司法 参考人名
公述人名
回次 -

3 憲法解釈権と憲法裁判(違憲立法審査権)、憲法裁判所制度

統治行為論
  • 高度に政治的な問題については、政治的に決着されるべきであり、必ずしも司法判断になじまないというのが確立した司法判断
内閣法制局 151 9 - 5
  • 高度の政治性ある国家行為につき、有効無効の判断が法的に可能であっても、その判断は国民に対し政治的責任を負う政府、国会等の政治部門の判断、ひいては国民の政治判断にゆだねるべきとして、裁判所の審査権の外にあるとする考え方
最高裁判所 153 3 - 8
  • 統治行為論を採用したと言われている最高裁判例は苫米地事件と砂川事件の2件のみ
最高裁判所 153 3 - 8
  • 統治行為論を用いて憲法判断を回避している傾向があるという批判は当たらないと考える
最高裁判所 153 3 - 8
  • 行政行為の憲法判断基準、憲法判断のガイドラインのようなものについて、裁判官の会同で協議したことはない
最高裁判所 153 3 - 10
[砂川事件判決]
  • 日米安保条約は主権国としての日本の存立の基礎に極めて重大な関係を持つ高度に政治性を有するものであり、違憲か否かの判断は純司法的機能を使命とする司法裁判所の審査には原則としてなじまないが、一見極めて明白に違憲、無効であるという場合には審査の対象になる(砂川事件)
最高裁判所 153 3 - 10
[苫米地事件判決]
  • 衆議院の解散は、極めて政治性の高い国家統治の基本に関する行為であるから、その有効無効を審査することは裁判所の権限の外(苫米地事件判決)
最高裁判所 153 3
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憲法裁判制度の改革
  • 日本の憲法裁判の実際、憲法裁判を活用している諸外国の憲法裁判制度とその運用を調査し、憲法裁判制度の改革が必要
中村睦男 151 4 - 3
  • 憲法裁判所を設けるか、設けないにしても最高裁が憲法裁判に集中できる制度に変え、憲法判断を早くすべき
中村睦男 151 4 - 5
  • 抽象的に憲法適合性を判断するという司法権を越える特別の権限を現憲法下で最高裁・下級裁判所に与えるのは難しいと言われている
内閣法制局 151 9 - 8
  • 憲法裁判制度の改善には、(1) 憲法裁判のルールの構築、憲法判断の正統性の地盤の確立、最高裁裁判官の任用の改善のような運用による改善、(2) 最高裁に憲法部を設置する、最高裁を憲法問題に特化するというような法律による改善、(3) 憲法裁判所の設置のような憲法改正による改善が考えられる
渋谷秀樹 161 5 - 15
  • 憲法裁判制度を憲法改正により改善するのであれば、大統領の憲法違反が弾劾事由となるドイツのように、公権力を握る人の憲法遵守を担保するよう99条の憲法遵守義務の実効化を図るべき
渋谷秀樹 161 5 - 15
  • 大統領制など行政権限が国民に近くなると暴走の可能性があるため、その場合、憲法裁判所の設置など裁判所の機能強化も考えるべき
五十嵐敬喜* 162 I - 2
(最高裁判所の改革)
  • 通常の民事・刑事の上告審は特別高等裁判所を新設して担当させ、最高裁に違憲審査を中心的任務とする憲法裁判所的な性格を与える見解もある
中村睦男 151 4 - 3
  • まず、民事訴訟法改正により可能となった上告理由の制限を活用し、最高裁は憲法裁判、判例変更など重要問題に専念するような運用をすることが大事ではないか
中村睦男 151 4 - 9
  • まず大法廷が事件を受理し、自ら扱うべき事件を選択し、残りを小法廷に配分することにより、大法廷が主導性を持って重要事件をピックアップし、憲法問題を含む重要な事件の処理に集中的に当たるという方法も可能ではないか
佐藤幸治 154 2 - 5
  • 下級審が事件を受理した際、憲法上問題があれば最高裁に移送することとし、憲法判断を最高裁に集中させるという方法も、現憲法の下で可能かもしれない
佐藤幸治 154 2 - 9
