第153回国会 参議院憲法調査会 第2号


平成十三年十一月七日(水曜日)
   午後一時一分開会
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   委員の異動
 十一月六日
    辞任         補欠選任
     桜井  新君     松村 龍二君
     椎名 素夫君     松岡滿壽男君
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  出席者は左のとおり。
    会 長         上杉 光弘君
    幹 事
                市川 一朗君
                加藤 紀文君
                亀井 郁夫君
                谷川 秀善君
                野沢 太三君
                江田 五月君
                高橋 千秋君
                山下 栄一君
                小泉 親司君
    委 員
                愛知 治郎君
                荒井 正吾君
                近藤  剛君
                斉藤 滋宣君
                中島 啓雄君
                中曽根弘文君
                服部三男雄君
                福島啓史郎君
                舛添 要一君
                松田 岩夫君
                松村 龍二君
                松山 政司君
                大塚 耕平君
                川橋 幸子君
                小林  元君
                直嶋 正行君
                堀  利和君
                松井 孝治君
                柳田  稔君
                魚住裕一郎君
                高野 博師君
                山口那津男君
                宮本 岳志君
                吉岡 吉典君
                吉川 春子君
                大脇 雅子君
                福島 瑞穂君
                平野 貞夫君
                松岡滿壽男君
   事務局側
       憲法調査会事務
       局長       桐山 正敏君
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  本日の会議に付した案件
○日本国憲法に関する調査
○参考人の出席要求に関する件
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○会長(上杉光弘君) ただいまから憲法調査会を開会いたします。
 日本国憲法に関する調査を議題といたします。
 先般、憲法事情に関する実情調査のため、本院よりドイツ連邦共和国、スペイン及び英国に議員団が派遣されました。
 この際、本調査会において、海外派遣議員から報告を聴取することといたします。
 なお、御発言は着席のままでお願いいたします。
 まず、派遣議員団の団長を務められた野沢太三君から総括的な報告を聴取いたします。野沢太三君。
○野沢太三君 自由民主党の野沢太三でございます。
 本年九月五日から十三日にかけて行われました特定事項調査第一班、憲法調査の概要を報告いたします。
 調査目的は、ドイツ連邦共和国、スペイン及び英国の憲法事情につき実情調査をし、さらに、これらの国の政治経済事情等の視察をすることでありますが、本憲法調査会の調査に資する観点から、御報告をさせていただきます。
 本班は、憲法事情に関する具体的な調査項目として、一、ドイツ連邦共和国においては、議会制度、特に立法過程及び二院制、連邦制度及び地方自治制度、特に連邦政府と州との関係、人間の尊厳の不可侵と基本的人権、環境権等の新しい人権、安全保障、特にNATO域外の派兵問題、基本法改正の動向等について、二、スペインにおいては、一九七八年、憲法起草時の状況と問題点、議会制度、特に二院制と地方を代表する上院のあり方、地方自治制度、基本的人権、特に国民の人権を守る護民官制度等について、三、英国においては、成文憲法典がない理由と制定への動向、議会制度、特に二院制と上院改革、地方分権及び地方自治制度、基本的人権及び人権法等について、四、また三国ともにEUの主要構成国であることから、EUとの関係、特に今後の統一促進の動向と各国憲法に及ぼす影響等を挙げ、調査に臨みました。そして、各国の議会や政府関係機関だけでなく、著名な憲法学者、市民団体等も対象として調査いたしてまいりました。
 ベルリンでは、連邦議会、連邦参議院、フンボルト大学、NGOを、マドリードでは、議会上院、カルロス三世大学、護民官を、ロンドンでは、議会上院、ロンドン大学、NGOを訪れました。
 以下、調査内容につき、その概略を訪問日程に従って御報告いたします。
 まず、九月六日にドイツ連邦議会を訪ね、外交委員会委員長であり前副議長のハンス・ウルリッヒ・クローゼ議員と一時間にわたって会談いたしました。その要点は次のとおりです。
 基本法の重要な改正の流れとして、一、一九五〇年代半ばのドイツの主権回復、NATOへの加盟及びそれに伴う再軍備規定、二、六〇年代の非常事態法制導入、三、九〇年の東西ドイツの統一が挙げられます。ここで強調したいのは、ドイツは第二次大戦後ヨーロッパ社会の一員として戦前とは違う道を歩もうとしたことです。
 基本法改正は、連邦議会及び連邦参議院によって行われ、国民投票は不要だが、それぞれの院で三分の二以上の多数が必要であり、党を超えたコンセンサスがなければできません。
 連邦制については、ドイツでは国よりも州が第一であり、州が国家をつくっているとも言えることから、州は基本法上も政治的にも強い立場にあります。
 連邦議会は人口比例で選出されるのに対し、連邦参議院は州単位で構成されており、したがって両者の政党勢力比が異なることがあります。法案によっては連邦参議院の同意が不可欠なものもあるから、その重要性は高く、ドイツでは二院制が積極的な機能を果たしていると言えます。
 また、EU、NATOへの参加なしにドイツの存在理由はないと言えます。バルカン紛争は、ヨーロッパの利害、安全と深い関係を持ち、また人道上の理由に加え、ドイツの歴史的経緯から生まれた、キリスト教の十戒に続く第十一戒として、どこかでだれかが苦しんでいるのを黙って見ていてはならないとの判断から、域外派兵を決定しました。ただし、ドイツの派兵はNATOとしての参加であり、ドイツ一国だけで派兵することはあり得ず、そのような意味での歯どめがあります。
 続いて、基本法所管委員会である法務委員会委員長であり、ミュンヘン大学法学部元教授のルーベルト・ショルツ議員と昼食を挟みながら二時間にわたって会談いたしました。また、同委員会委員のハルテンバッハ議員も同席しました。その要点は次のとおりです。
 ドイツの基本法がなぜ四十八回も改正されたかについてですが、基本法は、制定当初は、統一も近い将来可能であり、そのときに正式な憲法を制定すると考えていたので、必要不可欠な規定のみを置いた簡単なものでした。しかし、統一が遠のくにつれ、改正によって基本法を補足していかなければなりませんでした。ただ、改正には技術的な事項が多く、基本的な内容、すなわち人間の尊厳の不可侵及び基本的人権の保障という本質は制定時と変わっていません。
 憲法か基本法かというのは、あくまで名称だけの問題です。東西ドイツが統一されたとき、名称についてもいろいろな意見があったが、基本法という言葉はいわば一つのブランドとなっており、また国民も基本権という言葉と同じ基本に愛着を持っていたことから、委員会では全員一致で基本法の名称にとどめることを決定しました。
 基本法で社会権の規定が少ないことは確かですが、基本的人権における自由と平等をはっきり規律している上、ドイツが民主国家、社会福祉国家であることを宣言しています。ドイツでも少子高齢化の問題があり、いかにこれに適応し配慮するかを議論しているところですが、基本法の改正ではなく、法律の改正、整備で行うつもりです。
 外国人の地方参政権については、EU加盟国国籍保持者で、その国もドイツ人に地方参政権を認めている場合に限って認めています。ただし、連邦憲法裁判所の判決から、州レベル以上は認められないとしています。
 また、徴兵制については、少子化及び軍備のハイテク化の方向から、廃止すべきとの意見、また、維持しつつ徴兵制と職業軍人の中間形態にするとの意見などもあります。
 連邦憲法裁判所についてその中立性が守られているかですが、裁判官は、連邦議会、連邦参議院おのおのが三分の二以上の多数をもって選出することになっており、一つの党で三分の二以上の多数を支配する党はないことから、各党は妥協せざるを得ず、互いの主張が相殺される結果、政治的中立性が確保されていると考えます。
 さらに同日の午後、ドイツの代表的環境NGOの一つ、ドイツ環境保護リングを訪ねました。同団体は今から五十年前に創設され、自然及び環境の保護を活動目的として発展してきたNGOであり、特に、各種環境保護団体、NGOを束ね、いわばその上部団体として、傘下にあるNGOの活動の調整、広報等の役割を果たしています。現在、加盟団体、NGOは百を超え、これらを合わせた会員数は約五百万人に達しているそうです。ここでは、EU諸国の環境運動の動き、温暖化ガス問題、基本法における環境権、政治との連携の問題、原発廃止法の評価等、環境に関する多岐にわたる問題について話し合い、NGOが国の環境政策の上で果たしている役割を知ることができました。
 翌七日の午前には、連邦参議院で憲法問題を所管する法務委員会を訪ねました。法務委員長は、ハンブルク市長でもあり、その公務のためベルリンには不在であったので、連邦参議院事務局のホフマン法務委員会担当課長から、連邦参議院及び法務委員会の概況を伺いました。その要点は次のとおりです。
 連邦参議院の特徴は、各州の代表で構成されることにあり、二院制を導入している国でも、一つの院が州政府の首相等閣僚で構成されるのは珍しい例です。
