朝鮮ノ獨立ガ平和條約ニ依ツテ確立シマスレバ、日本國民デアリマシタ朝鮮人三千萬人ハ日本國籍ヲ失フト云フコトニナル、臺灣人ハ同樣ニ臺灣ニ居ル所ノ者ハ臺灣デ日本人デアルコトヲ失フ、反對ニ朝鮮ニ居ル所ノ日本人ハ日本人デアルカ、日本國籍ヲ失フノカト云フ問題ガ起ル、臺灣ニ殘ツテ居ル日本人ハ日本人デアルカ中華民國人トナルカト云フ問題ガ起ル、是等ノ點ハ平和條約ノ規定ニ依ツテ定メラルベキモノデアリマスガ、從來ノサウ云フ場合ニ於キマシテハ、其ノ住民ノ選擇ヲ求メマシテ住民ノ欲スル所ニ依ツテドツチノ國民トナルカト云フコトヲ決メルコトガ歴史的ニナツテ居リマス、サウシテ其ノ決メル時ニハ、其ノ地ニ居リナガラ、今迄ノ居住地ニ居リナガラ他ノ國籍ヲ選ブ、斯ウ云フコトハ許サヌト云フコトニナツテ居リマシテ、例ヘバ朝鮮人ガ獨立シマシテ、何十萬カノ朝鮮人ガ日本ニ留ツテ居リマシテ、尚朝鮮人トナリタイト云フコトガ出來得ルノデアルカ、或ハサウ云フコトハ出來ナイノデアルカ、同樣ニ日本人ガ臺灣ヤ朝鮮ニ留ツテ居リマシテ、引續キ日本人トナルコトガ出來ナイノデアルカ否カト云フコトガ起ツテ來マスガ、是ハ講和談判ノ際ニ考ヘラルベキ問題デアリマスケレドモ、外務當局トシテハ、此ノ憲法ノ規定、國籍法ノ規定ト云フモノハ、サウ云フモノニハ觸レテ居リマセヌ、違フ規定デ、條約ノ規定ニ依ツテ國籍ノ變更ガ、而モ非常ニ多數ノ人間ニ付テ起リ得ルト云フコトダケヲ御考ヘ下サイマシテ、之ニ對スル方針ヲ今カラ能ク御研究セラレルヤウニ願ヒタイ、是ダケヲ併セ伺ツテ置キマス、私ノ質問ハ是ダケデアリマス
○國務大臣（金森徳次郎君） 初ノ部分ニ對シマシテノ御質疑ハ、餘リ同ジ言葉ヲ以テ御答ヲ致シマスコトハ恐縮デアリマスカラ、之ヲ申上ゲナイデ、意味ノアル所ヲ含ンデ戴キタイト思ヒマス、ソレカラ國籍取得喪失ニ關スル今後ノ種種起リ得ベキ問題ニ付キマシテハ篤ト研究ヲスルコトニ致シマス
○子爵松平親義君 簡單ニ伺ツテ見タイコトデアリマスガ、第十條ノ規定ハ、政府ノ原案ニ於キマシテハナカツタ規定デアリマス、ソレガ衆議院ノ修正ニ依リマシテ此處ニ出タ譯デアリマスガ、常識カラ考ヘマスト、此ノ規定ガ入ルコトガ當然ダト云フ考ニモナリマスガ、併シ考ヘ方ニ依リマスト、特ニ十條ニ斯ウ云フ規定ヲ入レルト云フコトガ從來ノ現行憲法ノ上ニ於キマシテハ當然考ヘラレルコトデアルト思ヒマスガ、此ノ新憲法ノ下ニ於キマシテドウモハツキリシナイ點ガアルノデアリマス、ソレデ此ノ十條ヲ御入レニナツタ理由ヲ特ニ私伺ヒタイノデアリマス、私ガサウ云フ風ナコトヲ考ヘマシタ理由ヲ簡單ニ申上ゲテ置キタイト思フノデアリマスガ、政府モ度々御答辯ニアリマシタヤウニ既ニ今度ノ憲法ニ於テハ國會ガ國憲ノ最高ノ機關デアル、國會ガ最高ノ機關デアル、總テ法規ハ法律デ以テ之ヲ規定スル、現行憲法ノ第八條、第九條ノヤウナ規定ヤ法律ハ全然必要ガナクナルノデアツテ、一ニ議會ノ立法ニ依ツテ法規ガ作ラレルノデアルカラ、斯ウ云フヤウナ規定ハ特