2 予算・決算の在り方と会計検査院

 主として現行規定の不備を整備し、国会の財政統制を強化する観点から、予算等の在り方について、本憲法調査会では、

  • 税を使う予定と使われた結果を、きめ細やかに通年的に国民に開かれた場所で議論するシステムが必要ではないか、
  • 党の新憲法起草小委員会の検討(平成17年)においては、予算が成立しなかった場合に、必要最小限の支出が行われるよう憲法上に規定を置くとしている(自由民主党)、
  • 予算の不成立の場合について、憲法上も規定する必要がある。予算の空白という重大な事態について法律レベルだけで対応するのはいかがなものか、

などの意見が出された。


予算単年度主義

予算単年度主義により税金の無駄遣いが生じるとの問題意識から、複数年度予算の導入の是非について、

複数年度予算の考え方を評価する意見
  • 党の新憲法起草小委員会の検討(平成17年)においては、複数年度予算の編成については、財政民主主義の観点から単年度主義の原則は維持しつつ、年度をまたがる手当てが必要なものについては、現在法律で規定されている継続費等の制度を活用し、運用を弾力的なものにするとしている(自由民主党)、
  • 単年度予算主義という使い切り型予算を組んでいることが財政の健全化に逆行している面が強いと思われるので、複数年度予算、あるいは予算の使い方の問題についても議論すべき、
  • 複数年度主義を認める形を明文化してはどうか。今の憲法では難しいかもしれないが、部分的にプロジェクト予算のような形で複数年度主義を認めてはどうか、
  • 予算とともに、当該年度の予算を含む複数年度にわたる財政計画や将来の財政展望を内閣が国会に報告し、そこまで含めて国会が議決するという形にすべきではないか、
単年度予算を維持すべきとの意見
  • 予算単年度主義に弊害はあるが一定の財政規律を確保する意味でメリットもある、
  • 今後税収の減少が続くことが考えられる中で、複数年度予算は責任の取れる組立てとは言えず、単年度主義を堅持すべき、

などの意見が出された。


増分主義

 予算査定の増分主義について、予算等の妥当性を根本から見直す提案に対し、増分主義は政権交代がないことに起因し、憲法規定で片付けられぬとの意見があった。


国会の予算修正権

 国会の予算修正権については、

  • 政府解釈のように国会の予算修正権が非常に限られた枠内でしかないということでよいか、米国のように行政と議会がそれぞれ予算を審議する独立の組織を持つことも本院で検討すべき、
  • 憲法が国会を国権の最高機関とし、財政民主主義の規定を置くにもかかわらず、政府は国会の予算修正に高いハードルを設けており、財政民主主義の原則から、大きな改善が必要である、

などの意見が出された。


決算

 二院制と参議院の在り方に関する小委員会では、参議院の決算審査の在り方、憲法における決算の位置付けについて、議論がなされた。

 本憲法調査会では、主として小委員会における議論を受けて、

  • 党の新憲法起草小委員会の検討(平成17年)においては、決算審査の充実、予算へのフィードバック、予算執行面の透明性の向上等を図る観点から、決算について国会の役割を明確化する規定を憲法上に置くとともに、法律上の手当てを行うとしている(自由民主党)、
  • 決算における国会審査、特に参議院の役割が高まってきている中、内閣を通して国会へ提出する在り方は見直す必要がある、
  • 決算を参議院で重点にやっていくことには大賛成である、
  • 決算は、参議院先議で、報告ではなく議決案件とすることを求める。決算が翌年度の予算に拘束力を持つことを明定すべき、
  • 決算については、(1) 予算とリンクさせるなどもう少し強い拘束力を持たせる、(2) 政府を通さず国会へ直接提出させる、(3) 年1回ではなく随時多数の報告を議会に行う、次年度予算編成に直接参考になるよう、スピード化するとともに、プログラム評価の形で報告する等の論点がある、
  • 現憲法の規定では決算は報告事項に過ぎず、フィードバック機能が確保されていないことは残念であり、決算審査を終えるまでは予算審査に入れないというような規定を考えてもおかしくない、

などの意見が出され、参議院の決算重視は共通の認識であった。


会計検査院

 決算重視の観点から、会計検査院の位置付け、機能等についても議論がなされた。

 検査院の帰属・参議院との関係等について、会計検査院を国会あるいは参議院に附属させるか否かについては、意見が分かれた。

  • 党の新憲法起草小委員会の検討(平成17年)においては、会計検査院を参議院に置いてはどうかという議論も行ったが、独立性の確保の観点から、現行どおりとするとしている(自由民主党)、
  • 参議院は、二院制の下で財政統制の役割を果たすため、会計検査院と一層の連携を図っていくべき、
  • 決算に対する参議院の責任を強化するため、会計検査院を参議院に所属させることは、ベストとは言わないが次善の策としてはふさわしい、
  • 会計検査院を参議院に帰属させ、行政をきちんとチェックしていくことには大賛成である、
  • 会計検査院の憲法機関としての位置付けはそのままでよいが、英国やスウェーデンのように議会の下に置き、特に参議院の在り方と関連して機能強化を図るべきではないか、

などの意見が出された。

権限及び地位の強化について、

  • 会計検査院が独立行政機関ではないかとのとらえ方もあるが、憲法機関として、第四権的組織であることを重視した権限強化を図るべき、
  • 会計検査院の報告を受け、国会は内閣に対して必要な勧告を行うこと、その勧告を受け、首相は必要な措置をとらなければならないことを憲法に明記すべき、
  • 会計検査院検査官の身分保障は憲法に明文化するに値する。会計検査院法上内閣から独立の地位を有するとされているが、実際には行政とのつながりで制約が多過ぎる、
  • 会計検査院は、憲法上の機関であるにもかかわらず、実際は検査権限が極めて弱い。権限強化のための会計検査院法の改正は立法府の役割ではないか、
  • 警察や機密費など、会計検査院の検査には大きな制約がある。憲法の規定にふさわしい役割を果たせるよう体制・機能を抜本的に強化する必要があり、それが可能でもある、
  • 検査院の不当な支出の指摘額は米国等と比べ少なく、細かい指摘が多いなど、憲法上の地位に比して三権への監視のレベルが低過ぎる、

などの意見が出された。

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