 連邦参議院議員となる各州の代表者数は、それぞれの州の人口に基づいて配分され、連邦参議院では、その州の代表者の一人がその州を代表して州の持ち分の票を投票しています。州政府の閣僚は、自動的にすべて参議院議員となることができます。現在、州の閣僚は全体で約百六十名ほどで、それらの者が連邦参議院議員ということになります。
 州の持ち分票は、各州三票の基礎票のほか人口に比例して配分しています。これは、各州に二人しか上院議員のいないアメリカ型と完全な人口比例型の折衷ともいうべきもので、一つか二つの大きな州が連邦参議院の意思を決定してしまうことがないような工夫と言えましょう。
 連邦参議院は、基本法が定める一定の法案について同意権を有しています。基本法では、一、基本法改正、二、重要な税法案、三、州がその法律執行に当たって州事務に影響を及ぼす法案を連邦参議院の同意を必要とするものとして挙げていますが、実務的にはなかなか判断が難しい面があります。例えば、原発廃止法案は、政府は同意を要しない法案と判断したため、連邦憲法裁判所に提訴される可能性が残っています。しかし、連邦憲法裁判所にまで提訴される法案は例外中の例外で、これまで一件しかありません。
 なお、外交・安全保障上の問題については、州は外交には直接かかわらないから、連邦参議院は控え目な態度をとっています。
 連邦参議院の改革に関して、二年前は与党のコール政権は連邦参議院で過半数を有していなかったため、改革の渋滞と呼ばれた現象が生じ、改革を試みようとしたことがありましたが、現在はこうした動きはありません。
 午後は、フンボルト大学にクレプファー教授を訪ねました。同教授はドイツの有力な憲法学者であり、また、東北大学及び神戸大学で客員教授を務めた日本の憲法事情にも詳しい方です。その要点は次のとおりです。
 ドイツ基本法の改正が四十八回もあったことについて、数字だけ見れば確かに多いし、それだけの必要性があったのか疑問に思う一人であるが、一般論としては、憲法においても、何か変わるものだけが生命を有していると言えるのではないでしょうか。死んだものは変わりません。また、歴史を一つの道と考えると、道を整備しながら運転していかなければならないだろうし、憲法が政治に影響力を与えようと思うなら、それなりに改造されていかなければなりません。
 一九四九年制定時の基本法は、まだ完成されたものでないと理解されていたので、基本法という言葉を使い、実際、多くの空白があったので、その必要性に基づいて空白を埋めていきました。
 特に、軍備や主権の回復については、基本法制定当時の状況も考えなければなりません。基本法が制定された当時、軍備はなく、一九五五年に再軍備されたが、これは防衛戦争のみを認め、防衛するだけの軍隊を有すると理解しなければなりません。
 また、それ以外にも、一九四九年制定時の基本法の条文と二〇〇一年の基本法の条文を比較すると大きく変わっています。例えば、環境保護、国防軍の位置づけ、財政、非常事態法制など、また、欧州連合の諸原則を定めた第二十三条は制定時には考えられなかったのであり、その意味で基本法は建物に例えるなら、内部は完全に改築されたと言えます。
 首相公選制については、ドイツにおいては、ワイマール時代の歴史的反省から、強い指導力を持つ首相という考えはありません。しかし、ドイツの首相の指導力がなぜ強いかは、建設的不信任決議案という規定があるためで、これは後任の首相が選出される場合のみ不信任を表明できるという制度です。力の空白が起きないようにするための工夫ですが、結果的に首相の地位を強くしています。
 二院制については、ドイツの連邦参議院は連邦制度に基づく機関のため、日本の参議院と比較するのは無理があります。ドイツは十六の州から構成され、各州は完全な主権を有しているわけではないが、国際法的な主権を有しています。日本は欧州から多くを学び取ったが、連邦制は昔から取り入れたことがないので、まず日本は、フランス、イタリア、スペイン等を参考にしながら地方分権化を進め、これにより参議院に地方を代表させるという可能性があります。英国の上院も同じような問題を抱えています。
 ドイツ基本法の条文を読むと、ワイマール体制やナチスの反省から発した条文が多いし、実際、ナチスが権力を掌握した一九三三年の状況を避けなければならないというのがコンセンサスです。民主主義は多数決原理に基づきますが、自由の敵には自由はないという考えから非合法政党を禁止していますが、この手続はドイツ基本法の歴史でもあります。
 憲法と現実との乖離の議論については、第一は基本法の条文の改正、第二は解釈によって基本法を実質的に改正するとの二つの考え方があり、後者の例として、IT技術・データ処理から生じる人権侵害のおそれに対し、連邦憲法裁判所は国勢調査に関する事件の判決で自己情報決定権という概念を認め、解釈による重要な一つの改正となったことを挙げることができます。
 連邦憲法裁判所については、非常に大きな役割を果たし、その名声は国民の間にも非常に高いものがあります。違憲判決は割合としては約一%程度ですが、審査件数が多いためその数も多いのです。
 九月八日には、ベルリン近郊にあるポツダムに行き、英、米、ソ連によるポツダム会談会議場となったツェツィリエンホーフ宮殿を視察しました。ここで協議が行われ、日本の運命が大きく変わり、また現在の日本国憲法が制定されることに至ったことを思うと、非常に感慨深いものがありました。
 同日午後、スペインに移動し、日曜日を挟んで翌々日の十日、スペインの憲法事情の調査を行いました。
 午前には、一九七八年に制定された現在のスペイン憲法の起草者の一人グレゴリオ・ペセス・カルロス三世大学学長を訪ねました。同学長は、かつて下院議長を務めた大物政治家でもありました。憲法起草時の背景、問題点、現スペイン憲法の特徴、今後の課題と話は多岐にわたりましたが、その要点は次のとおりです。
 現在の憲法は、ほとんどすべての政党の合意を得て成立したものであります。それ以前の憲法は国の半分の支持しか得ておらず、そのためもあって市民戦争や専制政治という悲惨な体験をしてきたので、現在の憲法草案に当たって、すべての政治勢力が集まって、今までの憲法のような失敗の経験をしないために次の点に苦心しました。
 第一は国の形をどうするかという問題で、君主制をとるか共和制をとるか、第二は宗教の問題で、カトリックの国として成立してきた歴史から、国としての宗教的立場はどうあるべきか、第三は地方の問題で、スペインには一つの国とも言える地方が存在するがそれをどのように共存させるか、を特に議論してきました。そして、現憲法は、国民投票で支持を受け、しかもすべての県で支持を受け成立したのです。
 スペイン憲法の特徴の一つである議会君主制というのは、立法、行政、司法いずれも君主が実権を持っていない、国の機関であるが権力ではない、すなわち英国の王室と同じで、権限は持っているが行使はしないということです。国王は国の元首で、継続と統一のシンボルであるが力ではありません。例えば、国王は憲法裁判所の裁判官を任命しますが、公式の場で表明するだけで、実際は十二人の裁判官について、四人を下院が、四人を上院が、二人を政府が、二人を司法総評議会が決めています。また、国王は軍の長でもありますが、これもシンボル的な力にすぎません。ただ、一九八一年二月の軍事クーデター未遂事件で、通常の政府権限が麻痺しているときに、国王がテレビで軍、政府、国民に訴え解決したことがあり、このような政府機能停止状態の場合の国王の存在は大きく、また国民の信頼も一層高まりました。
 二院制について、上院は地域代表ということになっていますが、その機能は十分に果たされているとは思っていません。上院議員のほとんどを各県から直接選出するという今の選出方法が適切ではないからで、各地方の議会で選出された議員で構成されるべきと考えます。また、上院には、州政府の閣僚により構成するドイツ型と、州議会を通じて構成する議会型の二つの型がありますが、同じ権限を持った、いわば並行した二院は求めていません。だから、下院と上院の関係は、下院が優越し、立法面で強い力を持っているべきです。
 地方自治制度は、自治州の下に県が、県の下に市町村があるという構造になっており、この制度をさらに強化すべきです。自治州、県、市町村については、おのおの異なる価値を持っており、県については、県民意識も固まっているので、県をなくし地方自治体の構造を簡素化することは極めて困難です。
 午後は、上院憲法委員会を訪れ、ペドロ・アグラムン上院憲法委員会委員長ほか五名の憲法委員と懇談しました。その要点は次のとおりです。
 スペインでは、今まで自由と専制政治の間で争いが続き、特に悲惨な市民戦争ではスペインが二つに分かれてしまった、これを二つのスペインと呼んでいるが、唯一のスペインにしようというのが現在の憲法であります。そのために、自由と地方という二つの問題を解決しなければなりませんでした。
 まず、憲法では基本的人権を強く保障しています。人権には、自由権や社会権のほか経済的なものもあるし、自治州の住民としての文化の尊重もありますが、これらはいろいろな法律を通して具体化されており、また国はそれらを保障する義務を持っているので、そのために憲法裁判所等の制度があります。
 地方自治制度については、七八年の憲法制定当時はどうなるかまだよく見えていなかったが、現在のスペインは、すべての県がどこかの自治州に所属し、自治州に憲法上の権限が大きく与えられています。実際、どの自治州も最大限の権限を行使しており、連邦制の国と比べても、スペインの自治州の権限は非常に強いものがあります。
 上院の選出方法について、どの政党も共通して考えているが、大切なのはもっと地方の声を聞き反映できるようにすることであり、基本的には今のシステムは適切と思います。
 スペインの政治形態は議会君主制であり、王は君臨すれど統治せずです。憲法でも規定されているように、国王の行為は首相、担当大臣の副署が必要であり、責任は署名した大臣にあって、ヨーロッパのすべての立憲君主制の国と同じです。
 EUの統合が進んでいるが、今の段階では、現在の憲法で特に問題はありません。
 その後、同日の夕方にエンリケ・ムヒカ護民官及び二人の副護民官と会談いたしました。護民官という言葉は古めかしく感じられるかもしれませんが、要するに国民の人権を守るオンブズマンであります。その要点は次のとおりです。
