平和主義と安全保障 参考人名
公述人名
回次 -

7 緊急・非常事態法制

緊急・非常事態法制
<憲法との関係>
  • 緊急権については、立法論の問題として、可能な限り憲法に明記すべき
百地 章 154 7 7 - - 14 17
  • 憲法にも法律にも非常事態に対する何らの措置も予定しない国は、一見立憲主義に忠実であるかのように見えて、実はその反対物に転落する危険性を含むものとの指摘があり、バランスの取れた平和・安全保障規定を構築すべき
西 修 156 6 - 3
  • 基本的人権を一時期にせよ制約せざるを得ない国家の緊急時についての立法を、たとえ国会であろうと憲法の規定なしに行うことは不適切であり、憲法に国家緊急権の規定を明確に置き、憲法の規定の下に有事に関する立法をすべき
林 明夫* 156 I - 5
  • 自衛隊を合憲と考える場合、憲法に緊急事態に関する条項がないことから、どのような手続を経て、どこまでを限度として自衛隊を用いるかが全くの白紙になるという問題がある
植村秀樹 156 8 - 1
  • 国家緊急事態の定義を憲法で示すべき
志方俊之 156 8 - 12
  • 憲法と緊急事態法を考えるには、(1) 9条改正、(2) 新憲法の制定、(3) 憲法はそのままにして内閣法を変えることににより、時間・条件を限定して非常事態対処権限を首相に与えるという方法がある
佐々淳行 156 9 - 3
  • 日本国憲法は、非常事態対処の大権をだれも持っていない憲法である
佐々淳行 156 9 - 4
  • 緊急・非常事態に関する規定を憲法に置くことは基本的人権との関係で難しい規定になるので、憲法は現状のままとし、非常事態や危機管理に関する法律に国民保護法的なものも含めすべて織り込むことが考えられる
佐々淳行 156 9 - 9
  • 前文と9条の積極的平和主義を高く評価する立場から、軍を含む執行権力に例外的な権力集中を図る緊急事態法制や憲法に緊急権条項を導入する一切の試みには、基本的に批判的立場に立つ
水島朝穂 156 9 - 4
  • 緊急権は、いったん憲法秩序にビルトインされると、常に濫用の危険を伴い、立憲秩序そのものを傷付け、葬りかねない劇薬としての性格を持つことは、歴史上様々な実例が示すところである
水島朝穂 156 9 - 4
  • 国家緊急権や緊急事態について何も書いていないことは、憲法の欠缺や不備ではなく、憲法が明治憲法とその運用実例に対する歴史的反省の上に立って制定されたことを忘れてはならない
水島朝穂 156 9 - 4
  • 明治憲法は、緊急命令権、戒厳宣告権、天皇非常大権、緊急財政処分の規定を持ち、立法レベルでも包括的緊急システムを持っていたが、それが危機克服の役には立たず、新たな危機をつくり出す装置として機能し、戦争への道を進んだことは歴史の示すところ
水島朝穂 156 9 - 4
  • 対外関係で軍事的手段を選択しないことを明示した9条の下では、対外的緊急事態に対して軍事的手段を含む包括的権能を国に与える仕組みは積極的に否定されており、76条2項による軍法会議の禁止や18条による徴兵制その他の役務義務の禁止は、対外的緊急事態の様々なバリエーションの仕組みの否定に連動する
水島朝穂 156 9 - 4
  • 緊急権の条項を憲法に入れた場合、それが念のため、備えあればというレベルであっても、アジア諸国や過去の歴史を引きずる諸国に対しどのようなメッセージを発するかは明らかである
水島朝穂 156 9 - 6
  • 予測し得る事態を全部憲法に書き込み、包括的な緊急事態憲法をつくることは不可能
水島朝穂 156 9 - 6
  • 権力が濫用されないよう憲法に緊急事態条項を導入し、それによりチェックすべきとの議論は一理あるが、緊急事態条項を持つ国々が各々の体験に基づきその見直しや限定化の道を検討していることを考慮し、どこの国でもあるから日本もという議論は卒業すべき
水島朝穂 156 9 - 6
  • 緊急権という国家権力の全体を言わば臨時的に編成する権能は憲法に定めるべきであり、それを入れるのであれば、憲法改正の問題として正面から提起するのが筋。ただし、現段階において憲法に緊急権条項を入れる必要はないと考える
水島朝穂 156 9 - 13
  • 有事や緊急事態は予想を超えたことが次々と起こる事態であり、そのような事態への対処について余りにも緻密な法律論的な詰めを行っても、多くは役に立たないのではないか。基本的人権を守る枠組みとともに、ある種の柔軟性を担保しなければ、このように極めて政治的判断を要する法律は本当には動かないのではないか
