基本的人権 参考人名
公述人名
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1 基本的人権

基本的人権
  • 基本的人権を最高かつ普遍的な価値として認めるか否かは信念の問題であるが、現在の世界で最も広く認められている価値と考える
加藤周一 150 2 - 11
  • 憲法の人権規定はどの国も一般的抽象的に書かれており、それだけで人権保障の在り方等が分かるわけではなく、その下で生じている実態を見て議論をしなければならない
戸松秀典 154 5 - 1
  • 憲法の課題として求められているのは、人間らしく生きること、それは平和の中で初めて実現すること、そこに差別があってはならないことの三つである
横田 力* 154 II - 5
  • 人権条項が社会の変化に対応できなくなっていると言うが、憲法の人権規定は諸外国と比べて豊かな内容を持ち、人権を主張する側に立って柔軟に解釈する余地があり、まず、なぜミスマッチを起こしているのかを論証すべき
横田 力* 154 II - 9
  • 人権論は、人権の中心部分が戦争行動によりその外壁が崩されてはならないこと、とりわけ政府の政策により戦争が引き起こされてはならないことについて、9条とは違った角度からメッセージを投げかけている
横田 力* 154 II - 13
  • 憲法と世界人権宣言は人権規定に関してほとんど優劣がない
横田洋三 154 8 - 2
  • アジア的人権・アジア地域の特殊な人権といった議論に関し、日本政府は、かなり早い段階から人権は普遍的であるとの立場を明確にしてきた
横田洋三 154 8 - 6
  • 人権の保障には、国際人権法と憲法の人権保障規定で十分であり、憲法の人権規定を改正する必要はない
戸塚悦朗 154 8 - 4
  • 憲法の人権規定は充実した内容であり、制定当時はもとより、現在においてもその輝きは失っていない
日弁連
村越 進
154 9 - 12
  • 人権は基本的には普遍的なものであり、特定の地域や国だけの人権という考え方は社会や地域を一元的に見る思考で、個人を抑圧する方向に働く
申 惠ボン 156 2 - 7
  • 基本的人権の思想について、本当に分析した上で導入したのではなく、理解もしないで濫用しているのではないか
青山武憲 159 6 - 10
<基本的人権の概念>
  • 人権の本来の意味を議論するときには、現状を変えるためなのか、単に言葉の語源を探るのか、その目的によって意味が変わる
戸松秀典 154 5 - 8
  • 人権と基本的人権の使い分けについては、定説があるわけではないが、基本的人権と言うことによって、通常の権利とは違うという思いが込められているのではないか
戸松秀典 154 5 - 12
  • 憲法が保障するのは基本的人権と言い得るものであって、権利すべてを一般的に保障する趣旨ではないと同時に、基本的人権は憲法典の個々の条項に列挙されているものに限定されるわけではない
初宿正典 154 6 - 3
  • 人権と言い得るものは、国籍・年齢・性別などの区別なしに保障されているものを指すのであり、憲法はそうした性質を持つものとそうでないものとの両方を規定している
初宿正典 154 6 - 3
  • 人権や人権侵害という言葉が余りにルーズに使われ、人権のインフレと言われるような現象も指摘されているので、人権は少し狭い意味で用いる方がよい
初宿正典 154 6 - 3
<自然権>
  • 人には生まれながらの権利があるという理念に基づいた人権の観念は18世紀後半の米国、フランスで結実し、日本国憲法もこの思想に裏付けられている
初宿正典 154 6 - 2
<基本的人権の発展>
  • 資本主義国家の人権保障は、生存権等、社会主義国家の刺激を得て発展してきた過程がある
戸松秀典 154 5 - 12
  • 人権は西欧の近代において生成してきた人権思想が念頭に置かれている
初宿正典 154 6 - 2
  • 従来の人権論は、国家からの自由としての基本的人権、国家への自由としての社会権、国家への参加としての参政権のように、国家論中心であるが、国家との関係を超え、又は国家と共同してつくっていく第四の人権論へ進化していくのではないか
五十嵐敬喜* 162 I - 2
<基本的人権の類型>
  • 従来は自由権的基本権と社会権的基本権に大きく二分して考えていたが、現在はこのように消極的な自由権と積極的な請求権にすっきり二分できるのか疑問視されている
初宿正典 154 6 - 3
  • 基本権の類型論は今なお有益だが、あくまで相対的な分類であり、類型化するに当たっては、一つの基本権が複数の性質を持ち得ることに留意しつつ、柔軟な体系として構築されなければならない
初宿正典 154 6 - 4
<基本的人権の尊重・保障>
  • 人権保障の発展過程は、憲法訴訟・憲法裁判の展開過程と軌を一にする
戸松秀典 154 5 - 1
  • 日本の人権保障の発展過程において米国の裁判法理の影響が大きい
戸松秀典 154 5 - 2
  • 日本で人権保障が発展した領域として、平等原則、経済活動の自由、政教分離原則などが挙げられ、一層の発展が求められる領域として、表現の自由、刑事手続上の人権などが挙げられる
戸松秀典 154 5 - 2
  • 妻に対する夫の暴力、児童虐待など人権思想が国民の中に定着し切れていないが、その原因の一つには、憲法を具現化する立法、行政を積極的に進めてこなかったという政治の責任がある
杉井靜子* 154 II - 2
  • 過去の問題のある法律により人権侵害を受けた人に対しては、国が救済するというのが国際的な常識
横田洋三 154 8 - 11
  • 憲法の人権規定が十分にいかされていないが、この理由として、(1) 裁判所が違憲立法審査権の行使に消極的であったこと、(2) 個別人権法の不在・不備、(3) 人権救済の実効的システムが不十分であったことなどが考えられる
