1 主な論点のうち共通またはおおむね共通の認識が得られたもの

(21) 三権分立(第41条、第65条、第66条、第69条、第76条、第81条関係)

 三権分立の重要性・必要性はこれからも変わらないというのが、共通した認識であった。

(報告書144頁)

 立法府、行政府、司法府それぞれの三権の在り方について、これまでに増して、それぞれ説明責任や相互チェックを充実させていかなければならないという状況を踏まえ、議論が行われました。

 本調査会では、三権分立の意義について、「三権分立は、三権の抑制、均衡により権力の濫用を防ぎ、立憲主義と法の支配の目的を達成しようとするもの」などの意見が出されました。

 そして、「三権分立は、日本の統治システムを機能させるために不可欠」、「権力分立は自由を守るために不可欠」などの理由から、三権分立の重要性・必要性はこれからも変わらないとされました。

(22) 二院制と参議院の在り方(第42条関係)

 小委員会報告書で示された共通認識、すなわち、1)二院制の堅持、2)両院の違いの明確化のための、参議院改革の必要性及び選挙制度設計の重要性、3)参議院議員の直接選挙制の維持、4)参議院が自らの特性をいかして衆議院とは異なる役割を果たすべきこと(長期的・基本的な政策課題への取り組み、決算審査及び行政監視・政策評価の充実など)、5)現行憲法の衆議院の優越規定はおおむね妥当であり、両院不一致の場合の再議決要件の緩和には慎重であるべきこと、については本調査会で確認された。

(報告書154~165頁)

 二院制と参議院の在り方については、参議院が責任を持って取り組むべきテーマであり、平成16年2月18日に「二院制と参議院の在り方に関する小委員会」を設け、これを中心に調査を行いました。同小委員会の調査結果は、平成17年3月9日に報告書としてとりまとめられ(日本共産党は反対)、調査会に提出されました。

 本調査会では、同報告書で示された上記の共通認識を確認し、多様な民意の反映等の理由から、今後も二院制を維持すべきとされました。また、国民の代表機関として、議員が直接国民から選ばれるべきこと(直接選挙制)の維持や、両院間の意思不一致の場合の法律案の再議決要件の緩和に慎重であるべきとされました。

 さらに、今のままの参議院では、衆議院との違いが明確でないことから、解散がなく、長期の任期という参議院の特質をいかした改革をしていくことが重要であり、それに適合する選挙制度設計、長期的・基本的な政策課題への取組等を行っていくべきとされました。

(23) 議院内閣制(第66条、第69条関係)

 衆参両院を基盤とした議院内閣制であるべきことがおおむね共通の認識であった。

(報告書166~167頁)

 議院内閣制の基本原理は、国会の多数党が中心となって内閣を組織し、行政権の主体となることです。有権者が選出した議員が首相を選出し、首相が閣僚を部下として行政権を掌握することにより、民主政治の糸がつながり、首相の下に国の基本方針が集約され、一貫した政治が行われることになります。

 この点について、本調査会では、「行政権の抑制という国会本来の役割を果たしていくには、衆参両院が多様な民意を反映し、抑制と協働の働きを果たすことが重要である」などの理由から、衆参両院を基盤とした議院内閣制であるべきであり、その具体的仕組として、参議院の首相指名権、参議院議員の閣僚就任資格は維持すべきなどの意見が出されました。

(24) 特別裁判所の設置の禁止(第76条第2項関係)

 特別裁判所の設置の禁止については、これを維持すべきとするのがおおむね共通の認識であった。

(報告書176~178頁)

 特別裁判所とは、特殊の身分を持つ人または特定の種類の事件についてのみ裁判権を有する裁判所とされ、一般的には通常の司法裁判所の組織系列に属しない裁判所を指します。

 司法権の範囲について、現行憲法は、行政事件の裁判も含めてすべての裁判作用を司法権とし、これを通常裁判所に属するものとしました。その趣旨は、憲法第76条第2項が、英米にならい、特別裁判所の設置を禁止し、行政機関による終審裁判を禁止しているところに示されており、また、本調査会でも、「特別裁判所は、軍法会議等で人権が侵害された歴史から禁じられたもの」などの意見が出されました。

(25) 司法の迅速化等(第32条関係)

 司法の迅速化を進めるとともに、裁判の充実を図っていく必要性については、共通認識があった。

(報告書182~183頁)

 現在、司法制度改革が、政治改革・行政改革など一連の諸改革の最後として行われています。具体的には、裁判員制の導入による司法の民主化・国民の司法参加、法科大学院制度の導入による法曹養成制度の改革等が進行しています。

 こうした司法制度改革に関連して、本調査会では、司法の迅速化を進めるとともに、裁判の充実を図っていくことが必要とされました。

 そして、これらを具体化する方法として、「裁判は迅速に行うこと及び迅速でない裁判は裁判でないことを宣言するプログラム規定を設ける」、「行政事件、知的財産権等の専門的事項を扱う専門裁判所を設け、ただし、終審としては事件処理できず、最高裁の下に設置する」などの提案がありました。

(26) 私学助成の必要性(第89条関係)

 私学助成が必要であることは、共通の認識である。

(報告書192~194頁)

 公金支出規定(第89条)は濫費を防ぎまた団体の自主性を確保することが趣旨であると言われています。

 特に私学助成については、第89条により公の支配に属しない教育の事業に対する公金支出が禁じられていることから、憲法に違反しないか、憲法制定当初から議論されてきました。実務上は法律が制定され、政府解釈、判例上も、合憲とされています。

 本調査会でも、私学助成が必要であることについて、「89条は公教育を担う私立学校への助成を禁止する趣旨ではなく、私学助成は、26条の立場からも当然の措置」などの意見が出されました。

(27) 決算(第90条関係)

 参議院の決算重視は共通の認識であった。

(報告書196~197頁)

 二院制と参議院の在り方に関する小委員会では、参議院の決算審査の在り方、憲法における決算の位置付けについて、議論がなされました。

 小委員会での議論を受け、本調査会では、参議院においては、決算審査を重視すべきとされ、「決算は、参議院先議で、報告ではなく議決案件とすることを求める。決算が翌年度の予算に拘束力を持つことを明定すべき」などの提案がありました。

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