村田晃嗣 156 9 - 10
  • 9条は現実に合わせ全面的に改正し、文民優位の原則、軍の統帥・編成、非常事態の宣言、軍法会議、国会との関係を正面から規定し、国家の超法規的軍事行動や旧軍の過ちの繰り返しが防止できるようにすべき
森 哲也* 162 I - 6
<緊急・非常事態の対象>
  • 今の憲法には、A(原子力)、B(バイオロジー)、C(ケミストリー、コンピューター)、D(ディザスター)、E(エコノミー、エネルギー)、F(ファイナンス)という新しく起こっている国民生活直撃型の危機管理システムがない
佐々淳行 156 9 - 9
  • 大災害と戦争事態とを区別する視点は重要。憲法は軍事力を用いないあらゆる可能性を危機克服の一つの方向として示唆しており、立法府が立法や自治体・市民との協力の中で、その方向に沿った対応をしていくべき
水島朝穂 156 9 - 6
  • 憲法に災害対処と戦争と内乱のようなものを一緒にした緊急事態条項を持っても、政府がそれを的確に運用できる保証はない
水島朝穂 156 9 - 6
  • 緊急事態ということで全部くくることは問題であり、火災や大規模災害、原子力事故のように当然対処しなければならないものについては、危機のありようを整理して、それぞれの立法や仕組みで対処すべき
水島朝穂 156 9 - 18
<首相の権限>
  • あらかじめ閣議にかけ内閣としての基本方針を定めておくという方法により、緊急事態時に首相が臨機に指揮監督することは可能。なお、指揮監督権の行使以外にも、行政各部に指導や助言の形で指示することはでき、そのような指示により対処することも可能
内閣法制局 151 9 - 6
  • 緊急事態の際の政府の意思決定の迅速性、正当性を確保するため、首相の職務権限の代行順位をより明確に法定することが必要
村田晃嗣 156 9 - 7
  • 自分たちの案では、非常事態宣言下では、国と地方の各機関に対して首相が直接命令する権限を制限の下で行うとしている
永久寿夫* 162 I - 21
<緊急・非常事態における人権制限>
  • 国家緊急権の規定を持たない現憲法において、国家緊急時の人権制約の正当性の根拠に公共の福祉を用いるのは概念の濫用ではないか
中島茂樹 154 7 - 13
  • 公共の福祉というあいまいな概念による人権制限はできるだけ避けるのが憲法学の常識になっており、有事法制について、公共の福祉で説明するのではなく、国家緊急権の在り方について国民に問題提起をして、きちっと議論するのが筋
中島茂樹 154 7 - 17
  • 国際人権規約は、国民の生存を脅かす公の緊急事態の場合は、事態の緊急性が真に必要とする限度において、各種人権の制約可能性を認めている
百地 章 154 7 - 5
  • ドイツ基本法は、緊急事態の際の、居住・移転の自由と職業選択の自由の制限、公用収用の際の補償条件の緩和、自由剥奪期間の延長、信書・郵便・電信電話の秘密の制限等の制約を認めている
百地 章 154 7 - 5
  • 外国から武力攻撃を受け自衛隊が防衛出動する場合には、国家存立を維持し国民の生命や安全を守るために、一時的な国民の財産権制限や、業務従事命令による職業選択の自由の制限もやむを得ない
百地 章 154 7 - 5
  • 国際人権規約は国家の緊急事態における国のための役務は強制労働に当たらないとし、諸外国でも緊急時において国のための役務に就かせている
百地 章 154 7 - 13
  • 自衛隊が防衛出動する場合の国民の権利制限の根拠は公共の福祉しかないのではないか
百地 章 154 7 - 14
  • 武力攻撃事態法は、武力攻撃事態への対処は憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならず、制限を加える場合は必要最小限度で、かつ、公正・適正な手続の下に行わなければならないと規定しているので全く問題ない
百地 章 154 7 - 14
  • 武力攻撃事態の際に国家の存立を維持することは、最大の公共の福祉の維持に当たる
百地 章 154 7 - 17
  • 国の自衛権が個人の自然権に基づく以上、国の軍事政策への非協力は個人の自然権としての基本的人権であり、国の自衛権と裏腹を成すものとして認めなければならず、それを許容するのが自由民主主義下の公共性・公共の福祉である