ニ掲ゲナイデモ、當然ニ日本臣民タルノ要件ハ日本ノ法律デ以テ規定サレルノデアルカラ、特ニ掲ゲナイノダト云フヤウナ御答辯ガ衆議院デアツタト思フノデゴザイマス、サウ云フ點カラ考ヘマスト、成ル程是ハ敢テナクテモ宜イノデハナイカト云フ風ナ氣モ致シマス、ソレカラ尚金森サンノ御言葉ヲ眞似ヲシマスト、常識トシテ考ヘレバ、此ノ第十條ノ規定ト云フモノハ當然入ツテモ宜イヤウニ思ヒマスガ、冷ヤカナ法律的ナ眼ヲ以テ此ノ憲法ヲ見タ場合ニ、今度ノ憲法ハ此ノ前文ニモ書イテゴザイマス通リニ、國民ノ總意ガ至高ナモノデアル、詰リ國民主權ノ考ヘ方ニ決定シテ居ルノデアリマス、從來ハ天皇ガ統治權ノ總攬者デオイデニナリ、我々臣民ハ其ノ御統治ニ服シテ居ツタ譯デアリマスガ、法律上ハサウデアリマス、併シナガラ此ノ新憲法ニ於キマシテハ、天皇ハ既ニ統治權ノ總攬者デ御アリニナラナイ譯デアリマス、一ニ今後ノ我ガ國ノ政治ト云フモノハ、國民ガ統治權ノ總攬者デアルト云フコト、是アハマ申ス迄モナイコトデアリマス、從ツテ此ノ憲法ニ於キマシテモ、此ノ第三章ノ國民ノ權利義務ト云フコトハ、詰リ國民自ラガ今後ノ國政ヲ運用シテ行クニ當ツテ、此ノ權利義務ニ規定シテアル各條ノコト、是ダケハ是ハ絶對的ナ、謂ハバ基本的ノ人權ニ相當スルモノデアツテ、國家ノ爲政者ト雖モ、此ノ三章ニ規定シテアルコトノ事柄ニ付テハ、是ハ公共ノ福祉トカ云フヤウナ色々ナソコニ條件ハアリマスケレドモ、原則トシテ此ノ基本的人權其ノモノニ対シテハ、拘束ト言ヒマスカ、制限ヲ加ヘルコトガ全然出來ナイノデアルト云フ一ツノ國民トシテノ人間トシテノ要求ヲ、此處ニ、我々ノ心ノ底カラ浮ビ出タ所ノ人間ノ要求ヲ、此處ニ書イタモノデアルト斯ウ私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、從ツテサウ云フ所ニ、此ノ第十條ノ「日本國民たる要件は、法律でこれを定める」ト云フコトハ、常識トシテ考ヘレバ何デモアリマセヌ、寧ロ是ガアツタ方ガハツキリスルヤウニ考ヘマスガ、冷ヤカナ法律ノ眼デ之ヲ見タ場合ニハ、從來ノ憲法ト非常ニ違ツタ點ガアル關係上、何カ此ノ第三章ニ特ニ之ヲ入レルト云フコトガドウカト、餘計ナコトヂヤナイカト云フヤウナ、私、實ハ氣モスルノデアリマス、併シ是ハ國務大臣ノ御説明ヲ伺ツテ、其ノ點ハ斯ウ云フ風ニ考ヘタラ宜イト云フコトヲ教ヘテ戴ケレバ、私モ滿足ヲ致ス次第デアリマス、サウシテ先程來御話ニナリマシタ國籍法ノヤウナモノ、是ハ當然必要ナコトデアリマスガ、ソレハ何モ第十條ニ此ノ規定ヲ置カナクテモ、當然國籍法ト云フモノハ、是ハ今後必要ナコトデアルト思フノデアリマス、特ニ此ノ第十條ヲ掲ゲテ、サウシテソレニ依ツテ國籍法ヲ定メルト云フ積極的ナ理由ハ、私ドウモ自分トシテ判斷ガ出來ナイノデアリマス、サウ云フヤウナコトデ、實ハ何故第十條ヲ此處ニ御設ケニナツタカト云フ、其ノ積極的ナ理由ヲ伺ヒタイノデアリマス
