天皇 参考人名
公述人名
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1 象徴天皇制の意義

象徴天皇制
  • 明治憲法では主権は天皇に付与されていたが、狂信的国粋主義者と軍国主義者がこの規定と憲法上の権利を停止させる権限を悪用し、天皇の名において軍事的侵略を行い、政治的反対者を抑圧したため、これは改正する必要があった
リチャード・A・プール 147 7 - 5
  • 我々が目指したのは立憲君主制で、天皇は統治権を持たず、国家及び主権者である国民の統合の象徴としての役割を果たすもの
リチャード・A・プール 147 7 - 5
  • 「象徴」(シンボル)という言葉の翻訳には多少困難があったが、起草者の意図及び草案を承認した日本政府の意図する意味をも備えた「象徴」という言葉を使うことにより解決された
リチャード・A・プール 147 7 - 5
  • 「象徴」(シンボル)という言葉は我々が発明したわけではなく、前から使われている。我々が当時考えていたものを表す一番良い言葉だったので、使用した
リチャード・A・プール 147 7 - 12
  • 天皇制については、廃止も含めて議論はすべき。国家のしるしになる存在については、象徴、元首、君主等があり、日本にもそれは必要であるが、国民的合意のない言葉は問題
小林 節 151 3 - 2
  • 少なくとも現在あるいは短期的な未来については、象徴天皇制は国民に定着、効果を発揮
成田憲彦 151 4 - 10
  • 象徴天皇制は、国民に広く支持されてきた
江橋 崇 151 5 - 3
  • 天皇の存在が国民の連帯を醸成するために重要な役割を果たしていることは認めざるを得ない
平松 毅 156 2 - 5
  • 天皇から大権が除かれたことにより、国民の天皇に対する感情が国民統合の象徴というように純化されたことは良かったのではないか
平松 毅 156 2 - 5
  • 1章の天皇条項は、除かなければならないと考えている
尾形 憲* 156 I - 28
  • 天皇の地位は、例外的な時期を除いては、権威の象徴ではあるが権力の象徴ではなく、権力行使からは一段高いところで国民統合に役立ってきた存在であり、現在の憲法の規定はよくできている
英 正道 159 6 - 8
  • 憲法が「第1章 天皇」で始まっていることは、歴史的背景を無視しては語れない
阪本是丸 159 8 - 1
  • 天皇が日本国家及び日本国民統合の象徴であることは国史に明らかな事実であり、この憲法をもって初めて定められたことではない
阪本是丸 159 8 - 1
  • 近世以前にさかのぼっても、江戸時代の領主階級の組織を国家権力に編成し秩序化する中で、天皇・朝廷の存在は不可欠であったと言われ、これは、古来歴史を通じて、天皇が政治的、精神的、文化的象徴であったことを含意する
阪本是丸 159 8 - 1
  • 象徴天皇制には、大別して、国民の総意により、この憲法により初めて定まったとする説と、国民が所与の歴史的、文化的、政治的な背景として天皇の存在・制度を確認しており、その結果、象徴とされたとの説がある
阪本是丸 159 8 - 2
  • 美濃部達吉は、天皇の地位は国民の総意に基づくとしつつ、憲法に定められたことにより、国民は法律上天皇に対し国家及び国民統合の現れとして尊崇すべき義務を負うとして、象徴を重々しく考えていたが、このことの歴史的意味を考えてみるべき
阪本是丸 159 8 - 2
  • 国民の総意とは、制憲議会当時の人々のみならず、亡くなった人、将来の子孫も含めた国民の意思と理解するのが大勢であり、そこに伝統あるいは長い歴史を加味し、それを基に国民の総意を考えるべきではないか
阪本是丸 159 8 - 11
  • 象徴天皇制について、1億2600万人の国民の総意として変えることは、法的にはできないことはない
阪本是丸 159 8 - 11
  • 天皇像には、制度的天皇像、政治的天皇像、尊永演劇的天皇像の3面がある。この立場からすれば、丸山真男の「しらす」と「まつる」論は、権威の正統性と権力の所在の区別を説明し、歴史的実在たる天皇の諸活動の一面を強調するもの
