基本的人権 参考人名
公述人名
回次 -

8 社会権(生存権と社会保障、雇用と労働基本権など)

社会権
  • 社会権をあえて憲法の法文の中にうたったところに、当時の先進諸国の指導者で共有された方向性が反映されている
正村公宏 147 4 - 4
  • 人間の悲惨を社会の共同事業を通じて減らすことができるなら減らそうということが知恵であり、社会権もそのようなものと考える
正村公宏 147 4 - 12
  • 社会福祉にかかわる人権などは、裁判所が立ち入った判断をするよりも政治過程の政策的判断に任せた方がよいと思われる領域
戸松秀典 154 5 - 3
  • 社会権は古典的な自由権と異なり、積極的に国家の行為を請求する権利であることが特徴で、このような権利を明文で盛り込んだところに現憲法の大きな特徴の一つがある
初宿正典 154 6 - 4
  • 経済的自由及び社会権は、学者の数も少なく、実績も多くなく、憲法学説が中心的に取り上げてきたテーマではない
戸波江二 155 3 - 1
  • 社会権が入っている憲法は、ヨーロッパ、西欧では比較的少なく、日本国憲法は画期的
戸波江二 155 3 - 2
  • 現代国家は、19世紀の国家と違い、国民の福祉や生活の面倒をみる国家であることが憲法上明らかにされている
戸波江二 155 3 - 2
  • 福祉の問題は基本問題であり、新自由主義の経済政策の下でも福祉の切捨てに直ちに結びつくべきでないことは憲法上の要請
戸波江二 155 3 - 3
  • 生存権はプログラム規定との判例が確立し、経済政策は立法裁量となると、憲法の具体的内容が実際の政策と結びつかないとの難問が生ずるが、憲法は、社会全体の目標を定めた法であるから、それを具体化する作業が必要であり、個々の政策においても憲法に適合した政策というものが存在するのではないか
戸波江二 155 3 - 11
  • 社会権、国民の生活、福祉をしっかりさせるという憲法の理念を国会議員が具体化すること、政治が解決することを憲法は期待している
戸波江二 155 3 - 11
  • 生存権、社会権、社会保障の実現については、憲法で細かく定めるわけにはいかず、国会が具体化すべきであり、憲法と一体となった社会保障基本法制という構造ができると考える
戸波江二 155 3 - 16
  • 社会保障立法について、国会がやらない場合や抜けているものがある場合などには、憲法の規範力を発揮して、解釈論的に国会に立法を促すような議論ができないか
戸波江二 155 3 - 16
  • ヨーロッパ諸国の憲法には、社会権という形の規定はないが、国家目的の形で社会国家であることが宣言されている
西谷 敏 155 3 - 5
  • ヨーロッパ諸国も、新自由主義的な規制緩和論の攻勢を受けているが、市場一辺倒に陥ることなく、社会的公正のための国家的介入政策を維持してきた。これは、自らを社会的政策を展開する国家と規定する憲法抜きには理解できないのではないか
西谷 敏 155 3 - 5
  • 米国憲法は個人的自由のみに立脚し、憲法上、社会的公正の観点からの国家介入を根拠付ける規定はない。経済社会分野での国家介入は、単なる政策の色彩が強く、政権交代とともに転換される
西谷 敏 155 3 - 5
  • 従来、26条以下の社会権は、25条の生存権の下位概念と位置付けられてきたが、25条は物質的な幸福に傾斜した概念との反省が生じ、社会権の基礎に、25条のほか13条の個人の尊厳規定、あるいは人間の尊厳の理念を据え、精神的な幸せをも目指す政策を展開すべきとの見解が有力になっている
西谷 敏 155 3 - 15
  • 社会保障制度については、租税を含めた国民負担率の上昇を抑制し、将来に向けて社会保障に対する国民の信頼、社会的安心を確保するため、社会保障制度改革ビジョンを早急に策定し、国民に明示し、不安を取り除くことが重要
日本経団連
矢野弘典
156 1 - 3
  • 日本が雇用社会となるにつれ、労働に関する権利や制度にかかわる問題は、憲法制定時と比べて重みを増し、労働権・社会権の問題は国民的課題となっている
連合
草野忠義
156 1 - 4
  • 25条・27条について高い意義を持つと評価しているが、経済社会の変化、本格的雇用社会の出現を考えると、労働権・社会権について適切な整備強化が必要
連合
草野忠義
156 1 - 4
  • 労働権・社会権の整備強化について、憲法、基本法、現行法のいずれにより対応すべきかについては、連合における論点整理の段階では踏み込んでおらず、憲法調査会で十分な検討を願いたい
連合
草野忠義
156 1 - 4
  • 過労死、企業リストラが進む中での自殺の増加の問題など、新しい問題を25条の趣旨から改めて見詰める必要がある
連合
草野忠義
156 1 - 5
  • 経済社会のグローバル化等の中で日本が弱肉強食の社会に変質する懸念もあり、25条において、社会的な連帯や弱者への配慮を重視する社会を目指すことをより明確にしてはどうかとの見解も検討に値する
連合
草野忠義
156 1 - 5
  • すべての人が平等な条件で社会に参画し、能力を発揮できるようにする点に社会権の基本的考え方があり、弱者とされる人を不幸に追い込むのではなく、活躍できる場を与えることにより、社会の力量が生まれ、連帯感で結び付いた社会が実現できる
西原博史 161 4 - 16