○國務大臣（金森徳次郎君） 第十條ハ政府ノ原案ニハナカツタノデアリマス、ソコデ何故ニ之ヲ入レナカツタカト云フコトヲ申上ゲマスルト、今日トシテハ唯事情ヲ語ルニ過ギナイ譯デハアリマスルケレドモ、ソレニハ政府ト致シマシテ、詰リ起案者ハ謂ハバ人ヨリモ餘計ノ取越苦勞ヲスルト申シマスカ、色々ト影響ヲスル部分ヲ考ヘマスルガ故ニ、其ノ考慮ノ結果入レナカツタノデアリマス、其ノ範圍ハ色々ニ亘リマスルケレドモ、ドレガ唯一ノ根本ノ理由ニナルト云フ程ノモノデハアリマセヌケレドモ、第一ニ考ヘマシタノハ、一體國ノ領土、人ト云フモノガ、國ノ尠クトモ構成要素中ノ大體類似要件デアリマスルガ故ニ、本來カラ理論的ニ組立テマスルナラバ、國ノ領域ヲ憲法ニ掲ゲマシテ、次ニ國ノ人ノ範圍ヲ掲ゲルト云フコトガ筋ガ通ラウト思ツテ居リマシタ、處ガ領域ハ書カナイトスレバ、人ノ方ダケヲ書クノモ釣合ガ取レヌデハナイカト云フコトヲ考ヘテ居リマシタ、又從來ノ憲法ハ所謂命令權ニ依ツテ相當ナ人ノ規定ガ出來ル、今度ノ憲法ハ法律デナケレバ國民ノ基本ニ關スルコトノ規定ハ出來ナイ、シテ見レバ國籍ニ關スルコトガ法律又ハ是ト同格ノモノデナケレバナラヌト云フコトハ言フヲ俟タナイコトデアリマシテ、ソレヲ態々憲法ニ書ク程ノ必要モナイデハナイカト斯ウ云フコトニ取ツテ居リマス、又今一ツハ先程山田委員ハ是ハ日本國民トナルノ要件、斯ウ云フ風ニ御讀ミニナリマシタガ、必ズシモサウトモ言ハレナイノデアリマス、國民デアルコトノ要件、即チ此ノ身分ノ繼續條件デアリ、身分ノ取得條件デモアリ、身分ノ消滅條件デモアル、サウ云フモノヲ規定シナケレバ趣意ハ貫カナイモノト思ヒマシテ、憲法ノ中ニ若シ書ケルナラバサウ云フコトヲ書クノガ本當デアル、處ガ其ノ誰ガ日本人デアルカト云フコトノ過去ノコトヲ規定シヨウト思ツテモ、是ハ法律デハ容易ニ書ケマセヌシ、又先程山田委員カラ仰セニナリマスヤウニ國際條約、或ハ場合ニ依ツテハ國際的慣例ニ依ツテ國籍ノ移動スルコトモアリマスルシ、ドウセ法律ニ書イタツテ書キ切レルモノデモナイト云フコトヲ考ヘ、今一ツハ御叱リヲ受ケルカモ知レマセヌガ、私共ノ前提カラ申シマスレバ、天皇及ビ皇族モ此ノ國民デアルト信ジテ居リマスルガ故ニ、サウ云フコトノ規定ガ此處ニ現ハレルノモ如何ナモノデアラウカト云フコトヲ考ヘマシテ、マア此ノ點ナクトモ宜イ規定デアリ、アルト色々細カイ議論ガ出テ面白クナイト云フ觀念カラ取ツタノデアリマス、尚更ニ是ハ謂ハバ憲法ノ「リトリック」トデモ申シマスカ、此ノ第三章ノ規定ハ何ヲ規定スルノガ本體デアルカト言ヘバ、國民ノ基本權ヲ規定スルノガ本體デアリマス、第三章ト云フモノヲ開キマスルト、直グニ此ノ原案ノ第十條ノ如ク「國民は、すべての基本的人權の享有を妨げられない」斯ウ出テ來マスルト、憲法ノ原案ガ、「リトリック」ガ稍々充實スルト存ジマスシ、其ノ前ニ持ツテツ行テ國民タルノ要件ト云フ規定ガ入リマスルト、マア「リトリック」ニ合ハナイ、サウ云フ色々ナ事情ヲ考慮致シマシテ、原案デハ割愛ヲシタ譯デアリマス、然ルニ衆議院ニ於キマシテ、斯樣ナ規定ヲ設ケルコトハ憲法ノ主體デアリ體裁、デアル、故ニ之ヲ設ケタラ宜イヂヤナイカト云フ所ニ主眼點ヲ置カレテ居ルモノト存ジマシテ、國民ノ總意ニ依ツテ決セラルベキ憲法デアリマスルガ故ニ、斯樣ナ見地カラ御主張ニナリマスルコトハ、私共トシテ異存ヲ申上グベキ筋ノモノデモナイト云フコトデ御同感ヲ申上ゲタ次第デアリマス
