基本的人権 参考人名
公述人名
回次 -

8 社会権(生存権と社会保障、雇用と労働基本権など)

勤労の権利
  • 27条の勤労の権利は、勤労の場所の提供を直接要求できないにしても、国に勤労の場所を用意すべき義務を課しているのであり、国の雇用についての配慮義務は憲法から生じる
戸波江二 155 3 - 9
  • 勤労の権利を保障した27条1項は、労働法の分野で重要であり、国の雇用保障政策や判例による解雇制限法理の理念的な根拠となっている
西谷 敏 155 3 - 3
  • 労働基準法などのいわゆる労働者保護立法は、27条2項の負託を受けて制定された法律であり、この憲法規定との密接な関連が、諸外国と比較した場合の日本の労働基準法の特色との指摘がある
西谷 敏 155 3 - 3
  • 労働法は、使用者の一方的な決定、つまり経済的自由を規制することに最も基本的な性格があり、その労働法を根拠付けている憲法は、当然に経済的自由の制約を前提にしている
西谷 敏 155 3 - 4
  • 憲法は、立法や解釈において、経済的自由と社会権・労働法の関係を調和的にとらえ、両者がいずれも犠牲にされることなく実現されることを求めていると考えざるを得ない
西谷 敏 155 3 - 4
  • 最近の労働分野の規制緩和、規制改革の動きは、市場原理、経済的自由の価値が一面的に強調され、社会権を保障するという観点が非常に弱い点に重大な問題を感じる
西谷 敏 155 3 - 4
  • 裁量労働制の緩和、8時間労働制の適用排除等ホワイトカラー労働者の労働時間をめぐる最近の議論は、企業経営上の効率だけを重視して、社会権保障の観点が欠落している
西谷 敏 155 3 - 4
  • 有期契約の期間延長の問題、労働者派遣の一層の規制緩和の要求、解雇法制など、現在の規制緩和論は様々な問題が存在すると考える
西谷 敏 155 3 - 4
  • 米国は労働法的規制が弱いが、ヨーロッパ諸国は労働法的規制を重視してきた。経済構造と労働法の在り方は各国の憲法にその基礎を持っていた
西谷 敏 155 3 - 4
  • 27条2項は労働立法の根拠となるものであり、重要な労働条件について法律で明確に最低基準を設定するという国家の任務は、憲法を尊重する限り決して放棄できないもの
西谷 敏 155 3 - 5
  • 市場原理を社会的観点から修正しようとするヨーロッパの試みもグローバル化の中で米国化する可能性もあり、ヨーロッパ型と米国型の緊張関係の中で、日本の労働法の在り方が問われている
西谷 敏 155 3 - 5
  • 日本国憲法は一連の社会権規定を持つ点でヨーロッパ型であるが、さらに、労働運動の長年にわたる努力を無にせず、労働者の人間らしい生活の保障を前提とした安定した日本社会・国際社会の形成に貢献するという観点から、ヨーロッパに学ぶ労働法の確立を期待
西谷 敏 155 3 - 5
  • 25条の生存権の問題かもしれないが、社会全体の安定、雇用不安の解消という点からは、失業期間中の生活保障にも意を用いるべき
西谷 敏 155 3 - 9
  • 解雇制限について、法律によらず、判例法理で行ったとしても、憲法違反にはならないが、判例法理の到達点を法律に明記することは適切な法政策
西谷 敏 155 3 - 12
  • ドイツでは労働法的な規制を論じるときに絶えず憲法論に立ち返って議論するが、日本は政策論で突っ走る気がする。国会の議論の中でもっと憲法論を踏まえた政策論を行ってほしい
西谷 敏 155 3 - 14
  • ワークシェアリングについては、多様なライフスタイルのニーズと生産性向上を両立させるため、従来の雇用慣行や制度の検討、見直しに取り組み、様々な雇用形態や就労形態を組み合わせた雇用システムを整備することが重要
日本経団連
矢野弘典
156 1 - 3
  • 賃金に関しては、雇用の確保を最重点に、企業の生き残りを可能にする人件費の効率化、生産効率の向上を労使で議論する必要がある
日本経団連
矢野弘典
156 1 - 3
  • 労働法制の在り方としては、雇用形態の多様化が進み、他方で、経済情勢の急激な変化の中で事業の効率化、再構築が必要とされており、規制改革の方向での法改正を更に進めるべき
日本経団連
矢野弘典
156 1 - 3
  • 27条の勤労権は、働く意思と能力を持つが就業の機会を得られない国民に対し国が一定の配慮をすべきことを命ずるが、同条を根拠にその実現を裁判所に請求できる具体的権利ではないと理解している
日本経団連
矢野弘典
