基本的人権 参考人名
公述人名
回次 -

4 人権と公共の福祉との関係、権利と義務

公共の福祉
  • 公共の福祉とは、その時々の多数派の欲望が指し示すものではなく、その国の歴史が基本的に指し示す方向にある
西部 邁 150 1 - 4
  • 大阪空港公害訴訟で空港の公共性をめぐり公共性の内容について本格的に論争が展開。二審の大阪高裁判決は航空機の離着陸差止めを認めたが、最高裁は過去の損害賠償のみを認めた
中島茂樹 154 7 - 2
  • 厚木基地公害訴訟の最高裁判決は、米軍基地や自衛隊基地、安保条約の公共性を承認し、過去の生活妨害被害は一定程度救済するが、将来の損害賠償は否定し、差止め請求も否定
中島茂樹 154 7 - 3
  • 今後の公共性や公共の福祉をめぐる議論については、成熟し、価値観が多様化する中では、行政が一元的に公益を判断・実施するのではなく、行政、企業、NPOや個人が対等な立場に立って多面的に公益を企画立案・実施するとの産業構造審議会NPO部会の中間取りまとめがベースになるのではないか
中島茂樹 154 7 - 3
  • 伝統的な公私二元論でなく、公と私の間に共、すなわち社会的共同性の領域が存在しており、公共私の有機的な関係の在り方を構築し模索するのが、今日、公共の福祉や義務を考える場合の課題
中島茂樹 154 7 - 4
  • 人権の尊重を実体的な判断の内容とし、民主主義を手続的な側面として重視し、平和主義等の憲法上の原則から問題を設定していけば、公共性の中身が明らかになる。さらに、現在では、問題の事柄が公開されていること、一定の社会的な有用性があることが公共の福祉や公益の内容の判断の重要なメルクマール
中島茂樹 154 7 - 10
  • 公共性を確定させるためには、歴史的に確立してきた憲法上の重要な原理を大事にしながら、国民が開かれた議論の中で問題を決めていくことが重要
中島茂樹 154 7 - 11
  • 公共の福祉とは、最大公約数的には、みんなの利益を大切にすることと言えるが、それをどういう方向で実現していくかということになると見解が対立してくる
中島茂樹 154 7 - 15
  • 今日、人権の制約基準については詳しい議論がなされるようになったが、公共の福祉の内容や人権の制約根拠については必ずしも議論は深められておらず、その点が不満
百地 章 154 7 - 4
  • 公益は、私益に対する概念であり、刑法で言う社会的利益や国家的利益に相当する
百地 章 154 7 - 10
  • 国家にしかできないものや国家のための利益も当然あり、また国民全体の利益を考えるものもあるので、国家の利益、個人の利益に対して公共性の利益だけでいくという考え方には賛成できない
百地 章 154 7 - 10
  • 国家の存立のように、個人の利益を基礎としながらも個人の利益とは一つ離れた国家的利益というものもあり、そういう利益を含めて公共の福祉を考えないと、例えば国を守る義務などは出てこない
百地 章 154 7 - 12
  • 公共の福祉とは、万人共通の共存共栄の利益であり、個人的利益、社会的利益、公共的利益にかかわる共通の利益のこと
百地 章 154 7 - 15
  • 小学6年の教科書には、憲法の三原則が中心に記述してあり、国民の権利、義務は、全社とも分かりやすく図示するが、公共の福祉に関して全く触れていない点は不満
小田春人* 162 I - 3
  • 中高の教科書では、権利については詳述するが、公共の福祉と義務の記述は極めて少ない。国家と国民を対立的にとらえ、殊更に権利の重要性を強調する教科書で学んで、公民的資質が養えるのか、深刻な危惧の念を持つ
小田春人* 162 I - 3
  • 教育や地域の安心・安全などのためには、「地域力」がキーワードになると考える。ある程度大きな自治体をつくりつつ、その中で地域のコミュニティーをいかに残していくかが重要となる
小田春人* 162 I - 16
  • 「公」の最小単位は家族であるが、戦後の日本では、地域、隣近所、共同体等「公」が崩れていった。教育や地域の安心・安全などのためには地域の力が必要となる
小田春人* 162 I - 16
<基本的人権の制約・限界>
  • 人権が無制限でないことはもちろんだが、経済的自由権に特に公共の福祉という言葉が使われているのはそれなりの意味がある
初宿正典 154 6 - 5