○霜山精一君 私ハ第十條ニ付テ關聯質問ヲ致シマシタノデスガ、此ノ國民ト云フ中ニ、金森國務相ハ天皇ハ入ル、斯ウ云フ御答辯ガ佐々木博士ノ質疑ニ對シテアリマシタノデ、私ハ若シ金森國務相ノ言ハルヽ如ク國民ノ中ニ天皇ガ入ルノデアレバ、天皇及ビ皇族ニ關スル權利義務ノ規定ハドウナルノデアラウカト云フコトガ牽聯シタ質疑ヲ生ジタノデ、強ツテ其ノ理由ヲ説明致シタノデアリマシテ、決シテ他ノ方ノ質問ヲ妨害スル意思ガアツタノデモ何デモナイト云フコトヲ御了承ヲ願ヒタイノデアリマス、大河内子爵ガ第十四條ニ付テモ其ノ質問ヲ俺ガ出ス積リデアツタカラ待ツテ呉レト仰ツシヤルノデアリマスガ、大河内子爵ガ此處ニ提出サレテ居リマスル質問ノ要旨ノ中ニハサウ云フコトガ見エマセヌデシタカラ、私トシテハ全ク不用意ニ、何等サウ云フ惡意ナクシテヤリマシタノデ、決シテサウ云フ御質問ヲ先取リスルト云フヤウナ意味モ何モ私ニハナカツタノデアリマス、固ヨリ私ノ疑問ガ能ク氷解スレバ宜イノデアリマスルカラ、今直チニ御答辯ヲ求メル必要ハアリマセヌ、大河内子爵ノ方カラ十分御質疑ガアルコトト存ジマスルカラ、ソレニ關聯シテ或ハ又御質問スルカモ知レマセヌケレドモ、私ノ其ノ關聯質問ニ對スル御答辯ハ、大河内子爵ノ御質問ニ對スル御答辯ノ時迄留保シテ戴イテ結構ダト存ジマス
○高柳賢三君 第二部ニ是カラ御入リニナルノデスカ、或ハ其ノ前ニ一部ニ關聯シタ質問ヲシテ宜シウゴザイマスカ、私ノハ表題ニ關シテデアリマスガ、本會議ニ於ケル御答辯ニ依リマシテ、此ノ章ノ中ニ書イテアル「すべて國民は」或ハ「何人も」ト云フ風ニ書イテアル字句ハ外國人ヲモ含ムノデアル、斯ウ云フ御答辯ガアリマシタ、即チソレ等ハ單ニ日本國民ノミニ適用セラルベキ規定デハナクシテ、謂ハバ普遍人類的ナル一ツノ權利デアツテ、日本ニアル外國人モ當然ソレ等ノ規定ノ適用ヲ受クベキモノデアル、斯ウ云フ御答辯ノ趣旨デアツタト思フノデアリマス、デ、サウ云フ規定ガ相當澤山ゴザイマスルノデ、第三章ノ表題ト云フモノ自體ガ適當デアルカドウカト云フ疑ガ発生スルト云フコトガ第一點、ソレカラ第二點ニ、假ニソレハ政府ノ御説明デハ「何人も」云々ト云フ規定ハ外國人ニモ適用アルト云フ御説明ガアリマシテモ、ソレ等ノ御説明ハ將來是ガ成立シタ場合ノ裁判所ノ解釋ト云フモノヲ拘束スルト云フ譯デモ何デモアリマセヌカラ、此ノ成立致シマスル條文ト云フモノガ是ガモノヲ言フノデ、サウシマスルト、此ノ「何人も」ト云フ字句ハ第三章ノ表題ニ照ラシテ是ハ日本國民ノミニ適用スルノデアツテ、外國人ニハ適用シナイモノダ、斯ウ云フ解釋ノ餘地ガ十分ニアルト云フコトニナルノデハナイカト思フ、從ツテ此ノ表題ダケデハ外國人ノ權利、基本權ト云フモノハ十分ニ保護サレテ居ラナイ、從ツテ其ノ點ニ付テ之ヲ十分ニ保護スルト云フ政策デアルナラバ、此ノ表題ニ付テ再考ノ餘地ガアルノデハナイカト云フ點ガ第二點トシテ疑ガ起ルノデアリマスガ、ソレ等ニ付テ政府ノ御話ヲ伺ヒマス
