２　国民主権と民主主義制度の在り方

• 憲法は間接民主制を原則とし、例外的に直接民主制を採用。21世紀に向けよりよい国をつくる場合、このバランスをどうするか、どちらに重点を置くかが改正の話題となっていく

• 国政選挙の争点は全案件を網羅しておらず、政党の対立軸に沿い全問題が処理されるわけでもないので、すべてを代議政治に任せてよいかは問題

• 憲法は、(1) 裁判官国民審査、(2) 自治特別法の住民投票、(3) 憲法改正国民投票について直接民主制的制度を採用。実際の運用は、(1) は制度の実効性が乏しく、(2) は憲法施行直後の時期に実施されただけ

• 国の意思を、代表制と直接民主制のいずれにより決めるかについては今後議論すべきであるが、なるべく世論に近い形で意思決定ができるようにすべき

• 国民が直接国政に関与する直接民主主義型の参加権が重要になる。41条は間接民主主義の論理の体系としては良いが、国民主権論からは時代後れの感があり、まず、直接民主主義を前提に考えるべき

• 有権者と議員の関係で常に議員が賢明とは限らない可能性があり、技術の発達が議場という閉鎖空間を必要としなくなった現在、議会の存立の根底的、本質的な根拠は薄れている

• 選挙時に限らず大事の際は、国民各自が具体的な決定権を持つことが国民主権の本質であることを考えるべき。例えば、ＥＵでは、100万人の署名をもって、直接欧州議会に対する議案の提案が可能

• 安楽死、脳死等、政党政治を超えて国民全体で議論すべきものが出てきており、国会が発議してこれを国民投票にかけることがあってもよい

• 官僚支配への対抗には、従来のような三権分立の枠組みでは必ずしも十分でなく、最も有効な対抗軸は国民主権であり、これに抵触するような憲法の規定は訂正すべき

• 現行制度では国民投票は法的拘束力を持つ形ではできないというのが標準的な理解

• 国民投票結果が国会の意思決定のための助言にとどまる助言型であれば憲法上可能。国民投票の結果が国会の意思決定を法的に拘束する場合は憲法改正が必要

• 限定的問題につき国会が発議し国民投票を行い、代議制を補完するタイプの直接民主制はあってしかるべき

• 地方自治体での住民投票の経験蓄積を踏まえ、今や国民投票の是非も改めて検討する時期

• 国民投票中心のシステムは、難問に直面するとすぐ国民投票で決めようとし、議員や政治が無責任化するという経験則がある

• 住民投票制は、市民生活の現場においてやってこそ初めて意味があり、国政レベルでは距離がある

• 憲法改正には基本的に反対の立場だが、凝り固まった護憲論ではなく、憲法改正はあってもよいと考えており、例えば、国民投票制の導入は考えられるのではないか