 護民官の憲法に規定されている役割は、市民の基本的人権の擁護及び行政権の監視であり、公権力を対象にして行いますが、司法の独立との関係から、司法権は別です。調査の端緒としては、市民から人権を侵害されたという訴えの書面を受け取ることもあるし、我々が調べることもあります。人権が侵害されたと思われる場合、その場所、例えば病院、刑務所等を訪問しながら調査します。また、調査において行政省庁が協力しない場合、護民官に従わないということで罰則を科すことができますし、さらに憲法裁判所に提訴することもできます。憲法上、憲法裁判所に提訴できる機関は、一、内閣総理大臣、二、五十人の下院議員または上院議員、三、自治州政府及び議会、四、護民官で、その意味でもその役割は大きいのです。
 護民官はすべての機関から独立しており、任期は五年です。選出に当たっては、両院の五分の三以上の賛成票が必要で、与党と主な野党の合意がないと任命できません。なお、二人いる副護民官の任命も五分の三以上の支持がなければなりません。
 議会には上院議員と下院議員で構成された委員会があり、必要に応じて出席し、また報告書を提出しています。
 ヨーロッパ各国にはオンブズマン制度がありますが、スペインの護民官ほどの権限を持っていません。スペインは、専制政治の苦い経験を持っており、その経験から人権に対する強い保障を憲法で定めたのです。ラテンアメリカでも民主化を進めるに当たって、スペインをモデルにして護民官を設置し、その結果としてラテンアメリカ諸国のそれは似たものとなっています。
 公権力による人権侵害の監視について、公権力の不作為の場合でも護民官のイニシアチブで勧告できます。ただし、マスコミ等民間機関による人権侵害は対象ではありません。
 同日夜、英国に移動し、翌日の十一日及び十二日、英国の憲法事情の調査を行いました。
 十一日の午前は、まずチャーター88を訪ねました。憲法NGOの一つですが、組織的なメンバーがいるわけではなく、いわば憲章に対する署名運動で、約八万二千人がこれに署名しているそうです。そして、キャンペーンを地方、全国各レベルで行っているユニークな団体です。会談しましたピエトローニ副代表の話の要点は次のとおりです。
 チャーター88は、サッチャー政権時代の一九八八年に創設されました。これは、非常に強い政府が存在することに対する運動でもありました。国民への政府コントロールをチェックする機能を強化するには憲法的改革が必要という分析に至りましたが、これは最終的には成文憲法に至るものです。
 政府へのチェックを強めるために、一、地方分権、二、下院への比例代表制導入、三、上院の民主的選挙、四、人権法、五、情報公開法の目標を設定しました。当時の野党である労働党の選挙公約に盛り込むことに成功し、九七年に政権交代してから多くの憲法的改革が推進されました。我々の活動も多少これに寄与したと思います。例えば、一、地方分権では、スコットランド議会、ウェールズ議会の創設、二、EU条約による人権法の制定、三、情報公開法の制定、四、上院も不十分ではあるが改革は行われました。しかし、我々の要求である下院の比例代表制導入と上院の民主的改革の二点についてはまだ手がつけられていません。
 なお、先ほども言ったように、これらをすべて取りまとめた成文憲法はなく、以前にも増して成文憲法の必要性が高まっていると考えます。
 成文憲法の制定には、世論調査会社が行った国民調査によれば、約七〇%が賛成しています。ただ、調査が行われるまではその必要性を意識している人はそれほどいませんでした。憲法的改革のプロセスについては市民を参加させた形で行われておらず、我々は、改革のための改革ではなく、いかに市民の参加、影響を得るかを重視しています。
 その日の午後に痛ましいアメリカの同時多発テロの報に接しました。英国全土も緊張の中に置かれたのですが、幸い、予定どおり翌日の十二日、英国上院の憲法問題特別委員会委員長を務めるノートン上院議員と会談することができました。その要点は次のとおりです。
 上院憲法問題特別委員会は、昨今の憲法的変化、例えばEU人権条約などEU諸条約や、また上院改革、地方分権等の動きに対応するために、ことし前半に設置することになったものです。非常に広い観点から憲法的改革を検討し、また関係する法案の審議もします。
 今、最初の報告書を発表したところで、まず自分たちが何をやるか明確にし、広い観点から憲法的改革を見ていき、細かい部分にはとらわれないことにしています。二番目の報告書は、今秋、議会に提出されるが、憲法的改革の手続のあり方、すなわち憲法的改革をどのような手続を踏んで行うべきかを十分顧みようとするものです。三番目の報告書が続いて出されますが、英国議会及び政府とスコットランド及びウェールズ議会との関係など、各組織間の関係を見ていく重要なものとなります。
 まず、上院の意義ですが、下院を補足する院ということにあります。
 第二院のパターンには二つあり、第一は、対立型で独立性を有し一院をとめる権限を持つもの、第二は、補足型で一院を助け補助するもので、我々の目指すのは第二の型であり、第一院とは質的に異なった審議を行い、第一院で行われた審議を繰り返すのではなく、異なったものを行うことにあります。
 我々上院には、有効に機能している点が二点あります。
 第一は、予算審議がないので下院より時間的余裕があること。第二は、議員に芸術家、科学者など異なった経験、専門性を持った人物がなっており、それゆえ異なった目で見ることができることです。現在、下院議員はますます職業政治家になってきていますが、上院にはいろいろな分野からの出身者が来ているので、それらの経験を生かし、違った目で見ることができます。しかし、我々には民主的正当性がないので下院の決定を覆すことはできません。ただ、下院よりさらに詳細な審議をすることができるし、また、上院では党議拘束が下院に比べて少ないのです。
 上院議員をいかにして国民の目からも、正当性ある者として見てもらうかは大きな問題です。
 まず、選挙で選ばれていないため、国民に責任を負うことができない状態にありますが、政治全体としては、両院の役割分担が明確になることから、かえって信頼を得られることができる状態にあると思います。すなわち、政府は公選の第一院から選ばれ、したがって政策に責任を負うのはあくまで下院であり、政府です。これにより、国民にはだれが責任をとるべきか明確になるのです。
 次に、貴族という名称は今問題になっています。既に世襲貴族は廃止の方向にあるし、議員の一部は公選になる方向であるので、選挙で選ばれた上院議員をどうするか、一時的に貴族にするのかの問題がありますが、最終的に貴族院という名称は残ると思います。
 昨日のテロについてですが、憲法問題特別委員会は広い視野から憲法を見ているが、安全保障という個別分野については見ていません。なお、上院には安全保障に関する委員会はなく、議員のグループの中に安保・情報関係を監視するグループがあります。英国では北アイルランド問題があるため、ある程度危機管理の歴史、経験を有していますが、あれだけの規模のテロに対処するものはありません。
 しかしながら、一般的なポイントとしてはバランスをとることが挙げられましょう。
 すなわち、第一は、危機管理を行い、これを継続していくこと。しかし、第二には、普通の生活を守っていくことです。普通の生活ができなくなるなら敵に負けたことになります。英国議会では、第二次大戦中、ロンドンの空爆の最中も議会を停止することはなかった、つまり普通の生活を守り続けたのです。議会はもちろん標的になっていたが、別の建物を使って審議し続けたことを国民も誇りにしています。
 その後、ロンドン大学の憲法学教授であり、憲法NGO、憲法ユニットの代表を務めるハーゼル教授と会談しました。その要点は次のとおりです。
 英国が成文憲法を持たないのは、約千年にわたって平和な歴史が続いたからです。成文憲法は、通常、次の四つの場合に制定されます。一、革命、二、戦争の敗北、三、植民地が独立、四、前政権、政治体制の崩壊ですが、英国はどれにも該当しませんでした。ただ、ここで注意したいのは、我々の憲法はほとんど文書にはなっており、一つの成文典にまとまっていないだけということです。例えば、法律によって実質的な憲法が書かれている場合があります。イングランド・スコットランド連合法、議会法、人権法などです。
 憲法ユニットは、独立、超党派・中立、特に非政党の立場のNGOです。六年前に発足したが、当時、野党であった労働党が憲法的改革には熱心だったが実施するには余りに準備が不十分だったので、このような団体をつくりました。私が積極的に行ったのは、他の国の憲法から学ぶことです。人権法については、カナダ、ニュージーランド、香港などコモンロー体系のもとで人権憲章を導入した国から、地方分権については、連邦国も含めオーストラリア、カナダ、スペイン、ドイツなどから学びました。要するに、憲法ユニットは、憲法改革のための提案をしたりキャンペーンをしたりする団体ではなく、政党の憲法的改革のプログラムを詳細に研究するシンクタンクと言えます。
 二院制について、我々は、第二院というのは、第一院と同じことをやるのではなく、これを補足するものでなければならないと考えています。すなわち、第一院と異なった役割、構成を持たなければなりません。もし公選制とするなら、異なった選出の仕方であるべきです。典型的な連邦国家では、第一院は国民を代表し、第二院は州を代表していますが、このあり方は我々が上院改革において提案している一つです。英国は連邦国家ではないが、既に地方分権が行われ、地方に権限が大幅に移譲されているので、第二院へは各地域からの代表が送られるべきでしょう。
 会談に快く応じてくださったこれらの方々、また、仲介の労をとってくださった日本大使館その他関係者各位に心から感謝申し上げます。
 詳細は、別途冊子を作成し配付いたしますので、ごらんください。
 以上、御報告申し上げます。
 ありがとうございました。
○会長(上杉光弘君) 御苦労さまでした。
 引き続き、他の派遣議員の方々からも御発言いただきたいと存じます。松村龍二君。
○松村龍二君 このたび、上杉憲法調査会会長を初め諸先輩、同僚の御配慮でこの視察に参加、参画できましたことを感謝申し上げます。また、視察中は野沢団長を初め視察団の同僚、よきパートナーに恵まれまして、また視察の準備、視察の支援を憲法調査会事務局の方々、また大使館等いろいろお世話になりまして、団長を初め同僚にも心から感謝申し上げる次第でございます。
 私自身にとりまして非常に参考になった、勉強になったと。やはり現地へ行きまして、いろんな方からお話を聞くということは、大変意義深いことであるというふうに思ったわけでございます。
 そこで、具体的に私が強く質問したり感じましたことを幾つか御報告させていただきます。