日弁連
村越 進
154 9 - 4
  • 人権にかかわる立法の制定については、各省庁の腰が重いことを実感しており、議員立法を積極的に提案してほしい
日弁連
村越 進
154 9 - 5
  • 司法的な人権救済には限界があり、個々の事件における個人の救済はできたとしても、構造的な人権保障は困難である。司法による人権保障の在り方を考える場合には、立法府によるサポートと国民の人権意識の高揚を図ることが必要
常本照樹 156 3 - 2
  • 一審の判決が契機となって立法が行われたこともあったが、一審の判決にこたえる形で改められた立法が、最高裁の判決により元に戻る例も見られ、立法府自身の信念に基づいた人権保障に向けた活動が望まれる
常本照樹 156 3 - 15
<国の人権保護義務>
  • 人権保護義務論は、ドイツで出た理論で、基本権を国家が保護していくとの考え方。ドイツでは、環境問題のように住民の健康のために企業活動を規制するような形の保護義務論が有力
戸波江二 155 3 - 6
  • 国による人権保障の考え方を、ドイツのように人権一般に広げてよいかについては議論があり、経済的活動は国の関与があってよいが、精神的自由については国が自由を守るという考えは危険との考えが有力。個人的には、場合によっては保護義務論を取り得ると考えるが、少数説
戸波江二 155 3 - 6
  • 人権擁護法案には、保護義務論的な考え方も出てくる
戸波江二 155 3 - 6
  • 差別や雇用の問題については、国に法整備の義務が出てこないかという意味で、人権保護義務論をもう少し展開できないかと考える
戸波江二 155 3 - 9
<道徳との関係>
  • 法と道徳の分離が近代法の基本的性格を規定しており、道徳的な中身を憲法により定めるのは筋が違う
中島茂樹 154 7 - 3
  • 法の基礎にある道徳の大切さ、すなわち、目に見えないものを畏敬し、身を慎み、自己の義務を自覚することで一人一人の人格を掛け替えのないものとして尊重できるようにする、その教育がまず必要
百地 章 154 7 - 6
  • 自由な国家は世界観の多元化をもたらすにもかかわらず、無政府状態にならないのは共通の倫理的基盤があるから
平松 毅 156 2 - 1
  • ドイツでは、(1) 国家には憲法以前に憲法によっても改正できない基本価値が存在するとの説と(2) 国家により確保されるべき実体的価値の存在は認めるが、その存続は政治的意思形成にゆだねられ、それは憲法に具体化されているとの説があるが、議会の多数決に対しても守らなければならない倫理的な価値が存在し、それを守るのが政治家の役割であるとの考え方は共通している
平松 毅 156 2 - 1
  • 憲法より高次の、憲法の運用を支配している基本価値とは、日本では和の考え方であり、これは、ドイツの連帯の思想に相当する
平松 毅 156 2 - 3
  • 宗教の権威が薄れつつあるとともに、国民のモラルも低下しつつある結果、これまで宗教が担っていた国民の道徳的基盤を形成する役割をいや応なく憲法が担わざるを得なくなっているのではないか
平松 毅 156 2 - 9
  • ドイツでは法律が不法でもあり得ることを前提として、法律によっても動かされない価値を憲法に盛り込もうと考えて道徳律を入れたが、日本の憲法にそのようなものがない点は問題である
平松 毅 156 2 - 9
<日本人の人権感覚>
  • 西欧的人権思想は必ずしも普遍的思想ではなく、日本本来の体質は聖徳太子以来の合議の精神である
西尾幹二 147 4 - 11
  • 日本人は、単一民族主義、一国繁栄主義的な傾向により、外国人に対する問題を軽視してしまう傾向がある
柳 時悦* 154 II - 4
  • 日本人は自由の大切さを検証し反省することがなかったため、自由の価値観が欠如している面があり、個々の人間の尊重より、システムや国家の尊重に傾いていた
柳 時悦* 154 II - 10
人間・個人の尊厳
  • ドイツ基本法でいう人間の尊厳とは、ナチス・ドイツを背景として人間を人格としてとらえることに重きを置いたもので、13条でいう個人の尊重の原理とは必ずしも同じではない
初宿正典 154 6 - 6
  • 人間の力を超えた大いなるものを前提として初めて人間の尊厳や人権の重みが言える。米国の独立宣言やドイツ基本法前文も神に言及しており、日本でも、人間を超えた大いなるものに想像を巡らし、人権の意義や限界を考え直してみる必要がないか
百地 章 154 7 - 6
私人間における人権の保障
  • 私人間の人権の衝突には両方に事由があるので、平等原則から直ちに入るわけにいかず、相応の法制度化が必要
戸松秀典 154 5 - 11
  • 権利侵害は基本的には民事法の法理で解決すべきで、むやみに人権侵害の構成を取る必要はない
初宿正典 154 6 - 5
  • 人権は本来個人の権利であり、私人間の争いにつき、団体の権利と個人の権利が衝突する場合にはできる限り個人に軍配を上げるべき
初宿正典 154 6 - 8
  • 憲法の目的は国家権力を縛ることなので、社会の人権問題すべてに十分に対処することは不可能
申 惠ボン 156 2 - 14
  • 差別は、私人間のものが圧倒的に多く、身近であるが、憲法でそれらをすべて防止・救済することは不可能であり、個々人の行為規範として目に見える形で法律をつくるべき
申 惠ボン 156 2 - 14
  • 憲法に私人間の権利調整に関する条文を入れるとすると、適切な調整となるよう条文上でバランスを取る必要が生ずるが、それを憲法の条文で行うのは技術的に難しい。憲法は、個々の法律の中で調整することを予定しており、それが民主政治の在り方であろう
赤坂正浩 161 4 - 21

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