坂本義和 156 7 - 2
  • 生命権は人権の中の最高順位にあり、これを守る場合には他の基本的人権のある程度の制限はあり得、その調和については、公共の福祉のために私権は制限されるが、補償をするという29条の解釈によるべきと考える
佐々淳行 156 9 - 14
  • 国際人権規約や欧州人権条約の緊急事態における例外条項(デロゲーション条項)は、司法的救済の道と一体になっておりチェックの可能性があるが、日本の場合、そのようなチェックシステムとセットの議論がなされているか甚だ疑問
水島朝穂 156 9 - 6
  • 言論の自由や思想信条の自由のような、どのような事態でも侵してはならない基本的人権をどう担保していくかは極めて重要
村田晃嗣 156 9 - 11
<対処体制等>
  • 危機管理庁をつくると屋上屋を重ねることになるので、内閣危機管理監を強化し、国民保護法と今までの危機管理関係の個別法とをドッキングさせて国民保護に万全を期すべき
佐々淳行 156 9 - 13
  • 今の危機管理法令は地方自治体が主体であるが、危機に対して主力になるのは警察、消防、自衛隊、海上保安庁であり、組織された実力部隊が国家的に危機管理を行わないとどうにもならず、国と地方自治体の危機管理のすみ分けが必要
佐々淳行 156 9 - 20
  • 国民保護法制は住民保護という観点に読み替える必要があり、むしろ地域住民として存在する外国人の保護をどうするかという観点から、災害、犯罪など様々な類型を下から立ち上げればよく、国家が上から緊急権により対処するという発想は終わったと考える
水島朝穂 156 9 - 15
  • 危機管理庁については、組織をつくったから政策の調整がうまくいくとは必ずしも思わず、例えば出向者の混合団体に各中央省庁をコーディネートする役割が果たせるか疑問であり、つくるとすれば、これがうまくいくような方法を検討すべき
村田晃嗣 156 9 - 11
<外国の状況>
  • 各国がどのような緊急権システムをとるかは、独仏や韓国の例に見られるように、それぞれの国の歴史的背景を無視できず、条文だけ並べて日本も同様のものを導入しようとするのは、緊急権濫用の歴史と現実を見据えた主体的な姿勢を欠くものと言わざるを得ない
水島朝穂 156 9 - 4
  • フランス第5共和制憲法16条は大統領の広範な非常措置権を認めているが、61年のアルジェリア危機の際にドゴール大統領が内乱の終息後5か月も非常権限を解除しなかった経験から、86年にはミッテラン大統領がこの条項の見直しを検討しようとした
水島朝穂 156 9 - 4
  • ワイマール憲法で緊急権規定が濫用された教訓から、ドイツ基本法は、当初、緊急事態に関する規定を一切持たず、1968年改正で包括的な緊急事態規定が導入された際にも、その濫用を制限する安全装置がビルトインされた
水島朝穂 156 9 - 5
  • ドイツ基本法の緊急事態条項には次の三つの安全装置が組み込まれている。(1) 緊急事態の認定権をぎりぎりまで議会に留保する、(2) 防衛事態等に際して市民に義務を課す場合に憲法改正に匹敵する連邦議会の投票の3分の2の賛成を必要とする、(3) ゼネストなど対内的緊急事態の概念を除外する(87a条4項の限定化)
水島朝穂 156 9 - 5
  • 韓国の場合、48年憲法の制定以来緊急権がしばしば濫用され、特に、80年10月以降は非常事態が日常化した経験があるため、87年憲法では緊急権規定は非常に限定されたシンプルなものになった
水島朝穂 156 9 - 5
  • 韓国とドイツでは、憲法裁判所が緊急事態でも機能することが憲法に明記されており、司法救済の道が残されているが、日本でそれが期待できるかは疑問
水島朝穂 156 9 - 6
有事法制
  • 有事の想定が、日本が攻められ国土防衛戦争という形で国民に権利義務を制限して行うようなものから、対外的に自衛隊が海外展開している中で必要性が出てくるというものに変わりつつある
水島朝穂 156 9 - 16
  • 米国が何らかの形で周辺諸国に軍事介入したとき、それに対する相手国の自衛権行使に対する反撃として、言わば日本が有事を引き出すような格好で関与する軍事介入型有事法制の危険性がある
水島朝穂 156 9 - 16

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