156 1 1 - - 8 14
  • 今日の雇用情勢下では、雇用の確保が政労使にとって重要であり、政府に対しては、雇用対策の一層の充実、労働市場の流動性の確保、再就職に結びつく職業訓練を求めたい
日本経団連
矢野弘典
156 1 - 8
  • 日本が雇用社会となるにつれ、労働に関する権利や制度にかかわる問題は、憲法制定時と比べて重みを増し、労働権・社会権の問題は国民的課題となっている
連合
草野忠義
156 1 - 4
  • 25条・27条について高い意義を持つと評価しているが、経済社会の変化、本格的雇用社会の出現を考えると、労働権・社会権について適切な整備強化が必要
連合
草野忠義
156 1 - 4
  • 労働権・社会権の整備強化について、憲法、基本法、現行法のいずれにより対応すべきかについては、連合における論点整理の段階では踏み込んでおらず、憲法調査会で十分な検討を願いたい
連合
草野忠義
156 1 - 4
  • 憲法の勤労権は失業者への生活資金給付義務についても規定していると考えられており、この具体化が雇用保険であるが、政府が行おうとしている給付水準の削減は、憲法の趣旨と相入れない
連合
草野忠義
156 1 1 - - 4 14
  • ワークシェアリングは、憲法の保障する勤労の権利を実現する観点からも大きな意義を持ち、政労使それぞれが積極的に対応すべき
連合
草野忠義
156 1 - 4
  • 憲法の条文において国が雇用対策を適切に推進することを示すことが労働権の適切な強化に結び付くとの見解や、国や使用者が労働者の職業能力を尊重し、その開発に協力する義務などを憲法に規定すべきとの見解もあり、検討の価値がある
連合
草野忠義
156 1 - 4
  • 男女の賃金格差が近年拡大を続けていることや、14条の法の下の平等の規定が国家からの自由として規定され、私人間には及ばないことを踏まえ、労働の場における男女の平等について労働権として明示すべきとの見解もある
連合
草野忠義
156 1 - 5
  • 児童を酷使してはならないとする27条3項の内容は当然のことであるが、少子高齢化が進む日本の今後を担う子供や若年者のための規定は、今日的に充実させるべきとの指摘も理解できる
連合
草野忠義
156 1 - 5
  • 勤労権の確保には、完全就業が第一義的になければならず、雇用の場の拡大が国の政策の基本になければならない
連合
草野忠義
156 1 - 8
<勤労実態>
  • 長時間労働により幸福追求や家庭生活が妨げられており、労働基準法において、諸外国のような残業規制をすることが人権を守る上で重要
杉井靜子* 154 II - 14
  • 明らかな労働基準法違反であるサービス残業の問題など、労働法上の基本原則が現実にはなかなかいかされていない
西谷 敏 155 3 - 11
  • 雇用をめぐる情勢は危機的状況にあり、政府には27条の勤労の権利に沿って諸対策を進める義務があるが、現在の対応は、極めて不十分である
連合
草野忠義
156 1 - 4
  • 労働基準法を始めとする労働保護立法の根拠である27条2項の趣旨に反する不払残業、解雇、賃金未払など多くの事例が報告されており、27条の趣旨実現のために政労使を挙げて取り組むべき
連合
草野忠義
156 1 - 5
  • 公務職場で働く非常勤職員等は法のはざまで劣悪な実態におかれているが、国等は早急に必要な人員の定数を確保すべき。国立病院・療養所の賃金職員について独立行政法人移行に当たり、雇用の継続と正職員化を図ることは国の責務
全労連女性局長
中嶋晴代
156 4 - 6
  • リストラ、合理化の下で時間外労働は増大しており、男女とも人間らしく生き、働くために、憲法に光を当てることが重要。13条、14条、25条、27条、28条が保障される社会を実現すべき
全労連女性局長
中嶋晴代
156 4 - 6
  • 今必要なのは、サービス残業の根絶、労働時間の短縮、人員増など男女とも人間らしく働くルールの確立。正当な理由のない解雇の禁止、有期雇用、派遣労働の限定、パートや臨時労働者の労働条件の改善、均等待遇の実現が求められる
全労連女性局長
中嶋晴代
156 4 - 6
<労働における男女平等>→5 法の下の平等 男女平等
労働基本権
  • 企業と雇用されている者との争いは、憲法の何かの価値を直接当てはめれば解決できるというわけではなく、法制度化が必要
戸松秀典 154 5 - 11
  • 団結権、団体交渉権、団体行動権を保障した28条は経済的自由を制約する側面を持つ