  • 22条及び29条の場合以外は、公共の福祉という名の下に制限することについては慎重であるべき
初宿正典 154 6 - 9
  • 一般的な形で公共の福祉によって制限ができるとする法律には非常に問題がある
初宿正典 154 6 - 10
  • 人権を包括的に制限するのは非常に問題だが、国民の社会生活また生命を守るために必要最小限の制限をすることはあり得る
初宿正典 154 6 - 12
  • 人権の制約根拠は人権の調整に限られるべきで、人権内在的な調整を超えた国家の政策による制約は、たとえ国家の正当防衛行動という口実があったとしても認める余地はないというのが13条の公共の福祉の意味
横田 力* 154 II - 13
  • 前文の平和的生存権、9条の戦争の放棄、13条の幸福追求権等を前提にすれば、軍事的公共性を正面に掲げてすべて基本的人権が制限できるとの考え方は排除すべき
中島茂樹 154 7 - 3
  • 人権を制限する場合には、一方の利益と他方の利益を同一平面で比較考量し、裁判制度の中でのきちっとした手続を踏まえて問題を処理していくことが重要
中島茂樹 154 7 - 14
  • 公共の福祉による人権の制限を憲法が明文で認めているのは経済的自由だけであり、それ以外はできるだけ公共の福祉という文句を使わないようにしようというのが憲法学の合意するところである
中島茂樹 154 7 - 14
  • 通説(宮沢説)は、公共の福祉を人権相互間の矛盾・衝突を調整するための実質的公平の原理とし、人権制約の根拠となり得るのは他の人権しかないとして、個人を超える国家の利益を認めない
百地 章 154 7 - 5
  • 直接他の人権の侵害に当たらない行為でも、最高裁は公共の福祉を理由に、国民の権利や自由の制限を合憲としてきたし、諸外国の憲法や国際人権規約等の条約でも同様の人権制限が認められている
百地 章 154 7 - 5
  • 公共の安全や秩序、公共道徳、国民生活全体の利益などの維持や、憲法秩序や国家の存立の維持のために人権が制限されることがある
百地 章 154 7 - 5
  • 基本的人権が無制限とは思っていないが、どのように調整していくかは、個々のケースを踏まえ精密な議論をして具体的に妥当する方策を選択すべきであり、一律的に文言として規定するのは難しい
日弁連
岡部保男
154 9 - 6
<審査基準>→司法 3 憲法解釈権と憲法裁判、憲法裁判所制度 憲法裁判(違憲立法審査権)
<緊急・非常事態における人権制限>→平和主義と安全保障
7 緊急・非常事態法制 緊急・非常事態法制
権利と義務
  • 自由と同時に責任、権利と同時に義務を課すことは、成熟したデモクラシー国家の在るべき姿
西部 邁 150 1 - 16
  • 日本国憲法には義務規定が少ないとの意見もあるが、近代憲法が国家権力を制限して国民の権利を保障するために制定されたとの歴史にかんがみれば、99条の公務員の憲法尊重擁護義務が憲法上の義務として最もふさわしい
中島茂樹 154 7 - 3
  • 遵法の義務は憲法には書かれていないが、法治国家の国民として当然の義務である。しかし、成文法至上主義から憲法典以前のそのような問題がおろそかにされてきた
百地 章 154 7 - 6
  • 12条は、自由や権利は「国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない」とし、国民自身が自由や権利を行使するにふさわしい国民とならなければならないことを示している
百地 章 154 7 - 6
  • 憲法は国家権力の行使を制限する制限規範であると同時に国家権力の行使の根拠を与える授権規範でもあるので、国家権力を一方的に制限すればよいことにはならず、国家を維持するために必要な義務は憲法に明記する必要があると言える
百地 章 154 7 - 8
  • 遵法義務は当たり前のことではあるが、憲法に明記した方がよいかもしれない
百地 章 154 7 - 8
  • 現憲法は、憲法制定権者である国民から国政運営担当者への命令という性格を持つが、国民の義務の強調はこの基本的性格を大きく変更することになるため、改正の限界を超える
浦部法穂 159 7 - 3
  • すべての義務を憲法に列挙することは難しく、権利章典には基本的に保障されるべき権利を列記し、その相互尊重義務を原則と定めた上で、それ以外の義務については法律に従うという規定にするのが最も合理的