 ドイツへ参りましたときに、日本では日本国憲法が昭和二十一年、終戦の翌年つくられた、マッカーサーから、連合軍から押しつけられたというふうなことから、憲法を改正しないといかぬというふうな意識を持つ人が多いわけであるけれども、同じような事情にあったドイツにおいてはいかがであるかという質問をしたわけであります。
 そうしましたところ、これはクレプファーという、先ほどの大学の教授でございますが、これは非常に難しい質問で、ドイツでもタブーの問題である。ドイツにおいても占領軍が基本法に強い影響を与えた。ドイツの基本法は昭和二十四年につくられたわけですが、米英仏の承認を受けてつくらなければならなかった。西ドイツとしては、ベルリンの位置づけをぜひ西ベルリンの一角ということに位置づけたかったけれども、占領軍はこれを認めなかったというようなことで、ドイツの国民の意図が違うところにあったというふうな話もあったわけですが、現在の連邦制度は特にアメリカが強く推し進めたものであって、これは非常に定着しておるということで、いろいろお話を伺いましても、この連邦基本法が占領時に押しつけられてつくられたものだから改正しないといかぬというふうな、余りそういう強い話はありませんでした。
 ただ、ドイツの基本法と憲法という名前の問題についてでありますが、先ほど団長の報告でも、同じようなものだという説明をする方もいるわけですが、フンボルト大学の先生の話によりますと、このドイツ基本法の一番最終の百四十六条というところに、実は、ドイツが統一した暁には憲法をつくる、そのときには基本法は失効するというふうな規定になっていたんだけれども、統一した際にそこを改正いたしまして、ドイツの統一と自由の達成後は全ドイツ国民にこの基本法は適用されるが、ドイツ国民が自由な決断で議決した憲法が施行される日にその効力を失うというふうな条文になっておりまして、あくまでも憲法と基本法は違うという意識があるということも勉強したわけであります。
 それから、その押しつけられたという中で、ドイツ基本法の第五条に表現の自由というのがあるんですが、二項、三項では別に定める法律の制約に従うみたいな条文がありますが、初めできたときは全く無制限に表現の自由を保障するという規定であったと。これはナチスドイツが本を焼いたというようなことから、全く無制限の表現の自由を保障するというふうな条文だったんだというふうに私は聞いた覚えがございます。
 それから、連邦参議院の仕組みですが、当然に日本の仕組みとどう違うのかなと思って質問いたしましたところ、あくまでも州の代表である、だれが参議院議員であるということすら決まっていない、各州が四人から六人の代表をその議会に出す、そしてその議会全員の六票なら六票を代表して、代表がその票を投じるというようなことであるということで、連邦制度に基づく特殊な、日本とは違う連邦制度であるというようなことを学んだわけであります。
 それから、連邦参議院は衆議院の、下院を通った法案を全部審議するのかと思いましたら、そうではなくて全体の五〇%ぐらいしか上院は審議をしない、同意しないということです。その内容は、基本法の改正、これは当然に連邦も審議、同意するわけです。重要な税法案、これも州財政に影響を及ぼすものは上院で、連邦参議院で同意をする。それから、第三の一般の法律ですけれども、これについてはそのときの政府が判断いたしまして、上院に同意するかしないか、こういうようなことである、こういうことでありました。したがいまして、問題の原発廃止法案、これは上院に、連邦参議院にはかけられていないということであります。
 それと、ついでに、NGOを訪ねた話がありましたが、ワンダーフォーゲルとか乗馬クラブとか、こういうものも全部包含するNGOでありますので、環境団体といっても四割ぐらいの財政補助を国からもらっておると。それで、いろいろ調査を受けて、残りの金を収入を得るにも政府系の諮問とかそういうものが多いと、こういうことです。
 したがいまして、全く政府系のNGOと言ってもいいかなというような感じがしたんですが、ここが反原発運動に非常に盛んであるということについてなぜであろうかということを学んだわけでありますが、チェルノブイリがありましたウクライナとベルリン、五千キロぐらいしか離れていない。風に乗って放射能が飛んでくるというような非常に危機感を国民が受けて、それでこのような政府系のNGOも原発に対して批判的であるというふうに感じたわけであります。
 最後に運転開始するのは二〇〇二年をもってリミットとする、それから三十年間で原発をやめると、こういう法律かと思いますけれども、これは現在の政権が、緑の党ですか、というのを含んでやっておるという立場からこの法案をつくったと。そして参議院には、連邦の各州にかけますと反対もあるかもしれないということで政策的に参議院の同意を得ていないと、こういうことであります。
 それから、英国へ参りますが、英国の二院制につきましては、先ほど団長から話のありましたとおり、あくまでも補足的役割をするのが貴族院であるというような考えに徹しておるようであります。そして、貴族等多彩な人材がいるところで専門的な審議をするということのようであります。
 それで、バリュー・フォー・マネーと。この貴族もあれもお金を余りいただかないので非常に安くつく上院であるというような冗談を言っておりました。上院の議員の収入は三万ポンド、下院の議員の収入は三十五万ポンド、十分の一ぐらいの、政府からの支給を受けていないと、こういう話であります。
 それから、成文憲法の問題につきまして、余りサッチャーが勇ましいといいますか逸脱しそうなんで、成文憲法でがっちり抑えようというような動機をもって、民間にも学者の間にも成文憲法をつくるという運動があったわけですが、そこで私もちょっとひねった質問をいたしまして、日本の国の憲法は、憲法第十四条は法のもとの平等ということで貴族制度を廃止しているということを標榜しているけれども、成文憲法をつくると近代法の憲法の原則である法のもとの平等というのはどういうふうに書き込むつもりですかというような質問もいたしましたけれども、イギリスの方は、現在の王制等に触れるようなところまでは考えていないというようなことでございました。
 それから最後に、先ほど団長からお話のありましたヘーゼル教授が……
○会長(上杉光弘君) 時間が超過していますから。
○松村龍二君 はい、もう終わります。
 ヘーゼル教授は、憲法が改正されるのは四つの場合であると、こういう話でございましたので、そうすると、現在、日本において全文改正するということはないことになるなと。これは言葉の遊びですけれども、敗戦か革命かと、こうなりますと、現在、いずれもない、部分改正というような話をちょっとひらめいたわけでございます。
 あとは、スペインにつきましては後ほどほかの先生方からのお話もあろうかと思いますので、以上をもって報告とさせていただきます。
 どうもありがとうございました。
○会長(上杉光弘君) 次に、高野博師君。
○高野博師君 ドイツ、スペイン、イギリス、三カ国の調査においての所感を簡単に述べたいと思います。
 一つは、国の形、あるいは体制、システムというのは当然のことながら憲法によって規定されていると。そして、その憲法はその国の歴史に影響を受ける、あるいは過去の歴史の教訓が反映されているということだと思います。
 ドイツの場合は、ナチスの反省から基本法の第一条で人間の尊厳の不可侵をうたっています。スペインは、市民戦争とフランコ独裁体制、あるいは地方の独立運動の歴史から、憲法では民主化とそして地方自治に重点を置いている。また、王室の長い歴史もあって議会君主制をとっているということでありますし、イギリスの場合は、過去千年以上戦争に負けたことがないという平和の歴史から成文憲法を持たないということでありまして、我が国の憲法が過去の反省から平和主義を一つの柱としているのも、これも当然であろうと思います。
 二つ目は、憲法の規定は国際政治環境の影響も受けるということでありまして、ドイツが何回も基本法の改正を行った背景には国際環境の大きな変化もあったということだと思います。例えば、一九五〇年代半ばに主権を回復し、NATO加盟と同時に再軍備と徴兵制を復活させる基本法の改正を行ったわけですが、その背景にはソ連の脅威という深刻な現実があったということでありますし、これを国民も受け入れたということだと思います。
 ちなみに、私はクローゼ外交委員長に、基本法第一条に人間の尊厳の不可侵を定めているが、それを侵す最たるものは戦争ではないかと、したがって再軍備や徴兵制の復活というのはこの理念に反するのではないか、軍隊の行動の歯どめは何かという趣旨の質問をしましたところ、同委員長は、ドイツ一国だけでは行動を起こさない、NATOの一員として行動する、これがドイツのレゾンデートルでもあるということを述べられまして、これは大変参考になると思いまして、我が国の場合の自衛隊の派遣、これは国連決議とあるいは同盟国との共同行動というのが考えられると思いますが、いずれにしても集団的自衛権の問題にぶつかると思います。
 もう一つ、三つ目は二院制のあり方でありますが、我が国の参議院は、衆議院をチェックする、あるいは抑制する、補完するといった役割がありますが、この二院制の議論の中で、地方分権とかあるいは地方自治の視点からも議論する必要があるのではないかと思いました。
 ドイツとスペイン、特にドイツの場合は、連邦参議院は各州の代表によって構成されている。州、地方の問題を中心的に扱う、そして議員は州政府の指示に拘束されるという徹底したものでありますけれども、我が国もこの二院制のあり方を考える上で参考になるのではないかと思いました。
 そのほか、人間の尊厳を実現する権利という権利について、すなわち寝たきりの病人の人、あるいは痴呆症の人、あるいは受刑者、子供など、自己決定できない、そして自己責任のとれない人であっても、人間としての尊厳を実現する権利があるという新しい、ヨーロッパでは新しい権利だと、人権だと言われているんですが、この人権についてフンボルト大学の教授と議論しましたが、残念ながら余りかみ合わなかったということであります。
 また、ドイツでは、クローゼ外交委員長が、将来EUが米国よりも強くなる可能性について述べておりましたけれども、ショルツ委員長が、EUは独自の軍事力を強化する考えはないということを明言していたのが印象的でありました。
 あとは、団長の報告がありましたように、イギリスの憲法委員会は安全保障という分野は見ていないと。それからまた、イギリスの上院には安保に関する委員会がないというのも意外でありました。ただし、下院には国防委員会というものがあります。
