基本的人権 参考人名
公述人名
回次 -

12 新しい人権(知る権利、プライバシーの権利、環境権、生命倫理、犯罪被害者の権利など)

環境保護・環境権
  • 自然環境との共生という意味において、憲法の中に環境保護は入れるべき
西 修 156 6 - 3
<環境権>
  • 環境権について、環境基本法に入れられなかったのに、なぜ憲法に入れられるのか疑問。個別法でまず実績をつくり、重要であると皆が納得できれば、憲法に入れればよい
暉峻淑子 147 8 - 10
  • 環境権の保障を憲法にうたえば環境保全が一気に促進されるということではなく、13条なり25条で読み取って、憲法上の権利ではあるが、実現のためには様々な立法が必要であり、立法の下で具体的施策がなされれば、環境権の保障が実現されるということではないか
戸松秀典 154 5 - 3
  • 環境権については、何が環境の権利か突き詰めて考える必要がある。ドイツでも、国の責務として、立法や行政で実現する一種のプログラム規定として定めるにすぎず、このような形であれば考慮に値するが、自分は、3章の権利として書き込むことには慎重である
初宿正典 154 6 - 6
  • 環境権は、13条や25条から当然導かれるものである
杉井靜子* 154 II - 11
  • 環境権については、裁判所は認めていないが、学説では圧倒的多数が賛成している
中島茂樹 154 7 - 16
  • 環境権を日本国内だけで考えるのは今日の社会的条件下では困難になっており、世界の様々な国で環境権を実現していく方向をどのようにして追求していくかが問題となる
中島茂樹 154 7 - 18
  • 環境権について国民全体の合意ができているところまでは行っておらず、憲法学者の間でも環境権の内容や効力についてまだ議論が尽くされていないのではないか
日弁連
岡部保男
154 9 - 6
  • 環境権は、各国の憲法で、戦後あるいは環境問題が議論されるようになってから改正して導入したところがかなりあり、ドイツでは、1994年に環境条項を導入した
戸波江二 155 3 - 10
  • 環境条項の規定の仕方としては、社会権に入れるのか人格権に入れるのか、ドイツのように権利ではなく国の責務という形で規定するのかという対立がある
戸波江二 155 3 - 10
  • 環境権については、人権論としてどう構成するかという問題があり、具体的権利ではないとする判例との関係もあり、難しいところであるが、25条と同様、1項で権利としての環境権を保障し、2項で責務として環境保護義務を国家が負うという形も在り得るのではないか
戸波江二 155 3 - 10
  • 連合では、環境権、プライバシー権、知る権利などの新しい権利を検討し、例えば環境権については、現在の規定に基づいて主張が可能との見解がある一方、市民運動サイドからも憲法に環境権の規定を持つ意義は大きいとの主張があった
連合
草野忠義
156 1 - 5
  • 学説の多くが13条に環境権が含まれることを承認しているのに対し、裁判所は憲法上の環境権を否定・黙殺しているが、学説も憲法上の環境権だけを直接の根拠に裁判で具体的請求が可能とは考えていないし、判例も民法の不法行為規定などを根拠に一定の裁判的救済は認めており、両者の亀裂は一見するほど深くはない
赤坂正浩 161 4 - 14
  • プライバシー権や環境権を憲法に追加することは、理念を明確化し、幸福追求権規定の過重な負担を解消するという点で意義がないわけではないが、個別法の発展状況を見ると、どうしてもというほどの緊急性や不可欠性を持つとは言えない
赤坂正浩 161 4 - 15
  • プライバシー権や環境権は13条でカバーされている問題であり、権利を実現しつつ他の利益との調整を図っていくのは、正に立法府の賢明な判断にかかかっている
赤坂正浩 161 4 - 18
  • 環境は重要であるが、個人の利益として切り分けることができないものであり、全体の環境の維持・改善は、立法府の適切な判断により具体的な法律をつくることによってしかできない。憲法に環境権を書き込んだとしても、心構え的な意味しか持たない
赤坂正浩 161 4 - 19
  • 13条・25条で保護される自然環境とは別に、文化的環境・社会的環境も環境権に含まれるとの説もあるが、学説は分かれている
赤坂正浩 161 4 - 22