○國務大臣（金森徳次郎君） 本會議ニ於テ高柳議員ニ對スル御答トシテ私ガ此ノ點付テ申シマシタノハ、此ノ憲法ノ中ニ「何人も」トアリマスル場合ハ、其ノ權利自體ガ一般的ニ考ヘラレル權利デアル、詰リ日本人ノミヲ着想シテ考ヘラルベキデナクシテ、權利其ノモノノ性質ガ人間一般ニ當嵌マル性質ノ權利デアル、故ニ左樣ナ言葉ノ使ヒ方ヲシテ、權利自身ノ性質ニソグフ言葉ヲ用ヒタ、斯ウ云フコトヲ申シマシタ、併シナガラ之ヲ此ノ憲法ガ保障致シマスル場合ハ、日本國民ニ保障スルト云フ趣旨ハ、此ノ憲法ノ幾ツカノ所ニ現ハレテ居リマスルノデ、例ヘバ原案第十條、或ハ第十一條、又終リノ方ノ部分ニモ明カデアリマス、詰リ權利ノ性質其ノモノヲ表ハス爲ニ總テ人ハト云フヤウナ文章ヲ用ヒマシタ、其ノ權利ノ性質ハソレデアルケレドモ、現實ニ此ノ憲法ガ保障致シマスルノハ、日本國民ニ保障スルノデアル、ソレ以外ニハ必然ノ原理トシテ及ブモノデハナイ、或ハ反射作用ニ依ツテ同ジヤウナ扱ヲスルト云フコトハ生レテ來ルニシテモ、ト云フ風ニ御説明ヲ申上ゲタト記憶シテ居リマス、從ツテ法律的ニ言ヘバ、保障セラルヽモノハ日本ノ國民ダケデアリマス、故ニ此ノ表題デ差支ハナイト存ジテ居リマス、第二點ニ付キマシテハ、結局高柳委員ノ仰セニナツタコトト一致スル御答デアルト存ジテ居リマス
○高柳賢三君 只今ノハ私速記録ヲ拝見シナカツタノデ、或ハ政府ノ御意嚮ヲ誤解シテ居ルカモ知レマセヌガ、是等ノ「何人も」ト云フ規定ハ、直接ニハ外國人ハ其ノ保護ヲ受ケナイ、憲法上ノ保護ヲ受ケナイ、此ノ點ニ付テハ「アメリカ」ノ憲法ノ條項トハ違フノデアル、反射作用ニ依ツテソレハ受ケルカモ知レナイガ、直接ニハ外國人ハ此ノ利益ハ受ケナイノダ、斯ウ云フ御趣旨デハナカツタヤウニ記憶スルノデアツテ、矢張リ「アメリカ」憲法ナドト同ジヤウナ人權ノ規定デアツテ、「アメリカ」ニ居ル日本人モ其ノ條項ニ依ツテ權利ヲ主張シ得ル、斯ウ云フノガ此ノ草案ノ趣旨デアルヤウナ御答辯デアツタト記憶シマスノデ、ソレナラバ表題ガソレニハ相應シクナイノデハナイカ、即チ元ノ憲法ノ臣民ノ權利義務ト云フ型ガ其ノ儘此處ヘ入ツテ、内容ハ基本人權的ナモノ、國民主義ヲ、國民ト云フ「アイデア」ヲ超越シタ人類的ナ規定ヲ置イタ、サウ云フ一ツノ基點ニソグハナイ點ガ起ツタノデハナイカト推察シタノデアリマスガ、私ノ基本人權ニ關スル政府ノ見解ノ了解ハ間違ツテ居ツタノデアリマセウカ、其ノ點ニ付テ政府ノ御意見ヲ伺ヒタイ