笹川紀勝 159 8 - 4
  • 1条の「象徴」から何かを引き出せるという説とそれを否定する説があるが、「象徴」から様々の運用実態を引き出すことには根拠がない
笹川紀勝 159 8 - 4
  • 天皇制に対し、戦前の植民地支配とのかかわりで北東アジアの国が違和感を持っていることは否定できないが、憲法の原則たる国際協調主義の観点を伸ばしていくという面で天皇制と折り合いを付けていくことは十分可能
笹川紀勝 159 8 - 12
  • 天皇の象徴たる地位は、日本の歴史を背景とした地位であり、国事行為のうち、伝統の尊重になじむ行為については、伝統への配慮を行うことが適当。ただ、伝統との関係で、象徴と政教分離原則との関係については十分な考察が必要であり、伝統の内容については丁寧な議論を行わなければならない
園部逸夫 159 8 - 6
<国民主権との関係>
  • 天皇の事項は、国民主権の下位事項とするか国民主権と並び立つとするかが区別されるが、公法研究会憲法改正意見は、並び立つとの発想に近く、読売新聞憲法改正試案の第1章国民主権、第2章天皇は公法研究会に倣った筋を示している
笹川紀勝 159 8 - 3
  • 公法研究会案が天皇は国政に関する権能を有しないとし、3~8条を削除するのに対し、読売試案は2~8条をほぼ維持し、外国の大使の接受などを国事行為の筆頭に位置付けており、天皇制の強化をも意図し、天皇制を国民主権から独立させる方向を示唆する
笹川紀勝 159 8 - 3
  • 1条の趣旨は、国民主権を根拠付けるためではなく、通説が指摘するように国民主権の下に天皇を位置付けることにある
笹川紀勝 159 8 - 4
  • 1条の「主権の存する日本国民の総意」のアクセントは「主権の存する」にあり、もし、「主権の存する」を読売試案のように削除すれば、天皇の権限を制限する主体たる国民の位置付けが不透明になる
笹川紀勝 159 8 - 4
<宗教との関係>
  • 天皇制は神道の体系であり、天皇制を残すと憲法制定で決断した以上、その神道儀式に違憲性はない
小林 節 151 3 - 12
  • 歴史的には、仏教信者の天皇も多かったが、皇室の祭祀と仏事を分けてきたのが皇室の伝統、歴史の事実である
阪本是丸 159 8 - 9
  • 皇室の祭祀をいわゆる宗教あるいは神道とは考えていない。宗教としての神道は存在するが、皇室においてはあくまで皇室祭祀として行われ、しかも内廷費で賄われており、私事ではない
阪本是丸 159 8 - 9
  • キリスト教と天皇制のどちらが上なのかは、キリスト教会にとって、終戦まで極めて深刻な問題であったと聞いている
笹川紀勝 159 8 - 8
  • 英国女王は、聖礼典などの宗教的行為はできないとされ、政教分離が実現しているが、日本の場合は、明治以来、統治者が同時に宗教的な祭祀大権を持つ構造が見える
笹川紀勝 159 8 - 8
  • 国が宗教的行為をすることは想定できず、天皇の祭祀は私的な行為と解釈する。最高裁長官や両院議長等が参列するとしても、例えば神道の祭事に縁故者が参列することがあり、そのような形としなければ説明が付かない
園部逸夫 159 8 - 9
  • 国の宗教的行為とは非常にあいまいなもので、例えば大嘗祭等も苦労して開催され、代替わりの際の宗教的行事に国がどこまでかかわるかも丁寧に考えて行われており、国が積極的に宗教的行為をすることは想定できない
園部逸夫 159 8 - 9
元首
  • マッカーサーは、元首と首脳の区別を明確には認識していなかった。マッカーサー・ノートの「アット・ザ・ヘッド・オブ・ザ・ステート」の意味するところは明確ではなく、立憲君主のことを言っているのであろうと解釈した
リチャード・A・プール 147 7 - 12
  • 国家のヘッドの地位にある者という意味なら天皇を元首と言うことも可能
内閣法制局 151 9 - 3
皇室
  • 現憲法下においても、皇室のことは皇室自らこれを決定すべく自立性・自律性を再確認すべきではないか
阪本是丸 159 8 - 3
