総論 参考人名
公述人名
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3 現行憲法の果たしてきた役割

国のかたち、在り方
  • アイヌ民族は歴史上常に周辺諸民族と共生し、異民族理解、異文化理解の思想を持っていたが、これこそが21世紀の人類の目標であるべきで、日本という国の在り方を問うべきキーワードではないか
ウタリ協会
秋辺得平
156 4 - 3
  • 日本の国家像がはっきりしていないという議論があるが、憲法が基本原理その他で決めており、それは、平和主権国家、平和立憲主義国家である
上田勝美 156 6 - 5
  • 憲法については、9条だけを考えるのではなく、平和国家構想と憲法全体の自由主義的な国家構想、福祉国家構想をセットとして、新しい21世紀の国家構想として憲法を実現するための構想を考えていくべき
渡辺 治 156 6 - 8
  • 日本は経済的に下り坂に向かっても、そういう国はしばしば文化が成熟し、国際的にも発信ができる国でもある。日本の生きる道として、経済的には今までほど影響力は持たずとも、文化的に貢献していく、そのような時代に見合った憲法を21世紀初頭につくるべき
大沼保昭 159 3 - 5
  • (1) 親米と反米両勢力の対立(1945~1960)、(2) 吉田ドクトリンによる経済専念・安保ただ乗り国家(1960~1975)、(3) 米国主導の国際経済体制の支持者国家(1975~1990)、(4) (3) に加えて地球文民国家(1990~現在)、といように、戦後日本の外交路線は15年ごとに大きく変わっており、来年・再来年ぐらいからは、地球普通国家路線が本格化し、以後15年程度継続するのではないか
猪口 孝 159 4 - 1
  • (1) 所得水準の上昇と各国間の所得格差の急速な拡大、(2) 戦争の減少と破綻国家・社会の増加、(3) 米国の一極制の継続、といった状況下で、日本は地球普通国家群の一角に参入しようとしている
猪口 孝 159 4 - 2
  • 日本をどのように普通の国家にするかについては、自由民主主義、人権、市場経済を基盤とすることは確実であるが、さらに軍事的に物事を決する風潮を抑える平和主義・非軍事主義の基調を他国にも広げる感じがある方が良い
猪口 孝 159 4 - 3
  • ヨーロッパの普通の大国のモデルとしては、(1) 米国と特殊な関係を重視する英国、(2) 地域に根差した形が強いドイツ、(3) 米国の同盟国でありながら自立性・自己主張が強いフランスがあるが、 日本は、(1)軍事的な決定・行動が迅速な英国の真似はしにくく、(2) ドイツのような地域的信用は今ひとつであり、(3) フランスのような執拗さ・攻撃性に欠けリーダーの資質の人も余りいない
猪口 孝 159 4 - 3
  • 我々が考えるべき長期的なビジョンは、個人の尊厳と公正な市民参加に立脚した地域社会の構築、国民の安全と福祉を保持し、国際社会においては一国平和主義を排し、地球益を包含した広義の国益に立脚した国際連帯意識を持つべきこと、その中で、地域協力と国際協力の二つを柱として、世界平和の維持・構築、民主化の進展、地球環境保全と両立する世界経済の発展・安定と南北格差、南南格差の縮小を図り、もってMDG(新世紀開発目標)の達成に努めるというもので、これは、憲法を改正するならば、しっかりと前文に入れるような考え方である
廣野良吉 159 4 - 8
  • 政治のグローバリゼーションが行われ、特に民主主義を互いに共有している現代社会では、原理原則をはっきりさせる必要があり、憲法に書くべき。その場合の原理原則とは、国民主権、個人の尊厳と思想・信仰・言論・集会の自由を根幹とした基本的人権の尊重、自立の促進、自主的な参加、機会の平等の確保、多様性の尊重、公正の実現、国内・国際連帯意識の高揚、情報の公開、透明性の確保、受(負)託責任(アカウンタビリティー)である
廣野良吉 159 4 - 8
  • 国家が知的インフラを整備するという役割を強調し、学習権や情報への自由を人権の基底に据え、人の能力を引き出すような国家像を全面的に出すことが求められる
棟居快行 159 6 - 7
  • 知的創造立国を憲法にうたい、日本が国民の頭脳を競争力の資源とすることで国益を守り、国を発展させ、世界に富をもたらす国であることを内外に示すべき
森 哲也* 162 I - 7
国家
  • 人々が国家という共同体をつくる理由は、それにより秩序を築き、共同の利益を確保して、生活をより豊かなものにするため
土井真一 159 7 - 6
  • 通貨発行権、外交権、軍事権が国家主権の内容とされるが、EU、国連のようにこれらが移譲されていく中で、統治機構論は、国家主権論から政府の形はどうあるべきかという政府機構論に移るべき
五十嵐敬喜* 162 I I - - 2 7
<国益>
  • 米国には超党派で国益委員会があり、具体的な国益が幾つかのカテゴリーで具体的に規定されていることにかんがみれば、日本において国益とリスク、あるいは日本の防衛の在り方を併せて今後の法整備の基礎として検討する必要がある
森本 敏 159 2 - 7
  • モーゲンソーの国益概念を中心にした理論体系に対して、国益は一義的には規定できず、国家内の様々な団体の利益をあたかも一体で統一されたもののように言うのはごまかしで、学問的な厳密さを欠くとの批判があるが、一定程度当たっているだろう