○國務大臣（金森徳次郎君） 其ノ點ハ當初カラ、起案ノ當初カラ考ヘテ居ツタ問題デアリマシテ、貴族院ニ於テ御答ヲ致シマシタ私ノ言葉ハ、多分今日申上ゲマシタ趣旨ノ通リニ述ベテ居ルト存ジテ居リマス、今高柳サンハ誤解デハナイカト仰セラレマシタガ、高柳サンガアノ答ニ依ツテドウ云フ風ニ頭ノ中ニ御映シニナリマシタカ、ソレハ私カラハ直接分リマセヌケレドモ、趣旨ハ只今申シタ趣旨デアル、權利ノ性質ハ一般的ノモノデアル、權利保障ハ日本人ダケニ對スルモノデアル、從ツテ若シ是ガ外國人ニ完全ニ保障サレルト云フヤウナ段階ニナリマス爲ニハ、國際條約其ノ他ニ依ツテ補充ヲスルヤウナコトガ起ツテ來ルノデハナカラウカ、併シ我々ハ立法ノ當初ニ於テ斯ウ云フ一般的ニ當嵌ルヤウナ權利ヲ狹イ言葉デ言ヒ表ハスニハ面白クナイ、斯ウ云フ前提デアツタノデゴザイマス
○高柳賢三君 サウスルト、是ハ「アメリカ」ノ憲法ニ書イテアル基本人權ニ關スル規定トハ違ツテ、モウ少シ國民主義的ナ考ヘ方ニ基イテ出來タ基本人種ニ關スル規定デアル、斯ウ云フ風ニ了解シテ宜シイ譯デスネ
○國務大臣（金森徳次郎君） 「アメリカ」ノ解釋ハハツキリハ存ジマセヌガ、多分高柳委員ノ言ハルル通リデアリマシテ、ソレヨリ幾分狹イ意味ニ我々ハ了解シテ居ルト云フノデアリマス
○高柳賢三君 能ク分リマシタ、私ノ質問ハ是デ‥‥
○委員長（安倍能成君） 議事ノ進行ニ付テチヨツト申上ゲマス、昨日今日午後カラ休ミニシヨウト云フコトヲ申出デマシタ所ガ、矢張リ續ケテヤツタ方ガ宜カラウト云フ御話デアリマシタガ、連絡委員ヤ何カノ方ニモ色々相談シタイヤウナコトガアツテ、時問ヲ少シ戴キタイト云フ御希望モアリマスカラ、今日ハ是デ散會致シタイト思ヒマスガ、序ニ申シテ置キマスケレドモ、再來週ハ二十三日ガ月曜日デアリマシテ、二十四日ガ秋季皇靈祭デアリマスケレドモ、二十三日ハ休マナイデヤルコトニ致シタイト思ヒマス、御承知ヲ願ヒマス、ソレデハ今日ハ是デ散會致シマス
午後零時十一分散會
出席者左ノ如シ
委員長 安倍 能成君
副委員長 伯爵橋本 實斐君
委員
公爵岩倉 具榮君
侯爵細川 護立君
侯爵中山 輔親君
侯爵淺野 長武君
伯爵後藤 一藏君
三土 忠造君
子爵大河内輝耕君
大谷 正男君
男爵白根 松介君
子爵織田 信恒君
子爵高橋 是賢君
子爵三島 通陽君
子爵松平 親義君
山田 三良君
平塚 廣義君
牧野 英一君
佐々木惣一君
松村眞一郎君
男爵今園 國貞君
村上 恭一君
男爵飯田精太郎君
霜山 精一君
下條 康麿君
川村 竹治君
岩田 宙造君
高柳 賢三君
南原 繁君
男爵松田 正之君
男爵中御門經民君
男爵渡邊 修二君
男爵松平 齊光君
田所 美治君
野村 嘉六君
澤田 牛麿君
松本 學君
結城 安次君
瀧川 儀作君
小山 完吾君
山本 勇造君
淺井 清君
渡邊 甚吉君
國務大臣
國務大臣男爵幣原喜重郎君
國務大臣 齋藤 隆夫君
國務大臣 植原悦二郎君
國務大臣 金森徳次郎君
政府委員
法制局長官 入江 俊郎君
法制局次長 佐藤 達夫君