  • 福沢諭吉は、皇室と国民の利益が対立するようなことがあってはならないと言ったが、大嘗祭や大喪の礼の際のように、政教分離原則をめぐって裁判になるようなことはあってはならない。国、皇室、国民が一体となるような皇室の制度の在り方を考えてほしい
阪本是丸 159 8 - 3
  • 皇室の民主化を言いながら、一方では皇室の伝統を守らなければならず、このジレンマをどう解決すべきかについて、早急かつ丁寧に議論することが必要
園部逸夫 159 8 - 9
  • 現代にふさわしい皇室の在り方は国民の支持を得るものでなければならないとすれば、新しいものを積極的に取り入れ、余り伝統にとらわれない新しい皇室制度、天皇制度を考えていくべき。そのためには、皇室典範だけでは不十分であり、皇室を動かすための政省令に当たるものが必要
園部逸夫 159 8 - 10
  • 公式行事のときに天皇陛下が洋装なのは、文明開化の際の名残。着物で国賓を迎えることがあってもよいが、明治以来の慣例をいかに現在の国民意識に合ったものにするかは、これから考え直していかなければならない
園部逸夫 159 8 - 10
  • 外国の王室がかなり自由な活動をしているのに対し、日本の皇室は、明治以後の国威発揚に絡んで皇室の権威を高めていくために別個の存在として扱われてきた。明治憲法以来の皇室に関する法制を、新しい憲法に合わせてどのようにしていくかは十分な検討がなされていない
園部逸夫 159 8 - 11
  • 皇室に対して余り窮屈なかせを押し付けることのないようにすべきであるが、国民と全く同じでは皇室の存在意義がなくなってしまう。国民として考えていく必要がある
園部逸夫 159 8 - 12
  • 戦後の方が皇室が表に出て様々な行為をする割合が圧倒的に高く、放置すれば限りなく広がる。天皇が公人行為として行っているような事柄は、ある程度法的な根拠を備え、それ以外のことはできれば徐々に減らすというように根拠を持って行うべき
園部逸夫 159 8 - 12
  • 皇室が本来どのような仕事をすべきかは明確ではない。戦前、皇族は皆軍人であり、軍人としての活動していればよかったが、現在は何をすべきかの基準が不明確であり、規定もなくそのままにしておくと、宮内庁としても収拾がつかなくなるのではないか
園部逸夫 159 8 - 12
皇室典範
<旧皇室典範、旧皇室令>
  • 廃止された旧皇室典範及び皇室令は慣習法として存続している。これは、憲法が入り込めない国家機関の領域を主張するものであり、旧憲法時代における憲法体系と皇室令体系という二つの法体系の存在に近い状況が生まれている
笹川紀勝 159 8 - 5
  • 二元的法体系の存在は、昭和天皇の葬儀の際の多摩陵地区の人々の自由権・生活権等の侵害、平成の天皇の即位大嘗祭における政教分離原則違反などをもたらした
笹川紀勝 159 8 - 5
  • 1条は、国民の主権者としての権威とそれに基づく天皇の権威の二重性を表すと主張する学説があるが、これは二元的法体系に即応するものである。通説的には伝統は何ら法源にならない
笹川紀勝 159 8 - 5
  • 政教分離の問題があった旧皇室令、旧皇室典範は廃止されたが、通達により、言わば慣例・慣習法の形で実質的に執行され、それが現在にまで至っている
笹川紀勝 159 8 - 11
<皇室経済法>
  • 宮廷費や特に内廷費は全く私的な費用のはずであるが、取扱いは公務員が行っており、正に公私の区別ができなくなっている
笹川紀勝 159 8 - 11
天皇・皇族の基本的人権
  • 夫婦から子供が生まれるかは分からず、また女児が生まれればなぜ男児でないかと言われる。女性天皇の是非の議論は、平等原則の適用以上に人間の尊厳や個人の尊重の問題に出会っている
笹川紀勝 159 8 - 5
  • 皇族は皇位継承の前提で存在しているため、天皇と同じように、基本的人権の享有等についてかなり不自由な状況にあるが、皇室制度を維持する限りはやむを得ない
園部逸夫 159 8 - 8

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