  • 環境権の法的権利としての内容を具体的に特定することに成功した理論はまだなく、法的権利として環境権があるというのは希望的観測にすぎない
西原博史 161 4 - 17
  • 何が良好な環境かという問題は主観的なものであり、その中から、皆が共通に確保していくべき環境・生態系の水準を確定することは民主的政治過程の役割であり、法律レベルで解決していくべき問題
西原博史 161 4 - 17
  • 環境権と呼ばれるものの内実は、国が環境保護や生態系秩序の維持に配慮すべきとの政治的要請にすぎない部分があり、これを権利と呼び、プログラム規定として憲法に持ち込むことは、法的には保障する余地のない権利を国民に空約束として持ち込むという欺瞞の構造に陥る危険がある
西原博史 161 4 - 17
  • 環境権規定を盛り込もうとした場合、結局、その条項が権利ではなく、環境を保護する国民の義務へと転嫁していく危険がある
西原博史 161 4 - 17
  • 景観を守る場合、景観権といった何らかの具体的な権利があって、それに基づいて一定の高さ制限などが出てくるというわけではなく、民主的意思形成過程を通じたルール設定があり、それに基づいて初めて景観に対する利益が具体的に主張できるようなものになる
西原博史 161 4 - 23
  • 日本が世界の先進国と比べて最もみすぼらしいのは都市の風景であり、各国憲法には文化や美しいものを保護する規定があり、そのような権利を考えるべき
五十嵐敬喜* 162 I - 3
  • 人格権、環境権、知る権利などの新しい権利や、犯罪被害者の権利を入れるべき
小田春人* 162 I - 4
<環境を守る義務>
  • 環境条項の規定の仕方としては、社会権に入れるのか人格権に入れるのか、ドイツのように権利ではなく国の責務という形で規定するのかという対立がある
戸波江二 155 3 - 10
  • 環境権については、人権論としてどう構成するかという問題があり、具体的権利ではないとする判例との関係もあり、難しいところであるが、25条と同様、1項で権利としての環境権を保障し、2項で責務として環境保護義務を国家が負うという形も在り得るのではないか
戸波江二 155 3 - 10
  • 国家目標規定としての環境保護という観点を入れることは憲法政策論的にはあり得る選択肢の一つだが、その具体的内容は国会の議論による政策・立法が決めていくものであり、シンボルとして規定しても問題は解決しないという認識は必要
西原博史 161 4 - 21
自己決定権
  • 自分で自己決定できない人の尊厳の問題は、ドイツでいうと1条の人間の尊厳より2条の自己の人格を自由に発展させる権利で解釈される
初宿正典 154 6 - 7
  • 健康で文化的な生活を送るには、自己決定権、自由に生きる権利が不可欠で、それを邪魔する生活を切りつめざるを得ないような保険税・料ではいけない。国が最低限の保障をする責任を負うべき
辻 清二* 154 II - 16
  • ジェンダー的差別や男女の役割分担を前提とした法制度・慣行は、女性だけでなく男性にとっても自己決定権を妨げる大きな障害になっている
申 惠ボン 156 2 - 4
  • リプロダクティブヘルス・ライツは、一応、性と生殖に関する権利・健康と訳されているが、日本語としてぴったりする言葉がない
申 惠ボン 156 2 - 11
  • リプロダクティブヘルス・ライツとは、女性だけの権利ではなく、男女ともに性と生殖に関する事柄を自分たちでコントロールする権利があるという考え方
申 惠ボン 156 2 - 12
  • 自己決定権により保護される行動・状態には、具体的な内容や保護の程度について、専門家の間でも様々な意見があり、世論も割れているテーマが多い
赤坂正浩 161 4 - 14
  • 夫婦以外の男女による体外受精や出生前診断のような先端生命科学・生殖医療にかかわる問題については、その許容性に関してコンセンサスがあるとは言えない。個人の自己決定を最大限尊重するか、人間の尊厳を守るというような観点から制限するか、どちらが13条の趣旨に沿うかについて、学界でも議論が割れている
赤坂正浩 161 4 - 14
  • 自殺の急増の中で、憲法上も生きるということを考えるべき。安楽死や脳死、クローンなどについて新しい生命観が問われているが、死ぬ権利の否定を含め、新しい技術、命というものにアクセスすべき
五十嵐敬喜* 162 I - 2
生命倫理
