2 国民主権と民主主義制度の在り方

 国民主権には、国民が主権の主体として、国の在り方を最終的に決定するという側面と、国家権力を正当化し権威付けるという側面とがある。前者は、国民自身が直接に政治的意思を表明する制度である直接民主制と、後者は、代表民主制ないし議会制民主主義と結び付くと言われている。

 日本国憲法は、国民は選挙により選ばれた代表者を通じて国政に参加するという代表民主制を基本とした。直接民主制的制度としては、憲法改正の承認の是非を問う国民投票と、最高裁判所裁判官の国民審査制とが設けられており、国政レベルでは、憲法解釈として、この二つの場合に限定されると言われている(このほかにも、95条の地方特別法については住民投票が要求される)。

 現代国家では、決定すべき事項が複雑多岐にわたり、また有権者の数も非常に多いため、直接民主制を採用することは技術的にも著しく困難であると言われてきた。しかし、近時はインターネットが普及するなど、IT技術が著しく進歩しており、かつては不可能であると思われた直接民主制について、その導入を図ることを積極的に考えるべきとの意見がある。

直接民主制

 直接民主制については、憲法が代表民主制・議会制民主主義を原則とすることを是認しつつ、

  • 何らかの手法で、重要事項について国民の直接参加の手法を考えなければならないのではないか、
  • 過度に官僚主義になってしまった政府に対する対抗権という意味で、主権者による直接立法権、行政に対する国民の側からの実質的訴訟権の確保が必要、

などとする意見が出された一方、直接民主主義への転換を図るべきとして、

  • コンピューターによるコミュニケーション革命に対応し、間接民主主義から直接民主主義に転換すべきであり、立法権では国民投票制度を明確に位置付けた再構成をすることが必要となる、

などの意見も出された。

国民投票制

 ヨーロッパ諸国では、代表民主制・議会制民主主義を補完する制度として、個別の問題に関する一般的な国民投票制が採用されている。日本では現在このような制度は認められていないが、導入してはどうかとの意見があり、これらについても議論された。

導入に積極的な意見
  • 党の憲法調査会中間報告(平成16年)は、例えば、EU等に見られるように、主権の移譲を伴う等の重大な決断をする場合に、国民投票制度の拡充を図っていくべきとしている(民主党)、
  • 国民投票制度は現憲法でも許容されていると思う、
  • 現行憲法では国の唯一の立法機関は国会となっているが、国民投票制が導入された場合はそれが国会の意思決定に代置される、
  • 国民投票はある程度導入する必要があり、代表民主主義にも矛盾しないと思う、
  • 国会が立法権を独占するのではなく、国民発議、国民票決、国民拒否といった、国民と国会が立法権を共有する制度の整備を考えるべき、

などの積極的な意見が出されたが、これに対して、

導入に慎重な意見
  • 国民投票は政治上大きな影響力を持つこともあり、規制する法制がないままに頻用されることは問題であり、あくまでも補完的役割を果たすものとして検討する余地はある、

など、限定的なものにとどめるべきなどの意見が出された。

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