 最後に、今後の調査についてでありますが、やはり関係者に直接意見を聞くというのは大変勉強になると思いますし、その中で各国の司法制度、裁判制度についても、憲法の理念とか国のあり方との関係で調査の対象としてはどうかと思います。提案をしておきたいと思います。
 以上でございます。
○会長(上杉光弘君) ありがとうございました。
 次に、小泉親司君。
○小泉親司君 日本共産党の小泉親司でございます。
 私は、ことし一月のアメリカ憲法の調査に続きまして、ドイツとスペインとイギリスの憲法調査に行かせていただきました。私の所感を幾つかお話をさせていただきたいと思います。
 一つは、侵略戦争の反省の問題と、いわゆる押しつけ憲法論の問題であります。
 ドイツの基本法は、御承知のとおり、ナチの侵略戦争の反省から生まれたという点では、日本国憲法と同様の背景を持っているというふうに思います。フンボルト大学のクレプファー教授は私の質問に対して、ナチの反省から、評価できるものが非常にこの基本法の中には多いということを述べておりました。この立場から、ドイツの基本法は、人間の尊厳の不可侵、闘う民主主義、これを標榜して、国民の基本的人権をはっきり明記しております。同時に、国民に対して憲法秩序の保護、いわゆる憲法の擁護という点を要請していると。この点では、再びナチの時代に戻らないというドイツ国民の強い意思を私はあらわしているというふうに思います。
 日本は、アジアへの侵略戦争を行った国として、その反省から生まれた日本国憲法を持っているわけで、特にドイツの基本法を上回る先駆性、やっぱり徹底した平和主義、恒久平和主義、憲法九条というものを持つと同時に国民の基本的人権を擁護する立場をとっているわけで、この点ではやはり今後、この恒久平和主義を守り、国民の基本的人権を擁護することは大変重要な国民的課題であると私は痛感をいたしました。
 同時に、このドイツ基本法の生い立ちの問題がクレプファー教授との意見交換では議題になりまして、例えば、クレプファー教授はドイツ基本法の問題について、ドイツも占領軍が基本法に強い影響を与えたと。現在の連邦制度は特にアメリカが強く推し進めたものであったと。当時それなりに占領軍に押しつけられた基本法は、その後、年月の経過とともに西ドイツ国民に受け入れられたというふうに述べられたのが大変私は印象的で、やはり押しつけ憲法だから改正すべきという議論は、いささかやはりこのドイツ憲法を調査して、そういう点は、日本の憲法も非常に国民的に定着しているという点では、この押しつけ憲法だから改正すべきという議論はやはり私は成り立たないというふうに感じました。
 二つ目はスペイン憲法の問題で、特に護民官の問題について話をさせていただきたいと思います。
 スペインの憲法は、フランコ軍事独裁政権崩壊後の七八年にできた比較的新しい憲法ですが、憲法に国民主権ということを明記している点、それから国民の基本的人権を初めとして教育権、労働権といったいわゆる社会権をきちんと明記している点では進んだ憲法だというふうに思います。同時に、政治形態としては議会君主制を採用しているという点で大変独特の憲法であります。憲法上は国王に法案の裁可権、宣戦布告の権利、こういうものを、大変強大な権限を付与していますけれども、上院憲法委員会との意見交換では、先ほども団長の報告にありましたように、国王は君臨するが統治せずというふうに説明しておりました。
 特に、このスペインの憲法で印象深かったのは護民官という制度で、スタッフ百五十名を擁する、憲法の実施を監督する機関が存在している。護民官というのは、いわゆる単なる官職ではなくて護民官という機構でありまして、違憲判決、判断ばかりじゃなく、医療保護などの憲法が守られているかどうかということを判断するということまで行う機構であります。
 意見交換の中では、例えば労働組合自由法というのが国会で制定されたそうですが、この法律が労働組合活動の自由が狭過ぎるという指摘を行ったのが護民官だということが報告されました。日本には残念ながら護民官という制度はありませんが、憲法を守り、暮らしの中に生かすという点で、我々はその護民官としての役割を果たしていきたいという点を大変私も強く感じました。
 最後は、憲法改正とのかかわりの問題でありますけれども、ドイツでは憲法を四十八回改正したということで、憲法改正が不可欠だという代表例として私は説明されていると思いますが、基本法自身が憲法の擁護を国民に求めていること、また、今回の調査でもショルツ、ドイツの上院憲法委員会委員長とお会いしましたが、この方の発言では、改正の回数は多いが重要でない事項が多く、基本的な内容は制定時と変わっていないというふうに発言していたことが印象的でありました。このことは、ドイツ憲法を研究している多くの学者が、技術的改正が少なくないということを指摘している点からも、この四十八回の改正の特徴はそういう点にあるというふうに思います。
 以上、イギリスの調査のお話もしたかったんですが、ちょっと時間がありませんので、以上の点を申し述べて報告とさせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
○会長(上杉光弘君) ありがとうございました。
 次に、福島瑞穂君。
○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。
 視察の間は大変お世話になりました。私は、ドイツだけ参加することができまして、全部に参加できなかったことは申しわけありませんし、どうも済みませんでした。ただ、ドイツの視察も大変有意義なものでして、四点ほど所感を述べさせていただきます。
 第一点は、やはり憲法改正の問題です。
 今、小泉親司委員の方からもありましたが、日本側から、ドイツは基本法を四十八回も改正しているがどうしてか、必要性があったのかという問いかけをしたところ、ドイツの側からは、技術的なことばかりで基本的なことは何も改正していないというのが、御存じのとおり回答でした。つまり、何回改正をしているのか、何十回改正をしているのかということが重要ではなく、基本的なことは何も改正をしていない、技術的なことであるということが強調されたことは、私にとっては非常に意義深いものでした。
 ですから、憲法改正が行われているか行われていないか、何回行われたかということではなく、基本的なことが改正されたのかどうかということにやはり着目すべきだと考えます。
 二点目ですが、ドイツで非常に印象的だったのは、地方分権の考え方と憲法裁判所のあり方です。
 御存じ、ドイツは連邦制ですから、連邦参議院は、先ほど野沢委員からの説明にも丁寧にありましたとおり、州政府の閣僚は自動的にすべて参議院議員となるという、そういう成り立ちをしている、そんな二院制をとっていることが、私は非常に新鮮というか、非常に興味深かったです。
 ドイツ自身が連邦制で、地方分権、外国人の参政権の問題についても非常に進んでいるということもありますし、一方、ドイツを訪れて極めて印象的だったのは、将来アメリカ合衆国のようにEU自身が連邦制になるようなことをやっていきたいという極めて強い自負があったということです。
 そういう意味では、ヨーロッパは非常に各国さまざまな文化を持っておりますが、分権の中でドイツが今後ヨーロッパの中でも非常に中心的な国として果たそうとしていることの自負をさまざまな政治家から聞くことができたと思います。
 また、憲法裁判所については、日本とまた裁判所の役割が違いますので、具体的に聞けて印象深かったです。
 第三番目、環境NGO、ドイツ環境保護リングと話を持ちました。
 今、御存じ、ドイツは社民党と緑の党の連立政権で、原子力発電所の新規建設は認めず、原子力発電所の寿命を最高三十二年として脱原発を進めております。ドイツ環境保護リングは、三十二年でも非常に長いのではないかと言ったことが印象深かったです。
 エネルギー供給の地方、地域への分散、コージェネレーションの推進ということとエネルギーの消費量を抑えることの重要性、エネルギー利用の効率化などの話がありました。
 また、ドイツ自身がごみの問題などについて、町を歩いたり表示を見ますと非常に進めていることなども、環境の先進国としてはいろんな意味で参考になると思います。
 第四番目、国会、連邦議会を訪れて非常に印象的でした。国会の部屋の中にナチス・ドイツによって弾圧された議員の人たちを悼む場所が置かれてありました。
 御存じ、ナチス・ドイツは、共産党が国会を放火したというフレームアップを行って弾圧を行ったわけです。共産党員の人たち、社会民主主義者の人たちが弾圧されて、その人たちの多くのリストが国会の中に置かれて、そのことを悼むという場所が国会の中に置かれて、私たちもそこで非常に感慨にふけるという、弾圧された歴史が国会の中にきちっとあることは非常に重要だと思いました。
 また、連邦議会が、傍聴席が非常に議員の場所と隔離された場所ではなく、非常に明るく、見ただけで非常に民主的な形での連邦議会だったことも印象的です。
 以上、四点申し上げました。ありがとうございます。
○会長(上杉光弘君) 御苦労さまでした。
 次に、松岡滿壽男君。
○松岡滿壽男君 無所属の会の松岡滿壽男です。
 このたびの調査団に椎名先生のかわりに参加させていただきました。上杉会長、野沢団長初め、同僚の議員に大変有意義な、ともに調査ができたことを心から感謝をまず申し上げたいというふうに思います。
 先ほど、全体的な問題については野沢団長の方から既にお話がありましたし、同僚の議員からもそれぞれお話がございました。
 私が一番印象に残っていますのは、フンボルト大学のクレプファー教授が、四十八回も基本法を変えたということについて、生きているものは変わるんだ、死んだものは変わらないということを言われました。早速、予算委員会で小泉さんとの質疑で使わせていただいたわけでありますけれども。
 それと、もう一つは、やはり連邦参議院の存在です。百六十人ほど、それぞれの州の首相初め百六十人が指定され、しかし実際にはそれぞれの案件に応じて定数は六十九人という枠で、しかも全部費用は州持ちである。しかも、州の方が国より上位にあるという完全な地方分権が行われている。イギリスも、成文憲法をつくる時点では、御報告にも一部ありましたが、ドイツ型を志向するということを言っておるわけです。
 今後の我が国の状況を考えれば、後ほどの機会にまた申し上げたいと思いますけれども、大きな一つの方向性がここにあるんじゃないかというふうに思います。