  • 現憲法下での提言として、最高裁に憲法を専門に審理判断する部をつくるという案があるが、基本的に賛成。違憲判断を書くには相当の素養を要し、憲法裁判に適した裁判官を入れるための機構の改革も必要
戸波江二 155 3 - 13
  • 憲法部の設置には、(1) 下級裁判所の憲法判断権をどうするか、(2) 通常裁判所のトップという機能と憲法問題の終審裁判所という機能が最高裁の中で分裂することがよいことかとの問題がある
渋谷秀樹 161 5 - 21
  • 通常裁判所のトップを特別高等裁判所とし、判例変更、法令解釈変更又は憲法問題については最高裁が扱うとすれば、良い憲法判決が出るのではないか
渋谷秀樹 161 5 - 21
  • 憲法の枠内での改革案としては、最高裁裁判官の任命に関する諮問委員会をつくり、広く各界の意見を反映できるようにし、その諮問を内閣が尊重するようにする方式も考えられる
永田秀樹 161 5 - 17
  • 憲法専門部のようなものをつくる場合、キャリア裁判官中心ではなく、憲法の専門家を多く入れるような形にすれば、従来の最高裁とは違う判断が出る可能性もあるが、従来の人事構成を変えなければ、大きな変化は期待できない
永田秀樹 161 5 - 24
憲法裁判所
  • 憲法学会の通説では、現憲法は司法裁判所型の違憲審査制を認めているので、憲法裁判所の設置には憲法改正が必要
中村睦男 151 4 - 2
  • フランスやイタリアでは、憲法裁判所は、憲法と法律の整合性をチェックする機関ではなく、立法過程の一部であり、特にフランスでは数で定めた法律を理によって修正する機関
成田憲彦 151 4 - 5
  • 司法裁判所とは別に組織を設けるのが憲法裁判所を設ける場合の一般的な方法
内閣法制局 151 9 - 7
  • 憲法裁判所は第四権との比喩的な言い方をされる場合もあるが、いかなる権限を付与するかは、国権のまさに分配の問題
内閣法制局 151 9 - 8
  • 抽象的違憲審査権を認めると、裁判所が政治的紛争を解決する場になってしまうということは認識しておくことが必要
渋谷秀樹 161 5 - 15
  • 憲法裁判所が政治的闘争の場になることを防ぐには、(1) 議会の判断は民主主義に基づき、憲法裁判所の判断は憲法に基づくことを自覚すること、(2) 誰もが納得するような人が憲法裁判所を構成することが必要
渋谷秀樹 161 5 - 20
  • 憲法裁判所は、立法の事後審査を行うという立場であり、第四権というとらえ方は不適当
渋谷秀樹 161 5 - 21
  • 圧倒的多数の国は憲法裁判所方式を採用しているが、その理由は、(1) 憲法価値を積極的に実現する機関としての憲法裁判所への期待、(2) 独裁制時代の旧裁判所に対する不信、(3) 違憲審査権の政治性の認識にある
永田秀樹 161 5 - 15
  • 各国で憲法裁判所による違憲審査制が導入された契機は、一、二の例外を除き、時代の大きな転換期において君主制や独裁体制が倒され、民主主義体制が樹立されたことである
永田秀樹 161 5 - 16
  • ヨーロッパの憲法裁判所は、政治の舞台だけで国家の意思決定を完結させずに法的なチェックを行い、議会制における多数者支配を是正するのが基本的な役割であり、政治権力の行使に法的なお墨付きを与えるものとしては考えられていない
永田秀樹 161 5 - 18
  • 日本では下級裁判所の違憲審査権行使の歴史があり、むしろ下級審の方が違憲審査権行使に積極的であったと言え、下級審から違憲審査権を奪ってよいかという問題がある
永田秀樹 161 5 - 18
  • 内閣法制局の有権解釈権を奪い取るために憲法裁判所を導入すべきとの意見があるが、法制局が法律を事前に審査し、裁判所が事後に審査することは立憲主義にとり当然のことであり、内閣法制局の問題と憲法裁判所設置の必要性とは無関係
永田秀樹 161 5 - 18
  • 憲法は政治権力を規制する法であり、憲法裁判の結論が政治的色彩を帯びることは避けられないが、裁判所という場である以上、あくまで憲法というルールをどう厳格に解釈するか、法的一貫性が保たれているか否かに国民の信頼は懸かっている
