１　国民主権の今日的意義

• 主権概念は、君主と国民が相対立しなかった日本ではなじみにくい概念

• 国会を国権の最高機関と定め、国会の民主的統制が行政府にまで及ぶことを定めたところに最大の意義

• 市民が主人公になる政治を行うというのが日本国憲法の基本的約束事。具体的内容として、(1) 天皇主権の克服、(2) 地方分権、(3) 官僚制度統制、(4) 女性・障害者・子供の参加、(5) 植民地支配の克服があげられる

• シェイエスのように国民の意思を絶対視するか、ルソーのように国民が理性で意思をコントロールすることを前提とするか、歴史的性格を踏まえ論議を行うべき

• 国民主権という言葉には歴史的性格がつきまとうが、日本国憲法の原理としては、国民のための政治を目指すことと言うのが一番すっきりする

• その国において政治に参加する能力のある市民が平等に選挙その他の方法で政治に参加し、国政の基本的な方向を決定する権能を持つことを要請する原理

• 主権における権利と義務との関係について、フランス革命当時も、主権は野放図な無制限な権利でなく、制限的な権利であったことを指摘したい

• 主権が国民にあるとは、憲法制定権力が国民にあるということ。国民の最も深い意思が憲法典に体現されている

• 国民主権原理の下では、国民は主権者として国の在り方を最終的に決定する最高の力を有する存在と理解されるが、これは国民が全知全能の存在であることを意味するものではない

• 国民主権のもと、人民は主権的諸権利を持っており、その行使を立法権、行政権、司法権、会計検査院、地方公共団体、天皇にゆだねている

• 日本では国民主権が現実化しなかったが、官僚に委ねるお任せ民主主義でやってこられたこともその大きな原因。今後は国民の自己決定が問われるが、そのための手続を憲法上も開放しておくべき

• 日本は、無条件降伏時に天皇主権からＧＨＱ主権に移り、憲法公布により国民主権が予告され、講和条約発効とともに国民主権になったと理解すればよい

• 主権が典型的に発揮されるのが憲法を制定する力。現憲法制定過程に関する矛盾を、どう納得し解決するかは難問

• 憲法で国民主権をうたい、国会が国民代表として最高の地位を賦与されても、現実には行政主導、中央省庁の分担管理、省庁間調整により国が運営され、国民の行政依存意識がこれを支えてきた

• 70年代以降は、議員や首長にならなくとも市民のまま政策を提案・実現し市民が政治の主役になることが可能。この傾向をもっと押し進めることが重要

• 今日の世界的大競争時代には、従来の行政主導、分担管理、省庁間調整では対応できず、内政・外交を国民主権、国会主導、政治主導で動かす形に早く切り替えなくてはならない

• 現憲法でも明確。念のためきちんとするのであれば、前文と１条に国民主権の文言を明記することで十分

• 41条と43条に国民主権が具体化されている。ただし、誤解があるとすれば、明記するのも一つの方法

• 「第１章　天皇」の天皇の地位の規定中で国民主権をうたっているのは不明確。「第１章　国民主権」として主権在民を明記し、２章以下に天皇の規定を置く方が明確