 それと、もう一つは、ドイツの場合に戦争責任、戦争贖罪についてはどういうふうになっているんだと、余り答えたくない話だったと思うんですけれども聞いてみましたら、NATOに加盟したということによって一つの方向性が出ていると、若干はぐらかされた感じでありますけれども、潜在敵国とともに、安全保障はしなければならないということが重要だと。そのためには基本となる理念を持ち続けることで、妥協は必要かもしれないが、五十年前に比べればはるかに正しい方向に向いているんだから、今後さらに五十年かかってやるべきだというような答弁が返ってきました。
 それから、徴兵制度の問題です。NATO加盟の時点で徴兵制度を導入しておるわけですね。しかし、ハイテク化が進んでプロ化しているんで、ちょっと徴兵じゃ無理じゃないかということで、フランス、英国も職業軍人だけにしておる。しかし、ドイツは一応この制度を守っていこうということを言っておられました。
 それから、アメリカとの問題でありますけれども、ちょうど思いやり予算につきまして三月に私、河野外務大臣に質疑をしたものですから、駐留軍の経費はどうなっているんだと。
 ドイツの場合は七万人いるわけですけれども、結局、歴史的にベルリン封鎖を救ったのはアメリカであり、たまたま、ショルツ委員長、私も西ベルリン人として感謝している、ドイツ国民も一般に米軍を歓迎している、駐留経費については派兵する側が負担するのが普通であると。だから、ドイツの場合は負担していないということであります。しかしながら、NATOでは条約でこの旨が定められており、例えばドイツが他の国に駐留すればドイツが負担する。つまり、互いに相殺し合う仕組みだというような説明がありました。
 それと、例の原発のお話もありましたけれども、ドイツの環境保護リングのケーネ氏が、ドイツでは一度破壊された自然を再生してもそれを自然と呼べるかという考えがあるというような発言がありまして、なるほどそういう見方もあるのかなという印象を持ちました。
 いずれにしましても、先ほども御報告がありましたが、ポツダムに行ったときに、ヤルタ会談のときにはスターリンとルーズベルトとチャーチルだったわけですけれども、八月二日のポツダム宣言を発したときは既にルーズベルト亡くトルーマン、そしてチャーチルも選挙に負けてアトリー。これが三巨頭会談が行われたところかなという思いで見ましたが、そのときの、国体の問題その他でもたもたしている間に、八月の六日には広島に原爆が落ち、九日には長崎と。
 私も、ちょうど終戦のときは満州で小学校五年だったんですが、八月九日の未明にソ連の飛行機が、対日戦を開始したわけですね。そこで、六十万人の日本の若い人たちがシベリアに連れていかれて十万人が死んでしまったと。それから残留婦人、残留孤児が出た。
 こういうことを歴史的に振り返ってみると、憲法自体もそれぞれ民族の血がにじむような歴史を背景にそれぞれつくり上げられてきているわけですね。やっぱり指導者としての一瞬の判断といいましょうか、これの厳しいものをポツダム宣言のポツダムの場で感じながら帰ってまいりました。
 スペイン、イギリスにつきましては、それぞれの御報告もありましたし、私に与えられているのは五分のようでございますので、このぐらいで御報告を終わらせていただきたいと思いますが、皆様方の御配慮に心から感謝し、今後の活動に生かしていきたい。
 お礼を申し上げまして、御報告を終わりたいと思います。ありがとうございました。
○会長(上杉光弘君) ありがとうございました。
 以上で海外派遣議員の報告は終了いたしました。
 これより、ただいまの海外派遣議員の報告を踏まえ、委員相互間の意見交換を行います。
 まず、各会派を一巡してそれぞれ五分程度御意見をお述べいただきたいと存じます。
 それでは、御意見のある方は順次御発言願います。亀井郁夫君。
○亀井郁夫君 自由民主党の亀井でございます。
 まず、海外派遣の議員の皆さん方、御苦労さまでございました。きょうは皆さん方の、ドイツ、スペイン、英国、三つの国におけるレポートをいろいろとお話しいただきましてありがとうございました。大変興味深く拝聴したわけでございます。
 時間的にも大変制約がございますので、私はきょうのレポートの主要なテーマの一つであった二院制の問題についてちょっとお尋ねしたいと思うわけであります。
 調査団の皆さん方が訪問されました三つの国は、いずれも二院制が採用されておるわけであります。しかし、上院の構成やそれから位置づけは全部異なるわけでございまして、ドイツの連邦参議院は州政府の首相と閣僚で構成されている、またスペインの上院は州議会で選任された議員とそして州民の直接選挙で選ばれた議員で構成されていると。いずれもこれは地域代表という立場での役割があるようでございますが、英国におきましては、上院の貴族院は、大主教などの聖職貴族、そしてまた法曹貴族などの世俗貴族によって構成されておると。そして、下院の審議を補足する役割が大きく期待されているということでございますし、同時にこれからの課題では、上院の地方の代表による民主化が大きな課題だということもきょうレポートされたわけでありますけれども、このいずれの国におきましても二院制における第二院のあり方ということが大きな問題になっておるように思うわけであります。
 翻って、我が国について考えてみますと、帝国議会において貴族院が設けられましたけれども、これは直接選挙で選ばれる衆議院を抑制するために設けられたものだと、こう言われておるわけでございますが、これは昭和二十年の終戦当時に廃止されました。当時の議事録を見ますと、当初、駐留軍からは一院制が提案されたようでございますけれども、我が国の強い要望によりまして二院制が採用されるということになったということでございまして、その参議院の設置のねらいは、地域代表、職能代表、有識者代表で構成するということで、衆議院の審議を一段と深めるとともに政治の安定を図っていこうというのがねらいだったようでございますけれども、こういうことに対しまして、ドイツやスペインでは下院が国民の代表に対して上院は地域を代表するということが期待されている。
 我が国においても、最近、東京など人口が大都市に集中するということから、衆議院の政治的構成が都市中心型に傾斜してきているように私は思いますけれども、それだけに地方分権が進む中で参議院の果たす役割は大きいものがあろうと思いますけれども、そういう意味でこれから真剣にこの問題を考えていかなきゃならないと思います。
 そういう意味で、憲法論議におきまして、そういう意味では立法における国会の構成、参議院の役割、特に位置づけが重要な課題になると思いますけれども、ヨーロッパ三国を回ってこられて、我が国のこれからの、憲法改正に絡んでですけれども、二院制、特に参議院の今後のあり方についてどのように感じられたか、御所感をお聞かせ願えればと思います。
 団長さんにお願いしたいと思います。
○野沢太三君 今回、私参りまして、必ず二院制のあり方についての質問をさせていただきました。
 その中で、非常に典型的な例がドイツ。これは、もう地方の代表ということに徹しているということで、議員そのものが州政府の首相を初め閣僚であるということ、いわば兼務になっているということからしてもうかがい知ることができるわけでありまして、したがって上院、下院の役割分担が非常に明確であったということ。
 スペインがその点では、公選で出てきている点で衆議院、いわゆる下院とのぶつかりがどうもあるということでのこれからの課題が残っているという言い方を向こうもしておるわけです。
 それからもう一つ、私どもも刮目すべきことは、イギリスの上院というものについてどういう役割を果たしているのか、必ずしも当初、我々十分な理解がなかったように思いますが、行ってみますと、これはもう要するにボランティアであるんだと、基本的に無給で、国家国民のために奉仕をするという立場で働いている。そのために、人数もふえてしまったり、あるいは終身になったり世襲になったりと、こんなこともあったようですけれども、基本的に、多数決原理のみならず、高い見識と経験から政治を論ずる、こういう立場でイギリスの上院というものは貫かれているという点で、改めて実はイギリスの二院制というものの価値を見直したわけでございます。
 それで、日本のあり方についてはどちらを選ぶか。昨年行っていただきましたアメリカの上院のように、外交については上院が優先権を持つというような強い上院と、それからドイツのような地方の主権に重点を置いた行き方、両極端を当調査会としても調べたわけでございますので、それをまた中間的な国も含めまして、これからの議論の中でしっかりこれは位置づけをすべきかと思っております。
 いずれにしましても、両国ともに上下院が同じことをやっていたのではだめなんだと、この点は共通でございましたので、非常に実りの多い調査ができたかと思っております。
○亀井郁夫君 どうもありがとうございました。
○会長(上杉光弘君) ありがとうございました。
 次に、江田五月君。
○江田五月君 調査団の皆さん、大変御苦労さんでございました。野沢団長の御報告と各団員の皆さんの御発言を伺って、大変有意義な調査をしていただいたと思っております。
 今回は急な事情が生じまして、私たち民主党・新緑風会から参加できなかったことをまず冒頭おわびを申し上げたいと思います。申しわけなく思っております。
 御報告を受けて、私から四点申し上げます。それは、EUの将来のこと、それから憲法裁判所、そして護民官、そして二院制、この四つです。
 まず、EUの将来、これは私も非常に強い関心を持っております。それは、EUのこれからの行き着く先に地球政府の可能性を見るからであります。
 御承知のとおり、ヨーロッパは第二次世界大戦の大変な惨禍を乗り越えた後に、ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体からスタートをして、EEC、そしてEC、そしてEUと進んで、今通貨統合まで至っております。また、これと別にCSCE、全欧安保協力会議ができて、EUというかヨーロッパ統合の基盤をつくって、ベルリンの壁の崩壊の後、これがOSCEへと進み、ヨーロッパの統合はさらに広く外へと進みつつあると。
 先日、実は、日本・EU議員会議が我が国会で行われました。その中でEU側の議員の皆さんから、九月十一日の同時多発テロの後、ヨーロッパは結集の方向がさらに大きく進んでおる。例えば、刑事手続においては共通逮捕状まで発付できるところまで来たと、そういうことを伺いました。これは恐らくヨーロッパの特殊事情というものではないだろうと、ヨーロッパの特殊事情にむしろとどめてはならない、普遍的な性格を持った主権概念の意味合いの低下、そして国際社会の結集と、そういう動きだと思っております。
