委員派遣 福岡県(福岡地方公聴会)(平成19年5月7日)

委員派遣実施要領

1.派遣目的
 日本国憲法の改正手続に関する法律案(第164回国会衆第30号、第164回国会衆第31号)の審査に資するため、現地において意見を聴取する。
    
2.派遣委員
    
 団長 委員長 関谷 勝嗣 (自民)
    理事  中川 雅治 (自民)
    同   広田  一 (民主)
    委員  岩城 光英 (自民)
    同   野村 哲郎 (自民)
    同   藤末 健三 (民主)
    同   水岡 俊一 (民主)
    同   鰐淵 洋子 (公明)
    同   仁比 聡平 (共産)
3.派遣地
 福岡県
4.派遣期間
 平成19年5月7日(月)の1日間
5.公述人
 社団法人日本青年会議所九州地区協議会会長       植村 敏満
 福岡県議会議員                    清田 信治
 西日本工業大学理事・女性と教育の未来を考える会代表  梁井 迪子
 福岡大学名誉教授                   石村 善治

派遣報告(平成19年5月8日 中川 雅治 君(自民))

 第一班につきまして御報告いたします。

 派遣委員は関谷勝嗣委員長、広田一理事、岩城光英委員、野村哲郎委員、藤末健三委員、水岡俊一委員、鰐淵洋子委員、仁比聡平委員及び私、中川雅治の九名であり、昨七日、福岡市において地方公聴会を開催し、四名の公述人から意見を聴取した後、各委員から質疑が行われました。

 まず、公述の要旨を御報告申し上げます。

 最初に、社団法人日本青年会議所九州地区協議会会長植村敏満君からは、国民投票の対象について、国政の重要事項も対象とすべきとの考え方もあるが、我が国は代議制を採用しているので、憲法改正に限定すべきである、投票権者の年齢について、世界の多くの国では投票権年齢が十八歳以上とされており、また、現在の社会情勢を考慮して、十八歳以上とすべきである、最低投票率に関しては、憲法に明記されておらず、またボイコット運動を誘発するおそれもあるから不要である、公務員や教育者の地位利用による国民投票運動については、憲法十五条第二項で全体の奉仕者であって一部の奉仕者ではない旨定めていることからも禁止すべきである、国民の多くは情報収集を報道に依存しており、報道が客観的になされないと国民が正確な判断ができない可能性があるので、メディアに対する規制は実施されるべきであるなどの意見が述べられました。

 次に、福岡県議会議員清田信治君からは、国民投票法制の制定に当たっては、公正・中立・公平な制度を構築すべきである、国民投票運動の自由は十分に保障し、公務員の政治活動制限規定の適用除外を認めるべきである、広告放送に関して、国民投票の期日十四日前から規制することとされているが、投票日直前は議論は最も活発となる時期であり、このような制限は表現の自由と抵触するおそれがある、投票権年齢の引下げに関して、民法や公職選挙法等関連法制の検討に際しては、パブリックコメントやパブリックインボルブメント等の手法を導入して、国民の意見を取り入れるべきである、最低投票率に関しては、法律の条文に規定できない場合でも、政策目標として導入すべきであるなどの意見が述べられました。

 次に、西日本工業大学理事・女性と教育の未来を考える会代表梁井迪子君からは、国民投票法制を整備して、国民が憲法改正の権限を手に入れたと意識できるようにすることは、私たち主権者の責務である、投票の対象は憲法改正に限るべきで、一般的な国政問題は国会に託している、投票権者の年齢について、国の未来を担うという観点から、十八歳以上とすることが重要である、公務員もまた主権者の一人であり意見を述べる場が必要である、広報については、丁寧に色々な媒体を通じて実施する必要があるが、その前提として、憲法教育を徹底していくことが重要である、最低投票率は認めない方がよいなどの意見が述べられました。

 最後に、福岡大学名誉教授石村善治君からは、憲法改正は国民主権の行使としての憲法上の行為であることを強調したい、法案第百二十六条に定める投票総数の過半数による国民の承認に関しては、憲法制定権と並ぶ国民の憲法改正権の原則から、有権者の過半数とすべきである、最低投票率について、現代の投票行動から見て、低投票率で憲法が改正される状況を避けるためにも定めるべきである、公務員、教育者の国民投票運動に対する規制については、あいまいかつ広範であり、言論活動に対する威嚇効果・萎縮効果が大きい、資本力や財力に左右される広告放送が投票前十四日まで自由に行えるのは問題であり、その意味で、一般国民が直接行う演説、集会、ビラの展示、配布、行進、インターネットの言論活動はより保障されなければならない、「立法の不作為」が問題になるのは、国民の具体的な人権乃至権利侵害が明白に現存するにもかかわらず、国会が立法作業を放置している場合であるなどの意見が述べられました。

 公述人の意見に対し、各委員より、国民投票法制制定に対する公述人の認識、憲法改正がこれまで発議されなかった理由、原則十八歳の年齢要件と関連法律等との整合性、最低投票率を定める意義・導入の是非、公務員・教育者の地位利用規制と意見表明の関係、公務員の憲法尊重擁護義務と投票運動との関係、メディア規制の在り方、法案成立後施行まで三年間猶予を置くことに対する公述人の認識など多岐にわたる質疑が行われました。

 会議の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はこれにより御承知願いたいと存じます。

 以上で第一班の御報告を終わります。

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