大沼保昭 159 3 - 10
  • 国益と国際公共的な価値は分離して独立にあるものではなく、諸国が激しい討議の中で、最大公約数を認め合い、実現するのが国際公共的な価値追求の行動ということになる
大沼保昭 159 3 - 10
  • 国益を自己中心的に考えるのでなく先見性を持って自国の利益を規定し、国際社会全体の利益を国益の中に織り込んでいく態度が望ましい。こと国連の決定に関する問題、日本の国連政策に関する問題、また中長期的に国際社会全体の中で日本の地位を考える場合には、そのような態度が必須と考える
功刀達朗 159 3 - 10
国旗・国歌
  • 国旗・国家等の国のシンボルに関する定めを下位の法規に委ねるのは適当ではなく、憲法の最高法規の章に置くべき
竹花光範 159 7 - 5
社会・民族・宗教
  • 地域の個性や文化を考える上で、地域的、伝統的神々は非常に重要であり、現在のような厳格な宗教規定でよいか。例えば、ヨーロッパでは、文化的価値・歴史的価値の観点から神々を考えるという方向にある
五十嵐敬喜* 162 I - 3
歴史・伝統・文化
  • 憲法を改正するのであれば、歴史の要素が浮かび上がってくるような文言をちりばめることを通じて、国民の間に歴史感覚を交えた議論が必要であるとの方向性を示すことが重要
西部 邁 150 1 - 11
  • 憲法の全体像として、文化・伝統・アイデンティティーが土台としてあり、家族の中の個人が位置付けられ、地域社会・地方自治体・国家がきちんと枠組みされていることが必要
西 修 156 6 - 3
市民・市民社会
  • EUの進展の過程でヨーロッパ市民という概念が定着してきたが、過去の歴史的負債を克服するためにも、アジア市民社会というビジョンを目指すべき
徐 龍達* 154 II - 18
  • 今日の国連は、世界的・地球的な問題解決のために、これまでになく市民社会・国際市民組織の重要性を認め、それとの分業と協力を重視している
坂本義和 156 7 - 2
  • 米国の単独行動主義とテロリズムに取り組むためには、国際政府組織と国際市民組織の両者の正統性と実効性を強化することが喫緊の課題
坂本義和 156 7 - 2
  • 現在は非民主主義国家の民主化の推進力になった市民が世界という社会の基礎を共有する状態になっている。特にインターネットにより国境を越えた市民の連帯が強まる技術的な条件が満たされてきているのは、歴史的に大きな出来事
坂本義和 156 7 - 17
植民地支配と戦争の清算
  • 靖国神社の参拝問題などを契機とするアジア諸国民の日本不信があるが、日本が専守防衛を憲法上の原則とする行為そのものが、日本への信頼を築くのに寄与する
坂本義和 156 7 - 2
  • アジア諸国に対する侵略戦争の過去について済まないという認識を持たないと不信感が高じる。その上でポジティブなプラスサムの関係を築き積み重ねることが大事。70年代後半からのアジア発展への協力、97年の東アジア経済危機の際の緊急支援により、いささかプラスに転じつつある
五百旗頭真 156 7 - 14
  • ドイツでは国民が一致してヒットラーの下に行動したとの認識があるために戦争責任が受け入れられているが、日本では国民が一致して行動したものとは認識されていないとの違いがある
西岡 朗 161 3 - 21
  • ドイツが演出的な効果まで計算し尽くして戦後責任を清算をしてきたことと比べると、日本は戦後の反省の仕方に誠意がなかったと思われても仕方がない
澤藤統一郎* 162 I - 13
<従軍慰安婦問題>
  • 日本軍性奴隷被害者個人への国家補償に関する立法をしないことは国際法違反
戸塚悦朗 154 8 - 4
  • 慰安婦問題は、戦争犯罪であり、被害者が国外にわたるという意味で国際人道法の適用領域。武力紛争下で生じた国家による性暴力の被害に対しては、かかわった個人が責任を取り、さらに軍隊の所属国家が責任を負うことは確立された国際人道法の考え方であり、日本がそれを十分に果たしていないことが問題となっている
東澤 靖 156 4 - 15
憲法教育
  • 学校教育・社会教育の中で、憲法について学ぶ機会は不十分と言わざるを得ない
杉井靜子* 154 II - 8
  • 日本人が憲法をどのように考えるかは、小・中・高の憲法教育によって基礎付けられ、教科書の憲法に関する記述が憲法意識形成に相当の影響を与える
小田春人* 162 I - 3
  • 小学6年の教科書には、憲法の三原則が中心に記述してあり、国民の権利、義務は、全社とも分かりやすく図示するが、公共の福祉に関して全く触れていない点は不満
小田春人* 162 I - 3
  • 中高の教科書では、権利については詳述するが、公共の福祉と義務の記述は極めて少ない。国家と国民を対立的にとらえ、殊更に権利の重要性を強調する教科書で学んで、公民的資質が養えるのか、深刻な危惧の念を持つ
小田春人* 162 I - 3
  • 権利と義務はセットになっており、自由があれば責任や秩序がある。バランスを取った公民としての考え方を、教科書には載せるべき
小田春人* 162 I - 14

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