土井真一 159 7 - 14
  • 憲法学の通説は、憲法上の権利の基本的義務者は国家であり、具体的に言えば、政府機関の職員が職務行使に当たり憲法上の市民の権利を侵害してはならないとの趣旨で定められていると理解している
赤坂正浩 161 4 - 18
  • 家族を扶助する義務、社会保障制度を支える義務等を憲法に入れるべきとの主張があるが、国や地方の社会保障負担を減らそうとの意図によるものであれば、国民の間で負担を偏らせる効果を生み、活力ある社会の創出を妨げるし、本人拠出の確保を目的とするのであれば、まず、責任ある社会保障制度の確立が求められる
西原博史 161 4 - 17
  • 憲法に国民の行為規範や道徳規範としての意味を与えようとする主張があるが、普通の法律には国民に対する行為規範がいくつも存在するのであり、近代憲法の役割は、それらが人権を侵害しないよう権力を制限することである
永田秀樹 161 5 - 17
  • 中高の教科書では、権利については詳述するが、公共の福祉と義務の記述は極めて少ない。国家と国民を対立的にとらえ、殊更に権利の重要性を強調する教科書で学んで、公民的資質が養えるのか、深刻な危惧の念を持つ
小田春人* 162 I - 3
  • 責任と義務を相対的に軽視している現憲法を、全体として見直し、改正する必要がある
小田春人* 162 I - 4
  • 権利と義務はセットになっており、自由があれば責任や秩序がある。バランスを取った公民としての考え方を、教科書には載せるべき
小田春人* 162 I - 14
<納税の義務>
  • 納税の義務という形で規定されているが、その具体的な内容は納税者主権という形で組み立てていくのが現在では大きな流れ
中島茂樹 154 7 - 9
  • 課税最低限の水準については、憲法上一義的な基準はなく、国家財政の在り方や福祉行政の対応等から総合的に判断すべきであるが、法の下の平等や生存権の観点から、社会的弱者に一定の配慮をすることは憲法上の要請
中島茂樹 154 7 - 9
  • 納税の義務を果たすことにより国民としての自覚も高まるという意味では、課税最低限の引下げは検討の余地がある
百地 章 154 7 - 9
<国防の義務>
  • 9条を改正する段階には、国民に国防の義務があることを明記すべき
西部 邁 150 1 - 3
  • 国を守る義務は、現在の憲法の解釈上当然あるが、明文化の必要もある
百地 章 154 7 7 - - 8 13
  • 国を守る義務は道徳的な義務であり、諸外国の例からも、これを憲法に定めたからといって徴兵制につながることにはならない
百地 章 154 7 - 13
  • 欧米諸国には兵役拒否の自由を憲法で認めている国もあり、信仰に基づくような場合はやむを得ないと考えるが、ドイツなどの現状を見ると、単に兵役に就きたくないとの動機の人も広く認められており、そのようになると問題が出てくる
百地 章 154 7 - 18
  • 国家防衛義務を課すことは、国家は間違わない前提に立っている。民主主義社会とはいえ、政治に反映されない意見しか持てぬ少数派にまで、国家防衛に命を懸けろと言う権利はなく、どのように生き残りを懸けるかは最終的に各個人にゆだねられるべきもの
藤井富美子* 156 I - 6
  • 義務については、国防の義務を聖域とせず議論の俎上にのせるべき
小田春人* 162 I - 4
  • 自分たちの試案では、日本の独立を主権を守るのは国民の権利と義務であるとしている
永久寿夫* 162 I - 21
<徴兵制>
  • 徴兵が意に反する苦役であれば自衛官のやっていることは苦役なのかということになり自衛官に対する冒涜である。意に反する苦役に該当するから徴兵制はできないという議論には反対
百地 章 154 7 - 13
  • 徴兵制の禁止について、意に反する苦役には服させられないとの条項が理由にされては、自衛官はたまらない
西岡 朗 161 3 - 16
<環境を守る義務>→12 新しい人権 環境保護・環境権
<投票の義務>→国会 5 選挙制度 選挙権・被選挙権
<憲法尊重擁護義務>→改正、最高法規 2 最高法規性と憲法尊重擁護義務

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