 翻って、私は現在の我が国の憲法、これを見ると、ここに二十一世紀の地球憲法のモデルとなり得る要素がたくさんあると思っておりまして、今回のテロ対策特措法でも一部議論されましたが、日本国憲法は、個別的自衛権についても集団的自衛権についてもこの行使を厳しく抑制あるいは否認をして、国連を中心とする集団的安全保障を信頼して、安全と生存を保持するという崇高な理想を目指したものであると思います。
 この参議院憲法調査会の議論も、二十一世紀の地球憲法の構想も視野に入れて、EUの将来、アジア太平洋の将来、中東、アフリカの将来にも関心を持って議論していきたいと思っております。この点では、特に御報告を伺って、イギリスの憲法問題特別委員会ですか、この議論に注目をしていきたいと思います。EUの人権条約やその他のEU諸条約、これも憲法論議の視野に入っているということです。
 それから、ドイツとスペインの憲法裁判所ですが、特にスペインの憲法裁判所の御報告を興味深く伺いました。私も法曹の一員として以前から憲法裁判所に関心を持ってまいりましたが、御報告を伺っていて、我が参議院憲法調査会の重要テーマの一つとして憲法裁判所を取り上げてはどうかと思いましたので提案をいたします。
 それから、スペインの護民官制度、これも先ほどもお話ございましたが、興味深く聞きました。私は、今から三十年以上前ですが、イギリスに二年間留学をいたしまして、憲法や行政法の勉強をいたしましたが、それ以来オンブズマン制度には注目をしております。スペインでは憲法上、憲法裁判所に提訴できる機関として内閣総理大臣などと並び護民官が挙げられているとのことですが、なるほどと思いました。
 最後に、二院制についてですが、特に首相公選制との関係で、これは我が国でも大きく議論になるところだろうと思っております。首相公選制は、二十一世紀のこの国の形の大きな選択肢の一つではありますが、首相公選制だけを議論しても仕方がない。議院内閣制のあり方、二院制のあり方、国民投票制度などとの関係も含めた議論が必要である、そういうものを含めて選択肢をつくっていく議論をしなければいけないと思っております。
 いずれにしても、今後皆さんとこうしたことを議論していきたいと思います。
 以上で終わります。
○会長(上杉光弘君) じゃ、質問はありませんので、答弁の必要はありません。
 次に、山下栄一君。
○山下栄一君 いろいろと御報告をお聞きしながら、やっぱり現地に学ぶといいますか、現場に学ぶということの重要性を改めて認識することができました。
 特に興味深く感じた点、幾つかございますけれども、連邦制度、日本は連邦制度をとっておりませんけれども、この連邦制度、また地方自治との関係、こういうことは日本でも将来的にまた問題含めまして、大変学ぶべきものだなと思いました。
 また、二院制における上院のあり方、これも常に言われる問題でございますけれども、そういうのを歴史の中から上院の独特の役割があるんだなということを学んだわけでございます。
 それから、今、江田委員がおっしゃった地球憲法というお話がございましたけれども、テロ問題等も関係あるかもわかりませんけれども、それぞれの国家主権の上に国際社会が成り立っているわけですけれども、主権を実質的に一部制限するということをEUは行ってきているわけで、欧州議会、欧州人権裁判所、また欧州人権条約、そういうことを考えましたときに、それぞれの国における主権の制限規定は憲法上ないとは思うんですけれども、実質的に主権が制限されているという状況をつくりつつあるという、これも将来的に非常に重要な観点だなということを感じました。
 私も護民官、オンブズマンの制度、これはスペインの制度ですけれども、存じ上げませんでしたので非常に興味深く学ばさせていただきました。
 スウェーデンからこのオンブズマンの制度というのは始まったようですけれども、人権を守るという観点から行政監視をしっかりすると。立法、行政、司法とありますけれども、スペインの場合はどちらかというと立法附属機関というふうな感じかなと思うんですけれども、司法にはかかわらないけれども行政をしっかり監視すると。広い意味で権力を監視するという観点から、統治機構じゃない別の角度から置かれた一つの機関という、これは日本に余り定着していないので非常に大事な観点だなと思いました。特に、これが憲法上の機関になっているということ、これはすごいことだなと。
 日本でも、神奈川県の川崎市とか、また、子供の人権を守るという観点からは兵庫県の川西市とか、同じく神奈川県の川崎市にも三年ぐらい前から始まっているわけですけれども、私は、これは子どもの権利条約の観点からも非常に画期的な制度が、県じゃなくてその下の市町村から始まっているということ、日本でも、非常に注目しているわけでございますけれども。
 スペインの場合も、憲法上の機関であるということ、それから権限が大変強力であるということ、行政機関に対して調査それから勧告権があるわけですけれども、調査にしても協力義務がある、勧告にしても勧告されたら必ず回答せにゃいかぬという、そういう義務があるということ、公権力の不作為の面についてまでも介入するという権限を持っている。
 それから、この護民官への請求できる人も、外国籍の方もできる、それから未成年もできるという、そういうことだそうですけれども、こういうことも非常に学ぶべき点が多いなと、参考にするべき点が多いなということを感じたわけです。私は全く、こういう憲法上の規定の護民官、オンブズマンの制度、ポルトガルとかラテンアメリカでも始まっているということ、先ほど御報告ございましたけれども、これは非常に勉強する価値のあるテーマだなということを感じた次第でございます。
 このスペインの護民官の事務局は、国会職員という立場だそうですけれども、いずれにしても、やっぱり国会附属機関ということですけれども、私は三権からちょっと距離を置いた仕組みだなということも感じたわけですけれども、そういうものも含めまして、これから研究していかなきゃならない観点であるということを学ばせていただきました。
 以上でございます。
○会長(上杉光弘君) ありがとうございました。
 次に、宮本岳志君。
○宮本岳志君 日本共産党の宮本岳志です。
 派遣団として調査活動に当たっていただいた各党議員の皆さん、事務方の皆さんには大変お疲れさまでございました。
 今の派遣報告を聞かせていただいて、各国の憲法が各国それぞれの歴史を踏まえたものであり、そこにはそれぞれ真剣な議論と歴史があるということを痛感をいたしました。あわせて、日本が憲法九条を持ち、恒久平和主義を掲げてきたことに対する確信を改めて深めたところです。
 日本共産党は、第九条を初めとする日本国憲法を日本の現実に生かすことこそ二十一世紀の国づくりの基本であると考えております。
 ところが政府は、この間一貫してこの憲法をないがしろにする政治を続けてきたと言わざるを得ないと思うんです。例えば、いわゆるテロ対策特別措置法の審議の中でもそれは浮き彫りになったと考えます。
 例えば、小泉首相は答弁で、常識的に考えれば自衛隊は戦力と述べましたけれども、この答弁について津野内閣法制局長官は、昨日の朝日新聞に掲載されたインタビューで、「法理論として、自衛隊は九条二項の戦力だなんて言われたら、死んじゃう」と述べ、厳密な法律理論に立った憲法論議が国会審議で行われていないことを認めております。
 さらに小泉首相は、憲法前文と憲法九条の間にすき間があるなどという議論まで持ち出しておりますけれども、しかし、憲法前文と九条との間にすき間などは存在しないと私は思います。
 憲法前文に言う国際協調主義は、自国の利益にのみとらわれ、侵略戦争を起こした反省に立って、恒久平和主義をもって名誉ある地位を占めたいと、そういう決意を示したものにほかならないと思うんです。すき間を云々するのならば、違憲の軍隊である自衛隊を戦力でないとごまかしながら増強し、海外派兵の枠組みまでつくってきた歴代自民党政府こそ、憲法との間に大きなすき間をつくってきたと言わざるを得ません。
 しかも、政府や首相が憲法についての事実すら真剣に検討していないのではないかと思われる事態も明らかになりました。首相は、日本の最高裁判所は自衛隊が合憲であるという判決を下していると答弁し、そのわずか三日後に、我が党吉岡議員の質問に、自衛隊合憲の最高裁判決はないと答弁を訂正せざるを得なくなりました。まさに憲法を語る資格そのものが問われる醜態だと言わなければなりません。
 そもそも、審議で明らかにされた憲法制定議会での政府言明に照らしても、日本国憲法のもとで軍隊による国際貢献はあり得ないと思うんです。そのことから、政府や与党の中には、国際的な舞台で第九条があるためにやるべきことがやれないなどと考える劣等感とも言うべき感情があるのではないかと指摘せざるを得ません。
 しかし、憲法九条が国際貢献の障害であるかのような議論には全く道理がないと思います。日本の政治家であるならば、自国の憲法に劣等感を持つのではなく、日本は憲法九条を持っているからこそこういうことができるんだという誇りを持った国際貢献を考えることこそ当然の姿だと思うのです。
 昨日帰国した我が党のパキスタン調査団の報告でも、今現地で日本のNGOなどが難民支援のために行っている献身的な活動が、平和憲法を持つ国ならではの信頼を持って歓迎されているというふうに聞いております。
 国際政治の舞台でも、本来なら平和憲法を持つ日本こそ、国連憲章の精神に全面的に立った解決の方向を説得力を持って主張できるはずだと思うんです。
 憲法を踏みにじるような海外派兵などではなく、憲法九条の優位性を発揮した国際貢献を行って、さすが憲法九条を持っている日本は難民救援などですごい活動をすると世界からも評価されるような活動こそ真剣に進めるべきである、こういうことを申し上げて私の発言といたします。
 ありがとうございました。
○会長(上杉光弘君) 次に、大脇雅子君。
○大脇雅子君 派遣団の皆様、御苦労さまでございました。
 ナチズムの犠牲を悼む国会、そしてナチズムと違った方向を目指すドイツの憲法、また、フランコ独裁政権の後、社会権を中心とし護民官を制定しているスペインの憲法、それからまた、書かれた法律の集積としてのイギリスの憲法等、憲法は民族や国家の歴史を色濃く反映しているということを御報告の中から学ばせていただきました。
 私が今一番心に痛みを感じておりますのは、テロで亡くなった六千人の貿易センターの人たち、そして、アメリカの報復攻撃の中で、アフガニスタンで六百万とも言われる国内難民の、避難民の人たちの、来るべき冬に備えての、餓死の危険が迫りくる命でございます。十万人の人が飢餓の危険にあるということで、国連を中心といたしましてそうした人たちの命を救う大きな運動が今巻き起ころうとしております。