西谷 敏 155 3 - 3
  • 今日のような厳しい経済情勢の中で、企業が生き残り、発展し、労働者の雇用や生活を守るためには安定した労使関係が必要であり、それを可能にするのは労使自治。労使自治は、経済的自由と生存権及び労働基本権の調和を実現するための手段である
日本経団連
矢野弘典
156 1 1 - - 2 18
<労働組合>
  • ヨーロッパ諸国では、労働組合が社会の中で大きな影響力を持つが、これは、企業を超えたところで組合が組織されているため、企業間競争が激しくなってもその機能が落ちないことによる
西谷 敏 155 3 - 11
  • 日本では企業別組合が大半で、企業間競争が激しくなると共通の労働者利益を守る力を発揮できないという構造的な弱点があり、組合の存在意義が不明確な状況が生じているが、組合は、制度としての役割を終えたのではなく、どう再生させるかが課題
西谷 敏 155 3 - 11
  • 労働組合は、憲法上の建前とは違った形で現実の弱体化が進んでおり、憲法・法律ではいかんともし難く、労働者自身が努力すべき課題
西谷 敏 155 3 - 11
  • 非典型労働者(パートタイマー、派遣労働者等)のように労働者としての権利が守られにくいところでその基本的権利を守るのが、ナショナルセンターの役割ではないか
連合
草野忠義
156 1 - 13
  • 労働組合がないと労働者が無権利に置かれる状況は明白で、組合未加入者は有給休暇の取得状況や雇用保険の加入率が低い。使用者は労働組合を嫌悪するのではなく、団結権は基本的人権であると認識し、不当労働行為はやめるべき
全労連女性局長
中嶋晴代
156 4 - 6
  • 非正規労働者については、ユニオンショップ制で正規労働者しか組織しないところがあったり、多くが有期雇用で、組合に加入すると次の雇用がなくなるとの意識や実態があること、しかも極めて短期の雇用となっていること、職場に雇用主がいない派遣労働者が増えていることなどにより、組織化が難しい
全労連女性局長
中嶋晴代
156 4 - 14
<公務員>
  • 法律で公務員について労働基本権を全面的に剥奪していること、特に団体交渉権を制限し、争議権を全面的に剥奪していることは、どう考えても憲法違反
西谷 敏 155 3 - 11
  • 公務員は労働基本権が制約されているが、地位の特殊性や公共性を考えると現行の制約はやむを得ないのではないか。勤務条件法定主義、人事院勧告制度などの措置があり、民間から見ると恵まれた地位にある
日本経団連
矢野弘典
156 1 - 10
  • 公務員制度改革の問題について、連合はILOの結社の自由委員会に提訴し、2002年11月のILO理事会で労働三権、基本権を公務員にも付与すべきとの趣旨の勧告が出された
連合
草野忠義
156 1 1 - - 4 10
  • 28条が団結権、団交権、団体行動権の労働三権の規定しているにもかかわらず、公務員の労働基本権が公務員関係法等によって制約されていることは28条に関する最大の問題
連合
草野忠義
156 1 - 4
  • 労働基本権は、公務員にも当然付与されるべきであり、独立行政法人化された場合、労働基本権が付与されるのは当然と考える
連合
草野忠義
156 1 - 13
<ILO>
  • ILO条約の批准は日本は遅れているが、基本条約と言われるものから取り組むのがよい
日本経団連
矢野弘典
156 1 - 11
  • 公務員制度改革の問題について、連合は、ILOの結社の自由委員会に提訴し、2002年11月のILO理事会で労働三権、基本権を公務員にも付与すべきとの趣旨の勧告が出された
連合
草野忠義
156 1 - 10
  • 180以上あるILO条約のうち、日本が批准している条約は3分の1以下しかなく、国際社会の中では大きな問題。批准を急ぐべき
連合
草野忠義
156 1 - 10
  • 雇用及び職業についての差別的待遇に関するILO111号条約を批准すべき
申 惠ボン 156 2 - 5
  • 日本は未加入の主なILO条約に入るべき
申 惠ボン 156 2 - 14
  • 憲法の理念はILOの理念と相通ずる。日本はILO条約のうち4分の1しか批准していないが、優先的基本条約とされる雇用及び職業についての差別待遇に関する111号条約等を批准し、国内法を整備することが求められている
全労連女性局長
中嶋晴代
156 4 - 6

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