  • 現在提示されている憲法改正に係る提言は、社会権の具体化という方向より、換骨奪胎して義務規定につくり上げるという方向を目指すように見受けられる
西原博史 161 4 - 16
  • 社会権の保障は、個人の自律という原理を踏まえ、自律可能性の条件を国家が整備することを通じて、すべての個人が自らの能力を発揮できるような社会をつくり上げようとの発想に基づく
西原博史 161 4 - 17
  • 社会権は、最低限度を確保することに向けて法的役割を果たすものと考えており、そのような見方からすると、現行法体系は、憲法の観点から評価してそれほど見劣りはしない
西原博史 161 4 - 22
生存権
  • 生存権は、25条の一般抽象的な言葉から様々な福祉立法がなされ、それらが実施される過程を通して一層具体化し発展するもの
戸松秀典 154 5 - 4
  • 通説・判例は、25条をプログラム規定と解釈し、国に対して政治的、道義的な義務を課した規定であり、同条に基づく個人の直接給付請求権は認めないとする
戸波江二 155 3 - 6
  • 通説・判例の考え方は、原則としてはやむを得ないが、最低限度の生活さえ営めない人が出てきたときに権利でないとして退けるような解釈でよいのか、また、25条を具体化するための国の社会保障充実義務等は、法的義務であり、それが充実していないことは25条違反の問題が起こりうるのではないか
戸波江二 155 3 - 6
  • 生存権はプログラム規定との判例が確立し、経済政策は立法裁量となると、憲法の具体的内容が実際の政策と結びつかないとの難問が生ずるが、憲法は、社会全体の目標を定めた法であるから、それを具体化する作業が必要であり、個々の政策においても憲法に適合した政策というものが存在するのではないか
戸波江二 155 3 - 11
  • 25条の最低限度の生活については、それを確保するための措置が強く要求され、そのような法律をつくらなければ違憲となる余地があると考えるが、それを超えた部分については立法義務がすべてに出てくるとは言えない。ただし、個別的措置について、状況によっては立法義務が出てくる余地がないわけではない
戸波江二 155 3 - 12
  • 例えば、介護保険について、寝たきりの身寄りのない老人が増えた場合に個別的立法義務が生じる余地がないか、ハンセン病について国が放置した個別的な措置については、状況によって、放置したことをもって憲法違反との判断も出てくるのではないかと考える
戸波江二 155 3 - 12
  • 生存権の実現には、最低限の生活の保障の問題と、より高い次元での人間らしい生活の保障の問題があるが、最低限の生活を超えた部分における国の政策については、様々な選択肢があり、具体的にどうすべきという結論が出て来る問題ではない
西谷 敏 155 3 - 12
  • 疾病、高齢化、貧困などだれもが陥る可能性があるリスクを社会全体で担っていくということが生存権の考え方の根底にあり、リスクに直面した場合、だれもが平等にサービスを受けられることが本質的ポイントになる
西原博史 161 4 - 16
  • 災害被災者の個人財産の復興に国民が財政的にどこまで協力すべきかというテーマは、権利論という形より、民主的な政治過程の中で立法措置を通じ、そのときの社会条件の中で皆が共通に負担し合う範囲について合意を形成するのが適切なテーマ
西原博史 161 4 - 20
  • 生存権は、皆が豊かになる権利として意識されてきたが、その結果、生存権により本来保障されるべき一番弱い立場にある人たちの権利が薄れてしまったのではないかと危惧する
西原博史 161 4 - 21
<社会保障制度との関係>
  • 国保の短期保険証に一目で滞納者であることが分かる「マル短」等の表示をする自治体があるが、プライバシー保護に反するものであり、即刻中止すべき
辻 清二* 154 II - 3
  • 国保税・料を滞納した世帯には有効期限の短い短期保険証を発行する制度や、1年以上滞納した世帯には資格証明書を発行し、後日給付とする制度は、払いたくても払えない人の受診抑制を引き起こし、13条・14条に反しており、中止すべき
辻 清二* 154 II - 4
  • 国は、健康で文化的な最低限度の生活に食い込む国保税・料を是正し、値下げすべき
辻 清二* 154 II II - - 4 12
  • 健康で文化的な生活を送るには、自己決定権、自由に生きる権利が不可欠で、それを邪魔する生活を切りつめざるを得ないような保険税・料ではいけない。国が最低限の保障をする責任を負うべき
辻 清二* 154 II - 16
  • 25条2項をもう少し具体化して法的義務を強化するとの提案の趣旨は分かるが、25条の改正でなくとも、社会保障基本法のような法律をつくり、義務規定を定めるという形でもカバーできるのではないか
戸波江二 155 3 - 14
  • 家族を扶助する義務、社会保障制度を支える義務等を憲法に入れるべきとの主張があるが、国や地方の社会保障負担を減らそうとの意図によるものであれば、国民の間で負担を偏らせる効果を生み、むしろ活力ある社会の創出を妨げるし、本人拠出の確保を目的とするのであれば、まず、責任ある社会保障制度の確立が求められる
西原博史 161 4 - 16

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