 私は、アメリカの武力による報復というものは自衛権の範囲を超えるのではないか。テロの根絶という名目があるにせよ、失われる命の重さに考えれば、ともかく空爆を一時中止してほしい、そしてそのアフガニスタンの中にいる多くの女性や子供たちに食糧を届ける道を開いてほしいと思わずにはいられません。
 私たちは、憲法のもとで、国の戦略として非暴力、非武装の国際貢献を中心としていくべきであるということを今つくづくと考えるものでございます。
 憲法の前文を改めて読み返してみますと、「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」としています。
 この平和的生存権というものは、ともかく自由権であれ社会権であれ平和が確保されなければ享受できないことであるということを考えて、最も根底的な二十一世紀の権利であると私は思わずにはいられません。憲法第九条の不戦・非武装条項と相まって、二十世紀の二度にわたる世界大戦の著しい犠牲の上に獲得された人類の英知であること、基本的人権を保障するための最も根源的な権利であるということを思い起こすものでございます。
 この平和的生存権は、私は消極的な権利ではなく、平和をつくり出す権利、そして平和のために私どもが活動する権利、そして武力紛争に直接間接に加担しない権利として、積極的に憲法の発展的な形としてとらえるべきであるということを痛感いたします。
 平和的生存権保障基本法というような形で憲法のもとにそのような法律ができ、日本国それ自身が平和をつくり出す国家、そして多元的な民族と共存する国家ということを国是とするような二十一世紀が来ることを祈ってやみません。
 終わります。
○会長(上杉光弘君) 次は、平野貞夫君。
○平野貞夫君 自由党の平野でございます。
 派遣報告を拝聴いたしまして勉強させていただきましたのは、全部の国ではないと思いますが、現実に憲法が運用されていることに対するチェックといいますか、適切かどうかという関心が各国とも非常に強く働いた機能があるという報告が何人かの先生方から報告された、この点でございます。
 そういう意味で、私は幹事会あるいは運営委員会にお願いをしたいのは、この憲法調査会というのは決して言葉や概念を調査することだけじゃないと思います。やはり、歴史的な社会、経済、政治の変化の中で現行憲法の文理と実態というのがどういう隔離があるか。これは、国家、人間というのは生き物でございますので、言葉というのが長い歴史の中で変わるのは当然のことでございまして、そういうものとの距離感を調べることが調査会の目的とするならば、現実に行われている憲法運営が果たして適切であるかどうかという問題もこの調査会の一つの大きなテーマではないかということを申し上げたいわけでございます。
 と申しますのは、不思議なことか皮肉なことか、この憲法調査会ができましてからどうも政権側の憲法の運用が非常に私は問題が多くなっていると思います。例えば、森政権の設立の憲法手続というのは適切だったかどうかという問題。それから、しつこいようでございますが、去年の参議院の非拘束の比例制度の導入のああいう憲法運営というのは果たして適切かどうか。それから、小泉総理がことしになってハンセン病の控訴を断念をしましたが、これは控訴断念という法手続なはずなのに政治的決断でやったと。基本的人権というか、人間の尊厳の問題を政治決断でやるというのはこれは古代の話でございまして、果たして、これも憲法の運用の問題だと思いますし、テロ対策法の審議過程のことについては、私たち自由党は共産党の方とちょっと角度が違いますが、いずれにせよ憲法問題に対する政府側の論理と認識が極めておかしいということが判明しましたので、できれば小泉総理にこの憲法調査会に出てきていただいて、総理の憲法観なり憲法に対する考え方をひとつ議論してみたいということを提言したいと思います。
 それからもう一つ、憲法調査会というのは非常に、特に参議院の憲法調査会は民主的に運営されていて、私たち少数者の意見も十分反映していただいておりまして感謝しますが、肝心の参議院それ自身の運営が、小会派の本会議発言を制約したり、それから予算委員会だとか重要法案における小会派、少数者の権利の擁護というのが、本来の近代議会政治上当然のことが行われていない。ドイツの憲法学者イェリネックは、真理は少数者から、少数意見からという言葉がありますが、そういう意味で私たち少数会派の者たちは参議院の少数者権利擁護についての問題をこれからどんどん提起しようと思っておりますが、例えば会派制の認定が昭和二十八年に十名というふうに認定されてから変更されていない。人数も減っています。社会の多様化も進んでいます。そういうようなことも広い意味でやっぱり憲法問題として取り上げていただきたいということをお願いしまして、意見といたします。
○会長(上杉光弘君) ありがとうございました。
 小泉総理等の出席を求める提案等ございました。また、小会派の発言についての制限という問題もございましたが、これらについては運営検討委員会で十分御検討いただきたいと考えております。
 次に、松岡滿壽男君。
○松岡滿壽男君 少数会派でありながら二回も発言をさせていただきまして大変恐縮に存ずるんですけれども、一つは、ちょうど私ども十一日の日にロンドンにおりまして、帰るときに野沢団長、化粧道具の中の小さいはさみまであわや没収と。非常に対応が早くてすごいなと思ったんですが、私そのときふと感じたのは、憲法調査会、これは帰ってすぐ会合があるんじゃないかなと、テロ問題に対して憲法面からの議論が当然あるだろうと私は思っておったんです。ところが、その後、衆参両院どちら側にもないという話なので、これは一体どうかなという思いが一ついたしております。
 会長かどなたか御意見、御見解があれば、私が終わりましてからお伺いしてもいいんですが、ございますか、その辺。ございませんようでしたら……
○会長(上杉光弘君) 別にどうということはありません。
○松岡滿壽男君 いや、そういう種類の調査会じゃないということなんですね、この会は。私、門外漢なものだからあえてお尋ねしたわけですけれども。
○会長(上杉光弘君) 本調査会は、憲法の修正あるいは提案権というのはこれはない調査会になっておりまして、それぞれ幅広に御議論をいただくということが前提となって衆参において設置された憲法会と私は承知いたしております。
○松岡滿壽男君 はい、わかりました。突然済みません。
 今、我が国はやはりアメリカとアジアの間で経済的にも大変厳しい状態に陥りつつあるわけですね。そういう中で、我が国自身の生き残りを一体どうやっていくんだということがやはり最大の国家としての課題だというふうに思うんです。
 もう一つは、堺屋太一さんが十月号、十一月号、それぞれ文芸春秋で東京、大阪だけ生き残ろうと、そこに公共事業を集中することによって地価を上げて不良債権問題を片づけようという提案があるわけですよ。そうなってくると、それじゃ一体地方はどうなるんだと。
 昨日、たまたま総務委員会がありまして、プロバイダー法がありましたので、私は九番目の質疑者だったものだから聞くことがないものだから、これについて、前回も聞いたんですけれども、読んでないということでしたが、きのうは、いや読みましたと。それは都市の再生も大事だが、やはり地域をしっかり旧自治大臣としては守る立場ですから共存していくというような意見があったわけですけれども、きのうきょう、道路問題で全国から皆さん方、市町村長が上がってきて例によってやっているわけですが、地方は大変な危機感を持っていますね。そうすると、我が国の生き残りと地方の生き残りをどうするかということが非常に大きな問題なんですよ。
 小泉さんは、官から民へ、中央から地方へと言っているけれども、日本人というのは私は制度、システムをいじらぬとやっぱり意識が変わらないと思うんですよ。だから、それが一つは私は道州制の導入、それからやっぱり合併問題、与党三党では三千三百をとりあえず千にしようということであるようですけれども、最終的には小沢さんあたりは三百と言っているし、そういう仕組みを変える、これはもう憲法の問題も当然出てくるわけですね。
 それと、そうなってくると、先ほどのドイツ、イギリスのいわゆる連邦制の中から、連邦参議院、参議院というのは地域を代表する。今のまま行けばもう限りなく衆議院のカーボンコピーで、四百四十億円のむだ遣いだなんて悪口を言われながら耐えなきゃいかぬと。やはりここはかなりスリムで効率的な仕組みに民間は努力している、やっぱり官と政治が大きく変わらなきゃいかぬ。その中で、この憲法論議というものは非常に大事なところに今あるというふうに思います。
 また、今、少数会派を代表して平野さんが言われましたが、確かにこういう大きな変化の時代に、五十年近く前に決めた決め事をそのままやっておるということについてはやはりここは考え直していただきたい。強く、それは私も最後の部分は平野議員と同じでございますので、よろしくひとつお願いを申し上げたい。
 終わります。
○会長(上杉光弘君) ありがとうございました。
 他に発言もないようですから、本日の……
○川橋幸子君 不規則発言ですが。手を挙げると……
○会長(上杉光弘君) 日程が決まっておりまして、御了承いただいておりますが、他党も。
○川橋幸子君 「各会派一巡後、自由に意見交換を行う。」と、これは違うんですか。
○会長(上杉光弘君) それは、発言者が質問を、調査に対する発言でございます。
○川橋幸子君 ああそうですか。いや、多数会派も余り発言時間がないもので、ちょっと言わせていただきました。失礼しました。申しわけございません。
○会長(上杉光弘君) 他に発言もないようでございますから、本日の意見交換はこの程度といたします。
    ─────────────
○会長(上杉光弘君) この際、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 日本国憲法に関する調査のため、必要に応じ参考人の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○会長(上杉光弘君) 御異議ないと認めます。
 なお、その日時及び人選等につきましては、これを幹事会に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○会長(上杉光弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時四十七分散会

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