3 両院間の調整-意思不一致の場合等の調整の在り方

 議会が二つの院から構成される場合、両院間に意思不一致が生じたときにどのように調整するかは、二院制を採用する場合の極めて重要な問題である。小委員会でも、国会のもっとも根本的ないし基本的なところ、すなわち、法律案・予算案の議決及び条約の承認はあくまで両院の議決をもって国会の意思決定とすることを前提に、現行憲法の調整規定の妥当性や両院協議会制度とその運営の問題点等について議論がなされた。

(1)  法律案の再議決要件  (※)(59条関係)

 法律案の再議決要件につき、3分の2以上の多数を要求する現行憲法の規定(59条2項)は、極めてハードルが高く、事実上、参議院に拒否権を認めるに等しく、「強すぎる参議院」にしているとの批判に示されるように、両院間の調整の最大の問題は、現行の再議決要件の是非である。

 本小委員会においては、

  • 再議決要件の緩和は、衆議院の権限強化となり、さらには行政権の強化につながるので、参議院の権限を弱くすることには反対、
  • 3分の2を過半数に改めたのでは衆議院への歯止めにならないから、現行の規定を維持すべき、

などの意見のほか、

  • 再議決要件を過半数で足りるとする、
  • 衆議院の再議決権を一定期間行使停止とした上で、再議決要件を過半数で足りるとし、参議院独自の役割を果たしていく、

などの意見も出された。

(2)  内閣総理大臣の指名 (※)(67条関係)

 内閣総理大臣の指名について、本小委員会においては、

  • 内閣総理大臣は、現行の規定どおり、国会議員の中から、国会の議決で指名するのが望ましい、
  • 議院内閣制という統治構造を取る限りは、衆議院だけでなく、参議院も同じ位置付けでないとおかしい、

などの意見のほか、

  • 内閣総理大臣の指名は参議院の議論で変わる要素がないことから、審議の意義に疑問があり、67条の改正も視野に入れるべき、
  • 内閣と距離を置く関係で、内閣総理大臣の指名は参議院を省くこともあり得る、また、内閣総理大臣の指名は参議院は行使しないことにするなど、明文改正なしでも運用で実質的に行い得る、

などの意見も出された。

(3)  両院協議会

 両院協議会の在り方について、

  • 二院制であれば両院の意思が一致しない場合の調整を効率的に行う仕組みが必要であり、両院協議会の実効的な活用を検討すべき、
  • 両院協議会が機能しないのは残念であり、その使い方を工夫すべき、
  • 両院制の在り方や会期制などのマクロ的問題は両院が合同審査会等で議論しそれぞれ独自性を発揮できる体制を作る必要がある、

などの意見が出された。

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