永田秀樹 161 5 - 20
(裁判官の選任)
  • 憲法裁判所の裁判官選任は、ドイツのように議会がかかわるとか、フランスのように両院議長と大統領がかかわるなど、より国民の意見を反映する形が必要
中村睦男 151 4 - 6
  • 裁判官選任の方法は、両院の関与、更に政府の関与という形で、特定のところだけがするのではなく、幅広く選任することにより、客観、公正を保つという工夫が必要
成田憲彦 151 4 - 6
  • ドイツでは、違憲審査機能の政治性を自覚し、憲法裁判所裁判官には、法律家としての専門性だけでなく、民主的正統性を求め、その選任において議会が重視されることになった
永田秀樹 161 5 - 17
<導入の是非>
  • 憲法解釈を専管事項とする憲法裁判所の設置は憲法を機能させるという意味で有用
小林 節 151 3 - 9
  • 憲法裁判所は、憲法問題に対して迅速な判断を下すという長所があるが、法律が次々と違憲とされた場合、国会が国民の代表であり民主主義により正当化される存在であることとの調和が問題になる
中村睦男 151 4 - 5
  • 国会議員が法律を制定しても、憲法裁判所が違憲判断を下すことは第二次大戦後型の統治機構の一つの姿と自覚して、憲法裁判所の設置を積極的に検討してよいのではないか
成田憲彦 151 4 - 5
  • 現在は話を聴く耳を持つところがなく、中立的な行政裁判所ないし憲法裁判所をつくってほしい
山本節子* 154 I
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  • 憲法裁判所の導入は、憲法が導入した法の支配という英米法的な発想に、明治憲法が倣った大陸法体系の発想を接ぎ木することになる。まずは現在の付随的審査制を基本に考えるべき
佐藤幸治 154 2 - 5
  • 憲法裁判所は、迅速に憲法問題について判断を下せるという長所があるが、憲法判断が観念化、抽象化する危険が大きく、また、ドイツに見られるように憲法裁判所が政治化するという問題もある
佐藤幸治 154 2 - 9
  • 50年の経験もあり、具体的事実の中で判断するという法の支配の考え方を維持した方が別の原理を持ってくるより望ましい。付随的審査性の長所も充分に考慮すべきであり、今憲法裁判所制度を導入しようというのは性急
佐藤幸治 154 2
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  • 憲法裁判所をつくれば世の中が変わるということはあり得ず、むしろ日本の場合、憲法秩序の形成上、政治化が余りに進むおそれがあり、現行の制度でよい
戸松秀典 154 5 - 5
  • 憲法改正には基本的に反対の立場だが、凝り固まった護憲論ではなく、憲法改正はあってもよいと考えており、例えば、憲法裁判所を設置するということは考えられるのではないか
戸波江二 155 3 - 2
  • 15人の裁判官のうち憲法の専門家が1人もいない最高裁の現状では良い憲法判断はできないのではないか。憲法裁判所において憲法の専門家に憲法を担当させる方が合理的ではないか
戸波江二 155 3 - 7
  • 憲法裁判所は、その構成、権限により性格が変わってくるものであり、一概に導入の是非を答えることはできない
浦部法穂 159 7 - 14
  • 人権保障においては裁判所は積極的に役割を果たすべきであるが、統治機構の基本的な問題や安全保障の根幹にかかわる問題は、裁判官に排他的にゆだねるべき問題ではない。憲法裁判所をすべての憲法事項について排他的管轄権を持つ裁判所と定義した場合、その導入には基本的に反対である
土井真一 159 7 - 14
  • 憲法により国家権力を制限し、国民の自由を確保するという立憲主義を支えるのが違憲審査権を与えられた裁判所の役割であるから、立憲主義を支えている憲法の三原則の後退と併せて憲法裁判所の導入が主張されるのであれば、賛成できない
永田秀樹 161 5 - 18

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