  • 生命クローンなどを人権との関係でどう構成すればよいかという課題が投げられているが、まず政治が対応し、法実態ができたところで憲法の名の下にどう読み取るかという課題が来る
戸松秀典 154 5 - 12
  • 難しい問題だが、規制の必要があれば立法によるべきで、憲法に書き込むことは困難
初宿正典 154 6 - 7
  • クローンの問題は、法律で規制する必要がある場合も、学問の自由との抵触をいかにうまく調整できるかという点が難しい
初宿正典 154 6 - 7
  • 世界的には、ヒトゲノム、臓器移植、死の定義、人工中絶などが人権との関係で問題になっている
横田洋三 154 8 - 9
  • 科学と人権について、科学のことは科学者に任せるという日本の状況は変える必要がある
横田洋三 154 8 - 9
  • 日本の人権状況は、医学分野で特に問題がある
戸塚悦朗 154 8 - 9
  • 夫婦以外の男女による体外受精や出生前診断のような先端生命科学・生殖医療にかかわる問題については、その許容性に関してコンセンサスがあるとは言えない。個人の自己決定を最大限尊重するか、人間の尊厳を守るというような観点から制限するか、どちらが13条の趣旨に沿うかについて、学界でも議論が割れている
赤坂正浩 161 4 - 14
  • 自殺の急増の中で、憲法上も生きるということを考えるべき。安楽死や脳死、クローンなどについて新しい生命観が問われているが、死ぬ権利の否定を含め、新しい技術、命というものにアクセスすべき
五十嵐敬喜* 162 I - 2
知的財産権
  • 知的財産の保護は、市場原理との関係、国際社会の動き、資源の少ない日本の事情、知的創造力に優れた国民性にかんがみれば、時の政権の政策に終わってはならず、憲法にうたうことが必要
森 哲也* 162 I I - - 7 12
  • 知的創造立国を憲法にうたい、日本が国民の頭脳を競争力の資源とすることで国益を守り、国を発展させ、世界に富をもたらす国であることを内外に示すべき
森 哲也* 162 I - 7
  • 前文に知的創造立国を、財産権規定に知的財産権を、教育を受ける権利規定に知的創造教育を、内閣の職務規定に知的創造施策を、司法においては専門裁判所の位置付けをそれぞれ明確にうたうべき
森 哲也* 162 I - 7
  • 民法の、私権は公共の福祉に従うということは、知的財産権についても言える。また、国際社会の中で知的創造立国を宣言して競争力国家を打ち立てていく際には、途上国に対する配慮が必要
森 哲也* 162 I - 11
  • 米国憲法1条8節8項に著作者と発明者、発見者の権利の保護規定があり、米国は知的創造立国をして今の繁栄がある。他にも発明者、著作者を憲法で保護する国が48か国を数える
森 哲也* 162 I - 12
犯罪被害者の権利
  • 従来は国家権力の濫用から被疑者を保護する枠組みの中だけで考えてきたが、今日では被害者の人権をどう考えるかが重要な局面となり、三面的局面で問題を考え、手厚い人権保障のシステムをどうつくるかが課題となっている
中島茂樹 154 7 - 16
  • 被害者に訴訟上の権利があるとすると、被疑者・被告人の権利とぶつかることがあるが、刑事司法の民主化、公正な裁判の実現という観点からすると、被害者の地位や権利の位置付けが弱かったことは否定できない
三井 誠 156 3 - 7
  • 被害者の地位や権利は、公正な裁判の実現や適正手続の保障の枠内で解釈すべき問題であり、運用上の改善は積極的にしていくべきだが、被害者の権利を直接的に基本的人権の中に定めるのが妥当かという点については、意見を留保したい
三井 誠 156 3 - 7
  • 被害者は厳格な意味で刑事訴訟法上の当事者ではないが広い意味での訴訟関係人であり、国民主体の刑事司法、公正な裁判の実現という観点から見直しを図る必要がある。まず、被害者についての視座を十分に固める段階が必要であり、それを踏まえて、立法の段階が出てくると理解
三井 誠 156 3 - 9
  • 被害者の人権は極めて重要だが、被害者のケアを実効的に行うには立法府の判断による政策の展開がまず必要で、権利規定を憲法に入れても象徴的な意味を持つにとどまる
赤坂正浩 161 4 - 20
  • 人格権、環境権、知る権利などの新しい権利や、犯罪被害者の権利を入れるべき
小田春人* 162 I - 4

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